第二部 【企業情報】

 

第1 【企業の概況】

 

1 【主要な経営指標等の推移】

 

 

回次

第9期

第10期

第11期

第12期

第13期

第14期

決算年月

2017年10月

2018年10月

2019年10月

2020年10月

2021年9月

2022年9月

売上高

(千円)

1,403,808

2,086,795

2,416,752

3,768,685

3,810,845

5,843,209

経常利益又は経常損失(△)

(千円)

116,458

328,526

336,230

349,968

264,684

387,594

当期純利益又は当期純損失(△)

(千円)

109,628

217,639

283,531

269,311

53,927

36,099

持分法を適用した場合の投資利益

(千円)

資本金

(千円)

30,000

30,000

30,000

30,000

30,000

30,000

発行済株式総数

(株)

200

200

20,000

20,000

20,000

20,000

純資産額

(千円)

173,761

43,878

327,409

596,721

695,464

736,915

総資産額

(千円)

1,300,315

2,305,004

3,050,639

4,276,452

4,908,480

7,760,110

1株当たり純資産額

(円)

868,808.85

219,390.77

16,370.48

29,836.05

347.73

365.78

1株当たり配当額

(うち1株当たり中間配当額)

(円)

(-)

()

()

()

()

()

1株当たり当期純利益金額又は1株当たり当期純損失金額(△)

(円)

548,143.67

1,088,199.62

14,176.57

13,465.57

26.96

18.05

潜在株式調整後

1株当たり当期純利益金額

(円)

自己資本比率

(%)

2.5

10.7

14.0

14.2

9.4

自己資本利益率

(%)

351.5

152.7

58.3

8.3

5.1

株価収益率

(倍)

配当性向

(%)

営業活動による

キャッシュ・フロー

(千円)

865,051

410,604

投資活動による

キャッシュ・フロー

(千円)

1,039,599

2,528,670

財務活動による

キャッシュ・フロー

(千円)

121,505

2,376,795

現金及び現金同等物の期末残高

(千円)

384,210

642,939

従業員数
 (外、平均臨時雇用者数) 

(人)

23

38

53

65

81

89

(6)

(11)

(12)

(12)

(13)

(15)

 

(注) 1.当社は連結財務諸表を作成しておりませんので、連結会計年度に係る主要な経営指標等の推移については記載しておりません。

   2.潜在株式調整後1株当たり当期純利益金額については、新株予約権の残高がありますが、当社株式は非上場であり、期中平均株価が把握できないため、記載しておりません。

 

   3.1株当たり配当額及び配当性向については、配当を実施していないため、記載しておりません。

     4.第9期の自己資本比率については、債務超過であったため記載しておりません。

   5.第9期の自己資本利益率については、当期純損失であったため記載しておりません。

   6.持分法を適用した場合の投資利益については、当社は関連会社を有していないため記載しておりません。

   7.当社株式は非上場であるため株価収益率を記載しておりません。

   8.従業員数は就業人員(社外から当社への出向者を含む。)であり、臨時雇用者数(パートタイマー、人材会社からの派遣社員、季節工を含む。)は、年間平均人員を()外数で記載しております。

     9.「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を第14期の期首から適用しており、第14期に係る主要な経営指標等については、当該会計基準等を適用した後の指標等となっております。

     10. 第9期は過去の誤謬(地代家賃フリーレントの按分処理等)を反映させた結果、経常損失及び当期純損失となっております。

     11. 第13期の経営指標等について、誤謬の訂正による遡及処理の内容を反映させた数値を記載しております。

     12.主要な経営指標等のうち、第9期から第12期については会社計算規則(平成18年法務省令第13号)の規定に基づき算出した各数値を記載しており、金融商品取引法第193条の2第1項の規定による監査証明を受けておりません。

     13.前事業年度(第13期)及び当事業年度(第14期)の財務諸表については、「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」(昭和38年大蔵省令第59号)に基づき作成しており、金融商品取引法第193条の2第1項の規定に基づき、三優監査法人により監査を受けておりますが、第9期、第10期、第11期及び第12期の財務諸表については、監査を受けておりません。

     14.2021年9月14日開催の第13期臨時株主総会決議により、決算期を10月31日から9月30日に変更しました。従って、第13期は2020年11月1日から2021年9月30日の11か月決算となっております。

     15.当社は2023年2月9日開催の取締役会決議により、2023年2月28日付で普通株式1株につき100株の株式分割を行っております。第13期の期首に当該株式分割が行われたと仮定し、1株当たり純資産額及び1株当たり当期純利益金額を算定しております。

     16.2019年1月11日開催の取締役会決議により、2019年1月24日付で株式1株につき100株の分割を行っております。また、2023年2月9日開催の取締役会決議により、2023年2月28日付で普通株式1株につき100株の株式分割を行っております。

         そこで、東京証券取引所自主規制法人の引受担当者宛通知「『新規上場申請のための有価証券報告書(Ⅰの部)』の作成上の留意点について」(平成24年8月21日付東証上審第133号)に基づき、第9期の期首に当該株式分割が行われたと仮定して算定した場合の1株当たり指標の推移を参考までに掲げると以下のとおりとなります。

         なお、第9期、第10期、第11期及び第12期の数値(1株当たり配当額については全ての数値)については、三優監査法人の監査を受けておりません。

回次

第9期

第10期

第11期

第12期

第13期

第14期

決算年月

2017年10月

2018年10月

2019年10月

2020年10月

2021年9月

2022年9月

1株当たり純資産額

(円)

△86.88

21.94

163.70

298.36

347.73

365.78

1株当たり当期純利益金額又は1株当たり当期純損失金額(△)

(円)

△54.81

108.82

141.77

134.66

26.96

18.05

潜在株式調整後

1株当たり当期純利益金額

(円)

1株当たり配当額(うち1株当たり中間配当額)

(円)

(-)

(-)

(-)

(-)

(-)

(-)

 

 

 

2 【沿革】

 当社は、「the SOHO」の運営受託を行うため、当時「the SOHO」のプランディングプロデュースを行う株式会社トランジットジェネラルオフィスの完全子会社として、2009年8月に設立されました。

 以下、当社の沿革を記載しております。

年月

概要

2009年8月

東京都目黒区上目黒において株式会社トランジットジェネラルオフィスが株式会社リアルゲイトを設立

2009年9月

宅地建物取引業の登録完了(東京都知事(3)90947)

2010年1月

プロパティマネジメントサービスを開始

「the SOHO」が第1号施設

2012年2月

東京都港区北青山に本社を移転

2012年7月

マスターリースサービスを開始

2017年11月

一級建築士事務所の登録完了(東京都知事登録第62066号)

2019年9月

東京都渋谷区千駄ヶ谷に本社を移転

2020年2月

特定建設業許可取得(東京都知事許可(特-1)第151421号)

2021年7月

株式会社トランジットジェネラルオフィス所有の全株式を株式会社サイバーエージェントに譲渡、同社の連結子会社化

2021年11月

自社保有物件によるサービスを開始

2023年2月

東京都渋谷区千駄ヶ谷「PORTAL POINT HARAJUKU」に本社を移転

 

 

 

3 【事業の内容】

(1) 事業の内容

<フレキシブルワークプレイス事業>

 フレキシブルワークプレイス事業は、スモールオフィスやシェアオフィスといったフレキシブルワークプレイスを提供することで、不動産に付加価値を付与し収益性を向上させる事業です。ビルオーナーから不動産の運営委託やそれらに付随する設計・施工請負の受託、自社で保有している物件を直接テナントに賃貸することも行っております。

 また、当社のフレキシブルワークプレイス事業は、対象プロジェクトがリノベーション案件か新築案件かによって、再生ソリューションと開発ソリューションという二つの建物ソリューションに分けられます。再生ソリューションは築古ビルを対象として、耐震補強や増築、用途変更などを通じて抜本的な資産価値の向上を図っております。築古ビルを扱うメリットは、イニシャルコストが安く済み、稼働までの期間が短く、新築プレミアムの影響を受けにくいことなどが挙げられます。開発ソリューションは新築ビルを対象として、スモールオフィスやシェアオフィスといったフレキシブルワークプレイスを組み込むことで、付加価値を付与しております。開発ソリューションは、レジデンスに店舗やオフィスを組み合わせるというコンプレックス型が多く、シェアオフィスやスモールオフィスが建物全体の価値をあげるアイテムとなることで、施設価値の向上に繋がっております。

 


 

(不動産の運用形態)

不動産の運用形態としては、①マスターリース(以下、MLと表記)契約、②プロパティマネジメント(以下、PMと表記)契約、③保有(自社保有物件における入居テナントとの賃貸借契約)となっています。物件の個別性や市況に応じて柔軟に運用形態を選択することで、不動産価値の最大化を図っております。また、リーシングマネジメントやイベント開催といった物件運営の附帯事業についても提供しております。

当社のビジネスモデルは、ML・保有(賃貸)におけるテナントからの賃料収受及びPMにおけるオーナーからの運営委託フィー収受といった物件運営を通じて継続的に得られるストック型収入がメインであり、2022年9月期実績で売上全体の76%を占めております。ストック型収入の安定的な積み上げをベースとしながらも、物件運営に付随して発生する設計・施工請負契約の受託や保有物件の売却といったフロー型収入が積み上がります。

 

 

2022年9月期運用形態別売上構成比(単位:百万円)

 

ストック型収入

フロー型収入

総計

ML

PM

保有

その他

小計

設計・施工

販売

小計

再生

3,255

360

174

12

3,803

1,371

-

1,371

5,175

開発

593

31

-

-

625

42

-

42

668

3,848

392

174

12

4,428

1,414

-

1,414

5,843

 

 

売上構成比推移/ストック型売上・フロー型売上(単位:百万円)

 

2020年10月期

2021年9月期※

2022年9月期

ストック型売上

3,009

3,357

4,428

フロー型売上

759

453

1,414

3,768

3,810

5,843

 

(注)2021年9月期(第13期)は2020年11月1日から2021年9月30日の11か月決算となっております。

 

①ML契約

 当社のML契約は、競争力の低下した築古ビルを中心に一括借り上げし、運営・管理しております。不動産所有者に賃料を保証し借り上げたのちに、不動産価値を向上させ、その物件を転貸することによりテナントから受取る賃料を収益に計上しております。土地や建物を保有することなく管理物件を転貸にて運用することで資本効率を高め、資産価値下落のリスクを抑えることにより、収益を安定的に確保することが可能となっております。なお、ML契約に付随して、設計・施工請負契約を締結するケースもございます。

 

②PM契約

 当社のPM契約は、テナント誘致、賃貸借契約代行、トラブル対処等のテナント窓口業務、テナント請求業務、建物や設備の点検代行等を行うことでビルオーナーから手数料を収受しております。施設運営の実績と知識を基に、不動産価値を最大化する運営と管理を提供しております。なお、PM契約に付随して、設計・施工請負契約を締結するケースもございます。

 

設計・施工請負契約

a. 設計監理契約(2017年11月一級建築士事務所登録)

 物件の設計監理の請負契約についても対応しております。不動産は商品としての個別性が強くそれぞれに特有の事情を抱えております。従って、個別性の強い築古ビルの抜本的な資産価値向上のためには、経験に基づく高度な技術力が必要となります。また、設計変更の内製化など事業推進の迅速化にも繋がっております。

 

b. 工事請負契約(2020年2月特定建設業許可取得)

 リノベーション工事や新築工事だけでなく、運営物件における附帯工事の発生(補修、指定工事等)といった工事請負契約についても対応しております。特定建設業許可を取得したことによって、工事請負金額の制限が無くなっただけでなく、社内へのノウハウの蓄積や事業推進の迅速化にも繋がっております。

 

③物件保有(入居テナントとの定期建物賃貸借契約)

 自社で物件を保有した上で、入居テナントと定期建物賃貸借契約を締結することで賃料収入を得るケースもございます。自らが不動産所有者となることで賃料支払い負担がなくなることから、借入利息を勘案しても粗利では収益アップに繋がっております。また、保有物件の売却により、売却益を確保しながらも、資産入替による財務バランスの確保を行う場合もございます。この場合、保有物件売却後もML契約もしくはPM契約を締結することで、物件運営による安定的なストック収入を継続させております。

 

 当社の事業はフレキシブルワークプレイス事業の単一セグメントであり、セグメント情報を記載しておりません。

 

 事業系統図は、以下のとおりです。

 

①ML契約


 

②PM契約


 

③物件保有


 

(運営物件)

 2023年3月末時点において、累計プロジェクト(終了物件も含んだ累計プロジェクト数を指します)は90件、稼働中プロジェクト(テナント入居前物件も含めた運営中プロジェクトを指します、リーシングマネジメント契約等も含まれます)は69件、入居済物件(テナント入居後の運営中物件を指します、リーシングマネジメント契約等は含まれません)は55件となっております。

 

稼働中プロジェクト内訳(69件)

対象物件

再生

59件

開発

10件

 

 

 

 

運用形態

ML

44件

PM

20件

保有

3件

LM※

2件

 

※リーシングマネジメント契約を指す
 

入居済物件内訳(55件)

対象物件

再生

47件

開発

8件

 

 

 

 

運用形態

ML

37件

PM

16件

保有

2件

LM

-

 

 

(東京都心部を中心としたエリア展開)

 当社は、築30年前後で延床面積300~600坪程度のコンパクトな築古ビルが主な仕入物件となっております。オフィス需要並びに収益性を鑑み、東京都心部を中心に展開しております。コンパクトな築古ビルを対象としているため、価格優位性の高い東京都心部での事業展開が可能となっております。事業展開の規模を大きくせずに東京都心部の得意エリア内での当社物件数を増やしていくというドミナント戦略を採用することで、他社との差別化を行っております。当社の得意とするエリアは、潜在性を秘めた築古ビルの供給ストックが豊富であり、テナント需要にも恵まれています。その上、当社がマーケットを熟知している地域であるからこそ、都心部で個性的なオフィスを適正価格で借りたいというエリア特有のニッチな需要に応えることが可能となっております。また、エリアを集中させることにより、管理面での人的資源の投下が効率化され、運営費の抑制に繋がることも大きなメリットです。なお、2023年3月末時点の稼働中プロジェクト69件のうち、渋谷区は27件、港区は15件、目黒区は11件です。

 

(入居テナント・契約内容)

 2023年4月1日時点の入居テナント数は、区画契約872件、フリーデスク契約355件となっております。区画契約872件のうち、事務所契約が743件と区画契約の85%を占めております。そして当社の入居テナントの多くを占めるのが区画専有面積50㎡未満のスモールオフィスであり、事務所契約の63%を占めております。

 また、入居テナントの業種は情報サービス業等がおよそ4分の1を占め、創立年数が10年以内の社歴の若い会社がおよそ6割を占めております。

 

 入居テナント契約種別(2023年4月1日時点)     区画:入居テナント業種(2023年4月1日時点)


※1 FD契約はフリーデスク契約を指し、フリーデスク(法人登記有プラン・法人登記無しプラン)、固定ブース・デスクが該当

※2 SOHOは "Small Office Home Office" の略語であり、住居兼オフィスを指す

 

(クライアントとしてのビルオーナー)

 2023年3月末時点において稼働中プロジェクト69件に対して、クライアント数は46となっております。狭域エリアでの展開ながら、特定のクライアントに大きく偏ることなく業務を受託しております。クライアントの属性も、不動産デベロッパーや鉄道会社などの大企業から個人ビルオーナーまで多種多様となっております。ビルオーナー向け物件内覧会の実施、ダイレクトメールでのアプローチ、講演会の実施・専門誌でのコラム等の発信、プロモーション活動による会社自体の認知度の向上などによりクライアントを獲得しています。

 


リアルゲイトフォーカスマップ(稼働中物件)

 

 


渋谷区北参道エリアフォーカスマップ

 

<社会的課題と解決>

 不動産業界における社会的課題として、競争力を失った築古ビルの増加が挙げられます。その背景として、都心部における止まらない大規模開発と二次空室問題や、コロナ禍で進行した働き方改革や、大規模災害のたびに改正される建築基準法や消防法などが挙げられます。当社のフレキシブルワークプレイス事業は、ビルオーナーの遊休不動産の有効活用をしたいというニーズと、入居テナントの個性的なオフィスを適正価格で借りたいというニーズの双方に応えることで、社会的課題に対するソリューションを提供しております。

 

(ビルオーナーのニーズ:遊休不動産の有効活用をしたい)

 税法上、事務所用鉄筋コンクリート構造の減価償却資産の耐用年数は50年であるため、機能として鉄筋コンクリート構造の寿命はそれ以上にも関わらず、耐用年数を経過すると帳簿価額はゼロとなり、取引実態としての資産価値も極めて低くなってしまう現状がございます。税法上の償却年数という一律の考え方に加え、1981年建築基準法の改正によって「旧耐震」というだけで、著しく資産価値が低下してしまう事態となりました。また、かつては検査済証を取得する習慣がなかったことを背景に、未だに検査済証未取得の築古ビルが数多く存在しております。当社は、東京都心部の優良エリアに位置しているにも関わらず競争力を失った築古ビルに対して、抜本的な改良を行い資産価値を向上させております。

 

抜本的な改良による資産価値向上について

 築古ビルに対しては、資産価値向上のために建物の素地に対して抜本的な改良を行います。代表的な施策としては、耐震補強(旧耐震基準の建物を新耐震基準に適合させて安全性を向上させる)、エレベーター新設(エレベーターがない建物にエレベーター新設することで上層部の価値を高める)、用途変更(住居からオフィス、オフィスから店舗等、用途変更をすることで賃料単価を向上)、増築(余剰面積を計算し増築を行うことで賃料収入総額をあげる)、検査済証取得(検査済証や適合認定書の再取得で建物の遵法性を確保)、耐久性の向上(コンクリートの劣化診断と補強、外壁への特殊塗装などで建物の耐震性を向上)などが挙げられます。

 

耐震補強(旧耐震基準と新耐震基準)

 1981年(昭和56年)に構造に関する建築基準法改正が行われ、その年を境に以前は旧耐震基準の建築物、以後は新耐震基準の建築物と呼ばれています。旧耐震基準であること自体は建築基準法上、違法となるわけではなく、現行の構造設計基準には適合しない既存不適格物扱いとなりますが、耐震補強を行うことで新耐震基準並みの耐力まで向上させることができます。

 

法適合状況調査業務及び検査済証の取得

 平成26年以前までは検査済証のない建築物の増改築や用途変更に伴う確認申請にあたり、原則として既存建築物が新築時に建築基準法令に適合していることを確かめる必要がありました。工事完了後に完了検査を受けておらず検査済証の交付を受けていない建築物は、既存不適格建築物(既存不適格建築物とは、新築当時は旧法・旧規定の基準で合法的に建てられた建築物が、その後、法令改正や都市計画変更などにより、現行法に対して不適格な部分が生じた建築物を指します)であるか違反建築物であるかの判断が難しく、結果として確認申請が実現できないケースが多く存在しました。そのため、平成26年から「検査済証のない建築物に係る指定確認検査機関等を活用した建築基準法適合状況調査のためのガイドライン」を用いた法適合調査を行えるようになり、調査報告書は増改築等の確認申請の際の既存不適格調書の添付資料として活用でき、法適合性が証明できることで、検査済証のない建築物の確認申請が以前より容易になりました。なお、法適合状況調査の実施にあたり、調査及び調査報告書作成においては既存の図面や当社事業の計画図を基に第三者の指定確認検査機関等に依頼する場合や、その他工程において必要に応じて設計事務所等へ一部再委託を行う場合があります。

 

(入居テナントのニーズ:個性的なオフィスを適正価格で借りたい)

 入居テナントの悩みとして、適正価格での個性的なオフィスの供給が少ないことが挙げられます。例えば、魅力的なヴィンテージ物件にあこがれるテナントからの需要は一定数あるにも関わらず、テナントの求めるような物件自体が希少であり、ニーズに対応しきれていないのが現状です。コストをかけてヴィンテージ風オフィスをつくるケースが多くみられますが、オフィス退去時には全て借主負担で原状回復工事をすることが求められます。対して当社は、必要以上にコストをかけて内装をつくりこむのではなく、天井はスケルトンでの貸し出しを基本とするなど無駄な仕上げをなくし内装の自由度を高め、原状回復工事についても極力抑えることで、不要なコストを削減することに努めています。

 

<フレキシブルワークプレイス事業の事例紹介>

 (再生)


 

 (再生)


 

 (再生)


 

 

 (再生)


 

 (開発)


 

 (開発)


 

 

(2) 事業の特色

 <当社の強み>

 当社の強みは、確かなフレキシブルワークプレイス事業の運営実績により培われた、企画力・技術力・運営力だと考えております。企画・デザイン、設計・建設、リーシング、運営までワンチーム・ワンストップでプロジェクトを推進しております。プロジェクトが発足すると6名~10名程度のチームを編成し、各専門家がワンチーム・ワンストップでプロジェクトに取組むことで、事業推進の迅速化・効率化とノウハウの蓄積を実現しております。

 各専門家についてですが、各許認可・登録の下で有資格者が以下のとおり在籍しております。一級建築士事務所であり、2023年3月末時点で一級建築士が7名在籍しております。特定建設業許可を取得しており、2023年3月末時点で1級建築施工管理技士が6名在籍しております。宅地建物取引業者として、2023年3月末時点において、宅地建物取引士が45名在籍しております。

 


 

(企画・設計・デザイン)

新規案件の検討において、設計図書や現地調査を行い改修方法の可能性や法的検証の上、マーケティングや資産価値向上に繫がる事業計画やスキームの立案を行い、また各業者やデザイナーの調整等を通じてクリエイティブな空間創りに注力しております。企画設計段階のみならず、確認申請や工事現場監理等を行い、竣工後は建物の品質を損なわないよう、テナントの内装監理や物件調査により修繕計画のサポートなども行っております。

また、一定のインフラ設備は備えつつ、床・壁・天井等の内装を自由にリノベーションできる「オーダーメイドオフィス」サービスも提供しております。空調などのインフラ設備を設置したシンプルな空間を提供し、一定の条件をクリアした場合は退去時の原状回復義務を免除するなど、入退去時のコストを抑えながらも自由なオフィス空間創りを可能としております。

 

(建設)

仕入段階における工事の積算や施工業者の調整、自社企画運営する建物の元請工事の安全品質管理、コスト管理及び工事監理補助、オーナーや施工業者等の様々な関係者との調整を行いながら安全な現場運営を行っております。また、築古ビルの再生に携わるため竣工時の図面や改修履歴などを確認しながら工事を行っております。

 

 

(リーシング)

当社オフィスの魅力を的確に伝え、シェアオフィス特有の入退去の回転率の速さに対応できるリーシングツールと体制を整えております。リーシングツールとしては、オウンドメディアの機能も兼ね備えたメディア型オフィス検索サイトである「ORDERMADE TOKYO」を提供しています。その他、イベント企画による集客や、ビルオーナーリスト・入居テナントリスト・反響リスト等をもとに作成されたメーリングリストなどを駆使しております。例えば、2023年5月8日時点でメーリングリストに登録されている入居検討者は3,978名であり、潜在顧客に対してダイレクトに商品をアプローチすることが可能となっております。

 

(運営)

常駐ではなく狭域でのこまめな巡回対応での物件運営を行っております。巡回対象の物件が狭域にまとまっていることで運営コストを削減しながらも、WEBカメラでの監視などを無人管理にプラスして定期的な巡回をすることで物件の質を担保しております。このように運営業務を取捨選択して効率化を進めながらも、入居テナントのニーズを的確に掴むためにコミュニケーションを重視しております。新規契約時において当社独自の基準で入居審査を実施していることでサービスクオリティーを維持し、また、入居テナントと担当者の距離が近く滞納などの兆候を事前に察知しやすいなどの利点が挙げられます。その他、クレーム対応等を通じて入居テナントのニーズを聴取し、次の企画に反映していきます。例えば、ラウンジでのWEB会議への騒音クレームに対してWEB会議ルームを新設する、インターネット通信速度の低下の苦情に対してはサーバー補強などの対策を実施する、床材の劣化などの指摘に対しては設計時の建材選定の参考にするなど、迅速に対応しながら次の企画へフィードバックしていきます。

その他、福利厚生サービスを提供するなど、テナント入居者の満足度を高め、定着率アップの施策を実施しております。具体的には、福利厚生サービスを「JOINT HUB」と総称し、運営するワーケーション施設の利用機会の提供やスポーツジム施設であるゴールドジムの利用チケットの提供、入居者参加型イベントや経営者の交流会の実施などを提供しております。

 


 

 <参入障壁>

 フレキシブルワークプレイス市況における入居テナントのニーズを的確に掴む難しさこそが、参入障壁だと考えております。一般的なオフィスマーケットは立地や築年数である程度固定化されてはいるものの、フレキシブルワークプレイスにおいては相場が固定化されておりません。そのため、運営実績に基づく需要予測と賃料設定が必要であり、資金があったからといって過去の成功事例を模倣することは困難です。当社は創業以来累計90件のフレキシブルワークプレイス物件の運営実績により培われた企画力・技術力・運営力があり、フレキシブルワークプレイスを求める入居テナントのニッチな需要への対応を可能としています。

 また、フレキシブルワークプレイスは企画やデザイン次第で単価が大きく上下します。例えば、当社の「THE WORKS」は、運営延床面積2,753㎡、築45年のエレベーター無し旧倉庫兼事務所ビル一棟をシェアオフィスを中心とした複合施設にリノベーションし人気物件に再生した物件であり、2023年3月末時点においても、満室稼働しております。1階倉庫を店舗に用途変更したことや、エレベーターの新設、ラウンジやスカイテラスなどを設置し共有部などを充実した上で、スモールオフィスを配置しました。その結果、2022年9月期で年間支払賃料94百万円(延床面積あたりの売上単価が月額0.9万円/坪)の物件が、フレキシブルワークプレイス事業によって、年間売上高206百万円(延床面積あたりの売上単価が月額2.1万円/坪)と大幅に収益性が向上する物件となっております。これは、入居テナントのニッチな需要にマッチすれば、築古ビルであっても企画やデザイン次第で高収益をあげることができるという事例の一つです。

 「会社の財力といったステータスを示すわかりやすい高級な事務所」を求める会社は、新築ないし築浅の大型S級ビル(大型S級ビルは、好立地、延床2万坪以上、基準階500坪以上、築11年未満、ランドマーク性等を備えたビルを指します)を選択する傾向にあり、「最低限の執務スペースとしての事務所」を求める会社は、一般的なオフィスビルを選択する傾向にあると考えます。対して、「オフィスは会社のカルチャーを作り発信する場所」と考える会社は、一般的なオフィスビルを好まない傾向にあります。このようなニッチな需要に応えるために、品質担保のための社内会議体を設けることによる一定のクオリティの担保を行いながら、物件独自のセンスのある共用部や外観、専有空間に自由度のあるオフィスを提供しております。

 



「THE WORKS」Before and After

 

4 【関係会社の状況】

 

名称

住所

資本金

(百万円)

主要な事業の

内容

議決権の所有割合又は被所有割合(%)

関係内容

(親会社)

 

 

 

 

 

株式会社サイバーエージェント(注)

東京都渋谷区

7,313

メディア事業

インターネット広告業

ゲーム事業

投資育成事業

その他事業

被所有

91.5

役員の兼任1名

 

 (注)有価証券報告書提出会社であります。

 

 

5 【従業員の状況】

(1) 提出会社の状況

 

 

 

 2023年3月31日現在

従業員数(名)

平均年齢(歳)

平均勤続年数(年)

平均年間給与(千円)

90

32.5

3.1

5,662

12

 

 

(注) 1.当社は、フレキシブルワークプレイス事業の単一セグメントであるため、セグメントごとの記載はしておりません。

2.従業員数は就業人員(社外から当社への出向者を含む。)であり、臨時雇用者数(パートタイマー、人材会社からの派遣社員、季節工を含む。)は、最近1年間の平均人員を〔〕内に外数で記載しております。

3.平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

 

(2) 労働組合の状況

労働組合は結成されておりませんが、労使関係は円満に推移しており、特記すべき事項はありません。