第二部 【企業情報】

 

第1 【企業の概況】

 

1 【主要な経営指標等の推移】

 

 

 

回次

第 3 期

第 4 期

第 5 期

第 6 期

第 7 期

決算年月

2018年6月

2019年6月

2020年6月

2021年6月

2022年6月

売上高

(千円)

1,551,503

2,595,297

2,112,712

848,263

1,964,694

経常利益又は経常損失(△)

(千円)

339,574

527,742

412,876

757,162

10,764

当期純利益又は当期純損失(△)

(千円)

350,106

560,916

463,320

766,154

7,321

持分法を適用した
場合の投資利益

(千円)

資本金

(千円)

30,000

79,997

100,000

100,000

100,000

発行済株式総数

 普通株式

 A種優先株式

(株)

 

287,709

 

293,423

 

333,423

 

333,423

 

333,423

142,419

純資産額

(千円)

2,787,087

1,617,995

1,750,672

982,822

955,006

総資産額

(千円)

6,036,764

6,014,087

5,749,517

5,221,446

5,358,096

1株当たり純資産額

(円)

7,199.48

5,499.48

5,237.64

293.47

285.13

1株当たり配当額

(1株当たり中間配当額)

(円)

(―)

(―)

(―)

(―)

(―)

1株当たり当期純利益又は1株当たり当期純損失(△)

(円)

1,882.52

1,923.19

1,554.63

229.78

2.20

潜在株式調整後
1株当たり当期純利益

(円)

自己資本比率

(%)

46.1

26.8

30.4

18.7

17.7

自己資本利益率

(%)

15.7

25.5

27.6

56.2

0.8

株価収益率

(倍)

配当性向

(%)

営業活動による
キャッシュ・フロー

(千円)

88,414

38,837

投資活動による
キャッシュ・フロー

(千円)

53,056

794,897

財務活動による
キャッシュ・フロー

(千円)

204,228

53,371

現金及び現金同等物
の期末残高

(千円)

1,823,527

1,119,296

従業員数 

(外、平均臨時雇用者数)

(名)

78

100

94

75

84

(9)

(16)

(30)

(24)

(22)

 

 

(注) 1.当社は連結財務諸表を作成しておりませんので、連結会計年度に係る主要な経営指標等の推移については、記載しておりません。

2. 持分法を適用した場合の投資利益については、関連会社が存在していないため記載しておりません。

3.2018年9月13日付で、A種優先株主の株式取得請求権の行使を受けたことにより、全てのA種優先株式を取得しております。また、2018年9月18日付で当該A種優先株式を消却しております。

4.1株当たり純資産額については、優先株主に対する残余財産の分配額を控除して算定しております。

5.1株当たり当期純利益については、優先株式の優先配当額を当期純利益から控除して算定しております。

6.1株当たり配当額及び配当性向については、当社は配当を実施していないため記載しておりません。

7.潜在株式調整後1株当たり当期純利益については、潜在株式は存在するものの、当社株式は非上場であり、期中平均株価が把握できないため記載しておりません。

8.株価収益率は、当社株式が非上場であるため記載しておりません。

9. 第3期、第4期及び第5期は、キャッシュ・フロー計算書を作成していないため、キャッシュ・フロー計算書に係る項目については記載しておりません。

10. 従業員数は就業人員であり、臨時雇用者数は年間の平均人員を(  )内に外数で記載しております。

11. 前事業年度(第6期)及び当事業年度(第7期)の財務諸表については、「財務諸表等の用語、株式及び作成方法に関する規則」(昭和38年大蔵省令第59号)に基づき作成しており、金融商品取引法第193条の2第1項の規定に基づき、EY新日本有限責任監査法人により監査を受けております。なお、第3期、第4期及び第5期については、「会社計算規則」(平成18年法務省令第13号)の規定に基づき算出した各数値を記載しており、EY新日本有限責任監査法人の監査を受けておりません。

12. 第6期において売上高が減少した要因は、新型コロナウイルス感染症の影響による世界的な航空機需要の減少に伴い、当社の主力製品であるチタンアルミブレードの販売が減少したことによるものとなります。

13. 第7期において売上高が増加した要因は、新型コロナウイルス感染症に対するワクチンの普及に伴い各国の移動制限が緩和されたこと等を理由に、世界的な航空機需要が回復し、チタンアルミブレードの販売が増加したことによるものとなります。

14.当社は、2023年3月17日付で普通株式1株につき10株の割合で株式分割を行っておりますが、第6期の期首に当該株式分割が行われたと仮定し、1株当たり純資産額及び1株当たり当期純利益又は1株当たり当期純損失(△)を算定しております。

15.当社は、2023年3月17日付で普通株式1株につき10株の割合で株式分割を行っております。

そこで、東京証券取引所自主規制法人(現 日本取引所自主規制法人)の引受担当者宛通知「『新規上場申請 のための有価証券報告書(Ⅰの部)』の作成上の留意点について」(2012年8月21日付東証上審第133号)に基 づき、第3期の期首に当該株式分割が行われたと仮定して算定した場合の1株当たり指標の推移を参考までに掲げると、以下のとおりとなります。なお、第3期、第4期及び第5期の数値(1株当たり配当額については全ての数値)については、 EY新日本有限責任監査法人の監査を受けておりません。

回次

第 3 期

第 4 期

第 5 期

第 6 期

第 7 期

決算年月

  2018年6月

  2019年6月

  2020年6月

  2021年6月

  2022年6月

1株当たり純資産額

(円)

719.95

549.95

523.76

293.47

285.13

1株当たり当期純利益又は1株当たり当期純損失(△)

(円)

△188.25

△192.32

△155.46

△229.78

2.20

潜在株式調整後1株当たり当期純利益

(円)

1株当たり配当額

(1株当たり中間配当額)

(円)

(―)

(―)

(―)

(―)

(―)

 

 

2 【沿革】

当社は、2015年栃木県足利市において、航空機エンジン用チタンアルミブレードの製造販売を目的とする会社として、同じく栃木県足利市にある菊地歯車株式会社(以下、菊地歯車)から分社化して設立する形で創業いたしました。

菊地歯車は、2000年初めに当時主力顧客としていた自動車・建機産業各社のサプライチェーンの再編や世界的な景況の先行き不透明さを鑑み、これまで培った技術力を活かしてより付加価値のある産業領域への模索を始めました。その結果、産業規模・成長性・付加価値の高さ・挑戦に値するハードルの高さなど総合的に勘案し、グローバル航空製造事業への参入を目指すこととなりました。そして、当時菊地歯車の営業部長であった、当社の現代表取締役社長森西淳が航空機エンジンメーカー大手である仏Safran Aircraft Engines社(以下、仏SAFRAN社)に対して、2011年頃から営業活動を行った結果、菊地歯車は、仏SAFRAN社とLEAPと呼ばれる次世代航空機エンジンに搭載されるチタンアルミブレードの取引契約を2013年11月に締結することとなりました。

一方で、チタンアルミブレードの事業規模が将来的に菊地歯車自体の事業規模を超える可能性があること、また、設備投資の規模が大きく、事業を行う上で出資者を募る必要性があったことから、菊地歯車から分社する形で、AeroEdge株式会社を設立することとなりました。

AeroEdge株式会社設立以後の当社に係る経緯は、次のとおりであります。

 

年月

概要

2015年9月

航空機エンジン用チタンアルミブレードの製造販売を事業目的としたAeroEdge株式会社を菊地歯車の100%出資により設立(資本金3,000万円)

2016年1月

菊地歯車の航空宇宙部門をAeroEdge株式会社に分割。合わせて菊地歯車の一部従業員が当社に転籍

2016年3月

菊地歯車が仏SAFRAN社と締結していたLEAPエンジン向けチタンアルミ製低圧ブレードの販売契約主体を、菊地歯車から当社に移管

2016年4月

栃木県足利市に本社工場竣工

2016年4月

チタンアルミブレード初出荷

2017年12月

経済産業省より「地域未来牽引企業」に選定

2018年7月

航空品質マネジメントシステム認証(JISQ9100:2016 & JISQ9001:2015(ISO9001:2015))(※)を取得

2018年9月

環境マネジメントシステム認証(JISQ14001:2015(ISO14001:2015))(※)を取得

2019年10月

国際特殊工程認証(Nadcap)(※)を取得

 

(※)「3 事業の内容 用語解説」をご参照下さい。

 

3 【事業の内容】

当社は、「ゼロからイチを創る ~常識を疑い、組織力で難しい課題に挑戦する~」という経営理念のもと、ものづくり企業として、航空機エンジン部品、並びにその他製品の加工製造・販売を主な事業内容としております。また、創造性と技術力で製造業に新たな価値を提供することを目的とし、Additive Manufacturing(積層造形)※1等の新たなものづくりに向けての研究開発を推進しております。

なお当社は、「加工事業」の単一セグメントで活動しておりますが、参考として、当社の事業・機能を航空機エンジン部品加工とその他の加工の2つの分野に分類し、以下のとおりご説明いたします。

 

(1) 航空機エンジン部品加工

① 事業の特徴

当社は商業用航空機である、仏Airbus社製A320neoファミリー機と米Boeing社製737MAX機用エンジンである「LEAP」に搭載される、チタンアルミ製の低圧タービンブレードの加工生産・販売を行っております。航空機エンジンは、主にファン、低圧コンプレッサー、燃焼器、高圧コンプレッサー、高圧タービン、低圧タービンから構成されておりますが、低圧タービンは、燃焼ガスのエネルギーを回転力に変換しシャフトを介してファンに伝達する役割を担っており、当社のチタンアルミブレードは、その低圧タービンの最後段を構成しております。

 

<チタンアルミ製低圧タービンブレードの搭載図>


 

当社は、航空機エンジンメーカー大手である仏SAFRAN社と、LEAPエンジンに搭載される、当該チタンアルミブレード需要の35%のシェアを、原則として一定の価格(取引契約上は2022年6月から2026年まで同一価格、2027年以降は一定額の減少)で供給する契約を締結しております。そのため、当社のチタンアルミブレード生産量は、LEAPエンジンの生産量、並びにLEAPエンジンが搭載される737MAX及びA320neoファミリー等の生産量に影響を受けることとなります。一方で、航空機販売の特徴として、そのリードタイムの関係上、数年前から受注を受け付けることから、長期に渡って受注残高を積み上げることとなります。その結果、他業界と異なり、需要予測が長期間に渡って見込みやすい業界となります。当社においても、仏SAFRAN社からは数週間分の確定発注とともに、一定期間の発注見込みも提示されることから、一定程度の高い販売予測を見込むことができます。販売単価についても契約によって定められているため、当社の売上金額は一定の精度で見込むことができます。また、当社は将来の増産に対応する設備を確保していること、材料が無償支給であることによる変動費の低さから、売上増加に伴う利益率の拡大が期待できる収支モデルとなっております。

 

 

<搭載される航空機及びエンジンとチタンアルミブレードの関係>


 

② 製品の概要

当社が生産・販売するチタンアルミ製の低圧タービンブレードが搭載されるLEAPエンジンは、米GE社と仏SAFRAN社の合弁企業であるCFM International社により開発生産され、先端の技術を搭載することにより、従来機種より消費燃料とCO2排出量の15%削減を実現したエンジンであり、航空機グローバルシェアNo.1の仏Airbus社製A320neoファミリー機とNo.2の米Boeing社製737MAX機に搭載されております(出典:一般財団法人日本航空機開発協会、2023年3月末時点)。

航空業界においては、燃料費高騰や環境負荷等への対応を背景に、燃費の向上が求められております。チタンアルミブレードは、従来使用されていたニッケル合金製のものと比較し、約半分の比重であるため機体の軽量化に貢献するとともに、高温における強度劣化が少なく、耐熱性も兼ね揃えた部品となります。そのため、旧来エンジンよりも性能を向上させることを目的に、LEAPエンジンに導入された新たな技術要素のうちの1つとなっております。なお、チタンアルミブレードは、従来材料より軽量である一方で、量産加工の難易度が高く、LEAP向けチタンアルミブレードを供給している企業は当社を含めてグローバルで2社のみとなります。当社は仏SAFRAN社と取引契約を締結し、当該チタンアルミブレードを供給しております。

当社では、最適な工程設計の開発、CAMによる加工プログラムの自社作成、加工に必要なエンドミル(切削加工に用いる工具)の自社設計と生産、設備メーカーとの協働による特殊設備の導入、治具の自社開発設計と製作、非破壊検査設備の導入や品質検査体制の自社整備等を行うことで、チタンアルミブレードの量産加工を実現しております。なお、チタンアルミブレードの量産加工の特徴は以下のとおりです。

 

<チタンアルミブレードとその量産加工の特徴>

項目

説明

硬くて脆い金属間化合物

チタンアルミとは、金属間化合物(2種類以上の金属によって構成される化合物)の一種(Ti-48Al-2Cr-2Nb)であり、比重がNi(ニッケル)合金の約半分程度でTi(チタン)合金よりも優れた耐熱強度を有するが、硬くて脆い特徴があり、加工難易度が高い

希少金属故に技術が未確立

チタンアルミは従来のニッケル合金などの耐熱合金と比較し、最適な加工条件が大きく異なり、切削加工にあたっては、工具及び切削条件の選定難易度が高く、特別なノウハウが必要となる

複雑形状且つ高精度の両立が必要

最新の空力設計を採用し、空力性能と軽量化を追求しており、複雑形状かつ要求精度が厳しい

量産化が困難

金属間化合物であるチタンアルミは、品質を維持しながら効率的な量産工程の確立が非常に難しく、量産化実現の例はグローバルでも極めて少ない

 

 

 

③ 航空業界部品で求められる能力と当社の状況

航空機エンジン産業は高度な安全性及び信頼性を確保するため、構成部品はロット番号やシリアル管理によるトレーサビリティが求められており、サプライヤーは設備の変更や加工プログラムの一部修正等の全ての生産プロセスの変更や修正において航空機エンジンメーカーの認証や許可が必要となります。そういった背景から、生産サプライヤーはあらゆる面で、高い水準の能力を具備することが求められております。

求められる能力

当社の状況

工程設計力

航空機部品においては、「難削材※2」「複雑形状」「特殊工程※3」「精密検査」が要求され、複雑に絡まった難易度の高い工程設計が必要となりますが、これらを自社で設計し、顧客要求を実現しております

工具開発力

チタンアルミ材料の特殊性や翼面の三次元形状に合わせた最適な加工を実現するためには専用工具の開発・設計が不可欠となります。3D CADを用いた工具設計や、工具形状測定機による品質保証体制を自社で構築するとともに、自社内での製造により原価の低減を実現しております。

加工技術力

航空部品量産加工には、最適な設備選定や、治工具設計、加工条件設定が重要となります。当社はこれらの技術開発を行い、自社でまとめる総合力を有しております。また、難易度の高い加工や、自動化を実現するためのシステム開発やDXにも積極的に取り組み、高効率なオペレーションを追求しております。

品質マネジメント力

当社は、航空産業の品質マネジメントシステム、顧客要求事項に準拠した品質保証の体制を独自に構築しております。 JISQ9100※4、JISQ14001※5及びNadcap※6等の認証取得に加え、社内の工程変更手続き、トレーサビリティ管理など、品質データ統合による品質管理の高度化を実現しております。また、検査工程においては、接触式、非接触式の高精度三次元測定機による検査体制と管理体制を整えております。

プロジェクトマネジメント力

海外OEMから航空エンジン部品を受注するためには、単なる『製造能力』だけではなく、グローバルコミュニケーション能力は当然のことながら、開発から量産フェーズにおける提案力、技術開発力、対応力、非破壊検査及びサプライヤーコントロールを含む一気通貫の量産体制の構築能力が不可欠となります。当社はこれらを実行する統合力を有しております。

先端検査技術力・

分析力

歩留り向上には、材料に起因する問題やクラック等のメカニズム解析が不可欠となります。当社は、材料観察やSEM分析※7、X線等の技術を駆使し、自社内で技術的な問題解決を行うことが可能です。治具構造やクランプ力の最適化を行うため、FEM構造解析※8を用いて定量的な評価や設計へフィードバックする取り組みも行っております

特殊工程の具備

航空エンジン部品には、FPI(蛍光浸透探傷検査)※9や、Xray(X線透過検査)等、いわゆる特殊工程が必要となります。特殊工程は、専門設備の他、検査員も数百時間に及ぶOJTが必要となる等、保持するには高いハードルが存在しております。当社はこれらの工程を自社で実施するための設備と技術を保有するとともに、国際特殊工程認証であるNadcapを取得しております。

 

 

④ 航空機体及びエンジン産業構造

当該事業が属する産業構造は下記のとおりであります。

a.航空機産業の特徴

航空機エンジンは高度な品質水準が求められるため、開発から品質及び生産の安定化までに長い年月と莫大な金額の設備投資が必要となります。また、品質及び生産が安定化した後も他産業と比較にならないほどの品質水準と生産管理水準が求められることが特徴です。航空機産業と自動車産業との比較は下記のとおりとなります。

 

<航空機産業の特徴~自動車産業との比較~>

 

航空機産業

自動車産業

ユーザー

・特定(航空事業者)

・不特定(主に個人)

安全基準・審査

・国際基準に照らした認証・証明が必要

・厳格な品質管理(工程管理・検査)

・各国の独自基準

・厳格な品質管理

開発期間

・通常10年以上

・通常1~2年程度

製品サイクル

・20年~30年程度

・4~6年程度

部品点数

・約300万点(ボーイング777の場合)

・専用部品が多い

・約2~3万個

・部品共通化

年間生産数

・月産数十機程度

・1モデル数十万台

完成品メーカー

<機体>

・Airbus、Boeing、Comac 等

<エンジン>

・GE、Pratt & Whitney、Rolls-Royce 等

トヨタ自動車、フォルクスワーゲン、ルノー、日産、ゼネラルモーターズ、現代自動車、フォード・モーター、本田技研工業、FCA、PSA、ダイムラー、スズキ、BMW、マツダ、SUBARU、三菱自動車、上海汽車、長安汽車、吉利汽車、BYD、テスラ 等

 

(出所:経済産業省「航空機産業の動向と参入のタイミング」を参考に当社作成)

 

b.航空機体及びエンジンメーカー

航空機産業はその産業構造から、参入障壁が高く、最終製品メーカー(機体及びエンジン)が少数の企業で占められていることが特徴となります。実質的に、商業用航空機体メーカーは仏Airbus社及び米Boeing社の2社、航空機エンジンメーカーは米GE社、米Pratt & Whitney社及び英Rolls Royce社の3社で大半のシェアが占められております。なお、当社の製品であるチタンアルミ製タービンブレードが搭載されるLEAPエンジンは、米GE社と仏SAFRAN社の合弁企業であるCFM International社が開発したエンジンとなります。

<主要な航空機体及びエンジンメーカー>

航空機体メーカー

航空機エンジンメーカー

仏Airbus社

米Boeing社

米GE社(仏SAFRAN社と合弁でCFM International社)

米Pratt & Whitney社

英Rolls Royce社

 

 

c.航空機エンジン産業のライフサイクル

航空機や航空機エンジンは、その長い開発期間と多額の開発費用から、ライフサイクル期間が、他産業の製品のライフサイクル期間より長期間になることも特徴です。したがって、航空機エンジン産業の事業収益モデルは莫大な初期投資と、長期に渡る品質管理体制と生産管理体制の準備と構築を必要とすることが特徴となります。一方で、参入障壁が高く、新規参入企業が少ないために将来の利益を計画しやすいという特徴があります。そして、航空機エンジン産業において、事業の初期段階である導入期には赤字事業となりますが、設備投資が一巡した成長期以降は継続的に黒字事業となることが一般的なビジネスモデルとなっております。

 

d.航空機体と航空機エンジンの種類

実質的に唯一の商業用航空機体メーカーである仏Airbus社及び米Boeing社が現在新規受注を進めている旅客用機体種類は限定されております。仏Airbus社の新規受注機体種類は、A350、A330、A220、A320neoファミリーの4機種のみであり、米Boeing社の新規受注機体種類は、777機、787機、737MAX機の3機種のみとなっています。そのうち、当社製品が搭載されるLEAPエンジンが搭載される機種は、仏Airbus社のA320neoファミリー機及び米Boeing社の737MAX機となります。

仏Airbus社のA320neoファミリー機では、LEAPエンジンを含めた2種類のエンジンが採用されており、米Boeing社の737MAX機では100%の機体でLEAPエンジンが搭載されております。LEAPエンジンが搭載される両機種は主に国内線で多く使われる中小型のNarrow Body機(狭胴機)であり、燃費が良く環境負荷が低いことが特徴となっております。

 

e.航空機輸送の考え方と受注残高機数

航空機輸送の考え方として、ハブアンドスポーク方式と、ポイントトゥポイント方式の考え方があります。ハブアンドスポーク方式は、大型のWide Body機(広胴機)等を活用し、主要空港などの大規模拠点(ハブ)に輸送を集中させ、そこから中小型のNarrow Body機等を活用して各拠点(スポーク)に輸送を行う方式となります。一方で、ポイントトゥポイント方式は、中小型機等を活用し、出発地から目的地に直接輸送を行う方式となります。以前は、大型機でないと長距離飛行ができなかったこともあり、ハブアンドスポーク方式が多く採用されておりました。しかしながら、エンジン性能の向上による規制の変更や、中小型機の燃費向上に伴う長距離飛行の実現に伴い、乗換等の手間が不要で柔軟なフライト設定が可能なポイントトゥポイント方式の考え方を取り入れる航空会社が増加しております。その結果、中小型機の需要が大きく増加する傾向にあり、仏Airbus社及び米Boeing社ともにLEAPエンジンが搭載される中小型機の受注残高が大きく増加しております。

<航空機種別の受注残高機数(単位:機)>

仏Airbus社

米Boeing社

機体種類

受注残高機数(※1)

機体種類

受注残高機数(※1)

機数

構成比

機数

構成比

A320neoファミリー(※2)

6,427

82.5%

737MAX(※2)

4,623

79.3%

A330

295

3.8%

767

120

2.0%

A350

486

6.2%

777

439

7.5%

A220

558

7.2%

787

622

10.7%

その他

27

0.3%

その他

27

0.5%

合計

7,793

100.0%

合計

5,831

100.0%

 

※1 一般財団法人日本航空機開発協会(2023年3月末時点)

※2 LEAPエンジン採用機種

 

(2) その他の加工

当社は、チタンアルミブレードの生産販売以外にもチタンアルミブレードの加工で培った技術・経験、並びにAdditive Manufacturing技術も活用し、eVTOL(電動垂直離着陸機、いわゆる空飛ぶクルマ)用部品やガスタービン用部品の受託加工を行っております。これら受託加工は、社内の設備で全てを加工する場合もあれば、協力サプライヤーに加工の一部を委託する場合もあります。社内の設備で加工する場合は、その量産規模にもよりますが、一定程度の設備投資が必要となる場合があります。

 

 

[事業系統図]

 


 

[用語解説]

※1 Additive Manufacturing(積層造形)とは、三次元造形する方法の一連の手法で、3Dの設計図を元に3Dプリンタで材料を積層し立体を造形する方法のことです。

※2 難削材とは、材料の性質により機械で切削加工がしにくい、あるいは「取り扱い自体が難しい材料」のことを指します。

※3 特殊工程とは、材料又は部品の物理的、化学的、電気的又は金属冶金的特性を変化させる工程であって、破壊試験、非破壊検査又は解析を行わなければ特性を評価することができない工程のことを指します。

※4 JISQ9100とは、航空宇宙・防衛産業に特化した品質マネジメントシステムに関する国際認証規格です。

※5 JISQ14001とは、 国際標準化機構(ISO)が策定した環境マネジメントシステムの国際認証規格です。

※6 Nadcapとは、米国のNPOであるPRI (Performance Review Institute)が審査機関として運営している、国際航空宇宙産業における特殊工程や製品に対する国際的な認証制度です。

※7 SEM分析とは、走査電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)によって電子線を試料に当て、表面を観察する装置を活用した分析手法であり、高倍率観察(10万倍以上)が可能となります

※8 FEM構造解析とは、有限要素法(Finite Element Method)を用いて構造力学における数値解析を行う代表的手法です。構造物や物体を小さな要素(Elements)に分割して、方程式を用いて計算し近似解を求めることで、構造物にかかる荷重により発生する変位や応力の値や分布を導きます。

※9 FPI(蛍光浸透探傷検査)とは、特殊工程の1つであり、表面に開口している目視では見えにくいキズを検査する非破壊検査方法です。

 

4 【関係会社の状況】

 

名称

住所

資本金
(百万円)

主要な事業
の内容

議決権の所有
(又は被所有)
割合(%)

関係内容

(その他の関係会社)

 

 

 

 

 

菊地歯車株式会社

栃木県足利市

30

自動車・建設機器等の精密歯車製造・販売

(被所有)

28.7%

リース債務の保証

受託加工等

役員兼務1名

 

(注)有価証券届出書又は有価証券報告書を提出している会社ではありません。

 

5 【従業員の状況】

(1) 提出会社の状況

 

 

 

 2023年4月30日現在

従業員数(名)

平均年齢(歳)

平均勤続年数(年)

平均年間給与(千円)

85

(22)

36.0

3.6

5,166

 

(注)1.従業員数は就業人員であり、臨時従業員数(パートタイマー及び期間契約の従業員)は( )内に年間平均人数を外数で記載しております。

2.平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

3.当社は、加工事業の単一セグメントであるため、セグメント別従業員数の記載を省略しております。

 

(2) 労働組合の状況

労働組合は結成されておりませんが、労使関係は円満に推移しております。