回次 |
第3期 |
第4期 |
第5期 |
|
決算年月 |
2022年5月 |
2023年5月 |
2024年5月 |
|
売上高 |
(千円) |
|
|
|
経常損失(△) |
(千円) |
△ |
△ |
△ |
親会社株主に帰属する当期純損失(△) |
(千円) |
△ |
△ |
△ |
包括利益 |
(千円) |
△ |
△ |
△ |
純資産額 |
(千円) |
|
|
|
総資産額 |
(千円) |
|
|
|
1株当たり純資産額 |
(円) |
△ |
△ |
△ |
1株当たり当期純損失(△) |
(円) |
△ |
△ |
△ |
潜在株式調整後1株当たり当期純利益 |
(円) |
|
|
|
自己資本比率 |
(%) |
|
|
|
自己資本利益率 |
(%) |
|
|
|
株価収益率 |
(倍) |
|
|
|
営業活動によるキャッシュ・フロー |
(千円) |
△ |
△ |
△ |
投資活動によるキャッシュ・フロー |
(千円) |
△ |
△ |
△ |
財務活動によるキャッシュ・フロー |
(千円) |
|
|
|
現金及び現金同等物の期末残高 |
(千円) |
|
|
|
従業員数 |
(人) |
|
|
|
(外、平均臨時雇用者数) |
( |
( |
( |
(注)1.1株当たり純資産額の算定に当たっては、優先株主に対する残余財産の分配額を控除して計算しております。
2.潜在株式調整後1株当たり当期純利益については、潜在株式は存在するものの、当社株式は非上場であり期中平均株価を把握できないため、また、1株当たり当期純損失のため記載しておりません。
3.自己資本利益率については、親会社株主に帰属する当期純損失が計上されているため記載しておりません。
4.株価収益率については、当社株式は非上場であるため、記載しておりません。
5.第3期から第5期の経常損失及び親会社株主に帰属する当期純損失の計上については、開発期間が長期となる宇宙関連機器の開発に従事しており、小型衛星の量産化を見据えた設計の汎用化、製造の効率化、運用の自律化・自動化について、研究開発のための先行投資を行った事等によります。
6.第4期及び第5期の連結財務諸表については、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則(昭和51年大蔵省令第28号)」に基づき作成しており、金融商品取引法第193条の2第1項の規定に基づき、有限責任 あずさ監査法人の監査を受けております。第3期については、「会社計算規則」(平成18年法務省令第13号)の規定に基づき算出した各数値を記載しております。また、当該各数値については、金融商品取引法第193条の2第1項の規定に基づく有限責任 あずさ監査法人の監査を受けておりません。
7.従業員数は就業人員(当社グループから当社グループ外への出向者を除き、当社グループ外から当社グループへの出向者を含む。)であり、臨時雇用者数(パートタイマー、人材会社からの派遣社員を含む。)は( )内に年間の平均人員を外数で記載しております。
8.2024年9月17日開催の取締役会決議により、2024年10月17日付で普通株式1株につき200株の割合で株式分割を行っており、第4期の期首に当該株式分割が行われたと仮定し、1株当たり純資産額及び1株当たり当期純損失(△)を算定しております。
9.当社は、2024年9月17日開催の取締役会決議により、2024年10月17日付で普通株式1株につき200株の割合で株式分割を行っております。そこで、東京証券取引所自主規制法人の引受担当者宛通知「『新規上場申請のための有価証券報告書(Ⅰの部)』の作成上の留意点について」(2012年8月21日付東証上審第133号)に基づき、第3期の期首に当該株式分割が行われたと仮定して算出した場合の1株当たり指標の推移を参考までに掲げると、以下のとおりとなります。なお、第3期の連結財務諸表については、有限責任 あずさ監査法人の監査を受けておりません。
回次 |
第3期 |
第4期 |
第5期 |
|
決算年月 |
2022年5月 |
2023年5月 |
2024年5月 |
|
1株当たり純資産額 |
(円) |
△156.29 |
△187.68 |
△213.36 |
1株当たり当期純損失(△) |
(円) |
△55.29 |
△43.75 |
△85.72 |
潜在株式調整後1株当たり当期純利益 |
(円) |
- |
- |
- |
回次 |
第1期 |
第2期 |
第3期 |
第4期 |
第5期 |
|
決算年月 |
2020年5月 |
2021年5月 |
2022年5月 |
2023年5月 |
2024年5月 |
|
売上高 |
(千円) |
|
|
|
|
|
経常利益又は経常損失(△) |
(千円) |
|
|
△ |
|
|
当期純利益又は当期純損失(△) |
(千円) |
|
|
△ |
△ |
△ |
資本金 |
(千円) |
|
|
|
|
|
発行済株式総数 |
(株) |
|
|
|
|
|
普通株式 |
|
|
|
|
|
|
A種優先株式 |
|
|
|
|
|
|
B種優先株式 |
|
|
|
|
|
|
C種優先株式 |
|
|
|
|
|
|
C2種優先株式 |
|
|
|
|
|
|
D種優先株式 |
|
|
|
|
|
|
純資産額 |
(千円) |
|
|
|
|
|
総資産額 |
(千円) |
|
|
|
|
|
1株当たり純資産額 |
(円) |
△ |
△ |
△ |
△ |
△ |
1株当たり配当額 |
(円) |
|
|
|
|
|
(うち1株当たり中間配当額) |
( |
( |
( |
( |
( |
|
1株当たり当期純利益又は1株当たり当期純損失(△) |
(円) |
|
|
△ |
△ |
△ |
潜在株式調整後1株当たり当期純利益 |
(円) |
|
|
|
|
|
自己資本比率 |
(%) |
|
|
|
|
|
自己資本利益率 |
(%) |
|
|
|
|
|
株価収益率 |
(倍) |
|
|
|
|
|
配当性向 |
(%) |
|
|
|
|
|
従業員数 |
(人) |
|
|
|
|
|
(外、平均臨時雇用者数) |
( |
( |
( |
( |
( |
(注)1.「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を第3期の期首から適用しており、第3期以降に係る主要な経営指標等については、当該会計基準等を適用した後の指標等となっております。
2.1株当たり純資産額の算定に当たっては、優先株主に対する残余財産の分配額を控除して計算しております。
3.1株当たり配当額及び配当性向については、配当を実施していないため記載しておりません。
4.潜在株式調整後1株当たり当期純利益については、潜在株式は存在するものの、当社株式は非上場であり期中平均株価を把握できないため記載しておりません。
5.第3期から第5期の自己資本利益率については、当期純損失が計上されているため記載しておりません。
6.株価収益率については、当社株式は非上場であるため、記載しておりません。
7.第3期から第5期は、連結子会社である株式会社アクセルスペースに対する債務超過相当に係る子会社株式評価損及び貸倒引当金を計上したため、当期純損失を計上しております。
8.第4期及び第5期の財務諸表については、「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則(昭和38年大蔵省令第59号)」に基づき作成しており、金融商品取引法第193条の2第1項の規定に基づき、有限責任 あずさ監査法人の監査を受けております。
なお、第1期、第2期、第3期の財務諸表については、「会社計算規則」(平成18年法務省令第13号)の規定に基づき算出した各数値を記載しております。また、当該各数値については、金融商品取引法第193条の2第1項の規定に基づく有限責任 あずさ監査法人の監査を受けておりません。
9.2020年1月21日開催の臨時株主総会決議により、株式移転による完全親会社を設立する株式移転計画の承認がなされ、当社は2020年3月2日に設立されました。したがって、2020年5月期においては、2020年3月2日から2020年5月31日までの3ヶ月間となっております。
10.従業員数は就業人員(当社から社外への出向者を除き、社外から当社への出向者を含む。)であります。なお、臨時雇用者数(パートタイマー、人材会社からの派遣社員を含む。)については、その総数が従業員数の100分の10未満となる期は記載を省略しております。
11.当社は、2024年9月17日開催の取締役会決議により、A種優先株式30,338株、B種優先株式36,371株、C種優先株式35,467株、C2種優先株式10,387株、D種優先株式54,887株を、定款に定める取得条項に基づき2024年10月4日付で自己株式として取得し、その対価として、それぞれ普通株式30,338株、36,371株、35,467株、10,387株、54,887株を交付しております。また、当社が取得したA種優先株式、B種優先株式、C種優先株式、C2種優先株式、D種優先株式は同日付ですべて消却しております。
12.当社は、2024年9月17日開催の取締役会決議により、2024年10月17日付で普通株式1株につき200株の割合で株式分割を行っており、第4期の期首に当該株式分割が行われたと仮定し、1株当たり純資産額及び1株当たり当期純損失(△)を算定しております。
13.当社は、2024年9月17日開催の取締役会決議により、2024年10月17日付で普通株式1株につき200株の割合で株式分割を行っております。そこで、東京証券取引所自主規制法人(現 日本取引所自主規制法人)の引受担当者宛通知「『新規上場申請のための有価証券報告書(Ⅰの部)』の作成上の留意点について」(2012年8月21日付東証上審第133号)に基づき、第1期の期首に当該株式分割が行われたと仮定して算出した場合の1株当たり指標の推移を参考までに掲げると、以下のとおりとなります。なお、第1期、第2期、第3期の財務諸表については、有限責任 あずさ監査法人の監査を受けておりません。
回次 |
第1期 |
第2期 |
第3期 |
第4期 |
第5期 |
|
決算年月 |
2020年5月 |
2021年5月 |
2022年5月 |
2023年5月 |
2024年5月 |
|
1株当たり純資産額 |
(円) |
△77.08 |
△59.02 |
△156.29 |
△187.68 |
△213.36 |
1株当たり当期純利益又は1株当たり当期純損失(△) |
(円) |
0.22 |
0.04 |
△97.26 |
△43.75 |
△85.72 |
潜在株式調整後1株当たり当期純利益 |
(円) |
- |
- |
- |
- |
- |
1株当たり配当額 |
(円) |
- |
- |
- |
- |
- |
(うち1株当たり中間配当額) |
(-) |
(-) |
(-) |
(-) |
(-) |
当社の前身である株式会社アクセルスペースは2008年8月に設立され、その後2020年3月に単独株式移転の方式により純粋持株会社として当社が設立され、現在に至っております。
そこで、以下では、当社及び株式会社アクセルスペースの沿革をそれぞれ記載しております。
(株式会社アクセルスペース)
年月 |
概要 |
2008年8月 |
小型衛星の活用により多くの人に宇宙が当たり前に使われる社会の実現を目指して、東京都文京区に株式会社アクセルスペースを設立 |
2008年8月 |
株式会社ウェザーニューズと超小型衛星「WNISAT-1」(注1)の製作に係る契約締結 |
2009年5月 |
千葉県柏市柏の葉に事業所を開設 |
2011年3月 |
業務拡大により、東京都千代田区神田小川町に本店及び事業所を移転 |
2013年11月 |
株式会社ウェザーニューズより受注した北極海航路監視用超小型衛星「WNISAT-1」を打上げ |
2014年11月 |
東京大学主導のプロジェクト(内閣府最先端研究開発支援プログラムに採択)の一環で、ビジネス実証用超小型衛星「ほどよし1号機」を打上げ |
2017年4月 |
業務拡大により、東京都中央区日本橋本町に本店及び事業所を移転 |
2017年7月 |
「WNISAT-1」の後続機である超小型衛星「WNISAT-1R」を打上げ |
2018年5月 |
業務拡大により、サテライトオフィスとして東京都中央区日本橋室町に事業所を開設 |
2018年12月 |
衛星画像データ等を利活用する地球観測プラットフォームであるAxelGlobe事業に供する自社所有の小型衛星「GRUS初号機(GRUS-1A)」(注2)を打上げ |
2019年1月 |
国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(以下「JAXA」という。)より受注した小型実証衛星「RAPIS-1」(注3)を打上げ |
2019年5月 |
自社衛星にて撮影した画像データを販売及び衛星画像を使ったサービスを提供するAxelGlobe事業を開始 |
(当社)
年月 |
概要 |
2020年3月 |
株式会社アクセルスペースから単独株式移転の方式により、純粋持株会社として当社を設立 |
2021年3月 |
株式会社アクセルスペースにてAxelGlobe事業に供する「GRUS-1B, C, D, E」の打上げに成功、運用を開始 |
2021年6月 |
株式会社アクセルスペースのAxelGlobe事業にて、「GRUS-1A~E」の5機体制でのサービスを開始 |
2022年4月 |
株式会社アクセルスペースにて顧客向け小型衛星プロジェクトの設計・製造・打上げ・運用をワンストップで提供するサービスとしてAxelLiner事業を再定義し、発表 |
2022年5月 |
ロシアによるウクライナ侵略を踏まえ、「GRUS-1F, G, H, J」の打上げ中止に関する取締役会決議を実施 |
2023年3月 |
株式会社アクセルスペースが経済安全保障重要技術育成プログラムの1テーマである「光通信等の衛星コンステレーション基盤技術の開発・実証」に、株式会社Space Compass、国立研究開発法人情報通信研究機構(以下「NICT」という。)、日本電気株式会社と共に採択 |
2024年3月 |
株式会社アクセルスペースが開発したAxelLiner実証機「PYXIS」(注4)を打上げ |
2025年6月 |
株式会社アクセルスペースにて小型衛星「GRUS-3」(2027年5月期打上げ予定)の性能検証機である「GRUS-3α」を打上げ |
(注) 当社グループが開発した衛星名の読み方
1.WNISAT…ダブリュエヌアイサット
2.GRUS…グルース
3.RAPIS…ラピス
4.PYXIS…ピクシス
(1) 当社グループについて
当社グループは当社と連結子会社1社で構成されており、当社は、持株会社として当社グループの経営管理及びそれに付帯又は関連する業務等を行っております。他方、当社グループの主要な事業はいずれも連結子会社である株式会社アクセルスペースにおいて行っております。当社グループは「Space within Your Reach~宇宙を普通の場所に~」をビジョンに掲げ、従来人々にとって遠い存在であった宇宙が、日常的にかつ当たり前のように利活用されている社会の実現を目指しております。
当該ビジョンを達成するために、当社グループは、2008年より世界に先駆けて小型衛星の開発に取り組んでまいりました。現在は、AxelLiner事業とAxelGlobe事業の2つの事業を運営しております。AxelLiner事業は創業以来約17年にわたり蓄積してきた経験・ノウハウを基盤とし、小型衛星の開発・製造・打上げ後の運用に関して、打上げ機の手配や許認可の取得等の非技術的な手続きも含めて顧客向け小型衛星プロジェクトの開発・運用サービスを提供しております。AxelGlobe事業は当社グループが保有・運用する光学地球観測衛星コンステレーションが取得した画像データを販売、又はそれらの画像を加工・分析して情報を抽出し、ソリューションとして顧客にサービス提供しております。農業や土地管理をはじめ、環境や金融、報道等、他産業での用途にも拡大しております。
なお、「衛星コンステレーション」とは、複数機の人工衛星を打上げ、それらを一体運用して事業等に活用する仕組みのことをいいます。
事業セグメントは、上記AxelLiner事業及びAxelGlobe事業の2つとしており、これは「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項」に掲げるセグメントの区分と同一であります。
なお、当社は特定上場会社等であります。特定上場会社等に該当することにより、インサイダー取引規制の重要事実の軽微基準については連結ベースの数値に基づいて判断することとなります。
(2) 基盤となる小型衛星に関する技術
小型衛星の特徴と技術の源泉
当社グループは2008年の創業以来一貫して小型衛星事業に取り組んでおり、ベースとなる技術は、創業者である中村友哉及び永島隆の指導教員であった中須賀真一氏が教授を務める東京大学大学院工学系研究科、及び創業者である宮下直己氏の指導教員であった松永三郎氏(故人)が当時准教授を務めていた東京工業大学(現・東京科学大学)理工学研究科機械宇宙システム専攻において研究開発されていた複数の超小型衛星プロジェクトから生み出されたものです。
当時、一般に人工衛星と言えば、質量1トンを超える大型衛星が主流であり、時に5年以上にも及ぶ長い開発期間や宇宙用の部品を用いることによる高額な調達費用のため、政府系機関による開発が一般的でした。当社グループが手掛ける小型衛星は独自ノウハウにより、宇宙でも利用可能な民生部品を積極的に選定・活用したり、信頼性を損なわない範囲で各種環境試験を簡略化することによって、低コストでの設計製造、及び契約の締結から宇宙での利用開始までの期間の短縮を実現しました。
これにより民間企業が自社衛星として人工衛星を保有する可能性が切り拓かれるほか、衛星コンステレーションによる同一地点の高頻度観測や冗長性の確保といった新しい価値を提供することが可能となりました。
小型衛星に関する実績
創業以来、「WNISAT-1」「ほどよし1号機」「RAPIS-1」等の顧客向け人工衛星に加え、当社グループのAxelGlobe事業向け人工衛星である「GRUS」5機を含む合計11機の小型衛星を製造した実績を有しております。
株式会社アクセルスペースを設立後、大学で培ってきた技術・経験を活かし、質量約10キログラムの日本初の超小型民間気象衛星「WNISAT-1」の開発を株式会社ウェザーニューズより受託、2013年に打上げ、2024年2月まで運用を行いました。「WNISAT-1」の開発と並行する形で、2009年より内閣府総合科学技術会議による最先端研究開発支援プログラムの1テーマである「日本初の『ほどよし信頼性工学』を導入した超小型衛星による新しい宇宙開発・利用パラダイムの構築」の一環として「ほどよし1号機」の開発を主導、2014年に打上げ、2025年3月まで運用を行いました。その後「ほどよし1号機」の実績を生かし「WNISAT-1」の後続機である「WNISAT-1R」を開発し2017年に打上げ、2025年5月まで運用を行いました。2016年にはJAXAとの間で技術実証衛星である「小型実証衛星1号機(RAPIS-1)」の開発・運用に関する契約を締結し、2019年にイプシロンロケット4号機にて打上げました。なお、日本において、政府系機関の衛星開発をスタートアップ企業が受託するのは初めてのことでした。「RAPIS-1」については約1年半にわたって軌道上運用を継続し、全ての実証ミッションを成功裡に終えたのち、停波しております。
これら顧客のための人工衛星開発に加え、AxelGlobe事業に用いる地球観測衛星「GRUS-1A」を2018年に1機、2021年には「GRUS-1B, C, D, E」を4機同時に打上げることで、5機による地球観測衛星コンステレーションのサービスを日本で初めて開始しております。なお、姿勢制御に不具合の発生した「GRUS-1E」の商用運用を停止しておりましたが、本書提出日現在、商用運用復旧に向けた作業を進めております。
このように、多様な衛星を短期間に複数打上げ、並行して運用する経験を積んでまいりました。多様なミッションを通じて、小型衛星を構成する機器(コンポーネント)に関するサプライチェーンの確立、コストと信頼性のバランスを考慮したシステム設計、打上げ事業者や政府系機関との交渉等、プロジェクト推進に関わるあらゆる技術的・非技術的ノウハウを蓄積してまいりました。
当社グループの小型衛星の開発・製造・運用技術の特徴
当社グループの人工衛星の開発・製造・運用には次のような技術力があり、これらの技術力を用いた短期・低コストでの小型衛星開発を行えることが当社の強みです。また、実績が重視される衛星開発の中で、当社グループで運用している「GRUS-1」及び「PYXIS」を除き、上記のいずれの人工衛星プロジェクトにおいても、総合評価方式による一般競争入札及び顧客からの指名により人工衛星の開発に対して相応の対価を得ていることからも、当社グループの人工衛星開発能力の高さが評価されているものと認識しております。
[1] 小型衛星ミッションのために最適化した独自の設計基準と製造体制
当社グループの創業者らは大学生時代から小型衛星開発の研究を重ね、小型衛星のミッション遂行に必要となる設計思想及び設計製造ノウハウを獲得しております。当社グループの創業後、これらの設計・製造ノウハウを、大学レベルで必要とされるミッション遂行に必要な水準から、人工衛星ビジネスをするために必要十分となる独自の水準にまで向上させております。これにより、従来の人工衛星製造の業界において常識だった多くの開発工数や試験工数を削減・簡素化したほか、宇宙空間での利用を前提としていない民生部品の積極採用も行い、開発コストを大幅に削減しつつも、事業用途に耐え得る品質を維持する開発手法の確立に成功しております。
[2] 自動運用システム
当社グループが手掛けている一般的な地球周回衛星では、地上に置かれているアンテナ(地上局)と通信可能な時間帯は投入軌道によって自動で決まり、夜間・休日関係なく運用が発生します。従来行われていた人力による衛星運用では、こうした変則的な拘束時間に加え、運用ミスが許されないことによるストレスが高く、多大な人的コストがかかっておりました。当社グループでは創業以来、こうした運用にかかる手間・ミスを避けるため、人工衛星の運用の無人化・自動化を目指した運用システムを開発し、2018年に打上げた「GRUS-1A」より適用を開始しました。現在ではクラウド上の自動運用システムが人工衛星の監視・運用の大半を無人で実施し、軌道上の衛星に発生した軽微な不具合は自動復旧するなど効率的な衛星運用を実施しているほか、人工衛星に送付するコマンドは事前に設定された運用計画に基づき全てプログラムが生成するなど、運用ミスを防ぐ工夫をしております。さらに、他物体との衝突リスクが顕在化した時には自動で衝突回避運用を実行する機能の実装も進めております。人工衛星運用の自動化は当社グループの創業当時より強く掲げた目標であり、人工衛星に搭載するソフトウエアと地上側の人工衛星運用ソフトウエアの両者を内製し、それらを相互に連携させることで高度な運用自動化を実現しております。このように人工衛星の開発と運用をワンストップで提供できることは、設計・製造・運用全ての経験を有した事業者のみが実現できることであり、特に人工衛星の運用経験のない顧客を取り込めるようになる点で、強い競争力となると考えております。
[3] 民生部品の積極的な利用をはじめとした独自のサプライチェーン網の構築
宇宙は地上とは異なる過酷な環境(真空、宇宙放射線、大きな温度変動等)であるため、一般には宇宙環境を想定して製造されていない民生部品をそのまま利用することはできません。当社グループは最先端の半導体などの民生部品から宇宙利用できるものを独自に選定するノウハウ・技術を有しております。これによって例えば衛星搭載のメイン計算機ボードを内製化しており、安価でありつつも小型かつ高性能な衛星の実現に貢献しております。こうしたノウハウの積み重ねにより、当社グループは、外部機器の調達と自社開発品を組み合わせた独自のサプライチェーン網を構築しております。また、長納期かつ高額な調達機器に関しても、外部メーカーと共同開発に取り組み、当社グループが宇宙利用の経験とノウハウ等を提供することで、安価で短納期な部品を開発するなど、更なる原価低減に向けた施策も進めております。一方で近年では数千機を超えるいわゆるメガコンステレーションの誕生から、小型衛星向けのコンポーネントの開発が活発となっており、徐々に安価で高性能なコンポーネントも市場に流通し始めております。当社グループは内製と外部パートナーとの共同開発、外部調達をバランスよく併用することで技術・コスト両面で競争力のある製品開発を進めております。
シナノケンシ株式会社と共同開発を行っている
リアクションホイール(衛星の姿勢制御装置の一つ)の原理試作品
(3) AxelLiner事業
AxelLiner事業は、顧客向け小型衛星プロジェクトの開発・製造・打上げ・運用を提供しております。
AxelLiner事業の前身となる、創業当初から取り組んできた顧客専用衛星開発では、顧客の要望に応じた小型衛星の設計から製造・運用までを提供してまいりました。その実績として、「WNISAT-1」、「ほどよし1号機」、「WNISAT-1R」、「RAPIS-1」が挙げられます。
現在の主要顧客は政府系機関で、2024年5月期はAxelLiner事業の売上高の95%を占めております。また、同時期の売上高は国内100%になります。政府系機関より委託を受け、取り組んでいるプロジェクトのうち、主なものは以下のとおりであります。
・光通信等の衛星コンステレーション基盤技術の開発・実証(2031年度(注)までの最大10年間)
国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下「NEDO」という。)が公募した「経済安全保障重要技術育成プログラム」におけるテーマの一つであり、2023年3月に採択されました。本開発・実証プロジェクトは、株式会社Space Compass(NTT株式会社とスカパーJSAT株式会社の合弁会社)、NICT、日本電気株式会社とともに、大容量・低遅延でのデータ通信・データ処理のサービスの提供を可能にする技術の研究開発に取り組み、日本近傍で衛星光通信ネットワークシステムとしての機能・性能実証を行います。このうち、当社グループは地球低軌道光通信衛星コンステレーションを構築する小型の光通信衛星及びネットワーク統合制御システム(ネットワーク運用制御システム、衛星管制システム、衛星自律化システム)の開発を行うと共に、システム実証のための光通信ターミナル搭載の地球観測衛星や電波(RF)地上局の構築を担当します。
光通信等の衛星コンステレーション基盤技術の実装後のイメージ図
・Beyond 5G 次世代小型衛星コンステレーション向け電波・光ハイブリッド通信技術の研究開発(2024年度まで(注))
次世代の人工衛星の標準コンポーネントとなり得る光通信技術に関連し、2021年にNICTより委託された案件です。国立大学法人東京大学、国立大学法人東京工業大学(現・東京科学大学)、株式会社清原光学とともに、次世代小型通信衛星コンステレーション構築に向け、キーコンポーネントである光通信機、及び従来製品より高速なKa帯通信機の開発を行いました。
(注)各機関の会計年度を示します。
また、顧客の専用衛星の開発・運用及びAxelGlobe事業に供する小型衛星「GRUS-1」の開発・運用を通して、当社グループは設計の標準化や量産に関する技術的知見の蓄積、必要となる諸手続きや調整のほか、政府や周波数調整の国際機関、ロケット・地上局・保険事業者等の外部関係者との関係性の構築など、衛星プロジェクト遂行に必要なあらゆる経験を積んでまいりました。こうして得たノウハウをベースに、顧客が求めるミッションを実現する衛星について、設計・製造・各種手続きから運用までをワンストップサービスとして提供することを目指しております。
衛星は、大きくは通信、電源、姿勢制御等、人工衛星としての基本機能に必要な機器と衛星の主構造の総称を指すバス(衛星バス)と、その人工衛星を製造・開発する目的となるミッション機器の2つで構成されております。それまでの衛星開発では、バス部の設計は、個別の要素技術は流用していたものの、衛星バス及び自動運用システムの標準化・汎用化が十分に進んでおらず、顧客のミッションに応じたカスタマイズでの設計工程が毎回発生し、複数の衛星案件を獲得して成長する上での課題となっていました。当社グループではバス部設計の標準化・汎用化の推進により、開発の効率化、開発期間の短縮化を進めております。
2010年代後半に入り、政府が宇宙ベンチャーの支援を本格的にスタートし、今後も宇宙ビジネスは加速度的に成長することが見込まれる環境となりました。時流により、世の中の期待にタイムリーに応えていくためには、衛星開発手法を抜本的に変革しなければならないと考えるようになったことから、改めて専用衛星事業のあり方を見直したのが、AxelLiner事業です。顧客の事業デザインのサポートから軌道上運用までの衛星開発に関わる長くて複雑なプロセスをパッケージ化し、それらを容易に管理できるソフトウエアを提供することで、他に例のない革新的なサービスを作り上げることを目指しております。なお、本サービスの詳細については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載しております。
2021年より経済産業省による「超小型衛星コンステレーション技術開発実証事業」(注)の補助事業者として、小型衛星の量産化を見据えた設計の汎用化、製造の効率化、運用の自律化・自動化についての実証を進めており、2024年3月にAxelLinerの実証衛星初号機となる「PYXIS」の打上げを行いました。「PYXIS」は当社グループが開発する汎用バスシステムの実証というだけでなく、ソニーグループ株式会社との協業により、IoT向け低消費電力広域(LPWA:Low Power Wide Area)通信規格のELTRES™(エルトレス:衛星測位システムを標準搭載し、見通し100km以上の長距離伝送性能を持つソニー独自のLPWA通信規格)に対応した衛星無線実験装置を搭載しました。なお、「PYXIS」は打上げ後、軌道投入に成功しましたが、電源供給系統の故障が発生し、通信が断絶したことから運用を終了しております。
(注)本事業は2021年度から2022年度まで経済産業省が実施し、2023年度から2026年度はNEDOが「宇宙産業技術情報基盤整備研究開発事業(超小型衛星の汎用バスの開発・実証支援)」として実施するものです。また、実施期間は各機関の会計年度を示します。
(4) AxelGlobe事業
AxelGlobe事業は当社グループが運用する衛星にて撮影した画像データを販売及び衛星画像を使ったサービスを提供しており、現在5機の「GRUS-1」により顧客が求める世界中の地点の衛星データを高頻度かつ安価に提供ができることを最大の強みとしております。
AxelGlobe事業を構成する小型衛星「GRUS-1」において提供する衛星画像の地上分解能(画像における1ピクセルに相当する地上の幅)は2.5mと、地上の航空機1機レベルの識別が可能であり、撮影幅は55km(直下視の場合)、撮影長は最大約1,000㎞と世界的に見ても商用衛星としては幅広い画像を一度に取得することができます。
一般的な衛星画像としては、一眼レフカメラのように人の目で見たように写る光学画像と、電波を用いた合成開口レーダー(SAR; Synthetic Aperture Radar)画像の大きく分けて2種類がありますが、「GRUS-1」が取得する画像は光学画像となります。照射した電波の反射強度を白黒の画像として表現しているSAR画像と比較し、「GRUS-1」が取得する光学画像は普段目にしている写真と同種の画像であり、直感的に理解しやすく誰にでも使いやすいという特徴があります。光学画像には悪天候時や夜間の撮影ができないという弱点がありますが、広域を撮影できる、複数波長のデータがあるため情報量が多い、面積あたりの画像単価が低い等のSAR画像にはないメリットもあります。衛星自身が電波を発して観測を行うSAR衛星に対し、光学衛星はSAR衛星のように衛星自身が電波を照射しない、受動的な観測手法であるため消費電力が少なく、その分一つの衛星でより広い面積を撮影することが可能です。また、衛星開発コストも低く抑えられ、比較的安価に通常の写真のような扱いやすい衛星画像をユーザーへ届けられる特徴があります。実際にサービスを利用する顧客セグメントは幅広く、2024年5月期のAxelGlobe事業の売上高の約66%は民間企業であり、官民問わず幅広い事業者にサービスを提供しております。
また、同時期の国内外売上高比率は国内約67%、国外約33%になります。販売チャネルについては、国内外50社以上の販売代理店と契約しておりますが、国内においては直販による営業活動も強化し、衛星画像にAI技術等を用いて解析した情報を付加した解析サービスや、衛星画像を用いた課題解決を行うコンサルテーションサービスも合わせて提供しております。これらのサービスを充実させていくために、様々な非宇宙産業のキープレイヤーとの協業に向けた取組みを積極的に進めております。
光学衛星とSAR衛星の比較
*1:衛星1機が1日あたりに撮影可能な面積
*2:国内SAR小型衛星事業者と当社製造コストの比較より
「GRUS-1」では人間の目でも視認可能な可視光線に加え、人間の目には見えない近赤外線(波長帯:770nm-900nm)や植物のクロロフィルが良く反応すると言われるレッドエッジ(波長帯:705nm-745nm)のデータを取得することができ、可視光だけでは判別が難しい作物の生育状況の把握や森林の健康状態の確認といった用途への応用が可能です。これらのデータをAxelGlobe専用のウェブプラットフォームを通じて提供しております。
2021年3月に打上げられた「GRUS-1B, C, D, E」のフライトモデル4機
(当社グループのクリーンルームで撮影)
AxelGlobe事業で提供するサービスの詳細は以下のとおりであります。
事業の特徴
[1]顧客要望に合わせた高い衛星利用効率
当社グループが提供する衛星画像は基本的に顧客の要望があった場所を撮影するタスキングを基本としており、事前にあらゆる箇所を撮影し、アーカイブとして提供するビジネスモデルと比較して死蔵されるデータを少なくすることが可能です。
[2]一度に広範囲にわたる撮影
撮影幅55㎞(直下視の場合)、撮影長最大約1,000kmの広範囲を一度に撮影することが可能です。長距離にわたる海岸線や、広域の農地や森林のモニタリングにも適しております。
[3]高頻度での撮影
同一地点を2~3日に1回撮影が可能です。顧客のニーズにより、1回/月、3回/月、6回/月の撮影リクエストを受け付けております(タスキング画像販売)。特定のエリアを定期的にモニタリングすることができるため、時間による変化をタイムリーに把握し、適切な事業判断に活用できます。
サービスラインナップ
[1]AxelGlobe タスキング(タスキング画像販売)
顧客が指定する期間・エリアを1回だけ撮影することが可能なサービスです。世界中のどこでも撮影可能な人工衛星の特徴を生かし、指定した期間内で1箇所又は複数箇所の撮影を依頼、撮像後のデータを入手することができます。また予め設定された比率を超える雲が検出された場合は無償にて再撮影を行います。これらの依頼・データのダウンロードはAxelGlobeのウェブプラットフォームへのアクセスにより実行できるほか、APIを利用し、他社ITサービスとの連携も可能です。
[2]AxelGlobe モニタリング(モニタリングサービス)
小型衛星コンステレーションを保有することから実現できたモニタリングサービスです。顧客が指定するエリアについて、顧客が指定した期間、低頻度(月1回)~高頻度(月6回程度)の中で顧客が希望する頻度を選び、契約プランに応じて衛星画像を撮影、販売するサービスです。AxelGlobe タスキングと同じく、契約からデータのダウンロードまでAxelGlobeのプラットフォーム及びAPIを通じてアクセス可能です。
[3]AxelGlobe エマージェンシー(緊急撮影サービス)
災害の発生直後など、一刻を争う情報の取得ニーズに対応するサービスです。衛星コンステレーションによる高頻度観測により世界中どこでも、そして非常に広域にわたる影響について迅速に事態の確認が可能です。システム構成上最短で撮影3時間前まで撮影リクエストの受付を行い、撮影後の優先的なデータのダウンリンク(衛星から地上に向けて電波を送信すること)を行います。2024年1月1日に発生し、石川県で最大震度7を記録した「令和6年能登半島地震」においても、国際災害チャーターへのデータ提供を行いました。
[4]AxelGlobe アーカイブ(アーカイブ画像販売)
過去に撮影した当社グループの衛星画像の中から、顧客のリクエストに応じて画像を販売するサービスです。画像の撮影タイミングを問わないことから、より安価に衛星データを活用することが可能です。
[5]AxelGlobe モザイク(モザイク画像生成)
広域の画像を撮影した場合、あるいはこれらの画像を組み合わせた広域地図を作ろうとした場合、どうしても雲の映り込みが生じます。AxelGlobeモザイクは同地点を複数回撮影し、それぞれの画像のうち、雲が写っていない箇所を組み合わせ、地図などの作成に必要な雲の写っていない衛星画像(モザイク画像)をオンデマンドで提供するサービスです。数千km2から数百万km2の範囲をカバーしており、関心ある分野・地域ごとに柔軟にモザイク画像の生成をご依頼いただけます。複数の画像を組み合わせておりますが、それぞれの画像間の境界をシームレスに補正し、また色味の補正なども行うことで、視覚的な分析に適した画像を作成します。
[6]撮影サブスクリプションサービス(シャッター権販売)
顧客が撮影場所を自由に決めることのできるサービスです。本サービス以外では撮影画像は購入を前提としておりますが、本サービスの場合、サムネイルを確認して必要な画像のみダウンロードすることができる(要追加費用)ため、費用を抑えながら関心地点の撮影ができます。また、撮影画像については一定期間、他の顧客には公開されないようにすることが可能です。
[7]解析・コンサルテーションサービス
撮影した衛星画像に特定の画像処理を加えて、高付加価値の画像を提供するサービスです。特に、植物の育成状況を分析する植生分析に強みがあります。単に衛星画像を提供するだけではなく、衛星画像の活用についてのコンサルテーションも個別に行っております。当社グループの衛星画像データに、他のデータを掛け合わせることで新たなビジネスの創造や、研究開発に利用されております。
サービス利用事例
AxelGlobeが提供するサービスを活用できる主な産業・用途として、農業、インフラモニタリング、環境、報道、安全保障、宇宙状況把握、マッピングが挙げられます。衛星は世界中のあらゆる地域を撮影できるため、これらの産業・用途に対してサービスをグローバルに提供していくことが可能です。具体的には、次に示すように活用されております。
[1]農業
衛星画像はただ目で見るだけでなく、得られている波長データごとの演算・分析を行うことにより作物の生育状況を解析することができます(当社グループの「GRUS-1」による衛星画像は赤、緑、青、近赤外、レッドエッジ、パンクロマティックと呼ばれる6つの波長帯域によるデータを取得しております)。生育の状況を「GRUS-1」などの衛星画像から確認、分析を行うことで、収穫適期の把握や水・肥料の管理が効率的にできるようになります。また、森林の育成状況に関する情報が樹種判断等の管理にも利用されております。その他季節ごとの植生の状況について分析することで、耕作放棄地を発見することや、農作物の経済指標作成等、多様な用途での活用が可能です。
NDVI処理/NDRE処理(注)の画像
(注) NDVI処理/NDRE処理…植物が一定の光の波長帯域を反射又は吸収する特性を活かして、特定の波長帯域の反射率の差を指標として観測し、植物の生育状況を衛星画像上で可視化する処理。近赤外線帯域(「GRUS-1」では770nm-900nm)の波長を活用したものをNDVI(Normalized Difference Vegetation Index)、レッドエッジ帯域(「GRUS-1」では705nm-745nm)の波長を活用したものをNDRE(Normalized Difference Red Edge Index)といいます。
農地状況分析・生育状況把握
[2]インフラモニタリング
広範囲を一度に撮影可能であり、かつ定期的に撮影できる衛星画像は、対象地域の工事進捗や異常を容易に確認することを可能にします。また、容易に現地に行くことのできない遠隔地も撮影対象とすることができるため、長距離にわたるパイプラインや外洋に浮かぶプラント、メガソーラーなど、大規模なインフラのモニタリングや工事進捗の把握の効率化に活用可能です。
工事進捗のモニタリング(工事ライフサイクル)
[3]環境
人が立ち入りにくい地帯の広範囲かつ日々の変化迅速な環境モニタリングや、森林の違法伐採などの変化、河川における堆積物の変化による流域のモニタリングなどを自動検出することができるため、業務効率化に活用可能です。このほか、地上からの実測データなども組み合わせつつ、森林域における樹種ごとの地上部バイオマスの推定などを行い、森林の管理精度の向上や生物多様性保護への貢献にもつなげることができると考えております。
複数の時点間の堆積物の定量化による流域モニタリング
[4]報道
報道で衛星画像が活用される場面は近年増加しております。画像そのものではなくシャッター権を販売することで、世界中どこでも関心のある地域を自由に決め、都度指定して撮影することが可能です。また必要な画像のみ追加費用で購入できるようにすることで、従来と比較して、費用を抑えた形で衛星データを活用することができます。
近年はSNSが発達し、また、生成AIの発展等により誰でも画像を容易に作成できるようになったため、偽の画像を使ったフェイク情報の拡散リスクが叫ばれております。このような中、衛星画像はファクトを示すデータとしての価値が高まると見込んでおります。
[5]安全保障
人工衛星は世界中を領空の制約に縛られることなく観測することができるため、地上から立ち入ることができない場所でも、何が起きているかを一定程度知ることができます。こうした情報は、安全保障の観点において極めて重要な役割を果たします。
「GRUS⁻1」にて撮影したシンガポールの港湾エリア。AIを用いて貨物船を自動的に検出(画像右)
[6]宇宙状況把握(SSA:Space Situational Awareness)
軌道上に打上げられる衛星の数が近年急速に増加しており、スペースデブリ(宇宙ゴミ)への関心も高まっております。軌道上物体の衝突によってスペースデブリが急増するのを防ぐため、宇宙交通整理(STM:Space Traffic Management)についての議論も始まっておりますが、こうした議論を進めるにあたり、軌道上の状況を正確に把握することは欠かせません。地上からの望遠鏡やレーダーでの監視に加え、軌道上の衛星から他の物体を直接観測するニーズが出てきております。
次の画像はオーストラリアのHIGH EARTH ORBIT ROBOTICS PTY LTD(HEO Robotics社)の要請により2024年2月に「GRUS⁻1」が撮影した、軌道上を漂う日本のH-IIAロケット2段目の画像になります。ロケットの1段目や補助ブースター、フェアリング(衛星を保護するカバー)等は海に落下しますが、2段目は衛星を切り離して役割を終えた後も、このように数年から数十年間、軌道上に残存し続けます。
軌道上を漂うH-IIAロケット2段目(HEO Robotics社の要請により「GRUS-1」が撮影)
[7]マッピング
衛星による広範囲な観測は、道路・建物、土地、湾岸線などの把握や、地図の作成・更新や都市開発に活用が可能です。
異なる時期に撮影された衛星画像とAIによる画像分析から、変化量の大きなポイントを抽出し、広範囲なエリアの中から、更新などの対応が必要なポイントを効率的に特定することができます。
また、複数回撮影した同一地点の画像を用いて、雲のない衛星画像データ(モザイク画像)の組成と提供を実現しております。
AxelGlobe モザイクによる雲なし画像の生成例。
「GRUS-1」にて撮影した複数の衛星画像(左)から雲なし画像を合成する。
[事業系統図]
当社グループの事業系統図は以下のとおりであります。
当社は連結子会社である株式会社アクセルスペースに対して経営管理業務等を提供し、その対価を同社より受領しております。
株式会社アクセルスペースにおいては、AxelLiner事業の顧客は現在政府系機関が多く占めており、それらの顧客に対して小型衛星の製造、開発等のサービスを提供しております。AxelGlobe事業の顧客は国内外、官民それぞれ存在し、それらの顧客に対し衛星データの提供や、衛星データを活用した解析・コンサルティングサービスを提供しております。商流としては株式会社アクセルスペースが直接顧客に対してサービスを提供する場合と代理店を経由する場合があります。
また、株式会社アクセルスペースは衛星開発に際し、必要な部材や機器のベンダー調達と内製化したコンポーネントの組み合わせで開発を行なっております。衛星の打上げに関しては、打上げ事業者から打上げ枠を購入し、事業に必要なデータ管理については、データセンター事業者のサービスを利用しております。
また、衛星と地上との通信を行うため、地上局等の通信事業者と契約し、通信サービスを利用しております。
名称 |
住所 |
資本金 (千円) |
主要な事業の内容 |
議決権の所有割合又は被所有割合 (%) |
関係内容 |
(連結子会社) |
|
|
|
|
|
株式会社アクセルスペース (注)1・2・3 |
東京都中央区 |
100,000 |
AxelLiner事業 AxelGlobe事業 (注)4 |
100 |
当社は同社に対して経営指導を行っており、当社が同社の管理業務等を受託しております。また当社が資金の貸付・債務保証を行っております。 当社が同社より不動産の賃貸を受けております。 役員の兼任3名あり。 |
(注)1.特定子会社に該当しております。
2.株式会社アクセルスペースについては、売上高(連結会社相互間の内部売上高を除く。)の連結売上高に占める割合が10%を超えております。しかし、当該子会社の売上高(セグメント間の内部売上高又は振替高を含む。)の連結売上高に占める割合が90%を超えているため、主要な損益情報等の記載は省略しております。
3.株式会社アクセルスペースは債務超過の状況にあり、債務超過の額は2024年5月31日の時点で、 △4,825,589千円であります。
4.「主要な事業の内容」欄には、セグメントの名称を記載しております。
(1)連結会社の状況
|
2025年5月31日現在 |
|
セグメントの名称 |
従業員数(人) |
|
AxelLiner事業 |
|
( |
AxelGlobe事業 |
|
( |
報告セグメント計 |
|
( |
その他 |
|
( |
全社(共通) |
|
( |
合計 |
|
( |
(注)1.従業員数は就業人員(当社グループから当社グループ外への出向者を除き、当社グループ外から当社グループへの出向者を含む。)であり、臨時雇用者数(パートタイマー、人材会社からの派遣社員を含む。)は、最近1年間の平均人員を( )外数で記載しております。
2.全社(共通)として記載されている従業員数は、グループ会社全体を管轄する株式会社アクセルスペースホールディングスに所属しているものであります。
3.最近1年間において、従業員数が22名増加しております。これは主に事業の拡大に伴う採用の増加によるものです。
(2)提出会社の状況
|
|
|
|
2025年5月31日現在 |
従業員数(人) |
平均年齢(歳) |
平均勤続年数(年) |
平均年間給与(円) |
|
|
( |
|
|
|
セグメントの名称 |
従業員数(人) |
|
AxelLiner事業 |
|
( |
AxelGlobe事業 |
|
( |
報告セグメント計 |
|
( |
その他 |
|
( |
全社(共通) |
|
( |
合計 |
|
( |
(注)1.従業員数は就業人員(当社から社外への出向者を除き、社外から当社への出向者を含む。)であり、臨時雇用者数(パートタイマー、人材会社からの派遣社員を含む。)は、最近1年間の平均人員を( )外数で記載しております。
2.平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。
3.全社(共通)として記載されている従業員数は、グループ会社全体を管轄しております。
(3)労働組合の状況
当社グループにおいて労働組合は結成されておりませんが、労使関係は円満に推移しております。
(4)管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異
当社グループは、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)及び「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定による公表義務の対象ではないため、記載を省略しております。