第二部 【企業情報】

 

第1 【企業の概況】

 

1 【主要な経営指標等の推移】

(1) 連結経営指標等

 

回次

第9期

第10期

決算年月

2022年3月

2023年3月

売上高

(千円)

5,450,617

6,299,403

経常利益

(千円)

465,746

112,799

親会社株主に帰属する
当期純利益

(千円)

337,153

70,874

包括利益

(千円)

388,815

80,223

純資産額

(千円)

3,841,035

3,962,089

総資産額

(千円)

5,634,577

5,663,284

1株当たり純資産額

(円)

97.26

99.34

1株当たり当期純利益

(円)

8.76

1.84

潜在株式調整後
1株当たり当期純利益

(円)

自己資本比率

(%)

66.4

67.5

自己資本利益率

(%)

9.5

1.9

株価収益率

(倍)

営業活動による
キャッシュ・フロー

(千円)

219,085

222,685

投資活動による
キャッシュ・フロー

(千円)

1,148,407

2,007,150

財務活動による
キャッシュ・フロー

(千円)

8,190

29,883

現金及び現金同等物
の期末残高

(千円)

1,623,417

3,532,503

従業員数
(外、平均臨時雇用人員)

(名)

118

(9)

143

(11)

 

(注) 1.潜在株式調整後1株当たり当期純利益については、潜在株式は存在するものの、当社株式は非上場であり、期中平均株価が把握できないため、記載しておりません。

2.株価収益率は当社株式が非上場であるため記載しておりません。

3.従業員数は就業人員であり、臨時雇用者数は年間の平均人員を( )内に外数で記載しております。

4.前連結会計年度(第9期)及び当連結会計年度(第10期)の連結財務諸表については、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」(1976年大蔵省令第28号)に基づき作成しており、金融商品取引法第193条の2第1項の規定に基づき、有限責任 あずさ監査法人により監査を受けております。

5.第9期の投資活動によるキャッシュ・フローの大幅な減少は、親会社グループのグループファイナンス制度の利用に伴う余剰資金の貸付であり、第10期の投資活動によるキャッシュ・フローの大幅な増加は、当該取引の解消によるものであります。

6.当社は、2021年5月18日開催の臨時株主総会において、2021年5月18日付で定款の変更を行い、A種優先株式及びB種優先株式を廃止しております。各優先株式の廃止に伴い、それぞれ普通株式2,999,999株、2,271,004株を発行しておりますが、第9期の期首に当該株式発行が行われたと仮定して1株当たり純資産額及び1株当たり当期純利益を算定しております。

7.当社は、2022年12月30日付で普通株式1株につき3株の割合で株式分割を行っておりますが、第9期の期首に当該株式分割が行われたと仮定し、1株当たり純資産額及び1株当たり当期純利益を算定しております。

 

 

(2) 提出会社の経営指標等

 

回次

第6期

第7期

第8期

第9期

第10期

決算年月

2019年3月

2020年3月

2021年3月

2022年3月

2023年3月

売上高

(千円)

1,279,214

2,559,699

4,301,226

4,233,881

4,437,819

経常利益又は経常損失

(△)

(千円)

697,826

622,008

749,462

360,683

327,880

当期純利益又は当期純損失(△)

(千円)

748,087

1,020,648

808,011

289,596

252,058

資本金

(千円)

100,000

100,000

100,000

100,000

100,000

発行済株式総数

 普通株式

 A種優先株式

 B種優先株式

 

(株)

(株)

(株)

 

7,558,000

2,999,999

2,271,004

 

7,558,000

2,999,999

2,271,004

 

7,558,000

2,999,999

2,271,004

 

38,487,009

 

38,487,009

純資産額

(千円)

1,398,179

2,516,717

3,324,729

3,610,834

3,399,605

総資産額

(千円)

2,195,046

3,421,802

4,343,279

4,763,545

4,408,156

1株当たり純資産額

(円)

108.99

188.54

251.53

91.28

84.73

1株当たり配当額
(1株当たり中間配当額)

(円)

(-)

(-)

(-)

(-)

(-)

1株当たり当期純利益又は
1株当たり当期純損失(△)

(円)

58.31

79.56

62.98

7.52

6.55

潜在株式調整後
1株当たり当期純利益

(円)

自己資本比率

(%)

63.7

70.7

74.3

73.7

74.0

自己資本利益率

(%)

53.5

28.6

8.6

株価収益率

(倍)

配当性向

(%)

従業員数
(外、平均臨時雇用人員)

(名)

38

(3)

51

(4)

64

(5)

77

(7)

92

(9)

 

(注) 1.潜在株式調整後1株当たり当期純利益については、潜在株式は存在するものの、当社株式は非上場であり、期中平均株価が把握できないため、記載しておりません。

2.第6期及び第10期の自己資本利益率については、当期純損失であるため記載しておりません。

3.株価収益率は当社株式が非上場であるため記載しておりません。

4.1株当たり配当額及び配当性向については、配当を実施していないため記載しておりません。

5.「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を第9期の期首から適用しており、第9期以降に係る主要な経営指標等については、当該会計基準等を適用した後の指標等となっております。

6.従業員数は就業人員であり、臨時雇用者数は年間の平均人員を( )内に外数で記載しております。

7.主要な経営指標等のうち、第6期から第8期については会社計算規則(平成18年法務省令第13号)の規定に基づき算出した各数値を記載しており、金融商品取引法第193条の2第1項の規定による監査証明を受けておりません。

8.前事業年度(第9期)及び当事業年度(第10期)の財務諸表については、「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」(昭和38年大蔵省令第59号)に基づき作成しており、金融商品取引法第193条の2第1項の規定に基づき、有限責任 あずさ監査法人により監査を受けております。

9.第6期の経常損失及び当期純損失の要因は、人材投資及びマーケティング投資を先行して行った結果、販売費及び一般管理費が増加したことによるものであります。

10.第10期の経常損失及び当期純損失の要因は、人材投資により販売費及び一般管理費が増加したことによるものであります。 

11.当社は、2021年5月18日開催の臨時株主総会において、2021年5月18日付で定款の変更を行い、A種優先株式及びB種優先株式を廃止しております。各優先株式の廃止に伴い、それぞれ普通株式2,999,999株、2,271,004株を発行しておりますが、第9期の期首に当該株式発行が行われたと仮定して1株当たり純資産額及び1株当たり当期純利益又は1株当たり当期純損失を算定しております。

12.当社は2022年12月30日付で普通株式1株につき3株の割合で株式分割を行っておりますが、第9期の期首に当該株式分割が行われたと仮定し、1株当たり純資産額及び1株当たり当期純利益又は1株当たり当期純損失を算定しております。

13.当社は2022年12月30日付で普通株式1株につき3株の割合で株式分割を行っております。そこで、東京証券取引所自主規制法人(現 日本取引所自主規制法人)の引受担当者宛通知「『新規上場申請のための有価証券報告書(Ⅰの部)』の作成上の留意点について」(平成24年8月21日付東証上審第133号)に基づき、第6期の期首に当該株式分割が行われたと仮定して算定した場合の1株当たり指標の推移を参考までに掲げると、以下のとおりとなります。なお、第6期、第7期及び第8期の数値(1株当たり配当額については全ての数値)については、有限責任 あずさ監査法人の監査を受けておりません。

回次

 

第6期

第7期

第8期

第9期

第10期

決算年月

 

2019年3月

2020年3月

2021年3月

2022年3月

2023年3月

1株当たり純資産額

(円)

36.33

62.85

83.84

91.28

84.73

1株当たり当期純利益又は1株当たり当期純損失(△)

(円)

△19.44

26.52

20.99

7.52

△6.55

潜在株式調整後1株当たり当期純利益

(円)

1株当たり配当額

(うち1株当たり中間配当額)

(円)

(-)

(-)

(-)

(-)

(-)

 

 

2 【沿革】

 

年月

概要

2014年11月

IoT向けのSIM及び無線通信回線サービスの提供を主たる事業目的として、東京都目黒区目黒において株式会社ヴイコネック設立

2015年4月

株式会社ソラコムに社名変更、本店を東京都世田谷区玉川に移転

2015年9月

IoTプラットフォーム「SORACOM」を提供開始

2016年2月

 

リヒテンシュタイン公国に子会社 SORACOM LI, LTD.を設立

(2020年5月にSORACOM CORPORATION, LTD.(英国)に業務を引き継ぎ、2021年12月に清算結了)

2016年5月

 

 

シンガポールに子会社 SORACOM INTERNATIONAL, PTE. LTD.を設立

(2020年5月にSORACOM CORPORATION, LTD.(英国)に業務を引き継ぎ、2022年7月に清算結了)

省電力無線通信規格 LoRaWANへの対応を開始

2016年6月

 

デンマークに子会社 SORACOM DK ApSを設立

(2020年5月にSORACOM CORPORATION, LTD.(英国)に業務を引き継ぎ、2022年3月に清算結了)

2016年8月

米国に子会社 SORACOM GLOBAL, INC.を設立

2016年11月

北米でのIoTプラットフォームサービス提供を開始

2017年2月

欧州でのIoTプラットフォームサービス提供を開始

2017年7月

省電力無線通信規格 Sigfoxへの対応を開始

2017年8月

KDDI株式会社への株式譲渡により、連結子会社としてKDDIグループに参画(連結子会社化)

2017年10月

機器への組み込みが可能なチップ型SIM(Embedded SIM, eSIM)を提供開始

2018年5月

国内向けセルラー通信でKDDI回線を提供開始

2018年7月

国内初のセルラー通信内蔵 SORACOM LTE-M Buttonシリーズを発売開始

2018年7月

セルラーLPWA LTE-Mへの対応を開始

2019年3月

IoTサブスクリプション・マーケットプレイス IoT SELECTION connected with SORACOM(注)を開設

2019年7月

エッジ処理AIカメラ S+ Camera Basicを開発

2019年11月

英国に子会社 SORACOM CORPORATION, LTD.を設立

2020年2月

海外旅行者向け eSIMデータ通信サービス SORACOM Mobileを提供開始

2020年5月

リヒテンシュタイン、シンガポール及びデンマーク拠点の機能を集約し、英国拠点での営業を開始

2021年6月

 

当社プラットフォームの国内外における利用実績の拡大、サービス拡充を目的とし、セコム株式会社、ソースネクスト株式会社、ソニーグループ株式会社、日本瓦斯株式会社、株式会社日立製作所及びWorld Innovation Labの6社と資本業務提携を実現

2022年5月

クラウドカメラサービス ソラカメを提供開始

 

(注) IoT SELECTION connected with SORACOMとは、導入事例として実績のあるIoTソリューションを、サブスクリプション(サービス利用料課金モデル)で提供するBtoB向けウェブサイトです。

 

3 【事業の内容】

当社グループは、当社、連結子会社である米国のSORACOM GLOBAL, INC.及び英国のSORACOM CORPORATION, LTD.の計3社で構成されており、IoTプラットフォーム事業(単一セグメント)を展開しております。

また、本書提出日現在、当社グループはKDDI株式会社の連結子会社であり、KDDIグループのビジネスセグメントの中でも「ネクストコア事業」(顧客企業の多様な働き方、ビジネス変革、事業成長を支援するソリューション提供事業)を担う子会社として位置付けられております。

 

(1)ビジョン

現在、あらゆるモノがインターネットにつながるIoT(Internet of Things)が世界的に加速しております。IoTの導入によって労働力不足やサステナビリティといった様々な社会的な課題を解決することが望まれております。しかし、デバイスの多様化、データ通信の複雑化、テクノロジーの高度化は益々進んでおり、企業がIoTを導入するには、ハードウェア、ソフトウェア、通信、セキュリティ、生成AIと多くの技術要素が複雑に絡む様々な課題に対処する必要があります。
 当社グループは「世界中のヒトとモノをつなげ、共鳴する社会へ」のビジョンのもと、IoT活用に必要な各種サービスをワンストップに提供する事業を展開しております。最も顧客至上主義な会社として、当社のプラットフォームサービスの利用によって、多くの企業が気軽にIoTを導入し、即時に大規模展開することが可能となる「テクノロジーの民主化」を実現し、社会をより良いものへ変革することを目指しております。

 

(2)事業・サービスの概要

当社グループは、顧客企業がIoTを導入・運用する際に直面する共通課題を解決するIoTプラットフォーム「SORACOM」(以下「当社プラットフォーム」という。)を提供しております。具体的には、IoTデバイスやIoT SIM、IoTに必要な通信回線、IoTサービスに求められるデータ保存や可視化アプリケーション、ネットワークサービス等をプラットフォームサービスとして提供しております。顧客企業は、当社プラットフォームを利用することで、迅速かつ効率的にIoTサービスを立ち上げることが可能になります。さらに、エコシステムパートナー企業には、プラットフォームを補完する多様なサービスの提供をいただき、共にIoTのエコシステムを発展させております。

 

当社はKDDI株式会社や株式会社NTTドコモなどの移動体通信事業者(MNO:Mobile Network Operator)から通信回線を調達している仮想移動体通信事業者(MVNO:Mobile Virtual Network Operator)であるとともに、クラウド上にモバイル・コア(注)を独自に構築することによって、IoTに特化した通信サービスをコスト競争力のある価格で提供しております。当社プラットフォームのコスト競争力は、MNOが提供する従来型のモバイル・コアが、サーバー、交換機及びデータセンター等を主にハードウェアによって構築しているため、多額の設備投資や更新費用の負担が必要となる一方で、当社独自のモバイル・コアはサーバー、交換機、データセンター等の機能をソフトウェアによりクラウド上に構築しているため、設備投資や更新費用の負担が相対的に少なくなっていることに起因しております。

また、当社プラットフォームは全てクラウド上に展開していることから、クラウド上の他社サービスとの親和性が高いだけでなく、当社独自のプラットフォームサービスとして、データの蓄積や可視化、クラウド連携やリモートアクセス、パケットキャプチャー、閉域ネットワークなど様々なIoT向けサービスを顧客のフィードバックを基に自社で開発し、柔軟に提供することが可能であり、継続的な機能更新や追加等を含めた拡張性を備えております。

(注)モバイル・コアとは、モバイル通信の基幹システムで、端末の制御、加入者情報管理、通信経路設定等を行っております。

 

当社プラットフォームは、一定規模の回線契約を必要とせず1回線からIoT通信を手軽に利用することが可能であり、かつ、予め必要となる各種IoT向けサービス・機能が用意されていることから汎用的に利用可能であるため、スタートアップ企業から大企業までの様々な規模の顧客企業において、システム開発又はカスタマイズ等の初期投資を抑えつつIoTを導入することが可能となっております。今までは顧客がIoT通信を開始するためには、MNOと一定規模の回線数をまとめて契約しなければならず、初期投資も多額になる傾向だったものが、当社プラットフォームは、1回線から利用できる汎用的な通信サービスを提供しているため設備負担が少ない形でIoT通信を開始することが可能です。

 

また、一般的なMVNOから安価な通信サービスを利用した場合、当社プラットフォームのようなIoT向けサービスをワンストップで提供していないことが多いため、顧客はIoTの導入を一気通貫で進めることができないことがあります。一方で、当社プラットフォームにおいてはデータの蓄積や可視化、クラウド連携やリモートアクセス、パケットキャプチャー、閉域ネットワークなど様々なIoT向けサービスを利用できるため、顧客はIoTの導入を一気通貫で進めることができます。さらには、顧客がIoTを始める上で必要なシステムを新しく自社開発することなく、当社のプラットフォームサービスを利用するだけでIoTを導入することが可能です。

加えて、当社プラットフォームを利用したIoT導入を支援するパートナープログラムを構築しており、顧客企業がIoT活用を進める上での課題を解決するエコシステムを形成しております。エコシステムのパートナー企業は当社プラットフォームを活用して、付加価値の高いソリューションやシステムインテグレーションをIoTを導入する顧客企業に提供することが可能となっております。これらエコシステムのパートナー企業数の増加が当社プラットフォームを補完するサービスの充実につながり、IoTのエコシステムを発展させております。日本では、2015年9月以降、パートナープログラムを洗練させており、その効果もあり2023年12月現在220社を超えるエコシステムパートナー企業(注)が登録されております。

(注)エコシステムパートナー企業は、認定資格者数や販売実績などの一定の基準を満たし、当社プラットフォーム活用の実績を持つと認定されたパートナーをいいます。

 

上記の事業サービスを展開することにより、当社プラットフォームを活用して、スマートメータリング、シェアリングモビリティ、スマートファクトリー、クラウド通訳機、子供やシニアの見守り端末、遠隔医療、遠隔監視といった、顧客企業の業務効率化や省力化の推進や、社会課題を解決するための数多くのIoTサービスが創出されております。

 

当社プラットフォームは、顧客企業自らがインターネット検索、Web広告、オンラインイベントやディベロッパーコミュニティの口コミや評判を通じて当社プラットフォーム及びサービスに興味を持ち、Web上にて通信SIMの購入及びサービス利用契約を行い、サービス利用を開始することが可能なセルフサービスモデル型の事業展開を構築しております。また、当社プラットフォームの利用を小規模から開始した顧客に対しては、IoT分野に精通する当社営業人員やエコシステムのパートナー企業が顧客のIoT利用の拡大をサポートしており、顧客のIoT利用が大きく拡大すると、IoTの成功事例として他の顧客に波及(ネットワーク効果)し、新たな顧客による当社プラットフォームの利用につながるという好循環が生まれているものと認識しております。なお、顧客獲得戦略は後述「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に詳細を記載しております。

このような顧客獲得戦略によって、2023年12月において国内外の課金アカウント数(注)は7,000件を超えて拡大しており、スタートアップ企業から大企業、米国/欧州企業まで多くの顧客が当社プラットフォームを利用するに至っております。

(注)課金アカウント数は、1ヶ月の間にリカーリング収益が発生した口座数をいいます。同一の顧客企業等が部署や業務別に複数の口座を有する場合が含まれております。

 

 当社グループが獲得する収益は、「リカーリング収益(プラットフォーム利用料)」、「商品販売」及び「その他」により構成されており、各サービス等の概要は以下のとおりであります。

 

[リカーリング収益 (プラットフォーム利用料)]

① 通信サービス(コネクティビティ)

IoT向けの通信接続を提供するサービスであり、「SORACOM Air」の名称にて以下の通信規格に対応したサービスを提供しております。当該サービスにおいては、通信サービスにかかる従量課金による継続収入を受領しており、リカーリング収益の主要な収益源となっております。

 ・セルラー通信

当社グループの主たる通信サービスであり、携帯電話向け周波数帯である2G/3G/LTE/5Gに対応したデータ通信SIM「IoT SIM」による通信サービスを提供しております。当該通信サービスは、国内向け回線及びグローバル回線に区分され、世界180の国と地域における利用をカバーしております。

・LPWA通信

省電力及び長距離伝送を特徴とし、IoT用途での利用に適したLPWA(Low Power Wide Area)通信を用いたサービスであり、Sigfox、LoRaWAN及びLTE-Mの各ネットワークを利用した通信サービスを提供しております。

・その他通信

上記の他に、Starlinkなどの衛星通信を提供しております。また、Wi-Fi、有線通信、衛星通信など通信経路に限らず、ネットワーク上のデータを暗号化して通信を行い当社グループのIoTプラットフォーム機能を利用できる「SORACOM Arc」も提供しております。

 

② ネットワークサービス

IoTシステム運用のためには、安全性の確保、通信方向の制御、取得したデータの利用等、通信サービス(コネクティビティ)の利用だけでは解決できない様々な課題が生じます。これらの課題を解決するために、VPN接続や物理専用線によりIoTデバイスから各種クラウドや顧客データセンターまでをセキュアに接続するサービス、当社通信サービスによりつながるIoTデバイスに必要時に遠隔から安全にアクセスできるサービス等を提供しており、ネットワークサービス上の顧客のデータ利用に応じた従量課金による継続収入を受領しております。

 

③ アプリケーションサービス

IoTデバイスから送信されるセンサーデータ等を時系列で保存する機能、データを可視化するダッシュボードの作成/共有サービス、各種クラウドやAI/機械学習などのサービスへのデータ転送サービス、IoT デバイスの管理等IoTデータ活用やIoTデバイス活用における課題を解決する機能を提供するサービスを提供しており、顧客のデータ利用に応じた従量課金による継続収入を受領しております。

 

④ その他(KDDI向けプラットフォーム提供)

親会社であるKDDI株式会社との業務提携契約に基づく協業の一環として、同社が構築する「IoT世界基盤」(グローバルIoTアクセス)の基礎となる通信ネットワークについて、当社プラットフォームを提供しております。

 

[商品販売]

通信サービス提供時の回線契約に伴い主に販売される通信用IoT SIMに加えて、通信モジュール、USBドングル、カメラ・GPS・ センサー等のIoTデバイス等の商品を仕入販売しております。また、特定大口顧客向けにはスマートメーター等の商品を販売しております。

 

[その他]

① プロフェッショナルサービス

当社グループのIoTプロフェッショナルコンサルタントが、顧客企業のIoT導入プロジェクトにかかる技術要素や課題の整理、実行計画立案の支援等、顧客プロジェクトに参画・サポートを行うコンサルティングサービスを提供しております。また、企業のIoTプロジェクトに関するシステム開発の考え方や、システム構成、具体的なサービス提供について実装するワークショップも提供しております。

 

② 業務受託

親会社であるKDDI株式会社との業務提携契約に基づく協業の一環として、技術開発支援等の業務を受託しており、個々の受託案件毎に業務受託収入を受領しております。

 

「商品販売」や「その他」の売上については顧客がIoT事業を始めるときだけでなく、IoT事業の拡大に伴って継続的に増加する売上であるため、「商品販売」や「その他」の売上をインクリメンタル収益と呼称しており、インクリメンタル収益の増加に伴って、リカーリング収益も増加していく関係にあります。一般的なIoTプロジェクトは、顧客企業がSIMやデバイスを購入し、PoC(概念検証)を実施した後、商用サービスを開始するにつれ規模が拡大していきます。規模の拡大とともに、インクリメンタル収益は増加するとともに、リカーリング収益の割合が高まっていく傾向があります。

 

(3)事業の特徴

[技術的な優位性]

 パブリック・クラウド上に構築した独自のモバイル・コアについて

従来型のモバイル・コアは交換器やサーバー等をハードウェアで構築していたため設備投資負担が大きいところ、当社グループはパブリック・クラウド上にソフトウェアベースで独自のモバイル・コアを構築しているため、コスト競争力と高い拡張性を実現しております。このモバイル・コアに関連する特許も70以上有しており、当社プラットフォームの技術的優位性の源泉となっております。

 

 継続的な機能更新及びサービス拡張について

当社グループは創業以降、プロダクト開発を積極的に進めており、多くの顧客企業がIoTに取り組む際に直面する共通課題を解決できるサービスを通信(コネクティビティ)、デバイス、アプリケーションの多岐に渡り提供しております。必要な機能が、レゴのブロックのようにモジュールとして揃っているため、顧客企業は、必要な要素を活用することで、すぐに新しいサービスを創り出すことができます。

また、顧客企業からのフィードバックに基づいた継続的な機能更新及びサービス拡張を実施しており、現時点で387の機能を顧客に提供しております。近年は平均2週間の開発サイクルにて継続的に新機能をリリースしており、当社プラットフォームのアップデートを通じて、顧客は先端技術の導入や利便性が向上されたサービスの利用が可能となっております。例えば2023年には、生成AIのテクノロジーを活用した機能として、IoTデータ保存のサービス「SORACOM Harvest Data」 に蓄積された時系列データを AI 分析を開始し、その異常値や傾向などを自然言語で受け取ることができる「SORACOM Harvest Data Intelligence」を提供開始しております。また、2023年に株式会社松尾研究所とIoT分野におけるLLM(大規模言語モデル)の 活用を研究・推進する「IoT x GenAI Lab」も設立し、IoT x 生成AIの最先端に取り組んでおります。

 

 ② 多様な通信規格への対応及びクラウドとの高い親和性

当社プラットフォームは通信サービスにおいて、セルラー回線(3G~5G)及びSigfox等のLPWA回線による通信規格に対応しているほか、仮想SIMを発行することによりWi-Fiや有線Ethernetのインターネット回線などで接続するデバイスを提供しております。また、多様な通信規格による接続を可能とし、それら通信によって収集されたデータを当社プラットフォーム上で、一元的かつ容易に管理可能な設計としております(「Connectivity Agnostic」と称しております)。

また、当社プラットフォームはパブリック・クラウド上で構築されていることから、同じくパブリック・クラウド上に構築された顧客システムとの互換性が非常に高いことに加えて、データセンターなどのプライベート・クラウドも含め、他のクラウドサービスとの連携も容易に実行可能となっております(「Cloud Agnostic」と称しております)。

当社グループは、上記の「Connectivity Agnostic」及び「Cloud Agnostic」を、当社プラットフォームの機能柔軟性における特徴として顧客に訴求しており、一定の評価を受けているものと認識しております。

 

[グローバル・カバレッジ]

当社グループの現在の売上高においては、国内向けサービスが過半を占めておりますが、当社グループは、国内向けに加えて、海外地域向けサービスも展開しております。

当社グループは、SIM内のソフトウェアを自社開発することで回線プロファイルの拡張を可能としており、顧客ニーズに合わせてカスタマイズできるSIM/eSIMを提供しております。海外における接続回線は、欧州、米国、アジアの複数のキャリアとの契約により当該キャリアがローミング接続する各地域の通信キャリア回線を含めた調達を実現しており、当社プラットフォームは2023年12月時点において180の国と地域で、392のキャリア(注)を使用することが可能な通信カバレッジ体制を構築しております。

また、契約の切り替え無しに複数のキャリアを使用できることも特徴のひとつであり、例えば、米国においては、全土にIoTシステムを配置しようとした場合に一つのキャリアが提供する通信ではIoTシステムをカバーできないという顧客側の課題がありますが、当社プラットフォームにおいては複数のキャリアを使用可能とすることでこれを解消しており、同国における競争優位性を確立していると考えております。

(注)キャリアは、当社プラットフォームが接続可能な移動体通信事業者をいいます。

 

[強固なセキュリティ]

IoTプラットフォームを提供するにあたり、当社は2017年に情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)の国際規格であるISO/IEC 27001:2013の認証を取得しているほか、AWS Foundational Technical Review等の外部機関によるシステム脆弱性診断を実施し指摘事項に対応することで、強固なセキュリティを構築しております。社内においてもISMS取得に際して情報セキュリティに関する各種規程を整備し運用したほか、四半期に一度システムに係る内部監査を実施することで、継続的にセキュリティを確認しております。

このようにセキュリティの管理運営に関して充実を図ることで、当社グループのIoTプラットフォームサービスを顧客が安心かつ安全に利用することが可能になっているものと考えております。

 

[顧客ストックの蓄積と事業拡大]

当社グループのサービスにおいては、IoT領域における特性として一度導入されたサービスが継続利用される傾向が強く、サービス開始以降、順調に顧客数は拡大しております。また、当社グループの事業においては、導入時におけるIoTデバイスの販売、各種セットアップ料等の初期費用にかかるインクリメンタル収益に加えて、データ通信量等のサービス利用に応じた継続課金にかかるリカーリング収益を獲得する構造であることから、比較的安定したビジネスモデルが構築されていると考えております。

当該ビジネスモデルにおいては、データ通信を実現する契約回線数(注1)と課金アカウント数(注2)の増加が重要となりますが、当社グループと顧客企業との取引においては、サービス導入時は小規模で開始されるものの、顧客企業におけるサービス導入範囲の拡大や、顧客企業が提供するIoTビジネスの拡大等に伴い、契約回線数並びにデータ通信量が拡大するケースが多く、新規顧客獲得に加えて、既存顧客との取引拡大が事業成長に大きく貢献する構造となっていると認識しております。

(注)1.契約回線数は、セルラー回線及びLPWA回線の数をいいます。

2.課金アカウント数は、1ヶ月の間にリカーリング収益が発生したアカウント数をいいます。

 

 

当社グループの事業系統図は以下のとおりであります。


 

 

 用語解説

本項「3 事業の内容」において使用しております用語の定義について以下に記します。

用語

用語の定義

IoT

Internet of Things(モノのインターネット)の略称。様々なモノをインターネット接続して活用すること又はその技術を意味します。この仕組みにより、離れた場所にあるモノ同士のデータの授受、遠隔操作などが可能になります。

IoTプラットフォーム

IoT向けのプラットフォーム。

インターフェース

2つの異なる機器やシステム、ソフトウェア間で情報のやり取りがなされる際、その間をつなぐ規格や機能であり、当社においては、外部からWebを介して当社プラットフォームとの接続を可能にし、アクセス権限管理やユーザーがソフトウェアを操作したり、アプリケーションを構築できるサービスなどを提供しております。

モバイルコアネットワーク

移動体通信事業者等が提供する、大規模なネットワークにおける拠点間、事業者間等を結ぶ大容量の通信回線網を意味します。

IoT通信

IoT向けのデータ通信。

パケットキャプチャー

通信ネットワークや回線を流れるデータ(packet)を捕獲(capture)して、内容の表示や解析、集計などを行うことを意味します。これにより、通信の挙動の検証などを行うことができます。

閉域ネットワーク

不特定多数から直接アクセスを受けない、インターネットから物理的・論理的に分離されているネットワークを意味します。

2G

携帯電話等における通信規格「2nd Generation」の略称。デジタルな無線技術による通信を可能にした反面、通信速度が比較的遅い規格を意味します。

3G

携帯電話等における通信規格「3rd Generation」の略称。電波が広範囲に届くことにより様々な場所での通信が可能である反面、2Gに比べて通信速度が向上した規格を意味します。

LTE

Long Term Evolutionの略称。3Gより後に開発された携帯電話等における通信規格であり、3Gに比べて通信速度が向上した規格を意味します。

5G

携帯電話等における通信規格「5th Generation」の略称。従来の無線通信システムである4G/LTEに比べ、高周波数帯を利用した超広帯域伝送などによる高速・大容量通信、低遅延、多数接続といった特長がある規格を意味します。

SIM

Subscriber Identity Moduleの略称。利用者を識別する固有の番号が記録されており、端末に装着することで、通信することが可能になります。

LPWA

Low Power Wide Areaの略称。低消費電力で長距離の通信ができる無線通信技術を指します。

Sigfox

仏国Unabiz SAS社が提供する低消費電力・長距離伝送を特長とした、グローバルIoTネットワークを意味します。

LoRaWAN

LoRa(Long Range)の変調方式を採用したLPWAの通信規格のひとつを意味します。

LTE-M

LTEの一部周波数帯域のみを利用する通信規格を意味します。

VPN

Virtual Private Networkの略称。暗号化等によりセキュリティを高めることを目的として、一般的なインターネット回線の中に作られた、仮想的なプライベートネットワークを意味します。

AI

Artificial Intelligenceの略称。人間が行う知的活動をプログラムとして実現することを意味します。

Wi-Fi

端末が互いに無線によって接続可能になる通信方式を意味します。

Ethernet

主に室内でコンピュータや電子機器をケーブルでつないで通信する通信規格を意味します。

ISMS

Information Security Management System(情報セキュリティマネジメントシステム)の略称。国際標準化機構(ISO)と国際電気標準会議(IEC)が共同で策定する情報セキュリティ規格で、情報資産の保護、利害関係者からの信頼を獲得するための“情報セキュリティ体制の確保”を目的としたフレームワークを意味します。

 

 

用語

用語の定義

ISO/IEC 27001:2013

ISMSを構築することを目的に、その構築に必要な要求事項や管理策などを記載した国際規格を意味します。

AWS Foundational Technical Review

AWS上で提供されているサービスに関して、セキュリティ・信頼性・運用上の優秀性等の観点でワークロードを評価・診断することにより、AWSのベストプラクティスに沿っているか認定する制度を意味します。

回線プロファイル

APN(Access Point Name)設定プロファイル。回線へ接続するためのアクセスポイントを定義したファイルを意味します。このプロファイルを基に、回線へ接続することが可能になります。

eSIM

Embedded Subscriber Identity Moduleの略称。組み込み型のSIMであり、デバイスに手動で挿入するSIMカードとは違い、デバイスの製造時に基盤に実装されます。

ローミング接続

通信事業者間の提携により、利用者が契約しているサービス事業者のサービスエリア外であっても、提携先の事業者のエリア内にあれば同様のサービスを利用できることをローミングといい、そのサービスを利用した接続を意味します。

スマートメータリング

ガス・電気・水道等のメーターをインターネットに接続し、利用量や保安データの取得を可能にします。検針等にかかっていた業務コストの削減やデータの適時取得により、利用の予測と最適化、保安の高度化を実現します。

スマートファクトリー

工場内のシステムや生産設備等をインターネットに接続し、設備の稼働状況等のデータの取得を可能にします。得られたデータは、製造工程の可視化、生産性や品質の向上、在庫管理や物流の最適化に活用されます。

LLM(大規模言語モデル)

Large Language Modelsの略称。大量のデータをディープラーニング(深層学習)させることで、人が理解できる自然言語でのテキスト生成を実現します。IoT分野では、専門人材のようなデータ分析や予測などの分野で期待されています。

 

 

 

4 【関係会社の状況】

 

名称

住所

資本金

主要な事業
の内容

議決権の所有
(又は被所有)
割合(%)

関係内容

(親会社)

 

 

 

 

 

KDDI株式会社

(注)1

東京都新宿区

141,852

百万円

電気通信事業

被所有

(65.7)

通信回線の仕入

開発業務の受託

役員の兼任 2名

(連結子会社)

 

 

 

 

 

SORACOM GLOBAL, INC.

(注)2

米国ワシントン州ベルビュー市

500

千USD

IoTプラット
フォーム事業

100.0

ブランド構築の委託

役員の兼任 3名

(連結子会社)

 

 

 

 

 

SORACOM CORPORATION, LTD.

(注)2, 3

英国ロンドン市

700

千GBP

IoTプラット
フォーム事業

100.0

ソフトウェアのライセンス契約

役員の兼任 2名

 

(注)1.東京証券取引所プライム市場上場企業であり、有価証券報告書の提出会社であります。

2.特定子会社であります。

3.SORACOM CORPORATION, LTD.については、売上高(連結会社相互間の内部売上高を除く。)の連結売上高に占める割合が10%を超えております。

主要な損益情報等 ①  売上高       2,008,896千円

②  経常利益       433,958千円

③  当期純利益     352,608千円

④  純資産額       973,272千円

⑤  総資産額     1,652,186千円

 

 

5 【従業員の状況】

(1) 連結会社の状況

 

2024年1月31日現在

セグメントの名称

従業員数(名)

IoTプラットフォーム事業

150

 

(注) 1.従業員数は就業人員であります。なお、臨時従業員数は従業員の総数の100分の10未満であるため、記載を省略しております。

2.当社グループは、「IoTプラットフォーム事業」の単一セグメントであります。

 

(2) 提出会社の状況

 

 

 

2024年1月31日現在

従業員数(名)

平均年齢(歳)

平均勤続年数(年)

平均年間給与(千円)

100

40.95

3.51

11,233

 

(注) 1.従業員数は就業人員であります。なお、臨時従業員数は従業員の総数の100分の10未満であるため、記載を省略しております。

2.平均年間給与は、基準外賃金を含んでおります。

 

(3) 労働組合の状況

当社グループにおいて労働組合は結成されておりませんが、労使関係は円満であり、特記すべき事項はありません。

 

(4) 管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異

当社グループは、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)及び「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定による公表義務の対象ではないため、記載を省略しております。