回次 |
第3期 |
第4期 |
第5期 |
第6期 |
第7期 |
第8期 |
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決算年月 |
2020年3月 |
2021年3月 |
2021年7月 |
2022年7月 |
2023年7月 |
2024年7月 |
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売上高 |
(千円) |
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経常利益又は経常損失(△) |
(千円) |
△ |
△ |
△ |
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当期純利益又は当期純損失(△) |
(千円) |
△ |
△ |
△ |
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持分法を適用した場合の投資利益 |
(千円) |
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資本金 |
(千円) |
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発行済株式総数 |
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普通株式 |
(株) |
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A種優先株式 |
(株) |
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B種優先株式 |
(株) |
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S種優先株式 |
(株) |
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S-2種優先株式 |
(株) |
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|
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S-3種優先株式 |
(株) |
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純資産額 |
(千円) |
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総資産額 |
(千円) |
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1株当たり純資産額 |
(円) |
△ |
△ |
△ |
△ |
△ |
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1株当たり配当額 |
(円) |
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|
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|
|
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(うち1株当たり中間配当額) |
( |
( |
( |
( |
( |
( |
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1株当たり当期純利益又は1株当たり当期純損失(△) |
(円) |
△ |
△ |
△ |
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潜在株式調整後1株当たり当期純利益 |
(円) |
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自己資本比率 |
(%) |
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自己資本利益率 |
(%) |
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株価収益率 |
(倍) |
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配当性向 |
(%) |
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営業活動によるキャッシュ・フロー |
(千円) |
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△ |
投資活動によるキャッシュ・フロー |
(千円) |
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△ |
△ |
財務活動によるキャッシュ・フロー |
(千円) |
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現金及び現金同等物の期末残高 |
(千円) |
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従業員数 |
(人) |
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(外、平均臨時雇用者数) |
( |
( |
( |
( |
( |
( |
(注)1.当社は、連結財務諸表を作成しておりませんので、連結会計年度に係る主要な経営指標等の推移については記載しておりません。
2.持分法を適用した場合の投資利益については、当社は関連会社を有していないため記載しておりません。
3.1株当たり純資産額については、各期の純資産の部の合計額よりA種優先株式、B種優先株式、S種優先株式、S-2種優先株式及びS-3種優先株式の残余財産の分配額を控除して算出しております、その結果、第3期、第4期、第5期、第6期及び第7期はマイナスとなっております。
4.1株当たり配当額及び配当性向については、配当を実施していないため、記載しておりません。
5.潜在株式調整後1株当たり当期純利益については、潜在株式は存在するものの、当社株式は非上場であり、期中平均株価が把握できないため、また、第3期、第4期及び第5期は1株当たり当期純損失であるため記載しておりません。
6.第3期、第4期及び第5期の自己資本利益率については、当期純損失であるため記載しておりません。
7.株価収益率については、当社株式は非上場であるため、記載しておりません。
8.第3期、第4期及び第5期は、デジタルグリッドプラットフォーム(詳細は「2 沿革」ご参照)の開発費用計上や、デジタルグリッドプラットフォームの商用運転開始が間もなかったこともあり、経常損失、当期純損失となりました。
9.第3期、第4期、第5期及び第6期についてはキャッシュ・フロー計算書を作成しておりませんので、キャッシュ・フローに係る各項目については記載しておりません。
10.第8期の営業活動によるキャッシュ・フローは、取扱電力量の急激な増加の影響により、運転資金の一時的な立替金が増加いたしました。その結果、マイナスとなっております。
11.第7期及び第8期の投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産及び無形固定資産の取得による支出によりマイナスとなっております。
12.従業員数は就業人員(当社から社外への出向者を除き、社外から当社への出向者を含む。)であり、臨時雇用者数(パートタイマー、人材会社からの派遣社員を含む。)は年間の平均人員を( )内に外数で記載しております。
13.2021年6月29日開催の臨時株主総会決議により、第5期の決算期を3月31日から7月31日に変更しました。従って、第5期は、決算期変更により2021年4月1日から2021年7月31日までの4ヶ月間となっております。
14.当社の財務諸表は、第7期及び第8期の財務諸表については、「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」(昭和38年大蔵省令第59号)に基づき作成しており、金融商品取引法第193条の2第1項の規定に基づき、EY新日本有限責任監査法人の監査を受けております。なお、第3期、第4期、第5期及び第6期の財務諸表については、「会社計算規則」(平成18年法務省令第13号)の規定に基づき算出した各数値を記載しており、金融商品取引法第193条の2第1項の規定に基づくEY新日本有限責任監査法人の監査を受けておりません。
15.当社は、2024年12月27日付の会社法第370条及び当社定款の規定に基づく取締役会の書面決議により、2025年1月23日付でA種優先株式、B種優先株式、S種優先株式、S-2種優先株式及びS-3種優先株式のすべてについて、定款に定める取得条項に基づき取得し、その対価として普通株式を交付しております。また、当社が取得したA種優先株式、B種優先株式、S種優先株式、S-2種優先株式及びS-3種優先株式のすべてについて、会社法第178条に基づき同日付で消却しております。なお、当社は、2025年2月12日開催の臨時株主総会において、同日付で種類株式を発行する旨の定款の定めを廃止しております。
16.当社は、2025年1月23日開催の取締役会決議により、2025年2月12日付で普通株式1株につき10株の割合で株式分割を行っております。第7期の期首に当該株式分割が行われたと仮定し、1株当たり純資産額及び1株当たり当期純利益を算定しております。
17.「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を第6期の期首から適用しており、第6期以降に係る主要な経営指標等については、当該会計基準等を適用した後の指標等となっております。
18.当社は、2025年2月12日付で普通株式1株につき10株の株式分割を行っております。
そこで、東京証券取引所自主規制法人(現 日本取引所自主規制法人)の引受担当者宛通知「『新規上場申請のための有価証券報告書(Ⅰの部)』の作成上の留意点について」(2012年8月21日付東証上審第133号)に基づき、第3期の期首に当該株式分割が行われたと仮定して算出した場合の1株当たり指標の推移を参考までに掲げると、以下のとおりとなります。
なお、第3期、第4期、第5期及び第6期の数値(1株当たり配当額についてはすべての数値)については、EY新日本有限責任監査法人の監査を受けておりません。
回次 |
第3期 |
第4期 |
第5期 |
第6期 |
第7期 |
第8期 |
|
決算年月 |
2020年3月 |
2021年3月 |
2021年7月 |
2022年7月 |
2023年7月 |
2024年7月 |
|
1株当たり純資産額 |
(円) |
△285.38 |
△286.16 |
△310.95 |
△270.44 |
△159.70 |
4.19 |
1株当たり当期純利益又は1株当たり当期純損失(△) |
(円) |
△255.27 |
△77.16 |
△24.79 |
4.69 |
110.74 |
163.90 |
潜在株式調整後1株当たり当期純利益 |
(円) |
- |
- |
- |
- |
- |
- |
1株当たり配当額 |
(円) |
- |
- |
- |
- |
- |
- |
(うち1株当たり中間配当額) |
(-) |
(-) |
(-) |
(-) |
(-) |
(-) |
当社は、再生可能エネルギーを今後のエネルギー供給の主役とし、人類をエネルギー制約から解放することを目的に2017年10月に設立いたしました。
発電量が不安定であるなどの課題を抱える再生可能エネルギーを「使いこなす」ための取り組みを行う中、2018年に環境省からの委託を受けてP2P電力取引※1の実証事業を開始いたしました。当社は、本実証事業を通して行った様々な仮説検証を踏まえ、2020年2月に発電家と需要家が直接取引可能な電力取引プラットフォームである「デジタルグリッドプラットフォーム(以降、「DGP」)」をリリースいたしました。その後、DGPは、オフサイトPPA※2や自己託送※3へと活用の範囲を広げ、現在に至っております。当社グループの事業の変遷は次のとおりであります。
年 月 |
概 要 |
2017年10月 |
デジタルグリッドプラットフォーム㈱(現当社、資本金3百万円)を東京都千代田区に設立 |
2017年12月 |
デジタルグリッド㈱に社名変更 |
2018年3月 |
環境省実証事業にてP2P電力取引実証事業を実施 |
2018年5月 |
環境省実証事業にて「ブロックチェーン技術を活用した再エネCO2排出削減価値創出モデル事業」を実施 |
2019年12月 |
DGPを通じて電力取引運営のために必要な許認可(小売電気事業者登録)を経済産業省資源エネルギー庁より取得 |
2020年2月 |
需要家主体で電力取引ができるDGPを商用リリース |
2020年6月 |
DGPの特許取得(「電力取引システム、電力取引方法および電力取引プログラム」第6782479号) |
2020年12月 |
DGPを通じたオフサイトPPAサービスの提供開始 |
2021年4月 |
DGPを通じた自己託送サービスの提供開始 |
2021年11月 |
非化石証書※4代理調達サービス「エコのはし」をリリース |
2022年3月 |
東京都千代田区から東京都港区へ本社を移転 |
2022年7月 |
2022年4月の特定卸供給事業者(アグリゲーター)制度開始に伴い、アグリゲーターライセンス※5を取得 |
2022年8月 |
「Green Purchase Agreement(GPA)」の特許取得(「環境価値※6取引対価算出装置、環境価値取引対価算出方法および環境価値取引対価算出プログラム」第7266259号) |
2022年9月 |
FIP制度※7を利用したバーチャルPPAサービス「GPA」をリリース |
2023年4月 |
企業向けの脱炭素教育サービス「GX navi」をリリース |
2023年7月 |
バーチャルPPA特化型マッチングプラットフォーム「RE Bridge」をリリース |
2024年8月 |
蓄電所の開発・保有・運営と、これらに関する出資(共同投資を含む)行うため、デジタルグリッドアセットマネジメント㈱(連結子会社)を設立 |
2024年12月 |
蓄電池のアグリゲーションサービス開始 |
※用語説明
項番 |
用語 |
用語説明 |
1 |
P2P電力取引 |
電力の売り手と買い手を直接取引する「Peer to Peer(ピア・ツー・ピア)」を用いた相対取引の仕組みのことです。 |
2 |
オフサイトPPA フィジカルPPA バーチャルPPA |
発電家と需要家との電力購入契約「PPA(Power Purchase Agreement)」の形態です。「オフサイトPPA」とは、需要家から離れた発電家が相対で長期契約を直接結び、新設した太陽光発電設備で発電された再エネ電力を長期・固定単価で調達する方法です。 オフサイトPPAは、需要家への提供価値に応じて大きく「フィジカルPPA」と「バーチャルPPA」の2つに大別されます。フィジカルPPAは再エネ発電所で発電された電力と環境価値をセットで需要家に届ける手法で、バーチャルPPAは電力と環境価値を切り離して考え、環境価値のみを需要家に届ける手法です。 |
3 |
自己託送 |
一般送配電事業者が保有する送配電ネットワークを使用して、工場等に自家用発電設備を保有する需要家が当該発電設備を用いて発電した電気を、別の場所にある当該需要家や当該需要家と密接な関係性を有する者の工場等の需要地に送電する制度のことです。 |
4 |
非化石証書 |
再生可能エネルギーなど非化石電源の「環境価値」を取引するために証書にしたものです。非化石エネルギーからつくられた電気には、電気としての価値以外に、「二酸化炭素を排出しない」という環境価値があると考えることができ、この環境価値があることを証明し、電気とあわせて売買の対象となります。 |
5 |
アグリゲーターライセンス |
特定卸供給事業を行うにあたり必要な届出のことです。アグリゲーター(特定卸供給事業者)は、英語の「aggregate(「集約する」の意)」を由来とし、発電家が持つエネルギーリソースを束ね、需要家と電力会社の間に立って、電力の需要と供給のバランスコントロールや、各発電家のエネルギーリソースの最大限の活用に取り組む事業者を指します。 |
6 |
環境価値 |
再生可能エネルギーの「エネルギーそのものの価値」に対し、「再生可能エネルギー電源によって生み出されたことによる付加価値」のことを「環境価値」といいます。化石燃料や原子力などの従来のエネルギーと再生可能エネルギーからの電力は、「電気」としては同じですが、再生可能エネルギーの方には電力に加えて先述の環境価値が加わる点が違いです。 |
7 |
FIP制度 |
「フィードインプレミアム(Feed-in Premium)」の略称で、FIT制度(固定価格買取制度(Feed-in Tariff))のように固定価格で買い取るのではなく、再エネ発電事業者が卸市場などで売電したとき、その売電価格に対して一定のプレミアム(補助額)を上乗せすることで再エネ導入を促進するものです。 |
当社グループは、当社及び子会社1社により構成されており、「エネルギー制約のない世界を次世代につなぐ」ことをビジョンとして掲げ、DGPの提供による「電力プラットフォーム事業(以降、「電力PF事業」)」、「再エネプラットフォーム事業(以降、「再エネPF事業」)」、及び調整力事業や脱炭素教育事業の「その他」3セグメントに分類して事業を行っております。
「第5 経理の状況 2 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項」に掲げるセグメントの区分と同一であります。
(1)DGPについて
(a) DGPの概要
DGP(登録商標第6568939号)は、発電家と需要家が直接取引可能な電力取引プラットフォームです。DGP上で行われる電力取引は、当社グループが提供する共通の電子契約に基づき締結され、電力取引契約の履行に必要な需給管理(送電業務)はDGPによって提供されます。発電家と需要家は電力取引に必要な専門知識や機能を具備することなく、DGPを介して自由な電力取引が可能となります。このように、自由な電力取引の場を構築することにより、取引参加者に価格発見機能とリスクヘッジ機能を提供しています。
価格発見機能とは、電力の売り手の「販売してもよい価格」と買い手の「購入してもよい価格」をすり合わせ、取引可能な価格を見つけることができることを指し、公正な価格形成の機能ともいえます。需要家の電力調達にかかるコストは当社グループの手数料を除き、原価で需要家が負担する仕組みとなっています。当社グループはその電力調達コストの原価構造を全て詳らかに開示しており、需要家は電力調達部分に選択肢があることが理解できる仕組みとなっております。当社グループはこの調達部分について、需要家に調達オプションがあることを提示し、需要家は自らのリスク許容度に応じた電力調達オプションを検討することが可能です。
当社グループは、電力の売り手と買い手がそれぞれの方針によって取引先を決め、電力の取引をすることは、売電量または買電量をすべて市場連動にする場合と比べてリスクが低いと想定しております。売り手は、発電所の建設費用等を売電収入によって長い期間をかけて回収していきますが、売電価格がその時々の市場価格によって変動すると費用回収の見通しが立てにくくなり、金融機関からの融資を受けることが難しくなることが想定されます。一方、買い手は、調達したい電力の全量を市場価格連動で購入した場合、市場高騰時に多額の電気代を支払わなくてはならない可能性があります。売り手と買い手が事前に価格と量、期間を固定した上で、電気の売買契約を締結することで、市場変動リスクを低減することができ、こうした機能をリスクヘッジ機能と呼んでいます。
DGPを利用することで、取引参加者である発電家は、自らが投資・建設・保有する発電所の最適な販路を確保し、需要家は自らのリスク許容度に応じた最適な電源を組み合わせて調達することが可能になります。電源の種類に関わらず、取引参加者同士が販売希望価格と購入希望価格をすり合わせていくことにより形成される約定価格は、発電家と需要家にとって取引の際の参考材料となります。約定価格を参考にすることで、不当に高すぎる、または、安すぎる取引価格となることを防ぐことができます。このほか、より条件に合う取引相手を探すための探索コストや取引相手との価格交渉にかかる交渉コストを抑えることができます。
また、両者の取引に際しては、定型化された契約書や複雑な制度に対応したシステムを当社グループが提供しており、利用者の使いやすさを追求したユーザーエクスペリエンスによって取引コストの最小化が図られています。
電力は一般的に大量かつ長期に貯蔵することが困難であり、需要と供給を常時一致させることが求められるといった特殊性や社会インフラを支える重要なエネルギー源であるという公共性から、電力の取扱事業者には専門性が要請されます。従来、こうした役割は主に旧一般電気事業者※に代表されるような大手電力会社が担っていましたが、東日本大震災を契機とする固定価格買取制度(FIT)の導入や電力小売の全面自由化を含む電力システム改革により、独立系発電事業者の増加や自社電源を持たない新電力の登場など多様なプレイヤーが電力の取扱いを開始するようになりました。需要家向けにも多様な料金メニューが提示されるようになりましたが、依然として「専門家」である旧一般電気事業者や新電力※といった小売電気事業者を通してしか電力調達をすることが出来ないことに変わりありませんでした。
※旧一般電気事業者:電気事業法(昭和39年法律第170号)による参入規制によって自社の供給区域における電気の小売供給の独占が認められていた電力会社10社(北海道電力株式会社、東北電力株式会社、東京電力ホールディングス株式会社、中部電力株式会社、北陸電力株式会社、関西電力株式会社、中国電力株式会社、四国電力株式会社、九州電力株式会社、沖縄電力株式会社)を指します。なお、新電力とは、旧一般電気事業者以外で、電力販売に参入した小売電気事業者を指します。
DGP上の電力取引では、利用者の高い専門性は必須要件ではありません。再エネ発電家には、天気によって変動する再エネの発電量を予測し、30分毎にその計画値を都度報告する義務が課せられますが、なかにはそうした機能を有さない事業者も存在します。また、需要家の中には、調達している電力のコスト構造を意識せず、「専門家」である小売電気事業者に示された料金メニューの内容を正確に把握しないまま契約する事業者も存在しています。DGPが具備しているAI予測機能は、変動性の高い太陽光のような再エネの発電量予測を容易にすることで発電家の業務負担を軽減させます。また、DGP上で実現される多様な発電家との直接取引により、需要家は自らが調達する多様な電源コストを正確に把握することが可能になります。同時に、電源のポートフォリオを組み合わせることにより、燃料価格等で変動する電力価格の高騰リスクを回避することが可能になります。DGPを通じて、必ずしも「専門家」ではない取引参加者同士の取引を拡大させることは、日本全体の電力市場の質向上や複雑な電力取引の民主化に貢献するものと考えています。
(b) DGPの特長
DGPの主な特長は、電力取引に必要な機能を備え、自由な電力調達を可能にするシステムを提供している点にあります。利用者は、初期費用、専門知識、小売電気事業者のライセンスを必要とせずに、発電家や需要家と直接電力取引を開始・継続することが可能になります。通常、電力取引には、顧客管理・需給管理・料金計算・精算業務等を行うためのシステムや日本卸電力取引所(JEPX※)に参加するための小売電気事業者ライセンスが必要になります。なかでも、需給管理は電力取引の枢要となる機能です。
※JEPX(Japan Electric Power Exchange):日本で唯一電気の売買ができる取引所で、2003年に設立されました。
電力の需給管理とは、電力の需要と供給が「同時同量」となるよう管理をすることです。一般的に電力は貯蔵できないことから、発電量(供給)と消費量(需要)を、常に同じ量(同時同量)にコントロールする必要があり、需給バランスが大きく崩れると、大規模な停電が発生するおそれがあります。このため、365日を30分単位で発電事業者は発電計画を、小売電気事業者は需要計画を作成し、電力広域的運営推進機関(以降、「OCCTO」)へ提出することが求められています。電力の過不足が生じた場合は、計画との差分を送配電事業者と精算する必要があり、中小規模の発電事業者・小売電気事業者にとって負担になっています。また、太陽光や風力など再生可能エネルギーの供給量は、天候などさまざまな条件によって変動するため、それによって需要に対して供給が不足、または過多となることがないように調整する必要もあります。こうした課題に対し、DGPでは、人工知能技術の研究開発を手掛ける東京大学と共同開発したAIモデルを活用したアルゴリズム、複雑な需給管理の全自動化とそれをサポートするマーケットの知見により市場競争力のある価格でサービスを提供している点が特長です。
このほかの特長として、需要家は、DGPを利用することで電力を調達する先の発電家を自ら選択する(特定する)ことができるようになっております。また当社グループでは契約管理や請求をはじめとした電力取引に必要となる一連の送電業務その他の手続きを代行しており、利用者の負荷軽減を実現しております(特許取得済:第6782479号)。
DGPのシステムは、原則として当社で内製しており、顧客ニーズや規制変更にも柔軟に対応することが可能です。システムエンジニアのパフォーマンスを測るDevOps Research and Assessment(DORA)※に設定された4つの主要指標のうち、デプロイ頻度・変更のリードタイム・変更の失敗率の3つで最高ランクである「エリートレベル」を達成し、速度・安定性の開発力についてトップクラスの評価を得ております(評価期間:2022年8月~2024年7月)。
DGPの運営にあたり、当社グループは市場変動リスクを負わず、発電家と需要家の取引量に応じた手数料が当社グループの売上として計上されます。発電家やJEPXへの電源費用、送配電事業者への託送料金※、OCCTOへの再エネ賦課金は、当社グループを経由してすべて需要家が負担する仕組みとなっております。また当社グループはDGPを活用し、JEPX等への支払いを需要家に代わって行っています。
※DORAは、Google Cloud が支援する研究組織であり、開発担当者と運用担当者が連携して協力する開発手法である「DevOps」(「開発(Development)」と「運用(Operations)」を組み合わせた造語)のパフォーマンスを評価し、改善するための研究とベンチマークを提供しています。DORAは、DevOpsのベストプラクティスとパフォーマンスを調査するための大規模な研究を行っており、年間レポート「State of DevOps Report」として発表され、業界全体のトレンドやベンチマークを提供しています。このレポートは、DevOpsの導入と改善を目指す多くの企業にとって重要な参考資料となっています。
※託送料金は、電気を送る際に小売電気事業者が利用する送配電網の利用料金として一般送配電事業者が設定するものです。
なお、セグメント上、DGPの利用によって生じる電力売買のうち、再エネ以外の電源の取引にかかるプラットフォーム手数料は「電力PF事業」へ、再エネ電源の取引にかかるプラットフォーム手数料は「再エネPF事業」へ、それぞれ属すると定義づけており、電力PF事業と再エネPF事業の事業領域は下図のとおりであります。各事業セグメントの事業内容については、「(2) 電力PF事業」及び「(3) 再エネPF事業」にて記載しております。
(2)電力PF事業
DGPで取引される電力のうち、当事業の対象は再エネ以外の電源となります。需要家は、自社の電力使用量、予算、リスク許容度などに応じて、最適な調達方法を組み合わせることが可能です。例えばJEPXの一日前市場(スポット市場)は、主要な電源調達手段の一つとして位置づけられます。JEPXのスポット市場では、1日を30分単位で区切った48コマの商品として電力が取引され、コマごとに価格が変動します。一般的な傾向として、夏季・冬季の需要期には価格が上昇しやすく、春季・秋季の端境期には価格が低下しやすい特徴があります。また、1日の価格変動においては、日中に太陽光発電の出力が増加すると価格が低下し、太陽光発電の出力が減少し始める夕刻には電力需要が増加することから、価格が上昇しやすい傾向にあります。さらに、自社の化石燃料発電設備の余剰電力を有効活用したい発電事業者や、化石燃料発電由来の電力を仕入れ・販売するエネルギー企業及び商社も、電源調達の選択肢の一つとなります。化石燃料による発電は出力を人為的に調整できる特性を有するため、一般的に取引単位としては、1日を通じて一定量を固定価格で供給する「ベースロード」、及び日中時間帯に固定価格で供給する「ミドル」の2種類に大別されます。需要家は、「電力コストの抑制」や「電気料金の固定化」といった目的に応じて、これらの調達手段を組み合わせることで、最適な電源ポートフォリオを構築することが可能です。
当事業における当社グループの競争優位性は、割安な手数料、契約形態の柔軟性、及びコスト構造の開示(透明性の高い説明品質)にあると考えております。
割安な手数料について、従来の小売電気事業者は多くの人員を必要とする高コスト体質であった一方で、当社グループは、自社開発のAIモデルを中心とした電力取引に必要なシステムを開発、運用しており、人件費や管理費を抑えながら、多様な利用者による大量の取引に対応できる体制を整えています。当社グループシステムとあわせ、新規引合から契約締結までの流れは定型化されていることや、大手企業を含むパートナーとのアライアンスを通じた顧客紹介等により、顧客獲得コストも抑えることができております。当事業の特性上、需要家の電力調達にかかるコストは当社グループの手数料を除き、原価で需要家が負担する仕組みとなっています。とくに、小売電気事業者の設定する一般的な基本料金には託送料金に加え、電源待機費用※等の費用が加えられていますが、DGPでは、小売電気事業者の基本料金に相当する部分が送配電事業者へ支払う託送料金のみとなっているため、需要家は相対的に安価に調達することが可能になります。なお、DGP利用に伴う手数料は需要家からのみ受領しております。
契約形態の柔軟性について、従来の旧一般電気事業者や新電力と呼ばれる小売電気事業者は、仕入れの制約があったために販売メニューが硬直的であった一方で、当社グループは仕入れの制約がなく、需要家が化石電源の発電家と契約するタイミング、期間、量を需要家自身で決定することが可能となります。例えば、全量を市場から変動価格で調達していた需要家が、市場価格の上昇を避けるために、期中に化石電源の発電家から一定量を固定単価で調達をすることで、価格変動を抑制したり、予算計画の達成を優先する場合に、最初から化石電源の発電家と一定量を固定単価で契約締結することで、見通しを立てやすくなったりというように、各需要家の立場に応じて需要家自身が仕入先を選択する柔軟な料金ポートフォリオの設計が可能です。このような自由な割合で調達ポートフォリオをDGPで組成することが可能で、個社ごとに特有のメニューを提供しております。取引形態別の実績として契約容量の81%はJEPXからのみ電力調達する顧客となります。(2025年1月実績)
コスト構造の開示(透明性の高い説明品質)について、DGPでは、需要家は手数料を除く電力調達コストを原価で負担しておりますが、その電力調達コストの内訳として電力使用量、複雑な制度に係る各種請求が詳らかに開示されます。
このような競争優位性を有するDGPの開発に関して、当社のエンジニアは、エンジニア自身が電力制度、電力市場に知見を蓄積しております。また、新規プロダクトの開発段階から参加している当社の株主や取引先の存在により、ステークホルダーを巻き込んだアジャイルな開発体制が実現されております。こうした開発体制により、頻繁で複雑な電力制度の変更にも対応可能となっております。
※電源待機費用は電力の安定供給を確保するために、発電所が電力需要のピーク時に対応できるよう待機することに対して支払われる費用のことです。
(3)再エネPF事業
再エネPF事業の対象は、DGPで取引される電力のうち、再エネ電源となります。再エネを取引する手法として、証書のみを取引する方法(環境価値取引)、需要家の敷地内に設置された再エネ設備を対象に電力購入契約を締結する手法(オンサイトPPA)、需要家の敷地外に設置された再エネ設備を対象に電力購入契約を締結する手法(フィジカルPPA、バーチャルPPA)、需要家の需要拠点と離れた自社拠点に設置された再エネ設備から自家消費する手法(自己託送)、小売電気事業者に再エネを届ける手法(再エネ卸)、市場に再エネを売電する手法(需給管理)があります。当社はオンサイトPPAを除く全ての再エネ取引手法に対応しており、取引の組成支援、及びDGPの需給管理機能を発電家に提供することで再エネ電力購入契約の履行を実行しています。
再エネPF事業の主な特長は、業種や規模を問わない広範な取引参加者とのネットワークと、新たな取引事例をつくる先進性です。これまで、FIT非化石証書の取引システムである「エコのはし」、再エネコーポレートPPAのマッチングプラットフォーム「RE Bridge」など、業界に先駆けてサービスをリリースして参りました。また、2022年4月にバーチャルPPAが解禁されるや否や、同年9月にはFIP制度を活用し、バーチャルPPAの価格変動性を抑え、決済方法を簡素化する手法を組み込んだ当社独自のバーチャルPPAである「GPA(Green Purchase Agreement、登録商標6664824号)」をリリースし、同月には初号案件の成約に至っております。また、旧一般電気事業者とはその供給エリア外において協力体制を構築しております。具体的には、エリア外で開発される太陽光発電設備の需給管理を受託しており、当該旧一般電気事業者に再エネ卸を行っております。このように当社グループは、制度変更にいち早く対応しビジネス化することで、国内の再エネ普及に貢献してきたと認識しております。
(a) RE Bridge(登録商標第6787953号)
RE BridgeはコーポレートPPAのマッチングに特化したプラットフォームです。コーポレートPPAにより売電先を確保したい発電家と、追加性のある再生可能エネルギーを長期で安定的に調達したい需要家をオークション形式でマッチングを行い、契約締結後に発電家に求められる需給管理業務等を当社グループが提供することで、案件の組成・発掘から実際のオペレーションまでワンストップでサポートすることができます。RE Bridgeには、発電家と需要家合わせて約100社(2025年1月末時点)の登録があり、2024年12月に実施したオークションでは計444MWの発電所の参加がありました。RE Bridgeでは登録料や利用料は受領しておらず、マッチング後のコーポレートPPAにおける需給管理を当社グループが受諾することで収益を確保するビジネスモデルとなります。
(b) エコのはし(登録商標6722913号)
当社グループはFIT非化石証書の代理調達サービスを提供しております。FIT非化石証書とは、太陽光発電などの再生可能エネルギーで発電する際に、電気そのものに加えて発生する環境価値だけを切り離し、証書化したものであり、JEPXで年4回行われるオークションで入札し購入することが可能です。
FIT非化石証書を購入することで、自社が使用した化石燃料由来の電力を再エネ由来の電力として置き換えることができるため、自社の電気契約の変更が不要で、着手しやすい再エネ導入手段である点がメリットです。FIT非化石証書の購入にあたっては、JEPXの会員登録のための書類作成や入札業務、精算といった手続きが発生しますが、エコのはしでは、利用者はオンラインで会員登録を行い、購入希望内容を入力することで手続きが完了し、再エネ価値取引市場への入札業務は当社グループが代行いたします。こうした一連の手続きに対し、当社グループは調達量に応じた手数料を受領しています。
(4)その他
① 調整力事業
電力ネットワークと直接連系する系統用蓄電池を想定対象として、独立型の定置用蓄電池を制御・運用する事業です。第1号案件は2024年12月より運用を開始しております。系統用蓄電池の収益機会は、主に卸電力市場、需給調整市場、容量市場の3つがあり、それぞれの市場における収益機会は次のとおりです。
当社グループは、これまで各種の実証事業等やDGPの商用化を通じて培ったノウハウを活用したシステム、さらに金融トレーディング・リスクマネジメント等の専門知識を有する人材の登用により、系統用蓄電池の保有者の運用を受託するアグリゲーションサービスを2024年12月から開始しており、系統用蓄電池の収益機会を通じて得られた収益の一部を当社の報酬として受領する予定です。
また、連結子会社であるデジタルグリッドアセットマネジメント株式会社を通じて系統用蓄電池の開発・保有・運用を実施する方針であり、今回の上場における資金使途の主たる目的となる想定です。当事業の将来的な展望としては、需要家と発電家それぞれのDGP利用者に対する市場変動リスクの低減等へ繋げていきたいと考えています。
当社グループにおいて系統用蓄電池を保有する場合、主な資産として蓄電池・系統連系費用・土地等が資産計上される見込みです。また、主な売上高として上記の各電力各市場における売電収入が見込まれ、売上原価として託送費用・再エネ賦課金・容量拠出金等、販売費及び一般管理費として保守費用・保険料・償却費・水道光熱費・関連する人件費等が想定されます。
② 脱炭素教育事業
当社グループは、日本政府が掲げる2050年のカーボン・ニュートラル実現に向けた各企業の取組みに対して、実務担当者の知識習得を支援するオンライン学習コンテンツGX navi(登録商標第6741588号、第6697124号)を提供しております。GX naviの特長は、①当社のノウハウを詰め込んだ実践型脱炭素コンテンツであること、②1単元5分からのすき間時間に気軽かつに簡単に学習できる学習体系であること、③自社のコンテンツもアップロード可能なワンストップで社内外教育可能な点にあることと認識しております。
③ その他
当社グループは、顧客企業の要請に応じて、J-クレジットや海外の環境価値証書等の取引を行うことがあります。これらはスポット取引であるため、当セグメントに位置付けております。
[事業系統図]
事業の内容を事業系統図により示すと次のとおりであります。
※1 連結子会社
※2 パートナー企業との共同出資により設立した、蓄電池の所有・運用を目的とする会社
名称 |
住所 |
資本金 (千円) |
主要な事業の内容 |
議決権の所有割合又は被所有割合 (%) |
関係内容 |
(連結子会社) |
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デジタルグリッドアセットマネジメント㈱ |
東京都港区 |
5,050 |
その他 調整力事業(蓄電池の開発、保有及び運営) |
100 |
役員の兼任あり 運転資金の融資 |
(注)最近事業年度について当社の関係会社はありませんが、上記のとおり、連結子会社であるデジタルグリッドアセットマネジメント株式会社を2024年8月1日に設立しております。なお、同社は特定子会社に該当しております。
また、有価証券届出書又は有価証券報告書を提出している会社はありません。
(1)連結会社の状況
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2025年2月28日現在 |
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セグメントの名称 |
従業員数(人) |
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電力PF事業 |
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( |
再エネPF事業 |
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( |
その他 |
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( |
報告セグメント計 |
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( |
全社(共通) |
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( |
合計 |
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( |
(注)1.従業員数は就業人員(当社グループからグループ外への出向者を除き、グループ外から当社グループへの出向者を含む。)であり、臨時雇用者数(パートタイマー、人材会社からの派遣社員を含む。)は、最近1年間の平均人員を( )外数で記載しております。
2.全社(共通)として記載されている従業員数は、管理部門に所属しているものであります。
3.全ての事業セグメントにおいて、事業の拡大により、人員が著しく増加しております。
(2)提出会社の状況
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2025年2月28日現在 |
従業員数(人) |
平均年齢(歳) |
平均勤続年数(年) |
平均年間給与(千円) |
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( |
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セグメントの名称 |
従業員数(人) |
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電力PF事業 |
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( |
再エネPF事業 |
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( |
その他 |
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( |
報告セグメント計 |
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( |
全社(共通) |
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( |
合計 |
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( |
(注)1.従業員数は就業人員(当社から社外への出向者を除き、社外から当社への出向者を含む。)であり、臨時雇用者数(パートタイマー、人材会社からの派遣社員を含む。)は、最近1年間の平均人員を( )外数で記載しております。
2.平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。
3.全社(共通)として記載されている従業員数は、管理部門に所属しているものであります。
(3)労働組合の状況
当社グループは、労働組合は結成されておりませんが、労使関係は円満に推移しております。
(4)管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異
当社及び連結子会社は、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)及び「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定による公表義務の対象ではないため、記載を省略しております。