(注) 1.売上高には、消費税等は含まれておりません。
2.潜在株式調整後1株当たり当期純利益については、潜在株式は存在するものの、当社株式は非上場であり、期中平均株価が把握できないため、また、1株当たり当期純損失であるため、記載しておりません。
3.自己資本利益率については、親会社株主に帰属する当期純損失を計上しているため記載しておりません。
4.株価収益率は当社株式が非上場であるため記載しておりません。
5.従業員数は就業人員(契約社員を含んでおります。)であります。また、持分法適用会社である株式会社エナジーゲートウェイへの出向者を含んだ人数としております。
6.前連結会計年度(第7期)及び当連結会計年度(第8期)の連結財務諸表については、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」(昭和51年大蔵省令第28号。以下、「連結財務諸表規則」という。)に基づいて作成され、金融商品取引法第193条の2第1項の規定に基づき、太陽有限責任監査法人により監査を受けております。
7.第8期は受注が後ろ倒しとなり売上が予定どおり進捗しなかったことに加えて、上場に向けた体制整備のため、人件費及び業務委託費などが増加したことにより、経常損失及び親会社株主に帰属する当期純損失を計上しております。また、主として税金等調整前当期純損失の計上により、営業キャッシュ・フローがマイナスとなっております。
8.2022年2月10日付で株式1株につき20株の株式分割を行っております。第7期の期首に当該株式分割が行われたと仮定し、1株当たり純資産額及び1株当たり当期純損失を算定しております。
(注) 1.売上高には、消費税等は含まれておりません。
2.第4期、第6期、第7期及び第8期の潜在株式調整後1株当たり当期純利益については、潜在株式は存在するものの、当社株式は非上場であり、期中平均株価が把握できないため、また、1株当たり当期純損失であるため、記載しておりません。
第5期の潜在株式調整後1株当たり当期純利益については、潜在株式は存在するものの、当社株式は非上場であり、期中平均株価が把握できないため、記載しておりません。
3.第4期、第6期、第7期及び第8期の自己資本利益率については、当期純損失を計上しているため記載しておりません。
4.当社株式は非上場であるため株価収益率を記載しておりません。
5.前事業年度(第7期)及び当事業年度(第8期)の財務諸表については、「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」(昭和38年大蔵省令第59号。以下、「財務諸表等規則」という。)に基づいて作成され、金融商品取引法第193条の2第1項の規定に基づき、太陽有限責任監査法人により監査を受けておりますが、第4期、第5期及び第6期の財務諸表については、監査を受けておりません。
6.従業員数は就業人員(契約社員を含んでおります。)であります。また、持分法適用会社である株式会社エナジーゲートウェイへの出向者を含んだ人数としております。
7.第8期は受注が後ろ倒しとなり売上が予定どおり進捗しなかったことに加えて、上場に向けた体制整備のため、人件費及び業務委託費などが増加したことにより、経常損失及び当期純損失を計上しております。
8.2022年2月10日付で株式1株につき20株の株式分割を行っております。
そこで、東京証券取引所自主規制法人の引受担当者宛通知「『新規上場申請のための有価証券報告書(Ⅰの部)』の作成上の留意点について」(平成24年8月21日付東証上審第133号)に基づき、第4期の期首に当該株式分割が行われたと仮定して算定した場合の1株当たり指標の推移を参考までに掲げると以下のとおりとなります。
当社の創業者である只野太郎は、大手電機メーカーであるソニー株式会社(現・ソニーグループ株式会社)に技術者として入社し、技術開発及び事業推進管理の両面を実務及び管理職として経験したのち新規事業創出部門にて電力ICT関連事業の立ち上げを牽引しておりました。
ソニー株式会社(現・ソニーグループ株式会社)においては、2009年に、エネルギー分野の事業開発構想が開始され、翌年2010年、人工知能技術から家電分離技術が派生し、2012年3月には米スマートグリッド実証Pecan Street Projectに参画しております。
2012年初頭、同社の全体戦略見直しにて同新規事業創造活動すべてに凍結方針が打ち出された際、今後の地球持続性に向けた取り組みの重要性と、それに対する世界経済の後押し継続を確信し、当時のメンバー数名にて同社経営陣と事業カーブアウトの協議を開始し、2013年4月に当社を設立、資金調達を実現し、当時の開発活動の中で特に世界最先端で注目を浴びていた技術知財、開発中であったシステム資産等をソニー株式会社(現・ソニーグループ株式会社)から有償にて譲渡され、関わるメンバーの期間出向の協力をも受ける形で、2013年7月に当社の独立稼働を開始いたしました。設立以後の企業集団に係る経緯は、次のとおりであります。
当社グループは、「エネルギーデータの恵みを世界中の人々に届ける」をミッションとして、「エネルギー」と「AI」を掛け合わせ、エネルギーデータのエコシステムを生み出し、電力利用効率を最適化するエナジー・インフォマティクス事業を提供することを通じて、持続可能な地球づくりと人々の豊かな暮らしの両立を実現する取り組みを行っているエネルギーテック(EnergyTech(注1))企業グループであります。
当社グループは、以下の3つの段階を経て、当社グループのサービスが社会インフラ化していくビジョンを描いております。
現在は、第1段階から第2段階への移行期でありますが、2025年以降、順次導入予定の次世代スマートメーター(注2)の登場を機に、第2段階の進展が加速するものと考えております。
当社グループは、当社、連結子会社(Informetis Europe Ltd.)及び関連会社(株式会社エナジーゲートウェイ)の3社で構成され、エネルギーデータを利活用することで、生活の質を向上させながら、エネルギーの効率的利用を目指す企業向けに、エナジー・インフォマティクス事業を展開しております。
エナジー・インフォマティクス事業は、
① 電力センサー等から得られるエネルギーデータ等をIoTデータプラットフォーム(注4)(以下、「プラットフォーム」)に収集
↓
② プラットフォームに蓄積されたエネルギーデータ等を独自の AIで解析し、エネルギー最適化・脱炭素に貢献する価値あるデータに加工
※独自の AI
電力データをAI(機械学習(注5))により分析し、家庭や施設の総電力データから「どの家電がいつ、どのくらい使われているか」をリアルタイム(即時)に推定する機器分離推定技術(Non-Intrusive Load Monitoring技術(以下、「NILM」))を中核として、デジタルツイン(注6)や数理最適化(注7)なども活用したエネルギーデータ解析に特化した当社グループ独自の AI(名称:Metis Engine)のこと。
↓
③ 価値あるデータを各種アプリケーションによって可視化
することによって、電力利用効率を最適化するプラットフォームをSaaS(注8)型で提供しております。具体的な提供サービスは、以下のとおりであります。
また、上記のエネルギーデータ解析に特化した当社グループ独自の AIについて、図式化すると以下のとおりであります。
連結子会社であるInformetis Europe Ltd.は、地域的にAI(機械学習)の学術的教育環境が整っており、最先端のAI研究者採用に有利なイギリス・ケンブリッジに設立された技術開発拠点であるとともに、欧州圏を中心とした海外展開の足がかりのための拠点でもあります。
関連会社である株式会社エナジーゲートウェイは、当社と東京電力パワーグリッド株式会社との合弁で設立された日本国内における当社の独占的販売代理店であります。
なお、当社グループは、エナジー・インフォマティクス事業を単一セグメントで展開しているため、以降の説明においてセグメント別の記載は省略しておりますが、事業領域は、事業を展開する地域により、①国内領域及び②海外領域に分かれております。
最近2連結会計年度の当社グループの事業領域及び後述の収益区分毎の売上高は、以下のとおりであります。
(単位:千円)
当社グループの収益モデルは、プラットフォームを利用する顧客企業数やプラットフォーム上で稼働する各種アプリのエンドユーザー数(プラットフォーム登録者数)が増加するにつれて、年々売上収益が積みあがり、累積的・継続的な発生を見込むことが可能なリカーリング型の収益があり、「プラットフォーム・アプリ提供」がこれに該当いたします。
一方で、プラットフォームやプラットフォーム上で稼働する各種アプリの利用開始時には、起点として、電力センサーの機器販売代金、プラットフォームの初期設定費用やプラットフォーム上で稼働する各種アプリの初期設定費用などの一時的な収益を伴うこともあり、「アップフロント」がこれに該当いたします。
「アップフロント」は、「プラットフォーム・アプリ提供」の起点となることから、当社グループでは、累積的・継続的な収益である「プラットフォーム・アプリ提供」のみならず、一時的な収益である「アップフロント」も重視しております。
当社グループにおける収益区分の詳細は、以下のとおりであります。
当社グループは、国内領域においては、以下の分野において、サービスを提供しております。
当社グループでは、実証実験が翌年以降の商業化に伴う収益につながっており、実証実験のパイプラインは、常に10案件以上ありますが、上述の特に重要な実証実験のパイプラインの概況を表にまとめると、以下のとおりであります。
当社グループは、海外領域においては、英国に連結子会社(Informetis Europe Ltd.)を設け、欧州圏の現地企業や日本企業の現地法人などとの実証実験を行う等、欧州圏における本格的な事業展開に向けた準備を進めております。
特に、脱炭素化を背景に英国を筆頭とした欧州圏に広がるガスボイラー(ガス給湯器)からヒートポンプ(電気給湯器)への急速なシフトが直近最大の事業拡大機会となっております。
具体的には、ヒートポンプ(電気給湯器)への急速なシフトが進む中、電気の消費が急激に増加することによる電力系統・電力網の安定運用への影響を管理・制御するため、家全体だけでなくヒートポンプ(電気給湯器)やその他制御可能な機器の詳細な消費エネルギーデータを取得したうえでのヒートポンプ(電気給湯器)の最適化制御が重要になります。
当社グループでは、2021年10月から当社グループの電力センサーがDaikin Europe N.V.の英国におけるヒートポンプ(電気給湯器)の付帯設備として導入され、電力系統・電力網と消費者の電力料金負担の双方のメリットを創出する最適化技術を提供しております。
[事業系統図]
当社グループの事業系統図は、以下のとおりであります。
クロステック(X-tech)とは、既存業界とAI、ビッグデータやIoTなどのIT技術が融合して生まれる新しい価値や仕組みのことを言います。一例として、金融業界の技術革新「フィンテック(FinTech)」や農業分野の技術革新「アグリテック(AgriTech)」などが挙げられます。
当社グループが関連するエネルギー業界においては、地球持続性に向けた産業の地殻変動とも呼べるような産業変革を背景に、エネルギーとIT技術の融合による「エネルギーテック(EnergyTech)」による技術革新の必要性が高まっており、その革新は a「エネルギーの4D」、b「需給バランスの難化」という2つの側面から捉えられます。
地球環境変化に向けた世界的な危機意識や技術の進化、経済合理化を背景として、エネルギー業界では以下の大きなイノベーションが進んでおり、これを国内では「エネルギーの4D」と呼んでいます。
1つめは、脱炭素化(Decarbonization)であり、地球温暖化への対策として、再生可能エネルギー(再エネ)の導入が進み、それに伴う予測困難な出力変動への対応が求められております。
2つめは、分散化(Decentralization)であり、先述した再エネ導入も含め様々な規模の分散型発電や蓄電、さらには電気自動車との連携も加わり、系統運用の複雑化が急速に進んでおります。
3つめは、自由化(Deregulation)であり、電力小売自由化による市場経済化など様々な規制緩和が進められ、競争が活性化しております。
4つめは、デジタル化(Digitalization)であり、スマートメーターの導入とIT技術の進化に伴い、電力系統運用でもDX(注17)が進んでおります。
4Dの1つめの「脱炭素化」や後述の「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (4) 経営環境」に記載のとおり、国内外において、脱炭素化の流れが強まったことを受けて、再エネの活用拡大が期待されております。
電力系統は、需要と供給のバランスが崩れることにより周波数や電圧の変動が起こり、場合によっては停電につながりかねないため、常に時間ごとの電力の需要と供給を一致させる必要があります。特に、天候によって発電量が左右されがちな太陽光や風力などの自然由来の再エネの増加によって、電力の需要と供給のバランスを取る「需給バランス調整」は、より難易度が上がります。
「需給バランス調整」は、従来、供給側(発電側)においては火力発電がその役割を担っておりましたが、脱炭素化に向けて、予測が困難かつ不安定である自然由来の再エネによる供給の増加が見込まれると同時に、火力発電による供給の割合が低下し、火力発電のみによって需給バランスの調整を行うことが難しくなることが見込まれております。
また、4Dの2つめの「分散化」に関連して、電力業界では、発電、送配電及び小売の分離並びに自由化という電力システム改革によって、大手電力会社がこの3部門のサービスを一括して提供する1地域・1電力会社制による集中管理体制から「発電」、「送配電」及び「小売」という各部門へ多数事業者が参加したことによる複数社による分散管理体制に移行している現在においては、電力のやりとりは複雑化し、需給バランスの調整を行うことがさらに難しくなることが見込まれております。
加えて、電力の需要家(電力消費者又は契約者)側は、従来は、電気を消費するだけでありましたが、現在は、4Dの3つめの「自由化」に関連して、太陽光発電等により発電することも増えており、余剰電力を売電することによる需要家側からの「逆潮流」も発生しております。
そこで、リアルタイムでの「需給バランス調整」が不可欠である電力の世界においては、従来の「供給側調整」に加えて「需要側調整」を目途した詳細な電力リアルタイムデータ取得、解析・分析を行うDX(4Dの4つめである「デジタル化」)、この結果から発電・需要予測などの有益情報や価値ある知見を抽出(エネルギーデータの価値創造)し、制御するための情報技術革新が必要になります。
これらの変化要因は、複雑に絡み合っているため、複雑に絡み合っている変化要因相互の関係を明らかにし、対処するためには、社会の構造・意識改革のみならず、「エネルギーテック(EnergyTech)」に期待されるところが大きくなります。
まず、当社グループの企業ドメインである電力市場は、EV化やオール電化の波に乗り、ガスやガソリンなどの一次エネルギー市場を取り込みながら、2050年には最大40%ほど拡大することが見込まれております(出所:経済産業省、「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」(2021年6月18日)により当社推計)。
次に、当社グループの事業ドメインとして、電力利用効率の最適化という観点から、当社グループが一次ターゲットとしているエネルギーマネジメントシステム関連市場は、エネルギーデジタル関連サービス市場、エネルギーマネジメントシステム(EMS)関連機器・設備市場及びエネルギーマネジメントシステム(EMS)関連システム・サービス市場から構成され、これらの市場は、2030年度において合計で2兆5,887億円(2019年度比178.5%)に及ぶと見込まれております(出所:株式会社富士経済、2020 エネルギーマネジメントシステム関連市場実態総調査)。中でも、エネルギーデータの利活用等が市場を牽引するエネルギーデジタル関連サービス市場は、2030年度において合計で8,880億円(2019年度比257.3%)に及ぶと見込まれております(出所:株式会社富士経済、2020 エネルギーマネジメントシステム関連市場実態総調査)。
ところで、電力利用効率の最適化には、「需給バランス調整」のような発電・送配電・需要家設備という電力システム全体で最適化するサービスを当社グループが一次ターゲットとしているエネルギーマネジメントシステム関連市場において提供することが必要になりますが、電力+αの付加価値も同時に実現することで、当社のサービスの普及を促し、当社のサービスを社会基盤(インフラ)化することも必要になります。
この観点から、当社グループが二次ターゲット市場としている市場は、パートナーとのアライアンスによって、電力データに新たな価値を創りだすことによってアクセス可能になるものでありますが、現在は、a AI市場(公共/社会インフラ)、b AI市場(医療/ライフサイエンス)及びc インターネット広告市場など、様々な分野・新市場へ進出を予定しております。
進出を予定している市場の規模は、以下のとおりであります。
a AI市場(公共/社会インフラ)4,520億円
(出所:株式会社日経BPマーケティング、AI・IoT・ビッグデータ総覧2017-2018より2030年の市場規模予測)
b AI市場(医療/ライフサイエンス)1,030億円
(出所:株式会社日経BPマーケティング、AI・IoT・ビッグデータ総覧2017-2018より2030年の市場規模予測)
c インターネット広告市場1兆7,567億円
(出所:株式会社電通、2020年日本の広告費より、2020年(1~12月)の実績)
当社グループのエナジー・インフォマティクス事業の特徴は、①「独自の電流波形センサリング及びNILM技術」、②「良質な機械学習データ」、③「多様なデータマイニング技術」であり、これらを支える技術に関する特許を日米欧で取得しております。
当社グループのエナジー・インフォマティクス事業は、家庭や施設の総電力データをリアルタイム(即時)に計測することから始まります。
一般的に電力サービス事業者による電力データの取得は、現行スマートメーターや事業者独自開発のエネルギーマネジメントシステム(EMS)用電力センサーなどにより行われております。
現行スマートメーターは、電力料金徴収を目的として、既に多くの家庭や施設に設置済みであることから、追加のコストが生じない(低コスト)というメリットを有している一方で、30分ごとの電力使用量を計測するものであることから、電力データの計測精細度(粒度)は、粗いものになるというデメリットを有しています。
一方、事業者独自開発の電力センサーは、当社グループと同様の方向性を持つ競合企業(主に海外)があり、その中には、例えば1秒間に100万回の頻度(サンプリング周波数=メガヘルツ(MHz))といった高い精細度、高サンプリング周波数で計測し、電力データの計測粒度や特徴量抽出が、非常に高精細なものになるというメリットを有するものもありますが、高い精細度、高いサンプリング周波数で計測するためには、これを計測するための電力センサーで使用する部品が高性能、高価になるため、電力センサーの製造コストが高くなるというデメリットも有しています。
そこで、当社グループでは、高精細なNILMに必要な、十分に高い粒度の電力データの計測と、低コストを両立した独自の電流波形センサリング技術を開発し、これを搭載した電力センサー(以下の画像参照)を開発いたしました。
(数字は寸法を示し、単位はミリメートル)
この電力センサーは、現行スマートメーターのハードウェアに使用されている部品の性能で実現可能な最大サンプリング周波数である約8kHz(1秒間に8,000回の頻度)での計測を設計仕様とすることで、現行スマートメーターと比べると1,000万倍以上粒度の高い計測を行いながらも、スマートメーターはじめ汎用製品等で大量に流通している部品を流用できるため、電力センサーの製造コストを低く抑えることが可能となっております。
当社グループでは、経済産業省基準認証局国際電気標準課の委託を受け、国際電機標準会議(IEC)(注18)TC85(注19)におけるNILMセンサーデバイスの計測グレードに関する国際標準化を推進し、2021年3月には、これがIEC TC85によって採択され、国際標準仕様書IEC TS63297(以下、「NILM-TS」)を発行するに至っております。
NILM-TSにおいては、高精細なNILMに必要な、十分に高い粒度の電力の測定データについて、電力データを測定する期間(データサンプリング周波数)、電力データを出力する周期(出力周期)及び分析データの大きさ(データビットレート)のテーブルごとにクラス分けしております。
当社の技術は、すべてのクラスにおいて、従来型スマートメーターで対応可能(=コストアップにならない)な範囲で、一番高い粒度の電力の測定データが測定可能であるクラスに位置づけられており、上記の費用対効果の優位性の客観性が担保されております。
上記ポジションをまとめると、以下のとおりであります。
(公開情報の分析をもとにした当社グループ調べ)
(注) 電力会社から一般家庭に供給されている電気は、交流といわれ、電気の流れる方向が1秒間に何十回も変化しております。この流れの変わる回数を周波数(Hz:ヘルツ)といいます。
メガヘルツ(MHz)は、「1秒間に100万回振動する」ような周波数を表し、メガヘルツ(MHz)波形を計測するということは、1秒間に100万回の電力データを取得するような細かさで計測していることになります。
キロヘルツ(kHz)は、「1秒間に1000回振動する」ような周波数を表し、キロヘルツ(kHz)波形を計測するということは、1秒間に1,000回の電力データを取得するような細かさで計測していることになります。
この独自の電流波形センサリング技術で収集される、家庭や施設の総電力データから家電ごとの詳細な状態をリアルタイムで推定するのがNILM(Non-Intrusive Load Monitoring)技術であります。
NILMは、各家庭や施設の総電力の入口に設置した1つの電力センサーにより総電力データを取得し、そのデータを機械学習技術等により分析することで、各家電には直接触れずに(個別計測や個別の仕組みは不要)、間接的にどの家電が、いつ、どれくらい使われていたかをリアルタイムで見える化することを可能にします。
当社グループでは、NILMを中核としたAI関連技術を活用して、エネルギーテータを価値のあるデータに加工しております。
[NILMで解析可能な一例]
NILMは世界的にも最先端技術であるため、応用可能性に関する議論がなされず、また、技術検討及び比較が容易ではなく、グローバルスタンダードが一切存在しませんでしたが、上記のように、2021年3月には、当社グループが経済産業省基準認証局国際電気標準課の委託を受け推進した国際標準化がIEC TC85によって採択され、NILM-TSを発行するに至っております。
これにより、NILMの世界的な認知が大きく加速することを、当社グループは期待しております。
機械学習においては、高い解析精度を維持するため、学習するデータの質と量が非常に重要になります。
特にNILMにおいては、学習に必要な正解データ(=実際の家電毎、時間毎の詳細かつ正確なデータ)を得ることが容易ではないことから、質の良い学習データを大量に取得するには時間がかかります。NILMでは、極めて大量のインプットデータ及び正解データから特徴のポイントまでをも自動的に学習させるような手法は向いておらず、一定規模の学習データ(インプットデータと正解データ)から、開発者の知識も加えた上で特徴を定義し、アルゴリズムに学習させる手法を採る必要があります。
当社グループでは、2013年の創業直後から東京電力グループの東京電力エナジーパートナー株式会社との実証実験を進め、その他多くの実証実験を経て、2016年に電力見える化サービス「うちワケ®」の商用化に成功しております。その後も東京電力パワーグリッド株式会社、東北電力株式会社、株式会社日立製作所、ダイキン工業株式会社、株式会社博報堂DYホールディングス及び株式会社エナジーゲートウェイとも積極的にアライアンスを進めており、これらのアライアンス先との実証実験や共同事業などから取得する質の高い電力データを大量に学習することに成功しております。
当社グループの高度な機械学習技術(AI開発力)は、NILMのみならず、電力データを価値あるデータに加工(データマイニング)する際にも活用されております。
電力網に対しては、再エネ普及に向けて課題が多く残る需給バランス管理に対し、その最適化を可能にする詳細な発電・需要予測技術を機械学習の活用で精度も高く実現し、蓄電池や空調機器の自動最適化制御技術も実現いたしました。
また、このデータマイニングにおいても、学習するデータの質と量が非常に重要になります。特に、他企業とのオープンイノベーションによって創出するデータマイニングを行う際には、顧客企業の秘匿性の高いデータを継続的に学習する必要があります。
そのため、当社グループでは、単に顧客企業へのサービス提供にとどまらず、各業界を代表する企業と資本提携も含んだ業務提携を行うことで顧客企業の秘匿性の高いデータを継続的に学習し、プロファイル分析等の解析アルゴリズムを開発しております。
当社グループが電力データの価値あるデータへの加工例は、以下のとおりであります。
当社は、電力等のデータを収集・分析・加工するIoTプラットフォームサービスを提供することを事業目的として、2018年3月に、東京電力パワーグリッド株式会社と合弁で株式会社エナジーゲートウェイを設立(当社出資比率40.0%)しております。
当社は、代理店契約に基づき、株式会社エナジーゲートウェイを日本国内における独占販売代理店とし、同社との間で、電力センサーの年間最低購入数量を定めたうえで東京電力グループの知識・経験知に基づく事業・業務ノウハウを背景に、複数年契約を前提にして、1顧客当たりの電力センサーの総購入台数が数万台~数十万台の大型顧客を中心に国内での営業活動を推進しております。
あわせて、当社は、東京電力パワーグリッド株式会社との協業を推進し、東京電力グループの知見と蓄積されたデータを活用することで、技術・サービス開発のスピードをより一層向上させ、事業戦略やアライアンス、開発面においても、株式会社エナジーゲートウェイを支援しております。
当社グループは、国内外で事業を展開しておりますが、現在、欧州圏では実証実験が各国で進んでおり、2024年3月期以降、実運用が本格化いたします。
この事業活動を特許・知財の面から支援するため、基幹技術については、日本のみならず、欧州・米国を中心に、各国へ積極的に出願しております。
また、新規事業に関するAI関連技術の発明についても、国内外に積極的に出願し、特許・知財の強化に努めております。
[用語解説]
(注) 1.エネルギーテック:エネルギーとIT技術の融合による技術革新のこと。
2.次世代スマートメーター:2014年から本格導入が開始された毎月の検針業務の自動化や電気使用状況の見える化を可能にする電力量メーター(=現行スマートメーター)に代わり、2025年から順次交換が始まる予定である電力メーターのことで、『「次世代スマートメーター」=「電力DX推進に向けたツール」』として位置づけられている(出所:経済産業省・資源エネルギー スマートメーター制度検討会 次世代スマートメーターの標準機能について(中間取りまとめ))。
3.実証実験:目的の実現可能性を調査するため、事前に調査・検討すること。
4.IoTデータプラットフォーム:「Internet of Things」(モノのインターネット)を活用するために必要な様々な機能をひとつのシステムとして提供するサービス基盤のこと。
5.機械学習:人間が有する学習能力に類似した機能をアルゴリズムに持たせることにより、学習し進化する技術手法、技術名のこと。具体的には、教師データ(学習の元になるデータ)に基づいてアルゴリズムが学習することで、類似の状況において、学習により構築したパターンに基づいて、アルゴリズムが精度の高い推定や判断を行うことが可能になる。
6.デジタルツイン:現実世界の物理的な現象データをデジタル空間上に再現する技術のこと。
7.数理最適化:特定条件下での最適解を選択可能な集合から選択する技術のこと。
8.SaaS:「Software as a Service」の頭文字を取った略語で、ソフトウエアやアプリケーションの機能をサービスとして、クラウド上で提供し、利用者がネットワーク経由で利用するモデルのこと。
9.エネルギーマネジメント:家庭、オフィスビルや工場などにおけるエネルギー使用状況を把握した上で、最適なエネルギー利用を実現するための活動のこと。
10.スマートグリッド:電力インフラと通信インフラを融合させた次世代のエネルギー供給システムで、通信技術を利用した制御により、電力の需要と供給のバランスを取るもののこと。
11.エナジー・リソース・アグリゲーション・ビジネス:バーチャルパワープラント(VPP)(需要家側エネルギーリソース、電力系統に直接接続されている発電設備、蓄電設備の保有者もしくは第三者が、そのエネルギーリソースを制御することで、発電所と同等の機能を提供すること)やデマンドレスポンスを活用して、一般配電事業者、需要家、再生可能エネルギー発電事業者といった取引先に対し、調整力、インバランス回避、電力料金削減、出力抑制回避等の各種サービスを提供する事業のこと。
12.デマンドレスポンス:需要家側エネルギーリソースの保有者もしくは第三者が、そのエネルギーリソースを制御することで、電力需要パターンを変化させること。
13.IoT機器:「Internet of Things」(モノのインターネット)における「モノ」のことで、インターネットに接続されたテレビ・センサー類・照明などのこと。
14.スマート家電コントローラ:例えば、家庭内のエアコンなどの電化製品をアプリや声で操作したり、時間やセンサー、インターネットの情報をもとに自動制御するコントローラのこと。代表的なスマート家電コントローラとして、米国Google社のGoogle Nestデバイスと Google Homeデバイスが挙げられる。
15.レジリエンス:元に復元する能力(回復力)のこと。
16.データマイニング:大量のデータから有用な情報や知識を見つけ出す技術のこと。
17.DX:Digital Transformationの略語で、企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。
18.国際電機標準会議(IEC):国際電気標準会議(International Electrotechnical Commission)のこと。電気及び電子技術分野の国際規格の作成を行う国際標準化機関で、各国の代表的標準化機関から構成される。
19.TC85:IECを構成する電磁計測標準化委員会のこと。
(注) 有価証券届出書又は有価証券報告書を提出している会社はありません。
(注) 1.当社グループは単一セグメントであるため、セグメント別の従業員数の記載は省略しております。
2.従業員数は持分法適用会社である株式会社エナジーゲートウェイへの出向者を含んだ人数としております。
3.従業員数は就業人員(契約社員を含んでおります。)であります。
2.従業員数は持分法適用会社である株式会社エナジーゲートウェイへの出向者を含んだ人数としております。
3.従業員数は就業人員(契約社員を含んでおります。)であります。
4.平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。また、期中の中途入社、退職者等は含んでおりません。
当社グループにおいて労働組合は結成されておりませんが、労使関係は円満に推移しております。