第二部【企業情報】

第1【企業の概況】

1【主要な経営指標等の推移】

 

回次

第3期

第4期

第5期

第6期

第7期

決算年月

2017年6月

2018年6月

2019年6月

2020年6月

2021年6月

売上高

(千円)

604,873

958,882

1,556,587

2,173,100

2,887,057

経常利益又は経常損失(△)

(千円)

306,583

693,487

381,877

419,849

29,359

当期純損失(△)

(千円)

378,398

967,815

613,425

715,581

344,653

持分法を適用した場合の投資利益

(千円)

資本金

(千円)

326,094

1,110,019

100,000

649,920

766,613

発行済株式総数

(株)

4,764

6,831

6,831

7,956

8,420

普通株式

 

3,460

3,460

3,460

3,460

3,719

A種優先株式

 

1,304

1,304

1,304

1,304

1,304

B種優先株式

 

1,267

1,267

1,267

1,267

C種優先株式

 

800

800

800

800

D種優先株式

 

1,125

1,330

純資産額

(千円)

257,938

381,296

232,129

152,130

41,066

総資産額

(千円)

255,703

1,015,546

666,601

1,163,463

1,419,439

1株当たり純資産額

(円)

159,261.58

286,277.10

387,989.25

633.29

669.16

1株当たり配当額

(円)

(うち1株当たり中間配当額)

-)

-)

-)

-)

-)

1株当たり当期純損失(△)

(円)

79,428.70

172,824.10

101,712.15

148.31

68.95

潜在株式調整後1株当たり当期純利益

(円)

自己資本比率

(%)

101.11

33.63

40.79

9.66

0.08

自己資本利益率

(%)

株価収益率

(倍)

配当性向

(%)

営業活動によるキャッシュ・フロー

(千円)

62,115

353,484

投資活動によるキャッシュ・フロー

(千円)

793,543

797,593

財務活動によるキャッシュ・フロー

(千円)

1,190,861

454,231

現金及び現金同等物の期末残高

(千円)

778,923

789,046

従業員数

(人)

32

54

53

56

62

(外、平均臨時雇用者数)

14

33

41

35

37

(注)1.当社は連結財務諸表を作成しておりませんので、連結会計年度に係る主要な経営指標等の推移については記載しておりません。

2.売上高には、消費税等は含まれておりません。

3.第3期から第6期については、新規会員獲得に関する広告宣伝費や今後の成長に向けたレンタル用資産の購入に伴う減価償却費の負担等により、経常損失及び当期純損失を計上しております。また、第7期については、固定資産に係る減損損失を計上したことにより、当期純損失を計上しております。

4.持分法を適用した場合の投資利益については、関連会社を有しておりませんので、記載しておりません。

5.1株当たり純資産額の算定に当たっては、優先株主に対する残余財産の分配額を控除して算定しております。

6.1株当たり配当額及び配当性向については、配当を実施していないため記載しておりません。

7.潜在株式調整後1株当たり当期純利益については、潜在株式は存在するものの、当社株式は非上場であり期中平均株価が把握できず、また、1株当たり当期純損失であるため記載しておりません。

8.自己資本利益率については、第3期から第7期は当期純損失が計上されているため記載しておりません。

9.株価収益率については、当社株式は非上場であるため、記載しておりません。

10.第3期、第4期及び第5期については、キャッシュ・フロー計算書を作成していないため、キャッシュ・フロー計算書に係る各項目については記載しておりません。

11.第3期、第4期及び第5期については、「会社計算規則」(平成18年法務省令第13号)の規定に基づき算出した各数値を記載しており、第6期及び第7期の財務諸表については、「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」(昭和38年大蔵省令第59号)に基づき作成しております。

12.第6期及び第7期の財務諸表については、金融商品取引法第193条の2第1項の規定に基づき、有限責任監査法人トーマツにより監査を受けております。なお、第3期、第4期及び第5期については、当該監査を受けておりません。

13.従業員数は就業人員(正社員)であり、パート、契約社員及び人材会社からの派遣社員は、年間の平均人員を()外数で記載しております。

14.当社は、2022年4月15日付で普通株式1株につき800株の株式分割を行っておりますが、第6期の期首に当該株式分割が行われたと仮定し、1株当たり純資産額及び1株当たり当期純損失を算定しております。

15.当社は、2022年4月15日付で普通株式1株につき800株の株式分割を行っております。

そこで、東京証券取引所自主規制法人(現日本取引所自主規制法人)の引受担当者宛通知「『新規上場申請のための有価証券報告書(Ⅰの部)』の作成上の留意点について」(平成24年8月21日付東証上審第133号)に基づき、第3期の期首に当該株式分割が行われたと仮定して算定した場合の1株当たり指標の推移を参考までに掲げると、以下のとおりとなります。なお、第3期、第4期及び第5期の数値(1株当たり配当額については全ての数値)については、有限責任監査法人トーマツの監査を受けておりません。

回次

第3期

第4期

第5期

第6期

第7期

決算年月

2017年6月

2018年6月

2019年6月

2020年6月

2021年6月

1株当たり純資産額

(円)

△199.07

△357.84

△484.98

△633.29

△669.16

1株当たり当期純損失(△)

(円)

△99.28

△216.03

△127.14

△148.31

△68.95

潜在株式調整後1株当たり当期純利益

(円)

1株当たり配当額

(うち1株当たり中間配当額)

(円)

(-)

(-)

(-)

(-)

(-)

 

 

2【沿革】

 

年月

概要

2014年7月

東京都中央区新川に株式会社ノイエジーク(資本金200万円)をファッションレンタルサービス事業の提供を目的に設立

2015年2月

ファッションレンタルサービス「airCloset」事業を開始

2015年6月

株式会社エアークローゼットに社名変更

2015年6月

東京都港区六本木七丁目に本社移転

2016年5月

東京都港区虎ノ門四丁目に本社移転

2016年10月

ファッションレンタルショップ「airCloset×ABLE」を表参道・原宿エリアに不動産大手の株式会社エイブルと共同出店

2017年10月

パーソナルスタイリングECプラットフォーム「pickss(現airCloset Fitting事業)」をリリース

2018年1月

東京都港区南青山三丁目に本社移転

2020年4月

メーカー公認月額制レンタルモール「airCloset Mall」をリリース

 

3【事業の内容】

(1) 事業概要

当社は、国内在住の女性に対して、スタイリストが一人一人の顧客の好みに合わせた洋服を選定(パーソナルスタイリング)し個宅に向けて配送しレンタルするサービス「airCloset」を主として提供しています。「airCloset」は非対面で顧客にパーソナルスタイリングを提供する事業として2015年2月にリリース致しました。当サービスは洋服を循環的に活用するシェアリングエコノミーの要素や継続課金制のサブスクリプション型のビジネスモデルを採用していることが特徴です。「airCloset」はメーカー、ブランド等のアパレル事業者と顧客とを引き合わせるプラットフォームとしての機能を有しており、かつ、レンタル中の洋服で気に入ったものについては購入することも可能な機能を備えています。洋服を着ることに関わる移動や選択・メンテナンスや購入(所有)までさまざまな機能を統合したFaaS形式(※1)サービスです。「airCloset」リリース以降も継続的にPDCAサイクル(※2)を回すことで、機能改善及び新規機能の追加を行ってまいりました。代表的な機能改善及び新規機能追加の例としては、顧客が好みのスタイリストを指名できる「スタイリスト指名オプション」機能の追加や、レギュラープランの2倍の量の洋服をレンタルできる「ダブルレンタルオプション」、洋服と合わせたアクセサリーをレンタルできる「アクセサリーオプション」の追加などが挙げられます。

当社の事業構造は洋服を仕入れ、パーソナルスタイリングによって付加価値を高めて提供することでレンタル利用料および販売売上(買取料)にて収益化を目指すビジネスと言い換えることもできます。

 

また、当社では「airCloset」で蓄積したノウハウや運用上収集している様々なデータを活用し、洋服の「購入」機会にスタイリストのアドバイスを受けられる「airCloset Fitting」、パーソナルスタイリングが実地で体験できる店舗型サービス「airCloset × ABLE」、生活家電や寝具など比較的高額なライフスタイル商材を試して購入する「airCloset Mall」などの事業を提供しています。今後も、当社の事業を推進することにより、アパレル業界、日本の経済社会に対する貢献をしたいと考えております。

なお、当社はパーソナルスタイリング事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載は省略しております。

 

※1 FaaSとは、Fashion as a Serviceの略称であり、洋服の所有・利用に関わる様々な機能(選択・比較・コーディネート・購入・試着など)をサービス提供側が用意し、利用者がそのニーズに応じて利用していくサービス提供基盤のことを指します。

※2 PDCAサイクルとはPlan(計画)、Do(実行)、Check(測定・評価)、Action(対策・改善)の仮説・検証型プロセスを循環させ、マネジメントの品質を高めようとする活動のことを指します。

 

■ airClosetの事業構造

0201010_001.png

※ 無料会員とはメールアドレスによる登録で、取り扱いアイテムの閲覧やエコセールへの参加などが可能な会員属性のことを指します。

 

 

(2) サービス概要

① ファッションレンタルサービス「airCloset」について

「airCloset」は国内居住の女性をターゲットに、一人一人の顧客の好みに合わせてスタイリストが選定した洋服をレンタルするサービスとして2015年2月より提供開始しております。洋服のスタイリングを含む顧客とスタイリストのコミュニケーションは非対面のオンラインで行われることが特徴です。レギュラープランでは、月額定額制で、1度に3着の洋服をコーディネートし、顧客の指定する住所に郵送します。顧客は受け取った洋服を職場や女子会・ママ会といった日常シーンで着用し、楽しむことが可能です。着用を終えた洋服は専用の返送方法にて当社委託先の倉庫に返却し、返却を確認できた時点でまた次の洋服を当該顧客に配送するというサイクルを繰り返します。返却された洋服のクリーニング・メンテナンスは利用料金の範囲内で当社委託先の協力会社にて行うため、顧客に不要な手間をかけさせない点にも工夫があります。また、レンタルされた洋服は顧客の手元での着用時または返却後に在庫として存在する場合には、会員特別価格にて購入することもできるため、レンタル衣類の試着サービスとしてだけでなく、洋服の新たな購入方法としても利用されています。

自分の好みやサイズを登録するだけでプロのスタイリストが選定した洋服が届き、その洋服を日常生活で楽しみ、利用後はそのまま返却するだけでまた次の洋服が届く。手軽にたくさんの「洋服との新しい出会い」を得られることをサービスの中心的な価値としています。

 

「airCloset」の顧客の年齢層は20代から50代女性と幅広く、特に30代後半から40代が中心となっています(2021年10月時点)。中でも働く女性が93.5%(2022年3月時点)、子供を持つ女性が55.8%(2022年4月時点)を占める等、仕事や育児に時間が割かれており、自身の洋服選びの時間に悩む女性が賢くファッションを楽しむために利用しているケースが多く見られます。世帯所得についても1,000万円超の顧客が30%強と多くみられます(2021年10月時点)。また、2022年4月実施の顧客アンケートでは、時間的制約や手段的制約によって買い物に行きたくてもいけない(71.6%)、洋服のコーディネートや着こなしに迷ったことがある(92.0%)などの顧客層の悩みが抽出されており、これらの課題を解決するためのサービスとしても活用されています。

 

当サービスの主な収益構造は、「airCloset」サービスの提供による顧客から得られる月額の会費収入です。会費収入は主に9,800円/月のレギュラープラン、6,800円/月のライトプランと12,800円/月のライトプラスプランそれぞれのプランに利用登録をした会員を通じて得られるものであり、サブスクリプション型で提供しています。これらに加えてレギュラープランの2倍の洋服レンタル機会を得られるダブルレンタルオプション(8,800円/月)や洋服だけでなくアクセサリーをレンタル対象に追加できるアクセサリーオプション(1,000円/回)、好みのスタイリストを直接指名できるスタイリスト指名オプション(500円/回)、コーディネートに用いる洋服のブランドを指定できるブランドセレクトオプションなどのアップセル・クロスセル(※)によるさらなる収益機会の獲得を見込むことが出来ます。なお、レギュラープランは返却する都度、何度でも次の洋服がレンタルできるプラン、ライトプランは月に1度、3着1セットの洋服をレンタルできるプラン、ライトプラスプランはXS~3Lの大きめサイズの洋服が月に1度、5着1セットでレンタルできるプランとして提供しています。また、個人ではなく法人単位のレンタルサービスも提供しております。

また、月額の会費収入とは別に、レンタル中の商品を現状有姿で買い取る際に得られる販売収入、レンタル提供が終了したアイテムを販売する「エコセール」(会員様限定)、各顧客への洋服の配送の際に行う企業広告のサンプリングや梱包資材へのデザイン広告等を請け負う広告収入などがあります。

 

※ アップセルとは、当社が現在提供している商品やサービスに加えて、質及び金額ともにより上位の商品やサービスを提供し、利用者が現在利用する商品やサービスに代わり上位の商品やサービスを購入することをいいます。一方で、クロスセルとは、利用者が現在利用している商品やサービスに追加して、別の商品やサービスを購入することをいいます。

 

■ 「airCloset」の料金体系

0201010_002.png

「airCloset」がパーソナルスタイリングにより提供する顧客体験(UX:User Experience)には、先に試して気に入った洋服だけを購入する価値やデザインの新旧やブランドネームによることなく自身にとって「似合う」洋服を購入する価値、また洋服を購入するだけでなくレンタルサービスそのものを楽しむ価値の3つの新しい価値が含まれます。具体的には、月額会員の半数は「airCloset」を通じて洋服を購入した経験があり、その販売率は期間中の配送着数に対して約5%、売上は総売上全体の約13%に達しています(2021年6月期実績)。また、ブランドやデザインの型式は顧客評価や販売率に関わらず、顧客自身が現状有姿の商品そのものの品質を好んだ際に購入されています。別のアンケートでは、普段購入していないブランドの洋服を「airCloset」を通じて体験した、という顧客が約90%いることも分かっています(2021年2月時点調査)。さらに、利用期間が6か月を超えるロイヤル会員が全会員数の53%を占めており(2021年6月末)、洋服の購入後も継続して当社サービスを利用していることも分かっています。サービスを利用するたびに体験価値が重ねられるため、月額会員の退会率は登録当初から約3か月を境に緩やかになり、顧客獲得コスト(CAC:Customer Acquisition Cost)を1.8か月で回収(※1)し、CAC回収後も長期的に収益を生み出す体制を確立しております。なお、月額会員の平均顧客単価は9,302円/月(2021年6月期実績)となっております。

 

※1 2021年6月期の数字を用いて、月次回収額=年間売上高/年間平均会員数/12ヵ月×限界利益率により算出。CAC回収期間はCAC/月次回収額により算出。

 

なお、2017年6月期以降の当サービスの各四半期末日における月額会員数獲得規模の四半期推移は以下の通りです。事業初年度より継続的に成長し、新型コロナウイルス感染症の影響下にあっても、会員増加を実現しています。2017年6月期から2021年6月期までの期間の月額会員年間獲得数の平均成長率(CAGR)は48.6%となっております。また、同期間での売上高成長率は47.8%です(CAGRにより算出)。

 

■ 月額会員獲得規模の四半期推移

 

 

0201010_003.png

また、「airCloset」には上記の月額会員のほか、メールアドレスを登録し当社からサービス関連情報を受け取ることのできる無料会員という会員属性が存在します。無料会員はレンタルサービスの利用はできませんが、当社の実施するセール等の機会に洋服を購入することが可能です。無料会員は月額会員への転換の見込みのある顧客として事業成長の先行指標となっております。継続的なマーケティング活動を通じて認知度の向上に取り組んでおり、特に、春・秋にサービスへのニーズが高まることから、重点的にマーケティング活動を実施しております。この結果、2021年6月末時点では月額会員29,660人、2022年3月末時点で月額会員32,297人と月額会員数は順調に成長し、無料会員70万人が登録されています。

 

■ 無料会員数・月額会員数の推移

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当社の事業は、顧客との洋服の好みのやり取りを通じた長期的な利用を促進する観点から、サービス品質の維持向上が強く求められます。言い換えると、サブスクリプション型事業の特徴として、会費収入基盤の安定的拡大を実現するとともに、契約期間中のオプション追加や商品購入などLTV(※1)を高める仕組みを具備していることが当事業の成功要因と考えられます。この点において、顧客の選好や購入に関する価格弾力性をデータから分析し活用するなど、AIを用いたパーソナライズの開発・促進も重要となります。2021年6月期におけるサブスクリプション売上高比率(※2)は79.3%となっており、当社の事業収入の中心が安定的な顧客基盤によってもたらされていることを示しています。

 

※1 LTV(Life Time Value)とは、顧客が生涯を通じて企業にもたらす価値のことをいいます。

※2 売上高全体に対する、月額会費および送料による売上の割合により算出。

 

② パーソナルスタイリングECプラットフォーム「airCloset Fitting」について

「airCloset Fitting」はレンタル体験を経た上で洋服の購入に結びつける「airCloset」とは異なり、顧客が洋服の購入を検討する際にスタイリストがその顧客の好みに即した洋服を選定し、直接的に「購入」を促すことを目的としたサービスとして2017年10月にリリース致しました。取り扱う商品は新品の洋服であり、「airCloset」で蓄積したパーソナルスタイリングノウハウを応用しています。「airCloset Fitting」の収益構造は、商品の購入の有無にかかわらず顧客から受領するスタイリング料金と商品の購入時に生じる販売売上の2つにより構成されています。また、「airCloset Fitting」にて活用した在庫を「airCloset」の在庫に転用しレンタルサービスに供することで、洋服の仕入れの効率化にも寄与しています。なお、洋服のスタイリングを含む顧客とスタイリストのコミュニケーションは「airCloset」と同様に非対面のオンラインで行われます。

 

③ ファッションレンタルショップ「airCloset×ABLE」について

当社は、不動産大手の株式会社エイブルとの共同により2016年10月より、パーソナルスタイリングサービスとファッションレンタルサービスを同時に体験できる店舗型の施設「airCloset×ABLE」を運営しています。「airCloset×ABLE」では、来店した顧客に対し、店舗に配置しているスタイリストが対面で洋服に関する相談を受け、同店舗に保有している洋服の中からスタイリングを提案し、顧客が気に入った場合にはその洋服をその場で着用もしくはレンタルして持ち出すことが出来る仕組みとなっています。「airCloset×ABLE」の収益構造は主として来店顧客から受領するレンタル料金であり、レンタル期間に応じた価格設定を行っています。

 

④ メーカー公認月額制レンタルモール「airCloset Mall」について

当社は、2020年4月に、生活家電等のライフスタイル商材を取り扱うメーカーにサブスクリプション型のレンタル型販売ビジネスの基盤を提供するサービスとして「airCloset Mall」をリリース致しました。本サービスは当社と各メーカーがプラットフォーム利用契約を直接締結し、顧客へ契約に基づく商品をレンタルし、試用したうえで購入を促す販売チャネルを提供します。メーカーは商品の納品から最短1週間でサブスクリプションのレンタル型販売ビジネスを始めることができ、顧客は目当ての商品を自宅で試用してから購入を検討することが出来るメリットがあります。また本サービスは「airCloset」で蓄積したフルフィルメント(※)ノウハウを応用した物流プラットフォームとしてメーカーと顧客の間で機能しています。「airCloset Mall」の収益構造はメーカーから個別契約にて定めた金額を受領するプラットフォーム利用料と顧客から受領するレンタル売り上げの一部及び購入に結びついた場合の販売売上の一部(レベニューシェア)によって構成されます。

 

※ フルフィルメントとは、通信販売やECにおいて、受注から配送までの業務(受注、梱包、在庫管理、発送、受け渡し、代金回収まで)の一連のプロセス全体のことを指す用語として用いております。

 

 

(3) 当社の特徴

① 専用オペレーションの強み

当社は、クリーニング技術の改善や個品単位でのレンタルアイテムの保管管理に関する独自のフルフィルメントノウハウを蓄積しており、ファッションレンタルに関わる物流機能について様々な強みを有しています。例えばレンタルアイテムの個品管理や、協力会社との連携による専用のクリーニング手法・メンテナンス方法を継続的に開発・導入・検証しております。月額会員一人当たり限界利益(以下、「一人当たり限界利益」)はオペレーション業務の改善の結果、以下のとおり順調に推移しております。また、一人当たり限界利益はサブスクリプションビジネスの健全性、持続的な収益性の動向を把握するための重要指標と捉えております。一人当たり限界利益の内訳にあたる一人当たりオペレーションコストについても下表の通り改善し続けています。

 

■ 一人当たり限界利益の推移

 

売上高

(千円)

変動費

(千円)

限界利益

(千円)

平均会員数

(※1)(人)

一人当たり限界利益(※2)(円)

2017年6月期

604,873

446,739

158,134

4,910

32,210

2018年6月期

958,882

752,636

206,246

7,966

25,891

2019年6月期

1,556,587

931,705

624,881

12,011

52,025

2020年6月期

2,173,100

1,290,396

882,704

17,742

49,753

2021年6月期

2,887,057

1,402,986

1,484,071

24,762

59,934

※1 各期間における日次の会員数を平均することで算出

※2 一人当たり限界利益:売上高より、売上原価及び販売費及び一般管理費に含まれる変動費(オペレーションコスト、スタイリングコストなど)を控除(ただし、レンタル用資産償却費控除前)した金額を限界利益とし、平均会員数で除すことで算出

※3 2020年6月期の変動費には倉庫移転費用58,624千円が含まれております。

※4 限界利益(売上高より、売上原価及び販売費及び一般管理費に含まれる変動費(オペレーションコスト、スタイリングコストなど)を控除(ただし、レンタル用資産償却費控除前)した金額)/ 売上高により算出される限界利益率は2021年6月期において51.4%となります。

 

■ 1配送当たりオペレーションコスト(※ CPO)の推移

 

CPO

(円)

2017年6月期

3,452

2018年6月期

3,512

2019年6月期

2,845

2020年6月期

2,789

2021年6月期

2,516

※ 移転費用を除く物流費用の総額を配送数で除すことで算出

 

またオペレーションの全体像については以下の通りです。

 

■ 独自の循環型プラットフォーム

創業時から社内に物流専門チームを設置し、協力会社と共に専用物流倉庫/専用クリーニング工場による独自システムや独自オペレーションを構築しております。返却を受けたレンタル品のメンテナンスから再出荷までのプロセスを循環型の物流基盤(プラットフォーム)と捉えており、当社物流の強みとしています。具体例としては、返却を受け付けた洋服を最短では1日で再貸出し可能にするよう、オペレーション品質を高めています。また、配送手段についてもヤマト運輸株式会社、佐川急便株式会社等の配送事業者の活用や、三菱商事株式会社が提供するSmari、MagicalMove株式会社が提供するScatchの導入など顧客の利便性を高めるために様々な工夫を行っています。こうした一連の機能を「AC-PORT」と呼称し、ファッションレンタル事業の収益化に貢献するよう、改善運用を繰り返しています(下図「AC-PORTの改善履歴」の『フェーズ4』)。具体的には、洗濯可能なRFIDタグ(※)を活用し、個品管理が可能な独自のWMS(Warehouse Management System:倉庫管理システム)、におい除去等の精度を高めたクリーニング手法、洋服の循環を高効率で実現する庫内オペレーション等が特徴です。特に、WMSについては完全自社開発により構築し、外部ベンダーに依存しない開発・改修・運用体制を備えています。また、本システムは将来的な事業展開に備え、ファッションレンタルサービスに関するオペレーションを機能単位で外販可能な設計となっており、将来的には他社へのプラットフォーム展開も可能となっております。さらに長期的には、現在は別拠点にて運営している倉庫・クリーニング・メンテナンスの機能を同一拠点に配置した、倉庫一体型の物流体制の構築を目指します(下図「AC-PORTの改善履歴」の『フェーズ5』)。

※ RFID(Radio Frequency Identifier)とは、ID情報を埋め込んだRFタグ(電磁波を用いて、内蔵したメモリのデータを非接触で読み書きする情報媒体)から、電磁界や電波を用いた近距離の無線通信によって情報をやりとりするもの、および技術全般を指します。

 

 

■ AC-PORTの改善履歴0201010_005.png

② パーソナルスタイリング

当社は、今日の消費社会について、トレンドを頼りに設計される大量生産・大量消費の消費文化から、個々人の多種多様なライフスタイルや好みを重視する消費文化への変化が生じており、ファッションの分野では特に、今後パーソナルなサービスが一層求められていくことになると考えています。当社と雇用契約を締結するスタイリスト及び業務委託契約を締結するスタイリストは合計300名を超えており(2022年1月末時点)、これまで400万回以上のコーディネートを提供しています(2022年1月末時点)。また、スタイリングはオンラインで連携するクラウドソーシングの仕組みで提供されており、前述の消費文化の変容に伴い増加するニーズを満たすことが出来るよう効率的なリソースの確保に努めています。なお、スタイリストは過去のスタイリングデータとお客様の評価データを掛け合わせることにより自身の提供するスタイリングの品質を自発的に高められる仕組みを取っています。

 

③ サブスクリプションモデルによる収益の安定性及びエンゲージメントの高いユーザー基盤

「airCloset」はサブスクリプションモデルでのサービス展開を実施しており、強固な顧客基盤を強みとしています。非連続に消費・購買が行われる小売業と異なり、顧客との継続的な関係を前提とするため、業績の急激な変動が生じません。また、損益に与える変数が多数ありながらも事業構造がシンプルかつ明確になっていることがその特徴です。このため、売上高の成長とコストの安定化を達成することで、事業の将来像を予想しやすいビジネスであると考えております。月額会員のなかには5年を超える長期利用を継続している顧客も存在します(※)。また、顧客がスタイリストにスタイリングの感想を伝えることで、次回のスタイリングが一層その顧客に適したものに調整されていく仕組みをもっていることから、当社と顧客との間のコミュニケーション頻度が非常に高いことも特徴としています。当社と顧客の信頼関係が醸成されていることの証左の一つとして、平均50%の感想記入率(1配送あたりお客様フィードバック率)が挙げられます(2021年7月~2022年3月の平均)。月額会員制度による安定的な収益性に加え、多くの顧客接点からサービス改善策を質量ともに打ち出し続けられる点が当社のビジネスモデルの強みであると考えています。その他、サービス関連の情報提供を目的としたメール開封率は平均54%(2021年7月~2022年3月の平均)、適時実施するお客様対象アンケートの回答率も平均19%に上ります(2021年1月~2021年12月の平均)。また、月次の新規獲得顧客数のうち7%強は退会会員からの再登録となっており、顧客との信頼関係を高く維持しております(2021年6月期)。

※ 2022年3月末時点における月額会員としての最長継続期間は6年11か月

 

 

④ AI・データ活用

パーソナルスタイリングサービスの量及び品質を担保しその精度を高めるため、スタイリストの「スキルのシェア」とデータサイエンティストによる「AI/データ活用」を徹底しております。顧客からは従来のECサービスで取得できる購買データのみならず、着用後の感想(体験データ)を収集することが出来、これを社内で解析・応用することで新しい顧客体験につながるアクションを取り続けることが可能になります。業務の中で収集できる様々なデータを指標化することで、スタイリング精度の向上や、顧客とスタイリストのマッチング、在庫数の最適化、物流効率の最適化、仕入れ価格の最適化など、サービス品質の向上に向けたPDCAサイクルに活用しています。例えば、体験データについては120万件/年以上、スタイリングデータも40万件/年以上、サービスを運営しながら収集しております。

 

⑤ マーケティング手法

「自分の好み・自分に似合う」商品を求めているパーソナライズ市場の潜在顧客のニーズに対し、様々なマーケティング手法で対応し、効率的な顧客獲得を行っております。本市場に対する顧客開拓力は当社の成長の源泉となっております。例えばWEBマーケティングの施策の例として、月間PV数57万件(2021年6月実績)を数えるオウンドメディア(※)にてサービス訴求を行っています。オウンドメディアを含む様々な広告導線から月間PV数89万件(2021年6月実績)のサービス登録サイトへ顧客を誘導し、顧客獲得を目指しています。オウンドメディアサイトは「オフィスカジュアル」という検索キーワードで1位を獲得するほどに内容の充実を図っております(2021年6月末時点 Google Search Consoleにより調査)。またサービス登録サイトにおいては、当社のこれまでのスタイリングノウハウを独自に集約した「パーソナルスタイリング診断」のコンテンツを配置しており、2021年6月末時点での診断利用回数は累計で136万件にも上ります。このように顧客獲得手法を洗練し、顧客獲得コストをコントロールすることで、顧客獲得の効率化と事業成長を実現しております。CACに基づき算出されるユニットエコノミクスの効率を表すLTV/CACは4.4となっております(2021年6月期)。

 

※ オウンドメディア(Owned Media)とは「自社で保有するメディア」の総称のであり、オンラインマーケティングの文脈では特に、自社で運営・情報発信を行う広告用のウェブサイトのことを指します。

 

⑥ 効率的な在庫管理

当社はサブスクリプションモデルを採用しているため、貸出着数の増加によって事業拡大を図る従来型の貸衣装事業とは異なる在庫管理の考え方を持っています。具体的には保有在庫の最適化に関しては一着当たり回転率ではなく、月額会員一人当たり仕入高(以下、「一人当たり仕入高」)と顧客満足度をKPIとして管理しています。顧客満足度を下げずに一人当たり仕入高を効率化していくためのモニタリング、仕入計画策定、在庫運用等を実施しています。一人当たり仕入高の推移は下図の通りです。なお、これにより各洋服が使われる期間も長期化が図られ、利用実態に応じて見直しを行うレンタル用資産の耐用年数にも影響を与えるものとなります。

 

■ 一人当たり仕入高(※1)の推移

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※1 各年度におけるレンタル用資産増加額を年間平均月額会員数で除すことで算出

※2 利用毎にお客様から取得する4段階評価のレーティングにおける年間平均値

 

 

 

[事業系統図]

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※ 洋服のレンタルと返却は当社が契約しているファッションレンタル倉庫と顧客の間で繰り返されます。レンタルした洋服のうち、顧客が購入の意思を示したものについては購入代金を支払うことにより顧客の手元に取り置くことができます。

 

 

4【関係会社の状況】

該当事項はありません。

 

5【従業員の状況】

(1)提出会社の状況

 

 

 

 

2022年5月31日現在

従業員数(人)

平均年齢(歳)

平均勤続年数(年)

平均年間給与(千円)

66

(43)

30.4

2.90

4,893

(注)1.従業員数は就業人員(正社員)であり、パート、契約社員及び人材会社からの派遣社員は、最近1年間の平

     均人員を( )外数で記載しております。

2.平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

3.当社の事業セグメントは、パーソナルスタイリング事業のみの単一セグメントであるため、セグメント別の従業員数の記載はしておりません。

 

(2)労働組合の状況

当社において労働組合は結成されておりませんが、労使関係は円滑に推移しております。