第二部 【企業情報】

 

第1 【企業の概況】

 

1 【主要な経営指標等の推移】

 

回次

第19期

第20期

第21期

第22期

第23期

決算年月

2020年2月

2021年2月

2022年2月

2023年2月

2024年2月

売上高

(千円)

1,596,177

1,441,334

1,652,119

2,146,176

1,946,946

経常利益

(千円)

82,717

45,234

54,648

106,253

140,334

当期純利益

(千円)

68,804

34,338

26,276

130,053

99,086

持分法を適用した場合の投資利益

(千円)

資本金

(千円)

50,000

50,000

50,000

50,000

50,000

発行済株式総数

(株)

10,000

10,000

10,000

10,000

10,000

純資産額

(千円)

1,154,547

1,188,885

1,215,162

1,335,018

1,434,105

総資産額

(千円)

1,322,743

1,329,184

1,437,954

1,511,233

1,626,440

1株当たり純資産額

(円)

115,454.72

118,888.54

121,516.22

1,335.02

1,434.11

1株当たり配当額

(円)

(1株当たり中間配当額)

(-)

(-)

(-)

(-)

(-)

1株当たり当期純利益

(円)

6,880.47

3,433.82

2,627.68

130.05

99.09

潜在株式調整後

1株当たり当期純利益

(円)

自己資本比率

(%)

87.3

89.4

84.5

88.3

88.2

自己資本利益率

(%)

6.1

2.9

2.2

10.2

7.2

株価収益率

(%)

配当性向

(%)

営業活動による

キャッシュ・フロー

(千円)

249,576

519,512

投資活動による

キャッシュ・フロー

(千円)

79,431

80,967

財務活動による

キャッシュ・フロー

(千円)

現金及び現金同等物

の期末残高

(千円)

520,435

958,979

従業員数

(名)

113

116

117

126

129

〔ほか、平均臨時雇用人員〕

-〕

-〕

-〕

-〕

-〕

 

(注)1.持分法を適用した場合の投資利益については、当社は関連会社を有していないため記載しておりません。

2.2024年8月31日付で普通株式1株につき100株の株式分割を行っており、発行済株式総数は1,000,000株となっております。

3.1株当たり配当額及び配当性向については、配当を実施していないため、記載しておりません。

4.潜在株式調整後1株当たり当期純利益については、潜在株式が存在しないため記載しておりません。

5.株価収益率は、当社株式が非上場であるため記載しておりません。

6.第19期、第20期及び第21期についてはキャッシュ・フロー計算書を作成しておりませんので、キャッシュ・フローに係る各項目については記載しておりません。

7.第22期の営業活動によるキャッシュ・フロー(資金の支出)は、主に売上債権、契約資産の増加等によるものであります。

8.第23期の投資活動によるキャッシュ・フロー(資金の支出)は、主に無形固定資産の取得、有形固定資産の取得によるものであります。

9.主要な経営指標等の推移のうち、第22期及び第23期の財務諸表については、「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」(1963年大蔵省令第59号)に基づいて作成しており、金融商品取引法第193条の2第1項の規定に基づき、有限責任 あずさ監査法人により監査を受けております。なお、第19期、第20期及び第21期の財務諸表については、会社計算規則(2006年法務省令第13号)の規定に基づき算出した各数値を記載しており、当該監査を受けておりません。

10.収益認識に関する会計基準(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を2023年2月期期首から適用しており、2023年2月期以降に係る主要な経営指標等については、当該会計基準等を適用した後の指標となっております。

11.2024年8月31日付で普通株式1株につき100株の株式分割を行っておりますが、第22期の期首に当該株式分割が行われたと仮定し、1株当たり純資産額及び1株当たり当期純利益を算定しております。

12.当社は、2024年8月31日付で普通株式1株につき100株の株式分割を行っております。そこで、東京証券取引所自主規制法人(現 日本取引所自主規制法人) の引受担当者宛通知「『新規上場申請のための有価証券報告書(Ⅰの部)』の作成上の留意点について」(平成24年8月21日付東証上審第133号)に基づき、第19期の期首に当該株式分割が行われたと仮定して算定した場合の1株当たり指標の推移を参考までに掲げると、以下のとおりになります。なお、第19期から第21期の数値(1株当たり配当額についてはすべての数値) については、有限責任 あずさ監査法人の監査を受けておりません。

 

回次

第19期

第20期

第21期

第22期

第23期

決算年月

2020年2月

2021年2月

2022年2月

2023年2月

2024年2月

1株当たり純資産額

(円)

1,154.55

1,188.89

1,215.16

1,335.02

1,434.11

1株当たり当期純利益

(円)

68.80

34.34

26.28

130.05

99.09

潜在株式調整後

1株当たり当期純利益

(円)

1株当たり配当額

(円)

(1株当たり中間配当額)

(-)

(-)

(-)

(-)

(-)

 

 

 

2 【沿革】

当社は、インターネットの普及に伴い、大量・複雑なデータの中からユーザーが必要とする情報を取り出し、最適な形式で表示する技術に対する需要が拡大したことを受け、人々が情報やモノを見つける際、求めるものへ到達するための時間を短縮し、その精度を向上させることを通じてテクノロジーの力で世界を少しでも早く進歩させたい、また人々の意思決定を支え、フェアな世界の創出に力を注ぐことを通じて日本の信頼をベースにした文化を世界へ広げて行きたい、との思いを現実のものとするべく創業されました

 

設立以後の当社に係る経緯は、次のとおりであります。

 

年月

概要

2001年3月

新宿区新宿にフォルシア株式会社(資本金50,000千円)を設立

2002年12月

当社初めてのWebアプリケーション「おまかせ!じゃらんナビ」をリリース

2005年1月

Spookの第一号案件を獲得

2007年4月

事業拡大により、新宿区新宿(同区内)に本店を移転

2009年7月

事業拡大により、新宿区新宿(同区内)に本店を移転

2011年3月

「情報検索システム」特許を取得(特許第4707476号)

2016年2月

Great Place to Work® Institute Japan 2016年「働きがいのある会社」ランキング「ベストカンパニー」に選出

2016年9月

事業拡大により、新宿区新宿(同区内)に本店を移転

2017年9月

ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)の国際規格である「ISO/IEC 27001(JIS Q 27001)」認証を取得

2019年7月

ボールドライト株式会社の85%の株式を取得し子会社とする

2019年9月

新規事業であるSaaS型サービス(Masstery及びwebコネクト)の顧客向け販売開始

2020年3

webコネクトの第一号案件獲得

2022年7月

京都大学との共同研究に基づく、ダイナミックプライシングにかかる特許を取得(需要予測システム、価格決定システム、情報処理システムおよびコンピュータプログラム、特許第7109027)

2022年8月

子会社ボールドライト株式会社の全保有株式を売却

 

 

 

3 【事業の内容】

当社はデジタルビジネスプラットフォーム事業を展開し、膨大・複雑なデータから必要な情報を的確に抽出する検索テクノロジーを基盤としたシステム開発やサービス提供、コンサルティングを行っています。創業以来、情報検索の分野で高度な課題解決に取り組み、データ処理技術の研究を重ねてきました。その成果として技術基盤「Spook(スプーク)」を産み出しました。Spookは、膨大で複雑なデータを迅速かつ効率的に検索できる当社独自の技術であり、「データの整理・統合」「データ圧縮・軽量化」「データベース高速処理」「UI/UX最適化」といった要素技術を組み合わせ、データ検索を速く、賢く、無駄のない形で提供しています。幅広い検索条件に対応しながら高速かつ正確な結果を提供できる点がSpookの強みです。この技術を活用し、当社は複雑なデータを扱う大手旅行会社の予約サイトや、多数の商品を管理する専門商社のECサイトなど、高度なデータ処理が求められる業界でのデジタルビジネス強化に貢献しています。近年、当社のビジネス領域は「検索」からデジタルトランスフォーメーション(DX)分野へと拡大し、これまでに培った業界知見をもとに、顧客のビジネス変革を支援する事業展開を推進しています。特に、旅行・観光業界に向けては、旅行商品造成・販売プラットフォーム「webコネクト」を展開し、複数チャネルへのデータ連携やダイナミックプライシング対応など、事業者の多様な課題に応えています。オンライン販売比率の上昇や、パッケージツアーからダイナミックパッケージへの顧客ニーズの変化を追い風に、webコネクトの売上高・顧客数は大手・中堅旅行会社、鉄道事業者、会員制サービス事業者を中心に順調に増加しています。なお、ここでの会員制サービスとは、福利厚生サービス等で宿泊施設等の予約サービスを会員に対して提供する会社を指しております。

DX分野は企業の重要な課題として位置付けが高まっており、企業価値向上に寄与する取り組みとして投資が活発化しています。当社はこうしたDX投資が加速する分野に注力し、データクレンジングツール「Masstery(マスタリー)」をサービス展開することで、データの整備から一元管理、さらには高度なデータ活用までを支援しています。これにより、顧客の業務効率化や意思決定の精度向上を促進し、多様な業界にわたる新たな事業機会の創出を進めています。

 

 

(1) 事業の重点領域

DX分野における当社の重点領域は、創業当初から長く事業展開を進めてきた旅行・観光業界向けのサービス提供です。日時や場所、部屋タイプや食事条件、交通手段や経路などが組み合わされ、それらの在庫状況も刻一刻と変化する旅行業のデータは複雑で、取り扱いには深い業界知識が求められます。当社はオフラインからオンラインへと変わりゆく旅行業界のビジネス変革をいち早く察知し、料金・在庫がダイナミックに変動する旅行商品の高速検索、販売実績を基にした商品レコメンド、外部販売チャネルへのデータフィード、オンライン広告の運用サポート等を行ってまいりました。 旅行・観光業界へのサービス提供を通じて蓄積した技術・ノウハウの集大成として開発したプロダクトが、旅行商品造成・販売プラットフォーム「webコネクト」です。商品のオンライン販売に求められる素材登録(宿泊施設や交通手段、アクティビティなど、旅行商品の販売を構成する情報・在庫・料金等の登録)、検索、予約管理、電子クーポン発行、外部接続ゲートウェイといった機能群をモジュール化し、必要な機能全般をインフラも含めてサービス提供するSaaS型のビジネスモデルを採用することによって、顧客との強固なパートナーシップの構築並びに、安定した収益確保の両立を実現しています。

 


 

国内旅行市場はコロナ禍による低迷期から脱却し、2023年以降急回復を遂げています。政府主導での観光DX推進を追い風に、観光地までの交通手段と宿泊、観光スポットなどを最適に組み合わせてワンストップで検索・予約・決済等を完結させる「観光MaaS(Mobility as a Service)」の市場は急拡大すると予想されています。事業者間のデータ連携・共有ニーズが高まるなかで、鉄道事業者を始めとするMaaS関連事業者からのwebコネクトへの注目度は高まっており、当社の顧客層は更なる広がりを見せていくと想定しております。

 


 

 

(2) 収益構造

当社は、デジタルビジネスプラットフォーム事業の単一セグメントです。膨大・複雑なデータから必要な情報を的確に探し出す技術基盤「Spook」を基に顧客の課題解決を行う「ソリューション型サービス」と、顧客課題に向き合う中で得た技術・知見をノウハウとして蓄積し複数顧客が共通で抱える課題の解決策を当社が提供する共通基盤上で提供する「SaaS型サービス」という2つの軸で事業推進しています。ここでの「サービス」は、特定の契約形態を必ずしも意味するものではなく、顧客に対する価値提供を表現したものです。

当社の強みは、SaaSの導入スピードとコスト効率を最大限に活かしながら、各企業のニーズに柔軟に対応できるカスタマイズを提供できる点にあります。これにより、短納期での導入が可能になるだけでなく、企業の業務プロセスに最適化されたシステムを提供できています。この「ハイブリッドモデル」は、当社の競争優位性を支える重要な要素であり、競合との差別化を実現しています。 当社のビジネスは、売り切り型の受託開発でもなく、先行投資型の一般的なSaaSでもありません。ライセンスやサービス提供の形で、顧客の課題解決に取り組むたびに、その技術を資産として蓄積しています。これにより、継続的な技術の進化と安定的な収益の確保を両立した独自のビジネスモデルを構築しています。

 

① ソリューション型サービス

当社のソリューション型サービスは、技術基盤「Spook」を活用し、膨大かつ複雑なデータを高速かつ正確に処理することで、顧客が直面する特有の問題に対する効果的な解決策を提供しています。例えば、大手旅行会社の予約サイトや、膨大な商品を扱う専門商社のECサイトなど、複雑なデータを扱う企業に対して、デジタルビジネスを強化する検索ソリューションを提供し、ユーザーの利便性向上に貢献しています。また、Spookの高い拡張性により、ビジネス拡大に伴う安定したシステム運用を実現し、顧客の長期的な競争力維持をサポートします。

ソリューション型サービスは、システム開発にかかる開発費とリリース後の運用・保守費、さらには当社が保有する技術・ノウハウを継続使用することについての対価(使用許諾費)によって構成されています。Spookは顧客の自社サーバーやデータセンターに設置される「オンプレミス型」の形態で提供され、企業ごとのカスタマイズ要件に柔軟に対応できる仕組みを採用しています。

一般的な受託開発でのビジネスモデルは、システムリリース時点の売上が収益の大半を占め、取扱案件数や規模に左右されやすいという特性があります。また、顧客との接点もシステムリリース以降は希薄になりがちです。それに対し、当社のビジネスモデルは独自の技術基盤「Spook」に基づく開発の成果物を当社の資産とし、ライセンス型で提供するビジネスモデルを確立してきました。このビジネスモデルによって、課題解決の積み重ねが技術資産として蓄積されていくストック型の事業構造を実現しています。 

 

② SaaS型サービス

当社のSaaS型サービスは、蓄積された技術と知見を活かし、複数の顧客に共通する課題に対して汎用的な解決策を提供しています。

旅行・観光業界向けに開発したwebコネクトは、素材登録、検索、予約管理、電子クーポン発行、外部接続ゲートウェイなど、総合的なEコマース機能を備え、日本国内の多くの旅行会社に導入されています。SaaS型の提供形態により、顧客は自社でサーバーを設置・管理する必要がなく、インターネット経由でサービスを利用できます。また、複数の販売チャネルへのデータ連携やダイナミックプライシングに対応し、在庫管理や販売業務を含むビジネスオペレーション全体の効率化を実現します。

当社のSaaS型サービスの強みは、一般的なSaaSビジネスに見られる画一的な便益提供ではなく、顧客要望に応じた柔軟かつ機動的なカスタマイズ対応を含めた総合的な便益提供にあります。提供する機能ごとに設定された初期設定費、月額サービス利用料に加え、顧客ニーズに応じた個別カスタマイズ部分の開発費・運用保守費も収受する「SaaS型とカスタマイズ型を融合させたハイブリッド型」のビジネスモデルです。

一般的なSaaSは、初期費・月額費が比較的低価格で導入のハードルが低い一方、開発費を回収するために同一サービスを多数販売する必要があり、サービスの陳腐化や顧客の離脱リスクが高いという特性があります。これに対し、当社では、顧客の要望に応じたカスタマイズ対応を行うことで、顧客ごとに最適化したサービスを提供しています。この「ハイブリッドモデル」は、SaaSとしての継続的な売上に加えて、カスタマイズや機能追加によるアップサイドも見込めるため、事業の成長と収益の安定化を両立するビジネスモデルです。

 

 


 

当社ビジネスと一般的なSaaS・受託開発におけるビジネスモデル比較図
※右の図は、収益発生タイミング(初期・月額)イメージ

 

 

当社の事業成長モデルは、ソリューション型サービスを課題発掘及び事業推進の「エンジン」、SaaS型サービスを事業拡大の「翼」として、デジタルビジネスのプラットフォーム化を進めることにあります。ソリューション型サービスでは、顧客固有のニーズや課題に柔軟に対応し、業界特有の知見と独自の技術基盤を活かして、顧客が真に必要とする機能やシステムを提供しています。こうして積み重ねた課題解決の経験やノウハウは、技術資産として蓄積され、複数顧客の共通課題に対応する汎用的なSaaS型サービスへと展開されています。これにより、当社のビジネスは継続的な進化と改善を実現しつつ、定期的な収益を生み出すリカーリング型の収益モデルを構築しています。

 


 

当社はこれまで、様々な顧客課題に直面し、共に解決策を考え、数々の壁を乗り越えてきました。この経験を通じて得た最も大きな教訓は、顧客と協働し並走する「パートナー」としての関係性が、単なる受発注の関係では生み出せない付加価値を創造するということです。当社のソリューション型サービスは、顧客ごとの異なるニーズや課題に柔軟に対応し、業界特有の知見と独自の技術基盤を活かして、顧客が本当に必要とする機能やサービスを提供しています。また、SaaS型サービスでは、複数顧客の共通課題に対応する汎用機能を提供しつつ、顧客の成長段階に応じた個別対応も行い、継続的な成長と価値の創出を実現しています。顧客と共に問題解決に取り組み、持続的な関係を築くことが双方の成長と信頼を育んでいく。これこそが、当社が活動を続ける上で最も大切にしている「フェアネス」の根幹です。

これまで当社は安定成長を重視し、データ処理ニーズの高い顧客層に向けたソリューション型サービスを通じて市場シェアを拡大してきました。また、既存顧客へのクロスセルや、当社の技術・ノウハウを新規顧客に展開することで、売上・利益の向上も達成しています。今後はSaaS型のビジネスモデルを採用したサービス群を拡大し、精度の高い需要予測、需給状況に応じたダイナミックプライシング、流通チャネルの最適化など、より広範なデータ活用ニーズに対応することで、持続的な成長を目指していく計画です。

 

(3) 基盤技術及びサービスの特徴

① ソリューション型サービス
a 技術基盤「Spook」

フォルシアの技術の特異性、それは独自の技術基盤「Spook」です。情報の全体像を俯瞰し、目的とする情報にストレスなくたどり着くための独自技術を磨き上げ、一般的な検索エンジンとは異なる切り口でのデータ処理を行っています。

当社のSpookは、膨大かつ複雑なデータを迅速かつ効率的に検索する独自の技術であり、特に多様な検索条件が組み合わさる場面でその真価を発揮します。この技術は、大量のデータであっても効率的に処理し、必要な情報を即座に抽出する優れた検索能力を備えています。また、日時や場所、規格など複数の条件が同時に含まれる場合でも、柔軟かつ正確に対応できる高度な検索が可能です。さらに、業界ごとに異なる複雑なデータ構造にも適応できる点が特長です。

一般的な検索エンジンは、少量かつシンプルなデータを対象に、特定キーワードに基づいた簡易な情報検索に最適化されています。しかし、この手法は、条件が少なくデータ項目が限定的な場合にのみスムーズに機能します。一方、当社のSpookは、多層構造を持つデータ環境に対応できるよう設計されており、膨大・複雑なデータ制御が求められる場面で優れた性能を発揮します。一般的な検索エンジンが苦手とする場面でも、Spookは迅速かつ正確に必要な情報へアクセス可能です。

 

 

 


 

 

Spookの最大の特徴は、一般的な検索エンジンとは異なる検索アプローチにあります。通常の検索エンジンはキーワードを軸に段階的に情報を絞り込む「ドリルダウン型」の手法を採用していますが、Spookは「条件を軸にした多方向からの属性検索」を採用しています。この方式により、情報の全体像を俯瞰しながら瞬時に絞り込むことが可能です。この違いにより、一般的な検索エンジンでは対応が難しい高度な検索精度が求められる場面でも、Spookは強力な検索ツールとして機能します。

 


 

Spookの技術基盤の最大の強みは、「データの圧縮・軽量化」と「データベース(DB)高速処理技術」にあります。データが軽量化されることで検索負荷が軽減され、複雑なデータも高速で処理することが可能です。また、独自のフレームワークにより、処理された検索結果をエンドユーザーにストレスなく届けることができます。この軽量化と高速処理の実現こそが、Spookの最大の価値です。そのため、データ量が増え、検索条件が複雑になるほど、Spookの性能が際立ちます。さらに、Spookは「データの整理・統合」や「UI/UXの最適化」といった要素技術を組み合わせ、膨大なデータから必要な情報をスムーズに抽出します。これにより、ユーザーは膨大な情報の中から目的の情報にストレスなくたどり着くことができます。

(注)UIとは、ユーザーインターフェース(User Interface)の略であり、ユーザーが操作する画面等のユーザーが目にする要素のことであり、UXとは、ユーザーエクスペリエンス(User Experience)の略であり、ユーザーが商品やサービスを通じて得られる体験を指します。

 


 

 

当社の検索技術が最も力を発揮しているのは、旅行・観光業界です。創業当初から「検索」を強みとし、業界に深く関わりながら個別の顧客課題に対応してきました。その経験を活かし、要素技術の開発を進め、業界全体の共通課題にも応えています。

 例えば、旅行予約サイトにおける宿泊施設検索では、日時や場所、部屋タイプなど詳細な希望条件を設定しつつ、条件の変更を行ってもその設定を維持したまま迅速に結果を表示します。さらに、リアルタイムで変動する空室情報を取り込み、予約可能なものだけを絞り込む高度な検索制御も行っています。また、宿泊施設検索における「先回り検索」も、当社技術の優位性を活かした機能の一つです。ユーザーが指定していない条件を先読みして検索を行い、目的地や日付、人数のクリックに連動して件数を瞬時に変動させます。これにより、ユーザーは検索結果の表示を待つことなく、必要な情報を即座に把握できます。このように、当社はユーザーの利便性を大幅に向上させる検索体験を提供しています。

 


宿泊施設検索における「先回り検索」のイメージ

 

 

Spookは、主に大手開発会社が構築する大規模システムの一部として導入されるケースが多く、特に膨大で複雑なデータを迅速に検索・処理する高機能な検索基盤として活用されています。

旅行・観光業界以外に関して、専門商社やメーカーでは、多岐にわたる製品規格や詳細な仕様の管理が必要とされます。また、EC業界では膨大な商品数と商品ごとの詳細な付随情報を迅速に検索する場面でSpookの性能が発揮されます。さらに、会員制サービス事業においては、会員ランク等に応じた商品や価格の表示制御が求められ、Spookの柔軟なデータ処理能力が重要な役割を果たしています。

 


当社の主要取引先業界(当社取引実績(2024年2月期)より)

 

※「会員制サービス」は福利厚生サービスを提供する企業や共済組合等に対する売上高を集計。

 「EC」はeコマースを主業とする事業者に対する売上高を集計。

 「旅行・観光」には専業旅行会社以外の企業が手掛ける、旅行に関わる事業に対するサービス提供の対価を含む。

 

また、当社ではDX対応領域での技術開発にも積極的に取り組んでいます。特に、ビジネスインキュベーションの観点から、データの整備から活用までの幅広い事業変革ニーズに応えるため、AIを活用した画像認識や、用途や形状が似た商品を自動的に分類するカテゴリ自動分類技術など、膨大で複雑なデータ処理を実現する先端技術を開発しています。これにより、新たな市場機会を創出し、顧客の競争力強化に寄与しています。

 

 

② SaaS型サービス
a 旅行・観光業界向け商品販売プラットフォーム「webコネクト」

webコネクトは、在庫と料金が動的に変動するダイナミックプライス型商品におけるリアルタイムな料金計算と高速な一覧表示を実現する旅行・観光業界向けのSaaS型サービスです。

基本的に他のシステムに依存せず独立して機能するよう設計されており、クラウド上で提供されるため、企業が迅速にシステムを利用開始できます。ただし、既存のシステムとのデータ連携やチャネル統合が必要な場合には、他の大手開発会社が提供するシステムと接続して活用することも可能です。また、国内・海外の多種多様な素材提供会社との連携によって動的な商品登録(造成)・商品検索・商品流通を、柔軟かつスピーディに実現します。ここでの素材提供会社とは、宿泊施設や交通手段、アクティビティなど、旅行商品を構成する要素を提供する事業者を指します。webコネクトを活用することで旅行会社、鉄道会社をはじめとする旅行・観光商品を販売する事業者や素材提供会社は、例えば目的地までの交通手段(航空・鉄道)と、宿泊、アクティビティ、現地交通(レンタカー等)の手配が一括で済むような仕組みをスムーズかつローコストで導入することができます。

当社では、原則として60カ月の継続利用を前提に初期開発費及び月額費(提供する機能に応じて算定された固定のサービス利用料)を収受し、顧客の要望に応じたカスタマイズ対応を行うことで、顧客ごとに最適化したサービスを提供しています。これにより、顧客との強固なパートナーシップの構築と安定した収益確保を実現しています。 

 


 

b データクレンジングツール「Masstery」

MassteryはECサイト等の運用の前提となる、商品データ等の整備・統合作業を自動的に行うデータクレンジングツールです。商品の仕様が複雑であり、仕入先が多岐にわたるECサイト運営事業者に対して、商品データ整備の仕組みを提供しています。データ整備作業の非効率性、属人化、商品フォーマット整備における手作業の発生といったECサイトの運営にあたって担当者が課題と感じる点を解消し、さらにカテゴリ付与の自動化等の効率化を促進する機能も搭載しています。Massteryがターゲットとするのは、Spook導入顧客である専門商社の取引先となる企業群(メーカー・流通・小売業等)です。かかる企業においては、コロナ禍による業務プロセス変革の意識の高まりを受け、積極投資への気運が高まっております。

 

c Googleホテル広告導入支援サービス

Googleホテル広告はGoogle検索、Googleマップにホテルの空き状況と料金を表示するものです。ホテルの自社公式サイトで部屋のタイムリーかつ正確な空き状況や料金を表示することで、自社公式サイトに顧客を誘導し、予約の獲得につなげる広告サービスです。当社は旅行商品情報の検索技術力とその豊富な実績により、「Google ホテル広告」サービスを日本で展開していく上でのパートナーとして、2015年11月にGoogleホテル広告に関する「インテグレーションパートナー」に認定されました。公式パートナーとして、本プログラムで必要となるデータフィードや広告運用・入札管理の支援サービスを提供しています。

 

 

(4) 事業系統図

当社の事業系統図は以下の通りであります。

 


 

4 【関係会社の状況】

該当事項はありません。

 

5 【従業員の状況】

(1) 提出会社の状況

 

 

 

 2024年10月31日現在

従業員数(名)

平均年齢(歳)

平均勤続年数(年)

平均年間給与(千円)

130

36.2

5.2

6,918

 

(注) 1.従業員数は就業人員であり、臨時雇用者数(アルバイト、パートタイマーを含む。)は、その総数が従業員数の100分の10未満であるため、記載を省略しております。

2.平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

3.当社はデジタルビジネスプラットフォーム事業の単一セグメントであるため、セグメント別の従業員の記載を省略しております。

 

(2) 労働組合の状況

当社において労働組合は結成されておりませんが、労使関係は円満であり、特記すべき事項はありません。

 

(3) 管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異

「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)及び「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定による公表項目として選択していないため、記載を省略しております。