第二部【企業情報】

第1【企業の概況】

1【主要な経営指標等の推移】

(1)連結経営指標等

回次

第34期

第35期

決算年月

2021年6月

2022年6月

売上高

(千円)

3,062,763

3,115,106

経常利益

(千円)

628,103

518,387

親会社株主に帰属する当期純利益

(千円)

411,155

351,840

包括利益

(千円)

409,644

352,808

純資産額

(千円)

1,302,910

1,552,931

総資産額

(千円)

2,042,322

2,193,097

1株当たり純資産額

(円)

325.73

388.23

1株当たり当期純利益

(円)

102.79

87.96

潜在株式調整後1株当たり当期純利益

(円)

自己資本比率

(%)

63.8

70.8

自己資本利益率

(%)

36.5

24.6

株価収益率

(倍)

営業活動によるキャッシュ・フロー

(千円)

385,089

246,654

投資活動によるキャッシュ・フロー

(千円)

49,738

67,712

財務活動によるキャッシュ・フロー

(千円)

65,208

104,668

現金及び現金同等物の期末残高

(千円)

1,209,686

1,292,077

従業員数

(人)

236

257

(外、平均臨時雇用者数)

(138)

(142)

 (注)1.当社は、第34期より連結財務諸表を作成しております。

2.潜在株式調整後1株当たり当期純利益については、潜在株式は存在するものの、当社株式は非上場であり、期中平均株価が把握できないため記載しておりません。

3.株価収益率については、当社株式は非上場であるため、記載しておりません。

4.従業員数は就業人員であり、臨時雇用者数(パートタイマー、人材会社からの派遣社員、季節工を含む。)は、年間の平均人員を( )外数で記載しております。

5.第34期及び第35期の連結財務諸表については、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」(昭和51年大蔵省令第28号)に基づき作成しており、金融商品取引法第193条の2第1項の規定に基づき、前連結会計年度(2020年7月1日から2021年6月30日まで)及び当連結会計年度(2021年7月1日から2022年6月30日まで)の連結財務諸表について、太陽有限責任監査法人により監査を受けております。

6.「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を第35期の期首から適用しており、第35期に係る主要な経営指標等については、当該会計基準等を適用した後の指標等となっております。

7.当社は、2022年7月25日付で普通株式1株につき100株の割合で株式分割を行っております。第34期の期首に当該株式分割が行われたと仮定し、1株当たり純資産額及び1株当たり当期純利益を算定しております。

 

(2)提出会社の経営指標等

回次

第30期

第31期

第32期

第33期

第34期

第35期

決算年月

2018年2月

2019年2月

2019年6月

2020年6月

2021年6月

2022年6月

売上高

(千円)

2,309,349

2,529,223

893,806

2,506,466

2,715,247

2,718,977

経常利益

(千円)

217,173

248,385

45,210

386,916

494,640

433,263

当期純利益又は当期純損失(△)

(千円)

146,428

165,469

418,618

248,172

332,001

285,495

資本金

(千円)

10,000

10,000

10,000

10,000

10,000

10,000

発行済株式総数

(株)

40

40

40

40,000

40,000

40,000

純資産額

(千円)

1,025,780

1,153,552

484,485

731,883

1,011,474

1,193,768

総資産額

(千円)

1,528,809

1,652,329

1,284,149

1,470,412

1,709,014

1,812,118

1株当たり純資産額

(円)

25,644,507.08

28,838,802.48

12,112,125.48

18,297.09

252.87

298.44

1株当たり配当額

(円)

942,447.60

942,447.60

314,149.20

1,365.00

2,569.70

2,625.00

(うち1株当たり中間配当額)

(-)

(-)

(-)

(-)

(-)

(-)

1株当たり当期純利益又は1株当たり当期純損失(△)

(円)

3,660,701.18

4,136,743.00

10,465,455.83

6,204.31

83.00

71.37

潜在株式調整後1株当たり当期純利益

(円)

自己資本比率

(%)

67.1

69.8

37.7

49.8

59.2

65.9

自己資本利益率

(%)

15.1

15.2

40.8

38.1

25.9

株価収益率

(倍)

配当性向

(%)

25.7

22.8

3.0

22.0

31.0

36.8

従業員数

(人)

40

43

61

58

66

67

(外、平均臨時雇用者数)

(46)

(43)

(51)

(56)

(53)

(61)

 (注) 1.第32期は、決算期変更により、2019年3月1日から2019年6月30日までの4ヶ月間となっております。

2.第32期は、関係会社に対する貸付金について貸倒引当金繰入額を特別損失として計上したことにより、当期純損失を計上しております。

3.潜在株式調整後1株当たり当期純利益については、第30期及び第31期は、潜在株式が存在しないため記載しておりません。第32期は、1株当たり当期純損失であり、また潜在株式が存在しないため記載しておりません。第33期、第34期及び第35期は、潜在株式は存在するものの、当社株式は非上場であり、期中平均株価が把握できないため記載しておりません。

4.株価収益率については、当社株式が非上場であるため、記載しておりません。

5.第32期の自己資本利益率については、当期純損失を計上しているため、記載しておりません。

6.従業員数は就業人員であり、臨時雇用者数(パートタイマー、人材会社からの派遣社員、季節工を含む。)は、年間の平均人員を( )外数で記載しております。

7.前事業年度(第34期)及び当事業年度(第35期)の財務諸表については、「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」(昭和38年大蔵省令第59号)に基づき作成しており、金融商品取引法第193条の2第1項の規定に基づき、太陽有限責任監査法人により監査を受けております。なお、第30期、第31期、第32期及び第33期については、「会社計算規則」(平成18年法務省令第13号)の規定に基づき算出した数値を記載しており、監査を受けておりません。

8.「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を第35期の期首から適用しており、第35期に係る主要な経営指標等については、当該会計基準等を適用した後の指標等となっております。

9.当社は、2020年6月29日付で普通株式1株につき1,000株の割合で株式分割を行っております。第33期の期首に当該株式分割が行われたと仮定し、1株当たり純資産額及び1株当たり当期純利益を算定しております。また、2022年7月25日付で普通株式1株につき100株の割合で株式分割を行っております。第34期の期首に当該株式分割が行われたと仮定し、1株当たり純資産額及び1株当たり当期純利益を算定しております。

10.当社は、2020年6月29日付で普通株式1株につき1,000株の株式分割を行っており、また、2022年7月25日付で普通株式1株につき100株の株式分割を行っております。

   そこで、東京証券取引所自主規制法人(現 日本取引所自主規制法人)の引受担当者宛通知「『新規上場申請のための有価証券報告書(Ⅰの部)』の作成上の留意点について」(平成24年8月21日付東証上審第133号)に基づき、第30期の期首に当該株式分割が行われたと仮定して算出した場合の1株当たり指標の推移を参考までに掲げると、以下のとおりとなります。

   なお、第30期、第31期、第32期及び第33期の数値(1株当たり配当額についてはすべての数値)については、太陽有限責任監査法人の監査を受けておりません。

回次

第30期

第31期

第32期

第33期

第34期

第35期

決算年月

2018年2月

2019年2月

2019年6月

2020年6月

2021年6月

2022年6月

1株当たり純資産額

(円)

256.45

288.39

121.12

182.97

252.87

298.44

1株当たり当期純利益又は1株当たり当期純損失(△)

(円)

36.61

41.37

△104.65

62.04

83.00

71.37

潜在株式調整後1株当たり当期純利益

(円)

1株当たり配当額

(円)

9.42

9.42

3.14

13.65

25.70

26.25

(うち1株当たり中間配当額)

(-)

(-)

(-)

(-)

(-)

(-)

 

2【沿革】

  当社は創業者である阿曽敏正(現当社代表取締役社長)が1982年4月に東京都墨田区において個人事業とし

 て矯正専門の歯科技工所を営むASO DENTALを創業いたしました

 創業以降の経緯は次のとおりであります

1982年4月

東京都墨田区において、個人事業として矯正専門の歯科技工所ASO DENTALを開業

1988年5月

東京都中央区湊において、株式会社アソ.デンタル(現当社)を設立

1992年6月

商号を株式会社アソインターナショナルに変更

1996年5月

本社を東京都中央区銀座に移転

1996年6月

リンガル矯正治療用I.D.B.S販売開始

2000年7月

株式会社ASOホールディングスを設立。株式移転により、株式会社ASOホールディングスが当社の100%親会社となる

2004年8月

ラビアル矯正治療用I.D.B.S販売開始

2005年12月

当社で第1回「Clear AlignerTM」セミナーを開催

マウスピース型矯正装置「Clear AlignerTM」発売

2007年11月

大阪オフィス新設

2009年4月

米国最大の矯正学会アメリカ矯正歯科学会(A.A.O)へ初出展

2010年4月

新潟オフィス新設

2010年7月

「Clear AlignerTM」から、「AsoAligner®」に名称を変更し販売開始

2012年3月

名古屋オフィス新設

2012年7月

ASO ISTANBUL ORTHODONTICS LABORATORY LTD.を設立し関連会社化

2014年1月

株式会社ASOホールディングスを100%親会社として、DENTEX株式会社を設立

2015年5月

ASO INTERNATIONAL MANILA, INC.(現連結子会社)を設立

2017年5月

本社にデジタルセンター開設

2017年6月

HARMONYリンガルシステムを製造販売開始

2018年4月

製造工程をデジタル化し、精度・製造スピードを向上させた「AsoAligner DIGITAL」を発売開始

 

台北雅塑國際有限公司を設立

2019年4月

株式会社ASOホールディングスからの新設分割により、当社代表取締役社長阿曽敏正の資産管理会社として株式会社ASOを設立

フォレスタデント・ジャパン株式会社(現連結子会社)の株式の100%を取得し子会社化

2019年5月

ASO INTERNATIONAL HAWAII, INC.(現連結子会社)の株式の100%を取得し子会社化

2019年6月

株式会社ASO INTERNATIONAL HITACHI(現連結子会社)の株式の100%を取得し子会社化

2019年6月

当社が株式会社ASOホールディングスを吸収合併し、株式会社ASOホールディングスは消滅し、当社が存続会社となる

DENTEX株式会社の全株式を譲渡

2019年12月

台北雅塑國際有限公司を清算

2021年7月

ASO ISTANBUL ORTHODONTICS LABORATORY LTD.を清算

 

3【事業の内容】

 当社グループは、当社及び連結子会社4社の計5社により構成されており、当社設立以来『Professionalな最新技術を世界から日本へ、日本から世界へ』という企業理念のもと、矯正歯科治療が必要な方々に歯科技工所(注1)としてオーダーメイドの歯科技工物(注2)を中心とした製品を提供しております。

 なお、当社グループは歯科矯正事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。
 

 一般的な歯科技工所は、補綴物(注3)を主に製造・販売しておりますが、当社グループは当社設立以来現在まで、矯正用の歯科技工物(以下「矯正歯科技工物」という。)(注4)の製造を中心とした事業活動を行っており、全国の矯正治療を行う歯科医院、歯科大学及び附属病院(注5)等の歯科医療機関に対して矯正歯科技工物の供給を行っております。

 当社グループはこれまで蓄積した製造ノウハウを用いて、高品質かつ多種多様な矯正歯科技工物を製造し提供することが可能となっております。また、矯正歯科技工物の製造に加え、その他付随サービスとして、矯正歯科技工物の修理、当社グループの製品・商品を使用した矯正治療に関するセミナー開催受託及び矯正に関する材料販売を行っております。

 

(1)事業の特徴

①柔軟な製造キャパシティ

 当社グループは、2022年10月末時点において、グループ外部の協力パートナーとして51か所(内48か所は当社グループから独立した歯科技工士(注6)によって設立された歯科技工所)の歯科技工所と取引があり、内製と外注による製造のバランスを取っております。

 

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 内製品については、2022年10月末現在、当社及び国内子会社において歯科技工士50名を抱えていることから、特殊品など高付加価値製品に特化して製造しております。また、当社グループの海外子会社であるASO INTERNATIONAL MANILA, INC.では汎用品を中心に製造しております。

 協力パートナーによる外注製造については、主として当社から独立した歯科技工士が立ち上げた48か所(2022年10月末現在)の外部の歯科技工所と継続的な取引関係を維持しており、主として汎用性の高い製品の製造を外注しております。協力パートナーを活用することにより、当社グループは外注量を受注状況に応じて柔軟に調整することができ、固定費の負担抑制と、柔軟な製造キャパシティの確保が可能になっております。加えて、協力パートナーは当社グループの案件獲得力を背景に安定した受注量を確保できるなど、相互にメリットを享受できる関係となっております。

 2022年6月期における当社グループ並びに協力パートナーにおける矯正歯科技工物の製造割合は、65%が協力パートナーによるもので、残り35%が当社グループの内製品となっております。また、75%が国内製造、25%が当社の海外子会社であるASO INTERNATIONAL MANILA, INC.及びASO INTERNATIONAL HAWAII, INC.での製造となっております。

 

②データ分析力

 当社グループは、直近10年で症例件数(歯型)のデジタル管理を加速させてまいりました。その結果、当社グループにおいてデジタル管理された症例件数は約262万件(2022年10月末現在)あり、創業以来蓄積した「歯を並べて動かす」ノウハウをはじめとするアナログ技術と融合させ、効率的な製造を行なっております。当社グループでは、積極的にデジタル活用を図ることで、多品種(100種類以上)の矯正歯科技工物の提供が可能となり、歯科医師の様々なニーズにも柔軟に対応することが可能となっております。

 

③強固な顧客関係

 a.歯科技工所と歯科医療機関の関係

 歯科技工所は基本的に歯科医療機関毎に依頼を受ける形になり、いかに多くの歯科医療機関とパイプを有しているかが案件獲得のため非常に重要となります。一方で、歯科技工所は、歯科技工士の従事者数の減少により、受注した矯正歯科技工物の納期が長期化傾向にある中で、技術の優れた歯科技工士を一定数確保することが、顧客である歯科医療機関の満足度を高める上で必要となります。

 当社グループは本書提出日現在において、当社グループ並びに協力パートナーにおいて100名を超える歯科技工士が矯正歯科技工物の製造に携わっており、歯科医療機関のニーズに応えられる体制を構築することに努めております。

 

 b.歯科医師の口コミによる顧客紹介

 歯科医師は出身歯科大学のコミュニティや歯科医師会等のグループに所属するケースが多く、歯科医師同士のネットワーク内での顧客紹介が行われることがあり、歯科医師間で当社グループに対する認知が浸透していることも一因と考えております。

 

0201010_003.jpg

(注)各期において、1回以上取引があった歯科医療機関数

 

 c.歯科医師との長期的な取引関係

 当社グループは、全国の歯科大学や大学の歯学部、大学附属病院と取引実績を有しております。

 当社グループが提供した矯正歯科技工物は、大学での実習に利用されたり、当該大学の卒業生が歯科医師免許取得後に実施される大学附属病院での研修等にも利用されるなど、用途・ニーズに合ったものを継続的に提供することで、長期的な取引関係が構築されております。また、これらの歯科医師には、大学附属病院での研修後や、独立開業するときにも、利用実績のある当社グループの矯正歯科技工物を引き続き利用いただける傾向にあり、このことが更なる長期的な取引関係を築くことに寄与し、安定的な取引歯科医療機関数の増加につながっております。

 

(2)主な製品

 当社グループは、歯科医療機関より矯正歯科技工物の発注を受け製造・販売しております。歯科医療機関は、新規患者に対して、口腔内の印象採得やレントゲン撮影等を行い、歯科医師は診査診断用の平行模型という矯正歯科技工物の発注を歯科技工所へ行います。これらの患者の口腔内の情報を歯科医師が確認後、矯正治療の方針を決定いたします。この治療方針を決定後、歯科医療機関は、患者治療用の矯正歯科技工物の発注を歯科技工所へ行うのが主な流れとなっております。

 矯正歯科技工物は、用途、目的によって様々な種類があり、それぞれ異なる役割、機能を有しております。例えば、診査診断用の平行模型、患者治療用としては歯の移動スペースを確保するため歯間を広げる矯正歯科技工物、歯に大きな矯正力(注7)を伝達する矯正歯科技工物や矯正後の歯の後戻りを防止する矯正装置等があり、診査診断から治療のプロセスによって矯正歯科技工物を使い分けるのが一般的であります。

 また矯正歯科技工物は大きく二つに分類することが可能です。1つは可撤式矯正歯科技工物といい、患者自身で矯正歯科技工物の着脱が可能で、食事や歯磨きの際に取り外しすることが可能となっております。

 もう1つは固定式矯正歯科技工物といい、患者自身で矯正歯科技工物の着脱が不可能なものがあります。これは、常に患者の口腔内に装着されているため、歯科医師の治療計画通りに治療が進む可能性が高くなります。

 当社グループは、歯科医師の様々な治療方針に対応するため、100種類以上の矯正歯科技工物を製造可能です。また、矯正歯科技工物で使用される材料は歯科技工士法(注8)に則って調達し、歯科医療機関から発注の際に受領する歯科技工指示書(注9)に記載されている設計指示を基に、患者ごとに適合する矯正歯科技工物を手作業及び機械化により製造・販売しております。

 以下は、当社グループで製造している主な矯正歯科技工物の3つのグループになります。

 

 

①矯正装置

 当社グループでは、矯正治療の初期及び後期で使用される矯正歯科技工物を製造しております。例えば、矯正治療の初期の段階では、顎を頬側に拡大させ、歯の移動するスペースの確保を目的とする拡大床という矯正装置が使用されます。当社グループにおいて、20種類以上の拡大床を製造することが可能であります。

 また、矯正治療の後期の段階では、矯正後の歯の後戻りの防止を目的として使用されるリテーナーという矯正装置が使用されます。当社グループにおいては、10種類以上のリテーナーを製造することが可能であります。

 当社グループの拡大床やリテーナーは、いずれも主に可撤式矯正歯科技工物のタイプを豊富に取り揃えております。

拡大床                   リテーナー

0201010_004.png       0201010_005.png

 

②マウスピース型矯正装置

 透明で薄いプラスチック(PET材)のマウスピースを口腔内に装着し、噛むことで歯に矯正力をかけ歯を移動させる装置でマウスピース型矯正装置と呼ばれており、可撤式矯正装置のタイプになります。これは主に歯を少しずつ動かしていく治療の段階において歯科医師の診断に基づき使用するものになります。代表的な治療例として、歯の移動するスペースが既に確保されている患者に対しては、治療の初期段階からマウスピース型矯正装置を用いて矯正治療を開始するケースもあれば、治療の初期段階で拡大床を使用し、歯間のスペースを確保してから、マウスピース型矯正装置を使用するケースがあります。また、マウスピース型矯正装置を使用する場合でも、後述するブラケット(注10)とワイヤー(注11)の矯正歯科技工物を患者の治療状況によって複合的に使用するケースもあります。

 当社グループのマウスピース型矯正装置は当初の製品名「AsoAligner®」として、歯科技工士が手作業で歯列を並び替え製造する仕様でありましたが、2018年4月以降は、製品名を「AsoAligner DIGITAL」として、3DCAD及び3Dプリンターを使用してデジタル対応を図ることで製造工程の一部を自動化し、歯列の並び替えの精度及び製造スピードを向上させております。「AsoAligner DIGITAL」の特徴としては、患者の歯型情報が石膏模型や、特定のデータのファイル形式に限定せず、どのような形態でも受注可能となっております。またこの製品を歯科医師が発注するにあたり製品セミナーを事前受講していただくところにあります。製品のメリットだけではなく、デメリットや非適応になる症例についても事前に製品セミナーで学習してもらうことで治療トラブルを回避し、治療結果がより良くなると考えております。

 より多くの歯科医療機関で使用してもらう目的で、本書提出日現在、北海道から九州までの5社と業務提携し、地域密着型の体制を構築し全国への販売網を強化しております。

 

AsoAligner DIGITAL

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③イン・ダイレクト・ボンディング・システム(I.D.B.S)

 前述のマウスピース型矯正装置と同治療期間に使用される矯正歯科技工物として、ブラケットとワイヤーを使用した伝統的なタイプの矯正歯科技工物があります。マウスピース型矯正装置と同様に、歯科医師の診断により、代表的な治療例として、歯の移動するスペースが既に確保されている患者に対しては、ブラケットとワイヤーを使用して治療を開始するケースもあれば、拡大床を使用し、歯間のスペースを確保してからブラケットとワイヤーを使用するケース等もあります。また、ブラケットとワイヤーを使用する場合でも患者の治療状況によってはマウスピース型矯正装置を追加使用するケースもあります。

 ブラケットとワイヤーを利用した矯正歯科技工物は、歯科医師が患者の歯の表面に、手作業で直接ブラケットを接着(以下「ダイレクト・ボンディング」という。)し、ワイヤーを患者の歯列に合うように屈曲させブラケットに通し患者の口腔内に装着させる、いわゆる固定式矯正歯科技工物のタイプになります。このダイレクト・ボンディングは、矯正治療の高い技術と知識が必要であること、また歯科医師が患者の口腔内へブラケットを接着する時間及びワイヤーを屈曲させる時間が長時間になる傾向にあります。これは歯科医師及び患者にとって負担となる作業となっております。

 当社グループの製品であるイン・ダイレクト・ボンディング・システム(以下「I.D.B.S」という。)は、歯科医師が患者の歯の表面にブラケットを接着する際に使用するコア(注12)と患者の歯列用に既に当社グループで屈曲したワイヤーを1つのパッケージにして製造・販売している矯正歯科技工物になります。このI.D.B.Sを利用することにより、ブラケットの接着時間及びワイヤーの屈曲時間の短縮を図ることができ、歯科医師及び患者の負担を減らすことが可能となります。

 主なI.D.B.S製品としては、ブラケットとワイヤーを使用した治療において代表的な治療である「ラビアル矯正治療」用のI.D.B.S製品と「リンガル矯正治療」用のI.D.B.S製品があり、いずれも工程が手作業である製品に対して、工程の多くがデジタル化されたI.D.B.S製品(製品名「HARMONYリンガルシステム」)を分けて記載します。

 

a.ラビアル矯正治療用I.D.B.S

 ラビアル矯正治療用I.D.B.Sは、口腔内の頬側の歯の表面にブラケットを接着可能なコアと、患者の歯列に合うワイヤーをセットにした製品であり、歯科技工士が手作業で製造しております。

 

b.リンガル矯正治療用I.D.B.S

 リンガル矯正治療用I.D.B.Sは、口腔内の舌側の歯の表面にブラケットを接着可能なコアと、患者の歯列に合うワイヤーをセットにした製品であり、歯科技工士が手作業で製造しております。

 ラビアル矯正治療と比較して、リンガル矯正治療は、ブラケットを歯科医師の視認性の悪い舌側に貼り付けるため、治療難易度は更に高くなる傾向にあります。リンガル矯正治療は、歯科医師が直接ブラケットを貼り、ワイヤーを患者の治療経過に合わせて屈曲することが困難であるため、I.D.B.Sを利用することが一般的であります。こちらは歯の裏側に装着するタイプであるため、正面からみて装置が見えないため目立ちにくいものになります。

 

リンガル矯正装置用I.D.B.S

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c.HARMONYリンガルシステム

 前記b.リンガル矯正治療用I.D.B.Sは歯科技工士の手作業により製造を行っておりますが、HARMONYリンガルシステムは、3DCAD等を使用して歯列をスキャンし、ブラケットからワイヤーまで一貫して設計と製造が行われるシステムであり製造工程の多くをデジタル化・機械化しているところに特長があります。HARMONYリンガルシステムは本書提出日現在において、世界15以上の国と地域での販売実績があります。

HARMONYリンガルシステム

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 当社グループは、上記矯正歯科技工物の提供以外に、歯科医療機関自ら矯正歯科技工物を製造するために使用するワイヤーやブラケットなどの部品、器具等の材料の仕入れ販売を当社の子会社であるフォレスタデント・ジャパン株式会社を通じて提供しております。フォレスタデント・ジャパン株式会社はドイツのFORESTADENT Bernhard Förster GmbH の独占販売代理店であり、同社の矯正関連材料を仕入れて販売しております。また、納品済みの矯正歯科技工物の修理を行っております。

[事業系統図]

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(用語解説)

 本項「3 事業の内容」において使用しております用語の定義について以下に記します。

No.

用語

用語の定義

注1

歯科技工所

歯科医師又は歯科技工士が業として歯科技工を行う場所をいう。ただし、病院又は診療所内の場所であって、当該病院又は診療所において診療中の患者以外の者のための歯科技工が行われないものを除く。

注2

歯科技工物

特定人に対する歯科医療の用に供する補綴物(注3)、充てん物又は矯正装置を製造し、修理または加工した物をいう。

注3

補綴(ほてつ)物

虫歯などの治療の後に歯にかぶせる物をいう。補綴物には金属やプラスチック、CAD/CAM製クラウン等の種類がある。また保険適用のものもあれば、保険適用外の補綴物も存在する。

注4

矯正用の歯科技工物(矯正歯科技工物)

歯や顎の位置を移動させるために使用する技工物の総称。歯列矯正治療が終了した後や矯正治療中に例外的に不動とする歯に対応する保定の役割を持っているものも矯正用の技工物として定義されることから、形状は様々である。保険適用のものもあれば、保険適用外のものも存在する。

注5

歯科大学及び附属病院

歯科大学とは、歯学部が設置されている大学をいう。歯学部附属病院が設置されている国立大学と私立大学は日本国内に計29校あり(本書提出日現在)、当社では内29校に販売実績がある。

注6

歯科技工士

厚生労働大臣の免許を受けて、歯科技工を業とする者をいう。

注7

矯正力

不正な位置にある歯や顎を適正な位置に移動させるために加える力をいう。

注8

歯科技工士法

歯科技工士資格を定めるとともに、歯科技工の業務が適正に運用されるように規律し、もって歯科医療の普及及び向上に寄与することを目的とする法。

注9

歯科技工指示書

歯科技工物の発注時に、歯科医療機関が内容記載する発注書をいう。歯科技工物の設計指示の詳細が明記されている。

注10

ブラケット

基本的には金属製だが、セラミックやプラスチック製の目立たない製品もあり、最も一般的で自由度の高い矯正器具をいう。

注11

ワイヤー

矯正治療専用のワイヤーを指し、金属製が用いられる。歯にワイヤーの矯正力を伝えるために、ワイヤーと歯の間にはブラケットの介在が必要。

注12

コア

ブラケットを適正な位置へ接着するための治具。

 

4【関係会社の状況】

名称

住所

資本金

(千円)

主要な事業の内容

議決権の所有割合又は被所有割合

(%)

関係内容

(連結子会社)

 

 

 

 

 

フォレスタデント・ジャパン株式会社

(注)2.4.

東京都港区

10,000

歯科矯正事業

100.0

矯正材料の仕入

役員の兼任

株式会社ASO INTERNATIONAL HITACHI

(注)2.

茨城県日立市

8,000

歯科矯正事業

100.0

マウスピース型矯正装置の製造委託

役員の兼任

ASO INTERNATIONAL MANILA, INC.

(注)2.

フィリピン

カヴィテ州

20,000

(千フィリピンペソ)

歯科矯正事業

100.0

矯正装置及びI.D.B.Sの製造委託

製品製造の技術支援

資金の貸付

ASO INTERNATIONAL HAWAII, INC.

(注)2.

米国

ハワイ州

30

(千USドル)

歯科矯正事業

100.0

製品製造の技術支援

(注) 1.「主要な事業の内容」欄には、セグメントの名称を記載しております。

2.上記子会社はいずれも特定子会社に該当しております。

3.有価証券届出書または有価証券報告書を提出している会社はありません。

4.フォレスタデント・ジャパン株式会社については、売上高(連結会社相互間の内部売上高を除く。)の連結

売上高に占める割合が10%を超えております。

主要な損益情報等   (1)売上高        435,702 千円

           (2)経常利益        49,741 千円

           (3)当期純利益       33,492 千円

           (4)純資産額       223,632 千円

           (5)総資産額       259,054 千円

 

5【従業員の状況】

(1)連結会社の状況

 

2022年10月31日現在

セグメントの名称

従業員数(人)

歯科矯正事業

266

(152)

 (注)1.従業員数は就業人員であり、臨時雇用者数(パートタイマー、人材会社からの派遣社員、季節工を含む。)は、最近1年間の平均人員を( )外数で記載しております。

2.当社グループは、歯科矯正事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。

    3.従業員数が最近1年間において21名増加したのは、当社グループの事業規模の拡大による業容拡大に伴うも

      のであります。

 

(2)提出会社の状況

 

 

 

 

2022年10月31日現在

従業員数(人)

平均年齢(歳)

平均勤続年数(年)

平均年間給与(千円)

65

(65)

34.2

3.5

3,808

 (注)1.従業員数は就業人員であり、臨時雇用者数(パートタイマー、人材会社からの派遣社員、季節工を含む。)は、最近1年間の平均人員を( )外数で記載しております。

2.平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

3.当社グループは、歯科矯正事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。

 

(3)労働組合の状況

 労働組合は結成されておりませんが、労使関係は円満に推移しております。