第二部【企業情報】

第1【企業の概況】

1【主要な経営指標等の推移】

 

回次

第14期

第15期

第16期

第17期

第18期

決算年月

2019年5月

2020年5月

2021年5月

2022年5月

2023年5月

売上高

(千円)

4,300

18,749

372,072

経常損失(△)

(千円)

592,244

902,666

630,181

385,897

323,924

当期純損失(△)

(千円)

593,314

903,750

631,244

387,231

1,105,199

持分法を適用した場合の投資利益

(千円)

資本金

(千円)

100,000

100,000

100,000

10,000

100,000

発行済株式総数

 

 

 

 

 

 

普通株式

(株)

80,000

80,000

80,000

80,000

80,000

A種優先株式

(株)

78,400

78,400

96,507

96,507

96,507

B種優先株式

(株)

70,022

84,308

純資産額

(千円)

1,754,840

841,244

775,843

5,283,232

5,199,830

総資産額

(千円)

1,812,099

871,714

1,109,615

5,664,982

5,832,806

1株当たり純資産額

(円)

4,388.63

10,156.28

12,690.71

106.85

142.54

1株当たり配当額

(円)

(うち1株当たり中間配当額)

(-)

(-)

(-)

(-)

(-)

1株当たり当期純損失(△)

(円)

7,416.43

11,296.88

7,890.56

48.40

138.15

潜在株式調整後1株当たり当期純利益

(円)

自己資本比率

(%)

96.84

96.50

69.92

93.26

89.15

自己資本利益率

(%)

株価収益率

(倍)

配当性向

(%)

営業活動による

キャッシュ・フロー

(千円)

527,696

149,701

投資活動による

キャッシュ・フロー

(千円)

1,734,249

896,661

財務活動による

キャッシュ・フロー

(千円)

4,881,540

1,000,020

現金及び現金同等物の期末残高

(千円)

3,575,237

3,524,807

従業員数

(人)

7

20

22

31

41

[外、平均臨時雇用者数]

[3]

[3]

[1]

[1]

[4]

 (注)1.当社は連結財務諸表を作成しておりませんので、連結会計年度に係る主要な経営指標等の推移については記載しておりません。

2.「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を第17期の期首から適用しており、第17期以降に係る主要な経営指標等については、当該会計基準等を適用した後の指標等となっております。

3.持分法を適用した場合の投資利益については、持分法を適用する関連会社が存在しないため記載しておりません。

4.当社は、2023年7月12日開催の取締役会決議により、2023年8月30日付で普通株式1株につき100株の割合で株式分割を行っておりますが、第17期の期首に当該株式の分割が行われたと仮定し、1株当たり純資産額及び1株当たり当期純損失を算定しております。

5.潜在株式調整後1株当たり当期純利益については、潜在株式は存在するものの当社株式は非上場であり、期中平均株価が把握できないため、また当期純損失であるため、記載しておりません。

6.株価収益率については、当社株式は非上場であるため、記載しておりません。

7.第14期から第18期の自己資本利益率については、当期純損失が計上されているため記載しておりません。

8.従業員数は、当社から社外への出向者を除き、社外から当社への出向者を含む就業人員であります。また、臨時雇用者数は期中平均人員を[ ]外数で記載しております。

9.第17期及び第18期の財務諸表については、「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」(昭和38年大蔵省令第59号)に基づき作成しており、金融商品取引法第193条の2第1項の規定に基づき、有限責任監査法人トーマツの監査を受けております。第14期から第16期の財務諸表については、「会社計算規則」(平成18年法務省令第13号)に基づき算出した各数値を記載しておりますが、当該各数値については、金融商品取引法第193条の2第1項の規定に基づく、有限責任監査法人トーマツの監査を受けておりません。なお、第14期、第15期及び第16期の財務諸表については、会社法第436条第2項第1号の規定に基づき、有限責任監査法人トーマツの監査を受けております。

10.主要な経営指標等のうち、第17期よりキャッシュ・フロー計算書を作成しておりますので、第16期以前のキャッシュ・フロー計算書に係る各項目については記載しておりません。

11.当社は、2023年7月12日開催の取締役会決議により、2023年8月30日付で普通株式1株につき100株の割合で株式分割を行っております。そこで、東京証券取引所自主規制法人(現 日本取引所自主規制法人)の引受担当者宛通知「『新規上場申請のための有価証券報告書(Ⅰの部)』の作成上の留意点について」(2012年8月21日付東証上審第133号)に基づき、第14期の期首に当該株式分割が行われたと仮定して算定した場合の1株当たり指標の推移を参考までに掲げると、以下のとおりとなります。
なお、第14期から第16期の数値(1株当たり配当額についてはすべての数値)については、有限責任監査法人トーマツによる監査を受けておりません。

回次

第14期

第15期

第16期

第17期

第18期

決算年月

2019年5月

2020年5月

2021年5月

2022年5月

2023年5月

1株当たり純資産額

(円)

△43.89

△101.56

△126.91

△106.85

△142.54

1株当たり当期純損失(△)

(円)

△74.16

△112.97

△78.91

△48.40

△138.15

潜在株式調整後1株当たり当期純利益

(円)

1株当たり配当額

(円)

(うち1株当たり中間配当額)

(-)

(-)

(-)

(-)

(-)

 

 

2【沿革】

 2005年6月に、九州大学(現国立大学法人九州大学)の教授時代に宇宙機ダイナミクスに関する研究を行っていた当社創業の中心者である八坂哲雄は、1995年からスタートした九州大学での小型衛星開発の技術を伝承し、九州の地に宇宙産業を根付かせるべく、同じく九州大学の教授で無人航空機に関する研究を行っていた櫻井晃及び当時三菱重工株式会社のロケット開発者であった舩越国弘に協力を仰ぎ、3名で当社を設立いたしました。

年月

概要

2005年6月

福岡県福岡市に有限会社QPS研究所(資本金3,000千円)を設立

2014年11月

当社が参画したプロジェクトにて超小型衛星QSAT-EOS(愛称「つくし」)(※1)をロシアのオレンブルク州ヤースヌイ宇宙基地から打ち上げ成功

2016年4月

株式会社に組織変更

2019年6月

「衛星リモートセンシング(※2)衛星装置使用許可」を取得

2019年12月

小型SAR(※3)衛星1号機「イザナギ」をインドのサティッシュ・ダワン宇宙センターからPSLV(Polar Satellite Launch Vehicle)で打ち上げ成功

2020年2月

国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(東京都調布市、以下、「JAXA」という。)と、「JAXA宇宙イノベーションパートナーシップ」(J-SPARC)(※4)のもと、「小型SAR衛星コンステレーション(※5)による準リアルタイム(※6)データ提供サービスの事業コンセプト共創」に関する覚書を締結し、共同実証を開始

2021年1月

小型SAR衛星2号機「イザナミ」をアメリカのケープカナヴェラル空軍基地からスペースX社のファルコン9で打ち上げ成功

2021年2月

「イザナミ」による地球観測データ取得並びに初画像化に成功

2021年5月

「イザナミ」による高精細モード(分解能(※7)0.7m)の地球観測データ取得並びに画像化に成功

2021年6月

九州電力株式会社(福岡県福岡市中央区)及びJAXAと、J-SPARCのもと、小型SAR衛星コンステレーションによる準リアルタイムデータ提供サービスの実現並びに同データを活用したインフラ管理業務の高度化・効率化や新たなサービス創出に向けた覚書を締結し、共同実証を開始

2021年11月

スカパーJSAT株式会社(東京都港区)及び日本工営株式会社(東京都千代田区)と業務提携契約を締結

2021年12月

地球観測画像の販売開始

2022年3月

防衛省「画像データの取得(その12-2)」に採択

2022年4月

内閣府「令和4年度 小型SAR衛星コンステレーションの利用拡大に向けた実証」に採択

2022年8月

株式会社ウェザーニューズ(千葉県千葉市)、九電ビジネスソリューションズ株式会社(福岡県福岡市中央区、現Qsol株式会社)、及び九州電力株式会社と、高精度な海氷情報を活用した船舶の運航を支援するサービス創出に向けた覚書を締結し、共同実証を開始

2022年10月

小型SAR衛星3号機及び4号機を鹿児島県の内之浦宇宙空間観測所からイプシロンロケット6号機で打ち上げ失敗

2022年12月

JAXAと、「超小型LバンドSAR衛星の検討及び試作試験」に関する研究開発契約を締結

2022年12月

JAXAの「小型技術刷新衛星研究開発プログラムの新たな宇宙利用サービスの実現に向けた2024年度軌道上実証に係る共同研究提案要請」において当社提案が採択

2023年3月

防衛省「HGVや地上の観測に資する小型衛星システムの機能等の向上に関する調査研究」に採択

2023年3月

内閣府「令和5年度 小型SAR衛星コンステレーションの利用拡大に向けた実証」に採択

2023年6月

小型SAR衛星6号機「アマテル-Ⅲ」をアメリカのヴァンデンバーグ宇宙軍基地からスペースX社のファルコン9で打ち上げ成功(小型SAR衛星5号機の打上げは、2024年5月期中を予定しております。)

2023年7月

「アマテル-Ⅲ」による高精細モード(分解能 0.46m)の地球観測データ取得並びに画像化に成功

2023年10月

経済産業省の中小企業イノベーション創出推進事業に当社の「高分解能・高画質且つ広域観測を実現する小型SAR衛星システムの実証」が採択

 

 本項「2 沿革」にて使用しております用語の定義について以下に記します。

No

用語

用語定義

超小型人工衛星QSAT-EOS

(愛称「つくし」)

 地球観測超小型衛星QSAT-EOS(愛称「つくし」)は、九州大学が開発してきた科学観測衛星の技術を元に、佐賀大学、鹿児島大学、九州工業大学、有限会社QPS研究所並びに九州内企業との協力関係をベースにして、地球観測ミッションの実現を図ったもの。サイズは縦横高さがいずれも約50cmで質量は約50kgと超小型衛星となっています。「災害監視の地球観測ミッション」と「超小型人工衛星の汎用バス開発」が主ミッションとなっています。

衛星リモートセンシング

 宇宙という非常に高いところから地球を観測している地球観測衛星は、環境問題の解明や災害監視、資源調査等を目的として、地球の様子を常に観測しています。また、これらの観測結果は、衛星画像データとして提供され、地球に関する様々な情報を読み取ることができ、地球環境の解明研究等に有効活用されています。

 地球観測衛星等のように遠く離れたところから、対象物に直接触れずに対象物の大きさ、形及び性質を観測する技術をリモートセンシングといいます。対象物に直接触れることなく観測できるのは、観測を行う対象物が反射したり、放射したりしている光等の電磁波の特性を利用しているからです。観測の対象物が反射したり、放射したりしている光等の電磁波は、地球観測衛星に載せられたセンサー(「観測機器」ともいいます。)で受けとめています。

 地球観測衛星によるリモートセンシングには、以下のような特徴があります。

・広い範囲を一度にとらえることができる。

・同じ地域を長期にわたって観測することができる。

・直接現地に行かなくても、状態を知ることができる。

・人間の目で見ることができない情報(温度など)を知ることができる。

 衛星のリモートセンシングでは、衛星の軌道やセンサーの性能、通信容量などの制約により、一度に観測できる観測幅(空間範囲)とその範囲をどの程度精密に観測できるかを示す空間分解能(空間単位)はトレードオフの関係になります。そのため、観測の対象や目的に応じて、適切な空間分解能や観測幅を選択することが重要になりますが、地球規模の環境観測では、空間分解能を抑え、観測幅を優先することで、広範囲を高頻度に観測できるようシステムを設計することになります。

 地球を対象とした衛星リモートセンシングによって得られるデータは、悪用されると国の安全保障上の利益を害するおそれがあることもあり、衛星リモートセンシング記録の適正な取扱いの確保に関する法律(以下「リモセン法」という。)という法律によってルールが設けられています。

 これら衛星リモートセンシングによりデータを扱う業者は、予めリモセン法に基づく「衛星リモートセンシング装置使用許可」の認可を取得する必要があり、当社は、宇宙ベンチャーとして初の認可を内閣府より2019年6月に取得いたしました。

 なお、「リモートセンシング装置使用許可」に関する分解能の基準は以下のとおりとなります。

 

 

 

 

センサーの種類

閾値

光学センサー

2m以下

SARセンサー

3m以下

ハイパースペクトルセンサー

10m以下で、かつ、検出できる波長帯が49を超えること

熱赤外線センサー

5m以下

 (注) センサー毎に分解能の基準値を設け、その基準値を超えた場合にのみ規制の対象となります。

 

 

No

用語

用語定義

SAR

 Synthetic Aperture Radarの略で、「合成開口レーダー」とも言い、衛星に搭載して宇宙空間を移動することで仮想的に大きな開口面として働くレーダーです。レーダーはセンサーからマイクロ波を発射し、地表で跳ね返ってきたマイクロ波をとらえるセンサーです。

JAXA宇宙イノベーションパートナーシップ

(J-SPARC)

 J-SPARCは、宇宙ビジネスを目指す民間事業者等とJAXAとの対話から始まり、事業化に向けた双方のコミットメントを得て、共同で事業コンセプト検討や出口志向の技術開発・実証等を行い、新しい事業を創出するプログラムです。

衛星コンステレーション

 複数(数十機~数万機)の人工衛星を協調して一体的に動作させることによって、高度な価値を提供するシステムを衛星コンステレーションと言います。地球全体をカバーできるため、通信サービスや地球観測(リモートセンシング)サービスを効率的に実現できます。

準リアルタイム

 当社のサービスでは、地球上のほぼどこでも任意の地点を平均10分間隔で観測すること、もしくは特定の地域を選んで平均10分ごとに定点観測することを「準リアルタイム」と定義しています。

分解能

 分解能とは、地球観測衛星に載せられたセンサーが、地上の物体をどれくらいの大きさまで見分けることができるかを表す言葉です。分解能が高いほど、地上の細かい様子を観測するのに優れているということになります。分解能の単位は、長さです。

 例えば、分解能が1mのセンサーでは、1m以上の大きさの物体を見分けることができるということになります。

 

3【事業の内容】

 人工衛星による地球観測データの取得において、現在主流となっている観測手段は光学衛星です。光学衛星は、地球から反射する太陽光を光学カメラやセンサーによって観測します。そのため衛星と観測地点の間に雲のような遮蔽物が入る悪天候時や、観測地点に太陽光が届かない夜間には、観測データの取得が著しく制限されます。

 当社ではこのような課題を解決し、地球のリアルタイム観測が当たり前となった世界を実現するため、①夜間や悪天候時でも撮影が可能であること、及び②常に衛星が上空を飛んでいる状態にするために多数の衛星を打ち上げることの両方を実現するべく、小型SAR衛星の開発及び製造を行い、小型SAR衛星により取得した地球観測データ及び画像の提供を主な事業(以下「地球観測衛星データ事業」という。)としております。

 

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当社小型SAR衛星のイメージ

 

 「宇宙の可能性を広げ、人類の発展に貢献する」という経営理念の下、将来的に36機の小型SAR衛星によるコンステレーションを構築することで、地球上のほぼどこでも任意の地点を平均10分間隔で観測できる、もしくは特定の地域を選んで平均10分ごとに定点観測できる世界の実現を、当社は目指しております。

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36機の小型SAR衛星コンステレーション

 

 衛星コンステレーションとは、多数個の人工衛星が協調動作する様子を星座(英:constellation)に見立てたシステムです。衛星コンステレーションを構築する多数個の人工衛星を打ち上げるには、製造コスト及び打上げコストを大幅に低減させる必要があります。当社が開発する100kg級の小型SAR衛星は、従来の数トン単位の大型SAR衛星とは異なり小型かつ軽量であるため、製造コストや打上げコストを低く抑えることができ、かつ短期間での開発が可能であります。

 当社では、2019年12月に実証試験機である小型SAR衛星1号機(愛称「イザナギ」)を、2021年1月に同じく実証試験機である2号機(愛称「イザナミ」)を打ち上げました。2021年5月には2号機イザナミにより高精細モード(分解能70cm)の地球観測画像の取得に成功し、2021年12月より2号機による地球観測画像の販売を開始いたしました。3号機及び4号機は2022年10月のイプシロン6号機の打上げ失敗により損失を被ったものの、商用機である3号機以降の衛星開発は1号機及び2号機による実証結果を踏まえて改善を施しており、2023年6月に6号機(愛称「アマテル-Ⅲ」)の打上げを成功させ、2号機及び6号機による2機の衛星コンステレーションを構築しました。2024年5月期中には5号機の打上げも予定しており、本書提出日時点では射場へ出荷済です。また7号機及び8号機の開発も進んでおり、画像販売事業は本格化局面を迎えております。

 

 SAR衛星とは、Synthetic Aperture Rader(和:合成開口レーダー)と呼ばれるリモートセンシング技術を利用した、地球観測のための人工衛星です。SAR衛星は、衛星自身が観測地点に対して電波を発射し、反射した電波によって対象物の大きさや表面の性質、距離等を測定します。観測地点からの太陽光の反射に頼らないSAR衛星は、天候や時間帯に左右されることなく常時地球を観測できる大きな利点を持ちます。その一方で、SAR衛星は電波の送受信に大量の電力消費と大きなアンテナを要するため小型化と解像度はトレードオフの関係にありました。

 

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光学衛星とSAR衛星の比較

 

 当社の100kg級小型SAR衛星は、当社が特許を保有する展開式パラボラ型アンテナを搭載しております。軽量かつ大口径のアンテナを搭載することで、SAR衛星の小型化と解像度の両立を追求してきた当社は、実証機である2号機において分解能70cm、商用機である6号機においては分解能46cmを実現しました。

 

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従来のSAR衛星と当社小型SAR衛星の比較

 

 等間隔に設置された骨組み(板バネ)と金属メッシュで構成される当社の2号機までに搭載されていた展開式パラボラ型アンテナは、24本の板バネと精緻な縫製技術によって、大口径にしてわずか10kgという相反するスペックを持ち得ました。アンテナは直径80cmまで畳まれた状態でロケットに取り付けられ、軌道投入後、展開動作の開始からわずか2秒で、板バネが元に戻る力によって直径360cmの大きさに展開します。3号機以降に搭載されているアンテナでは、板バネを36本に増やし、重量も30kg程度まで増加しておりますが、展開後のアンテナ形状が改善したことで画質の大幅な向上を実現しております。

 

0201010_005.png

展開式パラボラ型アンテナ展開後の当社小型SAR衛星

(アンテナ直径:格納時80cm / 展開時360cm)

 

 SAR衛星は自ら照射・受信したマイクロ波の強弱によって地表を観測しています。例えば高層ビルのような背の高い建築物は、地表からビルに反射するものと合わせて、マイクロ波を強く反射するため白く写ります。反対に海や河川のような水面は、遮蔽物もなく表面が滑らかなので、マイクロ波を受信しづらく黒く写ります。なお、通常、観測データの画像化は地上で行われますが、当社小型SAR衛星 商用機には観測データを軌道上で画像化する装置を搭載しており、データ撮影から提供までのリードタイム短縮に貢献しております。

 

0201010_006.png

当社小型SAR衛星6号機が撮影した実際の画像

(2023年7月20日、神奈川県横浜市)

 

 観測地点の天候や時刻に左右されないSAR衛星の特性は、第一に災害時における被災地の状況確認等の防災・減災の観点から、災害大国と呼ばれる我が国において人々が安心して暮らす上で、欠かせない価値の創出を期待されています。また、安全保障の分野においては、2022年から続くウクライナに対する軍事侵攻に際し、ロシア軍の動向監視に国外のSAR衛星事業者による画像が活用され注目を集めましたが、一般的に海外政府に対する撮影の優先権は必ずしも高くないため、日本国内の衛星事業者が運用するSAR衛星に対する期待は高まっております。

 一方で宇宙開発全般における事業上のリスク、初期投資のスケールや国際的な競争環境等は、当社にとって課題であると同時に他の民間事業者に対する参入障壁にもなっております。こうした背景を受けて、日本政府は2023年6月、宇宙開発戦略本部において「宇宙安全保障構想」を決定し、人工衛星が災害対応や安全保障を支えているという認識を示した上で、JAXAが大学や企業の民間ビジネスに対して投資を可能にする法改正を進める方針を示すなど、宇宙開発において官民連携でイノベーションを加速していく姿勢を、これまで以上に明確に打ち出しています。

 当社では今後の本格的な事業展開に先立ち、日本政府による宇宙開発利用加速化プログラム(以下「スターダストプログラム」という。)に参画し、地震や津波、台風などの自然災害に強い経済社会システムを構築していく取り組みである国土強靭化等の特に公益性の高い分野において、SAR衛星による観測データを提供しております。スターダストプログラムを通じて当社は、JAXAを管轄する文部科学省だけでなく様々な官公庁と連携することで、災害時の対応や電力会社等におけるインフラ管理等、多くの分野で協働の可能性を検討しております。

 

 当社の地球観測衛星データ事業は上記の特徴から安全保障分野の需要が高く、2022年5月期よりサービスを開始しております。現在は特に安全保障、海洋監視、インフラ管理、防災・森林監視について働きかけており、従来の常識では考えられなかった新たなサービスを創出してまいります。なお当社は地球観測衛星データ事業の単一セグメントであります。

 

[事業系統図]

 当社の事業系統図は以下のとおりであります。

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 当社の小型SAR衛星による観測データは、官公庁のような公的機関や法人等を対象として販売しております。本書提出日現在は売上の大部分を官公庁が占めておりますが、今後は民間企業に対する拡販を推進していくため、データの解析を得意とする販売代理店と提携するなど、更なる付加価値の提供も進めていく方針です。また販売先は国内に留まらず、市場規模のさらに大きな海外市場に対する拡販も推進してまいります。

 

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九州宇宙開発パートナー

 

 当社の技術は、地元九州の高い技術を持つ企業群を中心とした多くのビジネスパートナーに支えられています。当社の創業メンバーは当社の創業に先立ち、2003年より九州を行脚して地場産業の育成に取り組みました。その後、「九州に宇宙産業を根付かせる」ことを目的に創業し、現在では九州北部に宇宙産業クラスターを形成するまでに至っております。

 

4【関係会社の状況】

 該当事項はありません。

 

5【従業員の状況】

(1)提出会社の状況

 

 

 

 

2023年9月30日現在

従業員数(人)

平均年齢(歳)

平均勤続年数(年)

平均年間給与(千円)

47

5

45.1

2.3

6,521

 (注)1.従業員数は就業人員(当社から社外への出向者を除き、社外から当社への出向者を含む。)であります。また、平均臨時雇用者数は()外数で記載しております。

2.平均年間給与は、基準外賃金を含んでおります。

3.当社は、地球観測衛星データ事業の単一セグメントであるため、セグメント別の従業員数は記載しておりません。

 

(2)労働組合の状況

 当社において、労働組合は結成されておりませんが、労使関係は円満であり、特記すべき事項はありません。

 

(3)管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異

 当社は、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(平成27年法律第64号)」及び「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(平成3年法律第76号)」の規定による公表義務の対象ではないため、記載を省略しております。