第二部【企業情報】

第1【企業の概況】

1【主要な経営指標等の推移】

(1) 連結経営指標等

回次

第13期

第14期

決算年月

2021年12月

2022年12月

売上高

(千円)

3,856,213

経常利益

(千円)

136,728

親会社株主に帰属する当期純利益

(千円)

25,503

包括利益

(千円)

25,503

純資産額

(千円)

155,618

総資産額

(千円)

1,736,446

1株当たり純資産額

(円)

18.31

1株当たり当期純利益

(円)

3.00

潜在株式調整後1株当たり当期純利益

(円)

自己資本比率

(%)

9.0

自己資本利益率

(%)

17.9

株価収益率

(倍)

営業活動によるキャッシュ・フロー

(千円)

124,669

投資活動によるキャッシュ・フロー

(千円)

14,224

財務活動によるキャッシュ・フロー

(千円)

11,088

現金及び現金同等物の期末残高

(千円)

1,195,069

従業員数

(人)

223

 (注)1.当社は、第13期より連結財務諸表を作成しております。

2.当社は、第14期連結会計年度において、連結子会社であった株式会社WhiteBoxを吸収合併したことにより、連結子会社が存在しなくなったため、連結財務諸表を作成しておりません。そのため、第14期の連結会計年度に係る主要な連結経営指標等の推移については記載しておりません。

3.潜在株式調整後1株当たり当期純利益については、第13期は、潜在株式が存在しませんので記載しておりません。

4.株価収益率については、当社株式は非上場であるため、記載しておりません。

5.第13期の連結財務諸表については、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」(昭和51年大蔵省令第28号)に基づき作成しており、金融商品取引法第193条の2第1項の規定に基づき、ESネクスト有限責任監査法人により監査を受けております。

6.従業員数は就業人員数(当社グループから社外への出向者を除き、契約社員を含む。)であり、臨時雇用人員(パートタイマー、人材会社からの派遣社員を含む。)はその総数が従業員の100分の10未満のため記載を省略しております。

7.当社は、第14期連結会計年度において、連結子会社であった株式会社WhiteBoxを吸収合併しております。参考情報として、第14期の連結経営指標の数値を掲げると以下のとおりであります。なお、以下の連結経営指標の各数値は、2022年1月1日から2022年6月30日までの連結損益計算書に、2022年7月1日から2022年12月31日までの当社の損益計算書を合算して算出したものであります。下記の売上高、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益に係る各数値については、ESネクスト有限責任監査法人による監査を受けておりません。

 

第14期

2022年12月期

売上高    (千円)

4,923,376

経常利益   (千円)

312,730

親会社株主に帰属する

当期純利益  (千円)

265,577

 

(2) 提出会社の経営指標等

回次

第10期

第11期

第12期

第13期

第14期

決算年月

2018年12月

2019年12月

2020年12月

2021年12月

2022年12月

売上高

(千円)

2,488,025

3,296,874

3,463,562

3,876,332

4,939,952

経常利益

(千円)

55,249

48,301

69,417

70,591

332,463

当期純利益又は当期純損失(△)

(千円)

39,128

33,187

93,006

28,926

285,311

持分法を適用した場合の投資利益

(千円)

資本金

(千円)

50,000

50,000

50,000

50,000

50,000

発行済株式総数

(株)

850

8,500,000

8,500,000

8,500,000

8,500,000

純資産額

(千円)

183,616

216,812

123,805

152,723

438,430

総資産額

(千円)

974,941

1,164,172

1,576,157

1,733,537

1,736,119

1株当たり純資産額

(円)

216,019.16

25.51

14.57

17.97

51.53

1株当たり配当額

(円)

(うち1株当たり中間配当額)

(-)

(-)

(-)

(-)

(-)

1株当たり当期純利益又は1株当たり当期純損失(△)

(円)

46,033.68

3.90

10.94

3.40

33.57

潜在株式調整後1株当たり当期純利益

(円)

自己資本比率

(%)

18.8

18.6

7.9

8.8

25.2

自己資本利益率

(%)

23.9

16.6

20.9

96.6

株価収益率

(倍)

配当性向

(%)

営業活動によるキャッシュ・フロー

(千円)

92,320

投資活動によるキャッシュ・フロー

(千円)

30,992

財務活動によるキャッシュ・フロー

(千円)

228,164

現金及び現金同等物の期末残高

(千円)

1,067,496

従業員数

(人)

157

183

186

217

245

 (注)1.持分法を適用した場合の投資利益については、当社は関連会社を有していないため記載しておりません。

2.1株当たり配当額及び配当性向については、配当を実施していないため記載しておりません。

3.潜在株式調整後1株当たり当期純利益については、第10期及び第13期は、潜在株式が存在しませんので記載しておりません。第11期及び第14期は、潜在株式は存在するものの、当社株式は非上場であるため、期中平均株価が把握できませんので記載しておりません。第12期は、潜在株式が存在するものの、1株当たり当期純損失であり、また、当社株式は非上場であるため、期中平均株価が把握できませんので記載しておりません。

4.第12期の自己資本利益率については、当期純損失を計上しているため、記載しておりません。

5.株価収益率については、当社株式は非上場であるため、記載しておりません。

6.第13期は連結財務諸表を作成しておりますので、第13期の持分法を適用した場合の投資利益、営業活動によるキャッシュ・フロー、投資活動によるキャッシュ・フロー、財務活動によるキャッシュ・フロー並びに現金及び現金同等物の期末残高は記載しておりません。また、第10期、第11期及び第12期については、キャッシュ・フロー計算書を作成していないため、キャッシュ・フローに係る項目については、記載しておりません。

7.従業員数は就業人員数(当社から社外への出向者を除き、契約社員を含む。)であり、臨時雇用人員(パートタイマー、人材会社からの派遣社員を含む。)はその総数が従業員の100分の10未満のため記載を省略しております。

8.第12期については、子会社の債務超過に伴う子会社株式評価損及び出資金に係る減損損失を計上したことにより、当期純損失を計上しております。

9.第13期及び第14期の財務諸表については、「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」(昭和38年大蔵省令第59号)に基づき作成しており、金融商品取引法第193条の2第1項の規定に基づき、ESネクスト有限責任監査法人の監査を受けております。なお、第10期、第11期及び第12期については、「会社計算規則」(平成18年法務省令第13号)の規定に基づき算出した各数値を記載しております。また、当該各数値については、金融商品取引法第193条の2第1項の規定に基づくESネクスト有限責任監査法人の監査を受けておりません。

10.当社は、2019年7月30日付で株式1株につき10,000株の株式分割を行っております。

そこで、東京証券取引所自主規制法人(現 日本取引所自主規制法人)の引受担当者宛通知「『新規上場申請のための有価証券報告書(Ⅰの部)』の作成上の留意点について」(2012年8月21日付東証上審第133号)に基づき、第10期の期首に当該株式分割が行われたと仮定して算出した場合の1株当たり指標の推移を参考までに掲げると、以下のとおりとなります。

なお、第10期、第11期及び第12期の数値(1株当たり配当額については全ての数値)については、ESネクスト有限責任監査法人の監査を受けておりません。

回次

第10期

第11期

第12期

第13期

第14期

決算年月

2018年12月

2019年12月

2020年12月

2021年12月

2022年12月

1株当たり純資産額

(円)

21.60

25.51

14.57

17.97

51.53

1株当たり当期純利益又は1株当たり当期純損失(△)

(円)

4.60

3.90

△10.94

3.40

33.57

潜在株式調整後1株当たり当期純利益

(円)

1株当たり配当額

(円)

(うち1株当たり中間配当額)

(-)

(-)

( -)

(-)

(-)

11.「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を第14期の期首から適用しており、第14期以降に係る主要な経営指標等については、当該会計基準等を適用した後の指標等となっております。

 

2【沿革】

年月

概要

2009年1月

東京都渋谷区道玄坂にシステム開発等を目的として株式会社情報戦略テクノロジーを設立

2010年4月

本社を東京都渋谷区渋谷に移転

2011年8月

本社を東京都渋谷区円山町に移転

2013年3月

本社を東京都渋谷区恵比寿に移転

2013年11月

プライバシーマークを取得

2014年6月

東京都渋谷区広尾にITコンサルティング等を目的として子会社「株式会社coolest」を設立(2014年10月「株式会社情報戦略パートナーズ」に社名変更、2019年4月「株式会社iforward」に社名変更、2021年5月吸収合併)

2015年8月

本社を東京都渋谷区東に移転

2016年6月

東京都渋谷区東にECショップの運営等を目的として子会社「株式会社トライアングルファースト」を設立

2018年8月

オフショア開発を目的として子会社「Information Strategy and Technology Vietnam Co., Ltd」を設立(2023年8月清算結了)

2019年11月

「株式会社トライアングルファースト」を「株式会社WhiteBox」に社名変更し、2020年1月より事業目的をクラウドサービスの提供等に変更

2020年1月

パートナー人材の獲得を目的として、ITエンジニア・クリエイター向け賃貸住宅事業を展開する株式会社CEspaceの第三者割当増資を引き受け資本業務提携

2020年4月

システム開発企業向けオープンプラットフォームサービス「WhiteBox」の実証実験を開始

2020年9月

株式会社WhiteBoxが「WhiteBox」β版をリリース

2021年1月

株式会社WhiteBoxが「WhiteBox」サービスを正式開始

2021年9月

株式会社WhiteBoxが「WhiteBox」の有償化を開始

2022年7月

株式会社WhiteBoxを吸収合併

2022年7月

北九州市におけるDXの推進等を目的として、北九州市及び株式会社CEspaceとの間で協定書を締結

2022年7月

デジタル田園都市国家構想に係る地方公共団体からの業務受託等を目的として、東武トップツアーズ株式会社及び株式会社CEspaceとの間で業務提携

 

3【事業の内容】

(1)ミッション

 今日、全ての企業にとって、情報システムを活用しビジネス自体を変革させていく「DX(デジタルトランスフォーメーション)(*1)」が不可欠となっています。企業の命運を握る「DX」ですが、これまでのシステム開発のやり方や常識のままでは成功しないと当社は懸念しております。

 システム開発に携わる企業が1次、2次、3次等と多層になるような開発体制で、また、発注者である顧客や上位にいるシステム開発企業が上、受注する側のシステム開発企業が下という「外注」「下請け」意識で、顧客が本当に必要とするシステムを作成できているでしょうか。そもそも、日本では常識になっている多重下請け構造を疑ってみることが必要ではないでしょうか。

 多層に分かれたシステム開発においては一部の開発工程にしか携われないエンジニアが増え、本来「DX」の担い手であるエンジニアたちの成長が阻害され、エンジニアが使い捨てられているのではないでしょうか。開発工程の分業によってエンジニア全体の能力の底上げがないため、優秀なエンジニアに仕事が集中し疲弊してしまっている現実があり、エンジニアとしての明るい未来像を描くことができなくなっているように見受けられます。エンジニア出身の経営者がマイクロソフト、グーグル、フェイスブックといった世界的サービスを生み出したような、エンジニアが活躍する環境を日本ではまだ作れていません。

 当社はシステム開発におけるこれらの課題を「なくしていく」ことで顧客の「DX」を実現し、未来に向けて日本の産業や社会を力強くしていきたいと考えており、企業理念として「すべてを、なくしていく。」と掲げております。

 

「すべてを、なくしていく。」

・私たちは、システム開発における多重下請け構造をなくしていきます。

 多重下請け構造の弊害から生まれる巨大なシステム障害と、ユーザーの生活に寄り添っていないサービス開発をなくしていきます。そのシステム障害の修復や、サービスをつくり直すために捻出される本来必要ではなかった莫大なカネをなくしていきます。

・システムエンジニアの使い捨てという発想をなくしていきます。

 優秀なシステムエンジニアが育たないという環境をなくしていきます。先進国では優れたシステムエンジニアが経営者になっていく。そんな環境が日本では少ないという事実をなくしていきます。優秀な人たちがシステムエンジニアという仕事を選ぼうとしていない状況をなくしていきます。

・「要件定義のウソ」をなくしていきます。

 時代も、使う人も常に変化していく中で、システムに完成はありません。「とりあえず要件定義に沿うために」と、中途半端で帳尻だけを合わせるようなデタラメなシステムをなくしていきます。

・外注という概念をなくしていきます。

 外注により生まれる上下関係からコミュニケーションやアイディアが滞ってしまう機会をなくしていきます。相手の言っていることが明らかに間違っているとわかりながら、それでも「はい、はい」とごまかしたまま進行していくような不健全なチームをなくしていきます。

・世界の基盤は、システムでできている。

 企業活動のすべてのシステムが、そしてシステムに携わるすべての人が、健全に懸命に誠実に活躍できるならば、企業が提供するサービスや商品や施設などを享受するすべての人の生活と未来が、確実に豊かに、幸せになっていく。

・1次請け、2次請け、3次請けという構造から、0次DXへ。

 ダイレクトに相談され、私たちと1チームになりカタチにしていく。つねに相談と提案が繰り返されながら、改善と改良が積み重なり、進化し続けていく。

・多重構造と下請け。

 その歪んだ発想を常識にしてしまっている現状を、私たちはなくしていきます。

・システム開発におけるすべての課題をなくし、あらゆる限界を超えていくことで、この国の、そしてこの国で生きていく人の確実な豊かさと、幸せをつくっていきます。

・企業と、ともに。

 

 当社は、システム開発における課題の解決やあるべき姿の実現を目指し、顧客とエンジニアが協働して進めるシステム開発のあり方を「0次システム開発」と称して顧客にサービス提供しており、「0次システム開発」によって顧客のDXを成功に導くことを「0次DX」と呼んでおります。

 

(2)事業の特徴

 当社は、顧客のDXを実現する「0次システム開発」、及びシステム開発業界のDXを実現する「WhiteBox」サービスから成る、DX関連事業を展開しております。DX関連事業の単一セグメントであるため、セグメント毎の記載はしておりません。

 当社の事業の特徴は、以下のとおりであります。

 

(a)アジャイル開発(*2)としての「0次システム開発」

 「0次システム開発」は、顧客とエンジニアが、提案・相談を繰り返しながら協働して開発していく、ビジネスの状況変化に対応して変更可能なアジャイル型の開発手法です。

 IT業界には、多重下請け構造という、顧客から委託された業務を1次請け企業が、2次請け企業、更にその下層の3次、4次請け企業に流していくピラミッド型構造が存在しております。多重下請け構造に基づくシステム開発では、最初に顧客と1次請け企業が決めた要件どおり開発し納品する、ビジネスの状況変化に対応できない後戻りが難しいウォーターフォール型の開発手法(*3)が採られています。

 ウォーターフォール開発においては、長期間に亘る開発の最終的な成果物の検収時に要件と合致しない箇所が発見されて、システム開発企業の負担で修正を求められることがあります。その場合、契約上の納期を満たせないことにもなりかねず、開発期間に多くのバッファを見積り、その分のエンジニア人件費が上乗せされるため、顧客に必要以上のコスト負担を求めているのが一般的です。このことが、顧客のIT投資効率を損なう要因の一つであると当社は考えております。

 

 それに対し、アジャイル型の開発手法のメリットは、以下のとおりです。

①「作っては見せ」を繰り返しながら開発を進めていくため、詳細な要件定義が必要なく、開発・改善のハイスピード化が図れる。

②「お客様の要望どおり作りましたという証拠」としてのドキュメントが不要或いは最小限になるため、システムの開発・改善に時間及びコストを集中できる。

③重要度が低い部分も含め全てテストし尽くすのではなく、必要十分なテストを都度行いながら開発を進め、不具合が発生したら即対応するスタイルのため、余計なテストコストをカットできる。

 

 ウォーターフォール開発とアジャイル開発の一般的な違いは、以下のとおりです。

 

ウォーターフォール開発

アジャイル開発

契約形態

請負契約

準委任契約

開発スタートまで

要件や成果物を全て明確にしてからスタート

要件が概ね決まったものからスタートできる

追加の要望がある場合

見積が必要

追加費用が必要

見積不要

工数内で収まれば追加費用は不要

成果物の確認

開発終盤まで確認不可

随時可能

開発体制

請け負った開発規模に必要なだけの体制を一定期間固定的に用意

最小1ヶ月単位で体制を柔軟に変更可能

 

 ビジネス状況に合わせてシステム及びそれに基づくビジネスモデルを変化し続けられる企業が勝つDXの時代により必要なのは、多重下請けによるウォーターフォール型のシステム開発ではなく、アジャイル型のシステム開発であると考えております。

 

 なお、アジャイル開発が直ちに「0次」でのシステム開発を意味するわけではなく、発注者/受注者の関係に止まって一方向の作業依頼によって1次請けのシステム開発を行っている限り、「0次システム開発」とは言えないと当社は考えております。当社においても外部の知識・ノウハウの活用及び人的リソースの確保のため、システム開発業務の一部を信頼できる外部委託先(パートナー)とともに実施することがありますが、そのような発注者/受注者の立場を超えて、顧客の社員と当社エンジニア及びパートナー が協働して業務上の課題を解決することで、顧客におけるシステム開発の「内製」を実現するのが当社の「0次システム開発」です。「内製」とは、事業会社がシステム開発会社任せにせず自ら主導的にシステム開発を推進することを指しています。当社は顧客の「DX内製」を支援するにあたり、第三者的な受託者という意識ではなく、顧客との間で相談・提案を繰り返しながら協働してシステム開発を進めることを特徴としており、それを「1次」請けを超えた「0次」と表現しております。

 

 そのため、「0次システム開発」においては、顧客と当社エンジニアとの関係だけでなく、当社エンジニアとパートナーとの関係も、多重下請け構造における発注者から受注者への一方向の作業依頼関係ではなく、お互いの提案・相談を前提とする対等なパートナー関係を志向しています。

 

 

(b)上流から下流まで一気通貫でのサービス提供

 一般的な1次請けの開発では、依然として、あくまで顧客が要件定義するのを手伝うのに止まっており、業務・システム要件に踏み込んで主体的な提案を行うことが少ないように見受けられます。当社の「0次システム開発」では、業務上の課題に対して主体的な提案を行っており、ITコンサルティングと呼ぶことも可能なサービスです。

 一方、ITコンサルティング会社は、自社内でシステム開発まで担うことは少なく、顧客との間で決めた要件に基づいてシステム開発企業を2次請けとして使用する点において、対等なパートナー関係になく、「0次システム開発」とは異なります。DXの普及に伴い、ビジネスコンサルティング会社がITコンサルティングに進出するケースが増えていますが、ビジネスコンサルティング会社はシステムに精通していない場合もあり、実際のシステム開発の段階に移行してから様々な課題に直面し、提案どおりの実現が困難になるケースも少なくないように見受けられます。

 また、多くの1次請け企業はシステム開発のベースとなる自社開発製品や他社開発ソフトウェア・サービスの販売代理を併せて行っていることから、自社取扱製品・商品の導入を優先するため中立的な提案をすることは難しいのに対し、当社は自社製品を持たず、また他社の販売代理店にはなっていないため、顧客の立場に立った提案が可能です。

 当社はITコンサルティングからシステム開発までを一気通貫でサービス提供するための優秀なエンジニアを抱え、顧客と協働して業務上の課題を解決することのできるシステム開発企業であると考えております。

 

 なお、2023年12月現在、新卒で入社した1年目のエンジニアを除く社員エンジニアの1人当たり平均月間売上高(人月単価)は116万円を超えておりますが、依然として大手ITコンサルティング会社と比べて低く、提供価値に見合う金額を頂けていないと認識しており、役割に応じた単価設定を継続的に上げていく考えでおります。

 

(c)営業力があるシステム開発企業

 IT業界の案件獲得は1次請けシステム開発企業(SIer)経由が主流です。

 国内には21,953社(出所:経済産業省「2018年 特定サービス産業実態調査報告書 ソフトウェア業,情報処理・提供サービス業及びインターネット附随サービス業編」)のシステム開発企業が存在していますが、エンドユーザー企業の事業部門の担当者が1社1社調べて適切なシステム開発企業を探すことは非常に手間のかかる作業であり、あまり現実的ではありません。そのため、エンドユーザー企業は既に取引のある1次請け企業にコンタクトを取り、それを受けて1次請け企業が定期的な訪問やコンタクトを受けている2次請け企業の中から顧客(エンドユーザー)の要望に対応可能な外部委託先を選定するというのが、システム開発の受発注において一般的に見受けられる流れであり、多重下請け構造を生じさせております。3次請け以降のシステム開発企業では、商流の上位にいる企業から電子メールで回ってくる提案依頼案件に自社のエンジニアをアサインし、リソースが足りなければ単価の部分を書き換えて他の企業に案件情報を流してリソースを調達するケースもあります。

 

 当社は、エンジニアの待遇・市場価値を上げることを通じて優秀な人材がエンジニアを目指す社会を実現し、そのことにより日本の国際競争力を回復・向上させるために、各業界のリーディングカンパニーに集中して営業を行っております。「0次システム開発」の取引先は2022年時点で99社であり、取引先の業界構成は以下のとおりです。

 

 

(取引先の業界構成)

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 当社のようにエンドユーザー企業に自らアポイントを取って新規開拓営業を行い、直取引を獲得するシステム開発企業は比較的少ないものと認識しております。多くのシステム開発企業は企業規模の拡大を目指さない限り、ある程度継続的な受注が見込めることから、プッシュ型の営業は積極的に行わず、Webでの情報発信、セミナー開催、イベント出展等を通じたプル型のマーケティング活動を中心に行っているものと当社は考えております。当社は、業界改革のために企業規模の拡大を志向していることから、空き稼働が見込まれるエンジニアの稼働を埋めるためという受動的な営業ではなく、絶えず積極的な営業活動を推進しております。

 

(d)エンジニアの就業環境

 当社は、「すべてを、なくしていく。」という企業理念を掲げており、エンジニアについても以下の事項を掲げております。

・システムエンジニアの使い捨てという発想をなくしていきます。

・優秀なシステムエンジニアが育たないという環境をなくしていきます。

・先進国では優れたシステムエンジニアが経営者になっていく。そんな環境が日本では少ないという事実をなくしていきます。

・優秀な人たちがシステムエンジニアという仕事を選ぼうとしていない状況をなくしていきます。

 

 そのため、当社はエンジニアの就業環境の整備を以下のとおり進めており、就業環境の整備により優秀なシステムエンジニアが多く採用できるよう、且つ長く就業できるよう努めております。

・平均年収704万円(2023年12月期、2023年新卒を除く)(*4)

・実績・行動・努力を漏らさず反映できるよう、細かく評価項目を設定した評価制度。

・マネジメント職以外にもスペシャリスト、またその知見を活かしエンジニア以外の道も広く用意。

・全工程+クライアントとのコミュニケーションを担当しても、1日当たりの平均残業時間は1時間未満(社内業務含む)。

 

(e)システム開発企業向けのオープンプラットフォームサービス「WhiteBox」

 「WhiteBox」は、システム開発企業又はフリーランスが利用申込を行い、当社がそれを会員として受付処理することにより利用できるサービスです。企業所属エンジニア又はフリーランス自身の開発経歴(スキルシート)の登録管理等、基本的な機能は無料で利用することができますが、1次請け企業がパートナーを募集する目的でシステム開発案件を掲載・提案したり、パートナーが1次請け企業とエンジニアに関する情報を共有するなどの機能を利用する場合には、月額基本料金が発生します。当社は、自ら本サービスを利用するとともに、全てのシステム開発企業が利用できるオープンなプラットフォームサービスとして提供することを通じて、システム開発における多重下請け構造をなくすという当社理念に共感するシステム開発企業を増やし、業界改革を推進することを目指しております。「WhiteBox」は、受発注の成立までのやり取りを依然として電話やメール等の旧来の方法に依っていることが多い、システム開発業界のDXを実現するサービスです。

 

 

 事業系統図を図示すると、以下のとおりであります。

 

[事業系統図]

 

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(3)サービスライン

 当社は、顧客から「0次システム開発」というコンセプトでシステム開発を受注し、更にシステム開発企業向けオープンプラットフォームサービス「WhiteBox」を自社サービスとして提供しております。

 

a 0次システム開発

 当社は、顧客の社員と当社エンジニア及びパートナーが協働し、システム開発を通じて業務上の課題を解決する「0次システム開発」を提供しており、専ら顧客(エンドユーザー)との直取引案件を手掛けております。

 

 「0次システム開発」では、要件が固まっていなくてもスタートできるというアジャイル開発の特徴を生かし、アプリケーションのプロトタイプ構築、システム統合、スマホアプリ開発・運用、システム基盤(インフラ)のクラウドへの移行等の分野でも利用されております。

 

 当社はアジャイル開発の中でも代表的な手法であるスクラム開発(*5)に精通したエンジニアの育成に努めており、そうしたエンジニアが顧客の社員と協働してプロジェクトを管理・推進する案件を多く手掛けております。

 

 また当社では、段階的に投資額を増やしていくことが可能なクラウドインフラサービスであるAmazon Web Services(以下「AWS」という)(*6)に注力しており、2024年1月現在、AWS認定資格の取得数が100を超え、「AWS 100 APN Certification Distinction(*7)」に認定されております。

 

b システム開発企業向けオープンプラットフォームサービス「WhiteBox」

 システム開発業務を発注又は受注する企業やフリーランスに対して、所属エンジニア又はフリーランス自身の開発経歴(スキルシート)の登録管理等、基本的な機能を無料で提供するとともに、1次請け企業がパートナーを募集する目的でシステム開発案件を掲載・提案したり、パートナーが1次請け企業とエンジニアの情報を共有するなどの機能を利用する場合に定額の月額基本料金が発生するサービスを、以下のプラン別に提供しております。

 

名称

対象法人

提供機能

月額基本料金

パートナープラン

案件を探したい法人向け

所属エンジニアのスキルシート管理に加え、公開案件への応募ができる。

無料

パートナープランPRO

案件とパートナーの両方を探したい法人向け

パートナープランに加え、自社管理案件のパートナー向け掲載ができる。

10,000円

(税抜)

SIerプラン

パートナーを探したい法人向け

公開スキルシートの検索、パートナーへの直接提案を含む全ての機能を使用できる。

25,000円

(税抜)

 

「WhiteBox」の特徴は、エンジニア情報の登録を促す工夫として、エンジニアの経験スキル・分野や特徴を記録するスキルシートを管理できるクラウドサービスを無償提供している点にあります。システム開発企業にとってエンジニアのスキルシートをファイルで更新管理するのは手間がかかります。「WhiteBox」の機能を使えば、スキルシートの管理がしやすく、また、どのようなスキル・経験を持ったエンジニアが在籍しているかという情報を提供することによって、1次請け企業から案件情報や開発の打診を直接受け取ることが可能です。

案件を複数抱え、有望なパートナーを探しているシステム開発企業は、「WhiteBox」を通じて、登録されているパートナー候補企業所属エンジニアのスキルシートを検索し、候補企業に対して直接提案依頼を出すことが可能になります。また、案件情報を「WhiteBox」で公開し、パートナー候補企業から提案を募ることもできます。

 

 システム開発業界では、契約の終了が間近になってから所属エンジニアの空き稼働を作らないために慌てて営業活動が開始され、その結果、契約が短期間で終了しやすい、引き合いの少ないエンジニアの経験・スキルをベースにした提案営業が一般的に広く行われています。「WhiteBox」においては、SIerプランの会員である1次請け企業はパートナー候補企業所属エンジニアのスキルシートを閲覧可能であることから、顧客のニーズが顕在化していない時点で優秀なエンジニアを抱えるパートナー候補企業との商談を重ね、候補企業と共同で顧客に対して案件を創出するための提案を仕掛ける「未来マッチング」を行うことができます。

 当社は、2019年2月から、当社内での利用を目的に、当社社員、及びフリーランスではなく企業に所属するエンジニアを対象としてスキルシートデータベース(DB)作りを始めました。その後、DBをオープンなプラットフォームとしてサービス化することで、システム開発提案能力と事業拡大意欲を有する企業が、受動的でないシステム開発提案を行えるようになり、当社が企業理念として掲げている業界の下請け体質の改革に繋がると同時に、当社にとってのパートナー企業開拓力に寄与するものと考え、2020年4月に「WhiteBox」の実証実験を開始し、2021年1月に正式サービスへ移行しました。2023年12月末現在、2,091社が会員登録しており、3万人超のエンジニアのスキルシートが登録されております。

 

 

 

<用語解説>

注書き

用語

用語の定義

*1

DX

デジタルトランスフォーメーションの略称。企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。

*2

アジャイル開発

システムやソフトウェア開発におけるプロジェクト開発手法の一つで、大きな単位でシステムを区切ることなく、小単位で実装とテストを繰り返して開発を進めていきます。従来の開発手法に比べて開発期間が短縮されるため、アジャイル(素早い)と呼ばれています。

*3

ウォーターフォール開発

システム開発で用いられる開発手法の一種。システム開発には多くの工程(プロセス)が存在し、この工程を「上から順番に行う」のが、ウォーターフォール開発です。

*4

平均704万円

当社の従業員数に基づき比較する場合、厚生労働省「2021年賃金構造基本統計調査」において、企業規模100~999人におけるソフトウエア作成者(テクニカルスペシャリスト、プログラマー、CGプログラマー、社内システムエンジニア、クリエータ(情報通信産業に関するもの)の職種)の平均年収は、5,137千円でした(平均年収は「きまって支給する現金給与額」×12ヶ月+「年間賞与その他特別給与額」で算出しております。)

*5

スクラム開発

チームメンバーにタスクを振り分け、それぞれがそのタスクを達成することでプロダクトの完成を目指す開発手法。それぞれの作業が、他の人の作業を支えている形になるのでチームワークやコミュニケーションが重要になります。

*6

Amazon Web Services(AWS)

Amazon Web Services, Inc.により提供されているクラウドコンピューティングサービス。コンピューティング、ストレージ、データベース等のインフラストラクチャテクノロジーから機械学習、AI(*8)、データレイク(*9)と分析、IoT(*10)等の最新のテクノロジーに至るまで、多くのサービスを提供しています。

*7

AWS 100 APN Certification Distinction

AWSパートナーネットワークパートナー企業のAWS認定資格取得数が、一定数に達するごとにAWSより認定されるものであり、AWS認定資格の取得数が100を超えた場合、AWSより「AWS 100 APN Certification Distinction」に認定されます。

*8

AI

人工知能(Artificial Intelligence)の略称。コンピューターの性能が大きく向上したことにより、機械であるコンピューターが「学ぶ」ことができるようになりました。それが現在のAIの中心技術、機械学習です。

*9

データレイク

規模に係らず、全ての構造化データと非構造化データを保存できる一元化されたリポジトリ(アプリケーション開発の際に、システムを構成するデータやプログラムの情報が納められたデータベース)。データをそのままの形で保存できるため、データを構造化しておく必要がありません。また、ダッシュボードや可視化、ビッグデータ処理、リアルタイム分析、機械学習等、様々なタイプの分析を実行し、的確な意思決定に役立てることができます。

*10

IoT

モノのインターネット(Internet of Things)の略称。従来インターネットに接続されていなかった様々なモノ(センサー機器、駆動装置(アクチュエーター)、住宅・建物、車、家電製品、電子機器等)が、ネットワークを通じてサーバーやクラウドサービスに接続され、相互に情報交換をする仕組みです。

 

4【関係会社の状況】

   当社は子会社を有していないため、記載を省略しております。

 

5【従業員の状況】

(1)提出会社の状況

 

 

 

2024年1月31日現在

従業員数(人)

平均年齢(歳)

平均勤続年数(年)

平均年間給与(千円)

283

33.4

4.2

6,350

 (注)1.従業員数は就業人員数(当社から社外への出向者を除き、契約社員を含む。)であり、臨時雇用者数(パートタイマー、人材会社からの派遣社員を含む。)はその総数が従業員の100分の10未満のため記載を省略しております。

2.平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

3.当社はDX関連事業の単一セグメントであるため、内訳の記載を省略しております。

4.最近1年間において、従業員数が36名増加しています。これは主に事業の拡大に伴いエンジニアを中心として期中採用者が増加したことによるものです。

 

(2)労働組合の状況

労働組合は結成されておりませんが、労使関係は良好であります。