(注) 1.当社は連結財務諸表を作成しておりませんので、連結会計年度に係る主要な経営指標等の推移については記載しておりません。
2.「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を第13期の期首から適用しており、第13期に係る主要な経営指標等については、当該会計基準等を適用した後の指標等となっております。
3.第10期、第11期及び第12期は、エネルギーソリューション事業からAI開発事業へ事業転換するために収益を上回る規模で人件費等に対する先行投資を行ったため、経常損失及び当期純損失となりました。
4.第9期、第10期及び第11期は、関連会社が存在しないため、持分法を適用した場合の投資利益については記載しておりません。
5.1株当たり純資産額については、第一種優先株主又は第二種種類株主に対する残余財産の分配額を控除して算定しております。
6.第10期、第11期、第12期及び第13期の1株当たり配当額及び配当性向については、配当を実施していないため、記載しておりません。
7.潜在株式調整後1株当たり当期純利益金額については、第9期は潜在株式が存在しないため、第10期、第11期及び第12期は1株当たり当期純損失であり、また、潜在株式は存在するものの、当社株式は非上場であり期中平均株価が把握できないため、第13期は潜在株式が存在するものの、当社株式は非上場であり、期中平均株価が把握できないため、いずれも記載しておりません。
8.第10期、第11期及び第12期の自己資本利益率については、当期純損失であるため記載しておりません。
9.当社株式は非上場であるため、株価収益率を記載しておりません。
10.第12期は将来的な事業拡大に向け収益を上回る規模で人件費等に対する先行投資を行い、第13期は人件費の増加に加え事業拡大により売上債権が増加したため、それぞれ営業活動によるキャッシュ・フローがマイナスとなりました。
11.第9期、第10期及び第11期についてはキャッシュ・フロー計算書を作成しておりませんので、キャッシュ・フローに係る各項目については記載しておりません。
12.従業員数は就業人員であり、平均臨時雇用者数については、当該臨時従業員数(アルバイト、人材会社からの派遣社員)の総数が従業員数の100分の10未満であるため記載を省略しております。
13.主要な経営指標等のうち、第9期、第10期及び第11期については会社計算規則(平成18年法務省令第13号)の規定に基づき算出した各数値を記載しており、金融商品取引法第193条の2第1項の規定に基づく、監査法人A&Aパートナーズの監査証明を受けておりません。
14.第12期及び第13期の財務諸表については、「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」(昭和38年大蔵省令第59号)に基づき作成しており、金融商品取引法第193条の2第1項の規定に基づき、監査法人A&Aパートナーズにより監査を受けております。
15.2019年4月25日開催の臨時株主総会の決議により、2019年5月16日付で第二種種類株式60株を自己株式として取得し、すべての第二種種類株式70株を2019年5月17日付で消却しております。
16.2023年3月3日開催の取締役会決議により、2023年3月3日付で第一種優先株式150株を自己株式として取得し、その対価として普通株式150株を交付しております。また、会社法第178条の規定に基づき2023年3月3日開催の取締役会決議により、自己株式として取得した当該第一種優先株式のすべてを2023年3月3日付で消却しております。
17.当社は、2023年3月23日開催の取締役会決議に基づき、2023年4月15日付で普通株式1株につき3,000株の割合で株式分割を行っております。第12期の期首に当該株式分割が行われたと仮定して1株当たり純資産額及び1株当たり当期純利益又は1株当たり当期純損失(△)を算定しております。また、当該株式分割により、発行済株式総数は3,636,000株となっております。
18.当社は、2023年4月15日付で普通株式1株につき3,000株の株式分割を行っております。そこで、東京証券取引所自主規制法人(現 日本取引所自主規制法人)の引受担当者宛通知「『新規上場申請のための有価証券報告書(Ⅰの部)』の作成上の留意点について」(平成24年8月21日付東証上審第133号)に基づき、第9期の期首に当該株式分割が行われたと仮定して算定した場合の1株当たり指標の推移を参考までに掲げると、次のとおりとなります。なお、第9期、第10期及び第11期の数値(1株当たり配当額についてはすべての数値)については、監査法人A&Aパートナーズの監査を受けておりません。
株式会社グリッドは、再生エネルギー事業に取り組む目的で、2009年10月に東京都港区において設立されました。集合住宅用の太陽光発電システムの販路拡大策を取る一方で、メガソーラー発電所の開発を行うエネルギーソリューション事業を手掛けるようになりましたが、その後、気象解析をベースに、発電所の発電電力量の予測に取り組んだことを契機に、AI開発事業に事業転換を行い、現在の事業を本格的に開始いたしました。
設立以後の当社に係る経緯は、次のとおりであります。
当社はAI開発事業のみの単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。
当社は、「INFRASTRUCTURE+LIFE+INNOVATION」(インフラ ライフ イノベーション)を企業理念と定め、社会インフラにイノベーションを起こし、インフラ全体の最適化を目指し、社会に貢献することをミッションに活動しております。
現在の社会経済は、エネルギー価格の高騰、サプライチェーンの寸断、カーボンニュートラル(注1)に向けたエネルギー消費の効率化、DX化に伴う業務の効率化等、様々なリスクや課題を抱えております。その中で迅速に最適解を選択し、施策や事業を管理運営していくことが、企業ひいては社会の持続的な成長に必要不可欠となっております。
電力、物流、サプライチェーンといった社会インフラも同様に、ビジネス上の様々な要素を考慮した上で計画的に管理運営されておりますが、その計画業務は熟練の人材による多大な労力と時間により成立しており、現在の複雑かつ不確実性の高い環境下で迅速に最適解を選択することは困難な状況となっております。
そこで当社は、属人性を排し、インフラのオペレーションに関わる様々な制約を変数として、複雑かつ不確実性の高い多数の要素も考慮した上で、AI技術を用いて短時間で最適な計画を提供するため、計画最適化事業を展開しております。具体的には、当社の社会インフラに関する業務知識の豊富なエンジニアが各顧客の計画対象業務を数式化することにより、複雑な業務を再現するシミュレータを開発し、デジタル空間上に機器、設備、人、車両等の動きを再現します。シミュレータ上では、仮想的に設備、車両等を動かし、業務のシミュレーションを行うことができるため、ビッグデータを使用せずにシミュレーション結果を生み出すことが可能となります。そしてその結果から得られるデジタルデータを基にKPI(注2)の最大化や計画の最適化を可能とするアルゴリズムを開発し、業務システムに組み込みます。
計画の最適化は、組合せ最適化の一種となります。組合せ最適化とは、一般に、複数の制約を満たす有限個の解から最良の解(最適解)を探し出すことを意味し、その解法として数理最適化(注3)やメタヒューリスティクス(注4)等の手法が用いられてきました。複雑な業務の計画は様々な要素を考慮して策定されるため、最適解を探し出すには膨大な数の組合せを考慮する必要があり、実務に耐えうる時間で最適解を導くことは高い技術を必要とします。
そこで当社では数理最適化やメタヒューリスティクスの手法に加えて、機械学習(注5)や強化学習(注6)等のAI技術を応用し、各種の計画に適した数理最適化の手法とAI技術を組み合わせたアルゴリズムをAIエンジンとして開発することで、最適解を探索する範囲を限定し、実務に耐えうる時間で最適解を導く手法を採用しました。また、AIエンジン開発を中心に、その前段となるコンサルティングフェーズから、AIエンジンを組み込んだシステム実装・運用フェーズまでを手掛けることで顧客生涯価値(CLTV)を最大化し、かつ運用・サポートサービスを担うことで、安定的な収益に繋げることをビジネスモデルとしております。
[開発プロセス]
AI技術による計画の最適化を事業展開するにあたり、当社が注力している分野は、電力・エネルギー、物流・サプライチェーン、都市交通・スマートシティ(注7)の3分野となります。
機械学習・強化学習をはじめとしたAIアルゴリズム開発手法に加え、数理最適化等の手法を用い、ビジネス課題の解決に必要な技術手法を用いることで、実効性の高い効率的な各種計画の策定を支援するAI開発事業を展開しております。
以下では(1)事業分野、(2)事業の特徴、(3)テクノロジー、についてそれぞれ説明いたします。
自動運転、翻訳、スマートフォン、画像認識等コンシューマー向け分野ではAIの実用化が進んでおりますが、インダストリアル分野、特に社会インフラ領域ではAIの実用化は必ずしも進んでおりません。当社は「インフラと社会を、その先へ」をミッションとし、AI技術の実用化に主眼を置き、社会インフラ領域における計画最適化のエンジニアリング及びサービス事業を展開しております。
計画最適化は生産計画、輸送計画、材料開発、拠点配置計画、スケジューリング計画、適正価格設定等様々な用途で活用が期待されておりますが、組み合わせるシナリオの数の多さに起因して計算量が増大し、現実的な時間内での計算が困難になることや問題の定式化に伴う実装の難しさから導入されている分野は限定的でした。当社は、画像認識、需要予測といった領域で広く利用が進んでいるAI技術を計画最適化に応用し、問題の難易度や要求事項に対して柔軟にAIアルゴリズムを組み合わせることで、エネルギー消費量の削減、輸送効率や生産効率の向上といった顧客の課題を解決しております。また、当社は社会インフラ領域にフォーカスし、特に①電力・エネルギー分野、②物流・サプライチェーン分野、③都市交通・スマートシティ分野の3つの分野に注力しており、各分野における計画最適化は化石燃料の削減に直結するため、現在、最も重要な社会問題であるカーボンニュートラルの実現にも貢献することができると考えております。
[注力する社会インフラ3分野]
国内電力事業者向けに発電所の需給計画の最適化プログラムを開発納入しております。電力自由化に伴い、電力需要に即した需給計画の立案が今後ますます重要になると思われ、脱炭素社会実現の観点からも効率的な需給計画を立案し、発電所を稼働させることが求められます。当社は電力需要を予測し同予測に基づく発電が可能となるよう、各発電所の需給計画をAIアルゴリズムで最適化する技術サービスを提供しております。これにより各発電所の発電機を電力需要に即して起電、停電させることで過剰な発電を抑え、発電に要する燃料の使用量を低減させることが可能になります。
原油、セメント、鉄鋼、製紙、化学品、消費財等様々な分野で生産者は原材料や商品を船舶やトラック等で運搬しており実際の輸送計画は人の経験と知識に基づいて立案されているケースが殆どであります。輸送計画は気象条件、積荷集配箇所、納期等多くの制約条件に基づいて作成されるにもかかわらず、計画最適化に適したソフトウエアが開発されていないため、これまで特定の人材の知識と経験に基づいて計画作成が行われておりました。そのため、輸送計画業務が属人化することや、立案した輸送計画が最適な計画かどうかを検証することが難しいという問題が顕在化しております。
当社は、輸送計画にAIアルゴリズムを取り入れることで輸送計画を最適化する技術サービスを提供しております。様々なビジネス上の制約を加味しながら計算時間を短縮したAIエンジンの開発を行い、最適な輸送計画によって輸送に要する燃料コストの削減を実現しております。
また、輸送計画最適化の応用分野としてサプライチェーン分野での計画最適化の技術サービスも提供しております。調達、在庫、生産、配送、販売に至るサプライチェーンの全工程をデジタル空間に再現し、全体最適や部分最適に関しお客様のKPIに応じて対応可能な技術を有しております。製造事業者向けプロジェクトが複数進行中で、裾野の広い各種製造業分野への計画最適化の活用を促進しております。
当社はスマートシティ分野でのAIの活用を新たな成長分野と位置付けております。既に数社からスマートシティシミュレータの開発委託を受け、当社はシミュレータのコアとなるAI開発部分を担当しております。スマートシティシミュレータは、AIを用いて人の動き、消費活動、ビルのエネルギー使用状況等をデジタル空間に再現し、都市空間における人の動き、消費活動、エネルギー制御等の最適化を可能とします。その他にも、自動運転車やロボット、住宅等、モノや人がインターネットで繋がり、集めたデータを活用して最適なサービスを提供するスマートシティプロジェクトにおいて、エネルギーマネジメントのAI開発部分を担当しております。
また、計画最適化の他にも機械学習を応用し高速道路の渋滞予測システムを提供しており、スマートシティ周辺の都市交通からスマートシティへの導線を最適化するといったプロジェクトへの応用も考えられる点で、スマートシティ分野とのシナジー効果をもたらしております。
当社は、新しいテクノロジーにチャレンジするアーリーアダプター顧客(注8)に向けて顧客要望に応じたAIエンジニアリングプロジェクトを成功させ、これまでに確立したノウハウをReNom APPS(注9)として集約し、クラウドサービス化して展開しております。AI技術を用いた社会インフラ領域における計画最適化にフォーカスし、PoC(Proof of Concept:概念実証)ではなく本番導入を前提としたAIエンジンの開発から入り、実装に至る実績を積み上げてまいりましたが、当社は、①明確な経済的導入効果、②CO2削減効果、③大手企業中心の顧客構成、④CLTV(注10)最大化、⑤ソリューション提供手法の共通化、⑥クラウドサービス提供、⑦人材戦略といった特徴を有しております。以下では、特徴に関し、それぞれ説明いたします。
典型的なAI適用領域である画像認識や需要予測は、経済的な導入効果が曖昧と言われておりますが、AIによる計画最適化は、化石燃料削減やオペレーションコスト削減といった直接的なコスト削減効果をもたらすことが可能となります。顧客は利害関係者にAIに対する投資対効果を明確に説明することができ、新しいテクノロジーの価値に見合った規模の投資が可能になります。このようにAI導入効果をROI(注11)として明確に数値化できることは、受注確度を高める効果があり、当社の収益性の基盤となっております。
当社が注力分野としている電力・エネルギー分野、物流・サプライチェーン分野、都市交通・スマートシティ分野の社会インフラ3分野はいずれも計画最適化により化石燃料の消費を削減することができ、結果としてCO2削減効果を期待することができます。顧客は利害関係者にカーボンニュートラルの実現に向けた取り組みとしてAIに対する投資効果を説明することができ、脱炭素経営の一環としての投資が可能になります。
③ 大手企業中心の顧客構成
電力・石油元売り・プラント・物流・都市交通等、当社がターゲットとする各種社会インフラ分野では、日本経済を支え続けている大手企業が活躍しております。当社の顧客は大半が大手企業となっております。当社は、社会インフラ領域におけるAI技術を用いた計画最適化に特化しているほか、明確な経済的導入効果の提示が可能であること、またCO2削減効果も期待できるといった特徴から大手企業に受け入れられているものと思われます。このような大手企業に最新のAIテクノロジーを提供することで、社会にイノベーションをもたらしていると考えております。
④ CLTV(Customer Life-Time Value)最大化:顧客との長期ライフサイクルビジネス
当社はAI技術の概念実証ではなく実用化をゴールにしていることから、AIエンジンの開発にとどまらずAIエンジンを搭載した業務システムの実装、その後のAIエンジンの性能維持や障害監視・対応を行う運用・サポートまでを総合的に提供することを前提としております。このため、単発のAIエンジン開発のみでは終わらず、顧客との中長期的な関係を構築しております。
⑤ ソリューション提供手法の共通化
当社事業の進め方は、異なる事業分野の計画問題を、共通のプラットフォームや開発メソッドに落とし込み、同一のアーキテクチャーで開発を行うことを特徴としております。既に、輸送計画最適化、電力需給計画最適化、生産計画最適化、スマートシティ分野での都市オペレーション最適化については、共通の設計思想に基づいてAIエンジンの開発を行っております。これにより、システム全体のアーキテクチャーが統一され、水平展開を行う際には、過去のモジュール等を再利用してソリューションを提供することが可能となります。その結果、計画最適化システムを効率的に開発することができると考えております。
⑥ クラウドサービス提供
ReNom APPSはAI技術を活用した計画最適化のためのインダストリークラウド(注12)となります。従来、個別プロジェクト用に開発したシミュレータや最適化モデルで利用したアルゴリズムをモジュール化(注13)・体系化の上、顧客ごとに組み合わせてプラットフォームとして提供するとともに、業種ごとの業務ベストプラクティスを前提としたシステム画面を用意しております。サービス提供の事業分野を、社会インフラ3分野に絞り込むことで、各分野内でのノウハウの再利用性を高めることが可能であり、高度な技術を多数の顧客にクラウドサービスとして提供することが可能となります。現在では、企業価値最大化のシナリオをシミュレーションするReNom VALUATION、サプライチェーンにおける生産や物流計画の最適化を行うReNom SCM、配船の日々の運航計画を自動立案するReNom VESSEL、日々変動する需要に基づき最適な需給計画を自動立案するReNom POWERをReNom APPSとして展開しております。
当社は、データサイエンティストやITエンジニアだけではなく、重電や社会インフラ業界出身で現場オペレーションに造詣が深い技術者を積極的に採用し、入社後にデータサイエンス教育(注14)を施すことにより社会インフラの業務知識を兼ね備えたAI技術者を多数育成しております。現場の業務をよく理解している技術者が、自らの業務知識とAI技術を掛け合わせ、実用的かつ効果的な計画最適化アルゴリズムの提供を実現しております。
人材育成の手法として、当社独自の育成プログラムを用意して様々な事業分野での経験と知識を持つ技術者をAIアルゴリズム開発の最前線で活躍できる人材に育成しております。
また、社外取締役を含めAIや産業分野を専門とする大学の研究者と連携することで、最新の研究技術を取り込む体制を構築しております。
当社は、社会インフラ分野でのAIの実用化を強く意識した独自のAI技術体系を確立しております。
① ReNom APPS
組合せの数の多さに起因して計算量が増大し、現実的な時間内で計算が困難になることや、問題の定式化に伴う実装の難しさといった技術課題に対応するため、シミュレータ開発技術と機械学習・深層学習・深層強化学習を組み合わせた当社独自のデジタルツインテクノロジー(注15)を搭載したReNom APPSを開発しました。シミュレータに実際の制約条件を組み込んでシミュレーションすることで現実に発生しうる状況のみを再現することができ、現実に発生し得ない状況を前提とした組合せを計算するといった無駄を排除しております。また、シミュレーションに基づき機械学習・深層学習・深層強化学習を用いて最適な計画を探索し、その結果策定された計画を評価し、学習することで、より最適な計画を策定することが可能となります。これまでの当社開発実績から共通化できる部分を取り纏め開発用にモジュール化したものの総称がReNom APPSとなります。
ReNom APPSにより、各産業分野における計画最適化のAIエンジン開発の効率化を図るとともに、それを顧客に提供する業務システムやクラウドベースのインフラ基盤を併せてプラットフォーム化し、顧客のシステムの導入までのリードタイムを大幅に短縮しております。
② ReNom SIMBASE:シミュレータ開発フレームワーク
シミュレータを開発する際に共通する処理や、拠点、ネットワーク、輸送手段、消費、生産、備蓄といった社会インフラ分野の計画業務全般で用いられる汎用的な機能をフレームワークとして開発し、実際のAIエンジニアリングプロジェクトで活用しております。これにより、複雑な業務を再現するシミュレータを短期間で開発することが可能となっております。
シミュレータを利用することで、デジタル空間上に機器、設備、物、人の流れを再現し、仮想的に設備や車両を動かし、その結果から得られるデジタルデータを基に、KPIの最大化や計画の最適化を行うことが可能になります。例えば、生産設備のシミュレータを利用することで、ボトルネックの発見と改善、在庫の削減、設備・人の稼働率向上、燃料費や材料費の削減を実現します。
③ Algorithm MIX = 最新技術と旧来技術の融合
組合せ最適化とは様々な制約の下で、無数にある選択肢の中から、ある指標(価値)を最も良くする変数の値(組合せ)を求める手法となります。例えばA地点からB地点へ向かうトラックの最短かつ最少燃料になる経路を求めるような問題があげられます。これは、無数の組合せの中から解を導く必要がありますが、当社は、最新のAI関連技術である機械学習や強化学習や、旧来手法である数理最適化の手法を顧客課題ごとに柔軟に組み合わせることで、実ビジネスの課題を解決する手法を確立しました。例えば、無数の組合せの中から、過去に発生した組合せを機械学習で学習させることで、検討する組合せの範囲を絞り込み、その上で絞り込まれた範囲で、数理最適化の手法を用いることで計算時間を短縮し、実ビジネスで運用可能な計算時間による最適化システムを提供しております。
④ 量子アルゴリズムの研究開発
量子コンピュータ(注16)は次世代のコンピュータとして期待されておりますが、当社は量子アルゴリズム(注17)について2017年より研究開発を行っており、2018年より様々な論文発表、2021年より関連技術の特許出願を行っております。現在当社が行っている計画最適化分野においても量子コンピュータは広く活用が期待されている分野であり、計算の高速化や、コンピュータ上に再現できる状態の規模や精度においても現在のコンピュータを上回る可能性が示唆されております。当社は、最新のAI関連技術に加えて量子インスパイアコンピューティング(注18)等も適宜活用し、既存のコンピュータと組み合わせることで、実ビジネスの課題解決を加速していきます。今後さらに本格的な量子コンピュータが実用化された際には、研究開発で得た知見を活かし、量子テクノロジーを駆使したサービスを提供することが可能であると考えております。
(注) 1.カーボンニュートラルとは、温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させることを指します。
2.KPIとは、Key Performance Indicatorの略で、組織の目標達成の度合いを定義する補助となる計量基準群を指します。
3.数理最適化とは、利用可能な値の集合体から、ある条件に対して最も良い値を選択する手法で、複数の変数及び制約条件が与えられた関数(目的関数)を最大又は最小にする変数の値、並びに最大値、最小値を求める数学的方法を指します。
4.メタヒューリスティクスとは、現実空間において膨大な組合せが発生する最適化問題を解くための経験的手法(ヒューリスティクス)を有機的に結合させたアルゴリズムを指します。ある組合せをスタートに、少しずつ変化させていき、その組合せが良ければ採用、良くなければ別の変化を試す、といったことを繰り返して探索することを基本的な考え方とする手法となります。
5.機械学習とは、経験からの学習により自動で改善するコンピュータアルゴリズム又はその研究領域で、人工知能の一種であるとみなされている手法であり、訓練データ又は学習データと呼ばれるデータを使って学習し、その学習結果を用いて何らかのタスクをこなす手法を指します。
6.強化学習とは、人工知能の一種であり、訓練データ又は学習データを使わずに、選択した行動に対する報酬を最大化するようにシステム自身が試行錯誤しながら、行動を最適化する手法を指します。
7.スマートシティとは、「ICT 等の新技術を活用しつつ、マネジメント(計画、整備、管理・運営等)の高度化により、都市や地域の抱える諸課題の解決を行い、また新たな価値を創出し続ける、持続可能な都市や地域であり、Society 5.0の先行的な実現の場」(「スマートシティ・ガイドブック」内閣府、2021年1月)を指します。
8.アーリーアダプター顧客とは、米・スタンフォード大学の社会学者、エベレット・M・ロジャース教授(Everett M. Rogers)が提唱したイノベーション普及に関する理論で、流行に敏感で、情報収集を自ら行い、判断する人であり、他の消費層への影響力が大きく、オピニオンリーダーとも呼ばれる顧客のことを指します。
9.ReNom APPSとは、シミュレータや最適化モデルを部品化・体系化し、計画最適化サービスをプラットフォームとして提供するためのインダストリークラウドを指します。
10.CLTVとは、顧客生涯価値 Customer Life-Time Valueの略で、マーケティングでは、企業にとってある一人の顧客が将来の関係全体に寄与する価値 (純利益)の予測を指します。
11.ROIとは、return on investmentの略で、投じた費用に対してどれだけの利益を上げられるかを示す指標を指します。
12.インダストリークラウドとは、特定の業界、業種に合わせたサービスを提供するクラウドソリューションを指します。
13.モジュール化とは、計画最適化システムのプログラムソースコードを、当該システムを構成する機能単位で分解することを指します。これにより顧客の要望に応じた機能ごとにモジュールを組み合わせて提供することが可能となります。
14.データサイエンス教育とは、データを扱う手法である情報科学、統計学、アルゴリズム等を横断的に扱うための教育で、統計学、パターン認識、機械学習、データマイニング、可視化等、データサイエンティストを育成するための教育を指します。
15.デジタルツインテクノロジーとは、物理空間(現実空間)にある情報を基にデジタル空間上に当該物理空間を再現する技術をいい、当社では顧客のビジネス環境や業務環境全体をデジタル空間上に再現する技術を指します。
16.量子コンピュータとは、重ね合わせや量子もつれと言った量子力学的な現象を用いて従来のコンピュータでは現実的な時間や規模で解けなかった問題を解くことが期待されるコンピュータを指します。
17.量子アルゴリズムとは、量子コンピュータ上で動作するアルゴリズムを指します。
18.量子インスパイアコンピューティングとは、量子コンピュータで表現される量子の特性を従来のコンピュータ上で擬似的に表現する技術を指します。
[事業系統図]
(注) 有価証券届出書又は有価証券報告書を提出している会社はありません。
(注) 1.従業員数は就業人員であり、臨時雇用者数については、当該臨時従業員数(アルバイト、人材会社からの派遣社員)の総数が従業員数の100分の10未満であるため記載を省略しております。
2.平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。
3.当社はAI開発事業のみの単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。
労働組合は結成されておりませんが、労使関係は円満に推移しております。