第二部【企業情報】

第1【企業の概況】

1【主要な経営指標等の推移】

(1)連結経営指標等

回次

第6期

決算年月

2021年3月

売上高

(千円)

2,612,944

経常損失(△)

(千円)

451,345

親会社株主に帰属する

当期純損失(△)

(千円)

592,688

包括利益

(千円)

589,173

純資産額

(千円)

2,383,294

総資産額

(千円)

3,686,180

1株当たり純資産額

(円)

31.65

1株当たり当期純損失(△)

(円)

8.04

潜在株式調整後1株当たり

当期純利益

(円)

自己資本比率

(%)

64.64

自己資本利益率

(%)

株価収益率

(倍)

営業活動によるキャッシュ・フロー

(千円)

528,129

投資活動によるキャッシュ・フロー

(千円)

572,566

財務活動によるキャッシュ・フロー

(千円)

1,800,260

現金及び現金同等物の期末残高

(千円)

2,337,698

従業員数

(名)

223

(外、平均臨時雇用者数)

(23)

(注)

1.当社は第6期より連結財務諸表を作成しております。

2.売上高には、消費税等は含まれておりません。

3.潜在株式調整後1株当たり当期純利益については、潜在株式は存在するものの、当社株式は非上場であり、期中平均株価が算定できないため、また、1株当たり当期純損失であるため、記載しておりません。

4.自己資本利益率については、親会社株主に帰属する当期純損失が計上されているため、記載しておりません。

5.株価収益率については、当社株式は非上場であるため、記載しておりません。

6.第6期は、事業規模拡大に伴う人員増加により採用費、人件費、外注費等が増加したことに伴い、経常損失及び親会社株主に帰属する当期純損失を計上しております。また、同様の理由により、営業活動によるキャッシュ・フローがマイナスとなっております。

7.第6期の連結財務諸表については、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」(昭和51年大蔵省令第28号)に基づき作成しており、金融商品取引法第193条の2第1項の規定に基づき、EY新日本有限責任監査法人の監査を受けております。

8.2021年8月12日開催の取締役会決議により、2021年8月28日付で普通株式1株につき100株の割合で株式分割を行いましたが、第6期の期首に当該株式分割が行われたと仮定し、1株当たり純資産額及び1株当たり当期純損失を算定しております。

9.従業員数は就業人員であり、臨時雇用者数(アルバイト・パートタイム社員を含む、派遣社員は含まない。)は、年間の平均人員を( )外数で記載しております。

 

(2)提出会社の経営指標等

回次

第2期

第3期

第4期

第5期

第6期

決算年月

2017年3月

2018年3月

2019年3月

2020年3月

2021年3月

売上高

(千円)

63,000

274,833

985,315

2,063,876

2,612,723

経常損失(△)

(千円)

4,453

195,073

386,633

422,900

348,897

当期純損失(△)

(千円)

5,033

199,779

353,146

469,644

585,677

持分法を適用した

場合の投資利益

(千円)

資本金

(千円)

77,610

522,460

522,460

1,312,007

100,000

発行済株式総数

(株)

376,000

686,000

686,000

736,130

753,080

普通株式

(株)

376,000

558,900

558,900

558,900

558,900

A種優先株式

(株)

127,100

127,100

127,100

127,100

B種優先株式

(株)

50,130

50,130

C種優先株式

(株)

16,950

純資産額

(千円)

136,695

1,228,996

875,849

1,985,688

2,400,271

総資産額

(千円)

151,489

1,394,512

1,222,380

2,483,023

3,670,044

1株当たり純資産額

(円)

363.55

1,791.54

1,276.75

26.97

31.87

1株当たり配当額

(円)

(うち1株当たり中間配当額)

(-)

(-)

(-)

(-)

(-)

1株当たり当期純損失(△)

(円)

14.33

417.91

514.79

6.49

7.94

潜在株式調整後1株当たり当期純利益

(円)

自己資本比率

(%)

90.23

88.13

71.65

79.95

65.39

自己資本利益率

(%)

株価収益率

(倍)

配当性向

(%)

営業活動による

キャッシュ・フロー

(千円)

340,729

投資活動による

キャッシュ・フロー

(千円)

293,751

財務活動による

キャッシュ・フロー

(千円)

1,579,484

現金及び現金同等物

の期末残高

(千円)

1,552,252

従業員数

(名)

3

37

96

176

214

(外、平均臨時雇用者数)

(-)

(4)

(3)

(9)

(23)

(注)

1.売上高には、消費税等は含まれておりません。

2.持分法を適用した場合の投資利益については、関連会社を有しておりませんので記載しておりません。

3.1株当たり配当額及び配当性向については、配当を実施していないため記載しておりません。

4.潜在株式調整後1株当たり当期純利益については、潜在株式は存在するものの、当社株式は非上場であり、期中平均株価が把握できないため、また、1株当たり当期純損失であるため記載しておりません。

5.自己資本利益率については、当期純損失が計上されているため、記載しておりません。

6.株価収益率については、当社株式は非上場であるため、記載しておりません。

7.第2期、第3期及び第4期はキャッシュ・フロー計算書を作成しておりませんので、キャッシュ・フローに関する各項目については記載しておりません。また、当社は第6期より連結財務諸表を作成しておりますので、第6期のキャッシュ・フローに関する各項目については記載しておりません。

8.第2期、第3期、第4期、第5期及び第6期は、事業規模拡大に伴う人員増加により採用費、人件費、外注費等が増加したことに伴い、経常損失及び当期純損失を計上しております。また、同様の理由により、第5期の営業活動によるキャッシュ・フローがマイナスとなっております。

9.従業員数は就業人員数であり、従業員数の()外書きは、臨時従業員(アルバイト・パートタイム社員を含む、派遣社員は含まない。)の年間の平均雇用人員数であります。

10.第5期及び第6期の財務諸表については、金融商品取引法第193条の2第1項の規定に基づき、EY新日本有限責任監査法人の監査を受けております。なお、第2期、第3期及び第4期については、「会社計算規則」(平成18年法務省令第13号)の規定に基づき算出した各数値を記載しており、金融商品取引法第193条の2第1項の規定に基づく監査証明を受けておりません。

11.株主からの取得請求権の行使を受けたことにより、2021年8月2日付で、A種優先株式、B種優先株式及びC種優先株式のすべてを自己株式として取得し、その対価として普通株式を交付しております。また、当社が取得したA種優先株式、B種優先株式及びC種優先株式は、会社法第178条の規定に基づき2021年8月2日付ですべて消却しております。なお、当社は、2021年8月12日開催の臨時株主総会により、同日付で種類株式を発行する旨の定款の定めを廃止しております。

12.当社は、2021年8月28日付で普通株式1株につき100株の株式分割を行っておりますが、第5期の期首に当該株式分割が行われたと仮定し、1株当たり純資産額及び1株当たり当期純損失を算定しております。

13.当社は、2021年8月28日付で普通株式1株につき100株の株式分割を行っております。そこで、東京証券取引所自主規制法人(現 日本取引所自主規制法人)の引受担当者宛通知「『新規上場申請のための有価証券報告書(Ⅰの部)』の作成上の留意点について」(平成24年8月21日付東証上審第133号)に基づき、第2期の期首に当該株式分割が行われたと仮定して算出した場合の1株当たり指標の推移を参考までに掲げると、以下のとおりとなります。なお、第2期、第3期及び第4期の数値(1株当たり配当額についてはすべての数値)については、EY新日本有限責任監査法人の監査を受けておりません。

回次

第2期

第3期

第4期

第5期

第6期

決算年月

2017年3月

2018年3月

2019年3月

2020年3月

2021年3月

1株当たり純資産額

(円)

3.64

17.92

12.77

26.97

31.87

1株当たり当期純損失(△)

(円)

△0.14

△4.18

△5.15

△6.49

△7.94

潜在株式調整後1株当たり当期純利益

(円)

1株当たり配当額

(円)

(うち1株当たり中間配当額)

(-)

(-)

(-)

(-)

(-)

 

2【沿革】

2016年2月

東京都文京区において資本金100円で株式会社エクサインテリジェンスを設立

2016年8月

京都府左京区に京都オフィス開設

2017年8月

人工知能モデルのプラットフォーム「exaBase」を提供開始

2017年10月

デジタルセンセーション株式会社(資本金5,500万円)を経営統合、同時に商号を株式会社エクサウィザーズに変更

2017年11月

人工知能を活用した人事サポートAIプロダクト「HR君」(現 exaBase 予測・分析)を提供開始

2017年12月

本社を東京都港区浜松町に移転

2018年3月

超高齢社会における社会的課題の解決に向けて共同で取り組むことを目的に、SOMPOホールディングス株式会社と資本業務提携

2019年4月

企業のAI利活用リーダーへ情報・交流の場を提供する法人向け会員サービス「exaCommunity」(現 exaBase コミュニティ)を提供開始

2019年5月

本社を東京都港区浜松町に移転

2019年7月

海外進出を図るために中華人民共和国青島市に青島愛克薩老齢服務科技有限公司を設立(2021年9月に株式持分を譲渡し連結除外)

2019年7月

人事・人材領域における研究やサービス開発に共同で取り組むことを目的に、パーソルホールディングス株式会社と資本業務提携

2019年9月

介護現場などに向けた動画コミュニケーションアプリ「ケアコチ」(現 CareWiz トルト)を提供開始

2019年10月

愛知県名古屋市西区に名古屋オフィスを開設

2019年12月

プログラミング不要でロボットに動作を学習させるマルチモーダルAI「COREVERY」(現 exaBase ロボティクス)を提供開始

2020年1月

AIの研究開発拠点として、インド ハイデラバードにEXAWIZARDS INDIA LLPを設立

2020年1月

AIが質問の文脈に合わせて回答するFAQエンジン「Qontextual」(現 exaBase FAQ)を提供開始

2020年8月

高性能2眼レンズ搭載のエッジAIカメラ「ミルキューブ」(現 exaBase エッジカメラ)を提供開始

2021年3月

米国カルフォルニア州にEXAWIZARDS LLCを設立

2021年3月

保険事業及び全社DXの推進、新規事業開発を目的として、アフラック生命保険株式会社と業務提携、またアフラック・インコーポレーテッドがその傘下のファンドを通じて当社に出資

2021年4月

介護記録AIアプリ「CareWiz ハナスト」をリリース

2021年4月

企業経営幹部のためのDX推進ネットワーク「JEDIN」開始

2021年4月

AIプラットフォーム事業の強化を目的として、エクスウェア株式会社(現・連結子会社)の株式を取得し、子会社化

2021年5月

本社を東京都港区東新橋(現在地)に移転

2021年5月

「とりんく」の事業拡大に向け東京都港区東新橋に株式会社VisionWiz(現・連結子会社)を設立

2021年5月

「CareWiz トルト」の事業拡大に向け、福祉用具レンタル・販売の株式会社ヤマシタと合弁により東京都港区東新橋に株式会社エクサホームケア(現・連結子会社)を設立

2021年8月

Well-being Tech(注)領域での新事業・新サービスの創出に取り組むことを目的として、住友生命保険相互会社と業務提携、また同社のCVCファンドが当社株式を取得

(注)

Well-beingとは人生100年・成熟化する社会で台頭してきた「健康」に対する新たな価値観であり、『身体的・精神的・社会的・経済的に、幸せと感じる状態』ひいては、『そうあるための行動、選択、ライフスタイルを積極的に追求すること』、Well-being Techは社会全体のWell-being実現に向けた、AI・データ活用による新事業・新サービスを指す

 

3【事業の内容】

 当社グループ(当社及び当社の関係会社)は、当社(株式会社エクサウィザーズ)及び事業開発や研究拠点機能を担う子会社5社(連結子会社3社、非連結子会社2社)により構成されております。当社グループでは、「AIを用いた社会課題解決を通じて、幸せな社会を実現する」をミッションに掲げ、独自開発のAIアルゴリズムと、様々な業界や業務に関する知見を組み合わせたAIサービスを顧客及び事業提携先に開発・提供することで、多様な領域における社会課題の解決を図っております。具体的には、(1)個別企業を顧客とし、そのデジタル・AI化を推進し産業・社会革新を図るAIプラットフォーム事業(当社、エクスウェア株式会社等)と、(2)広範な顧客向けに、業務プロセスに簡易に導入・活用可能なAIソフトウエアを提供するAIプロダクト事業(当社、株式会社エクサホームケア、株式会社VisionWiz等)を展開しております。また、AIプラットフォーム事業及びAIプロダクト事業を通じて、独自開発のAIアルゴリズムと、様々な業界や業務に関する知見やデータを「exaBase」に蓄積することで、サービスの効率化及び高付加価値化を実現しております。

 

0201010_001.jpg

 

 尚、これらの事業区分は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項」に掲げるセグメントの区分と同一であります。

 

<外部環境について>

 国内においては、1925年頃の日本全体の人口に占める50歳以上の人口の比率は15%程でしたが、1985年以降高齢化が急速に進展しており、その割合は45%まで上昇しております(注1)。今後、2045年頃には50歳以上の人口の比率が約60%を占めると予想されており、国内では、こうした高齢化に伴う年金・医療・介護などの社会保障費の増大と、労働人口の急速な減少が懸念されております(注2)。

 

 一方で2000年以降のインターネットの普及によるビッグデータの蓄積と、2012年頃から本格化した深層学習技術に代表されるアルゴリズムの発展により、AIサービスは徐々に幅広い産業で実証実験を中心に利用され、近年では実装段階に至るまで発展を遂げてまいりました。

 

 このような背景から、社会保障費の増大に対しては、一人ひとりがより健康に年を重ねられるようにすることで、医療・介護費を効率化し持続可能とすることが求められており、労働人口の急速な減少に対しては、これまで人が担ってきた業務の一部をAI・ソフトウエアで補完することで生産性を向上させることや、業務を高付加価値なものにすることが強く求められております。

 

 斯様な環境下、日本国政府による働き方改革の提言や、企業の労働生産性向上に向けた取り組み、長引くコロナ禍をはじめとする様々な社会課題の増大に伴い、DX(注3)への取組みは喫緊の課題となりつつあります。しかしながら、国内企業におけるAIの導入率は限定的であり、約70%の企業においては、未導入、若しくは導入に向けた基礎的な調査や、概念実証(AIの初期的な導入検証)の段階に留まっております(注4)。その背景として「データ収集・整備が不十分」、「AIの利用により有用な業務成果が得られるか不安」、「AIの導入を先導する組織・人材の不足」といった要因が挙げられております(注5)。この要因として、企業内に直接雇用するエンジニアリソースが限定的であること、さらに総合職採用に伴う定期的な異動を前提とした研修・育成手法などを特徴とする人事慣習等が背景となって、本質的な経営課題に対処できる高度なAI/ITのプロフェッショナル人材を日本企業が抱えられていないという課題が指摘されています。

 

(注)

1.総務省 「長期時系列データ・我が国の推計人口(大正9年~平成12年)」(2013年1月)、「長期時系列データ(平成12年~平成27年)」(2017年6月)、国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成29年推計)」(2017年4月)を基に当社推計

2.内閣官房・内閣府・財務省・厚生労働省「2040年を見据えた社会保障の将来見通し」(計画ベース・経済ベースラインケース)(2018年5月)及び国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成29年推計)」(2017年4月)

3.デジタル・トランスフォーメーションの略、デジタル化・AI活用を通じた当該業務・サービスの高付加価値化・効率化を指しており、詳細は用語集においても記載

4.総務省が「令和2年通信利用動向調査報告書(企業編)(2021年6月)」で記載しているIoTやAIなどのシステムやサービスの導入状況を「AIの導入」と定め、導入していない割合を算出

5.総務省「ICTによるイノベーションと新たなエコノミー形成に関する調査研究」(平成30年)

 

<当社グループの展開する事業セグメントとその概要>

(1)AIプラットフォーム事業の概要

 当事業は、個別企業を顧客とし、当社グループのAIプラットフォーム「exaBase」に蓄積されたデータ基盤を用いたコンサルティング、アルゴリズム・ソフトウエア開発を通じて、顧客企業のデジタル・AI戦略やDX等の推進体制の立案・実行及び投資効果の最大化を支援しております。

 

 当社グループは多種多様なキャリアを経験してきたスタッフが事業運営しており、①様々な企業の経営コンサルティングを行ってきた人材を中心に組成された専任チームによる顧客のビジネスに関する知見、②機械学習エンジニア・ソフトウエアエンジニアによるAI技術に関する高度な知見、③UI・UX(注6)・デザインの専門家による顧客に関する深い洞察、④より本質的な課題に迫る上で必須となる事業・業界固有のドメイン知識が豊富な専門家・研究者等を始めとした競争力の高い経営資源を有しています。これらの要素を組み合わせることで、顧客の業務・サービスのあるべき姿の検討、どこで・どのようにAIを活用すれば良いかの検討及びその投資対効果の特定、アルゴリズムの開発や、実際の業務・サービスへの実装と投資対効果の最大化までのプロセスを一貫してサポートすることで、顧客企業のデジタル化・AI活用による成長を実現します。当社グループの事業領域に属するグローバルなコンサルティングファーム、デジタルコンサルティングファーム、BPOs(注7)、AIスタートアップ等は、多くの場合それぞれ顧客企業の事業や業務プロセスの一部のみを対象としてデジタル化・AI活用に取り組んでいるため、これらの企業と対比すると、顧客課題により深く接点を持つ当社グループは優位性を保持していると考えております。

 一例として、以下に当社社員の出身母体を記載します。

職種

出身母体(株式会社等省略)

コンサルタント

アクセンチュア / A.T.カーニー / Strategy& / デロイトトーマツコンサルティング

ドリームインキュベータ / ベイン・アンド・カンパニー / ボストンコンサルティンググループ / マッキンゼー・アンド・カンパニー

エンジニア

IBM / Indeed / 京都大学 / Google / 東京大学 / マイクロソフト / LINE / 理化学研究所

デザイン・プロダクトマネジメントエキスパート

Coincheck / DMM.com / BCG Digital Ventures / BeBit / Pivotal Labs /ローソン

ドメインエキスパート

エーザイ / 厚生労働省 / 国立国際医療研究センター / 聖路加国際病院 / 武田

薬品工業 / 東急イーライフデザイン / 東京医療センター / 東京新宿メディカルセンター / 日本赤十字 武蔵野赤十字病院 / パナソニックエイジフリー / 文部科学省

 

(注)

6.UIはUser Interface(ユーザーインターフェース)、UXはUser Experience(ユーザーエクスペリエンス)を表し、前者はユーザーの視覚に触れる情報、後者はユーザーが製品やサービスを通して得られる体験や経験を示しております。

7.BPOはBusiness Process Outsourcing(ビジネスプロセスアウトソーシング)を表し、顧客企業の業務プロセスを委託するサービスのことを示しております。

 

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 当事業の収益モデルを以下にご説明します。

・検討・開発期:顧客企業のコンサルティング・アルゴリズム/ソフトウエア開発・サービス設計などを行うフェーズです。提供するアルゴリズムは未知の企業課題に応じて新たに開発される場合と、類似性のある課題について「exaBase」内のコンポーネントやノウハウを援用して開発を行う場合があります。契約内容に基づいて、FTE型(注8)及びPaaS型(注9)で提供価格を算定し、多くの場合は業務提供期間中に毎月プロジェクト・フィーを計上します。

・導入・運用期:開発したアルゴリズム等を顧客企業の業務オペレーションや提供サービスに組み込みます。以降はPaaS型の課金方法に基づき、継続的に「exaBase」を利用する期間中に毎月一定額のライセンス・フィーを計上します。

 また現在は「exaBase」のユースケースと機能の拡充によるAIプラットフォームとしての価値向上を推進し、PaaS型課金の増大に取り組んでいます。

 

(注)

8.FTEはFull Time Equivalentを表し、フルタイムのスタッフの労働量換算の意味で、その単位時間に比例して価格を算定する方式を示しております

9.PaaSはPlatform as a Serviceを表し、事業者が顧客に提供するプラットフォームサービス(当社の場合は「exaBase」)の使用条件・状況に応じて価格を算定する方式を示しております

 

 当事業は主に大企業に対してサービスを提供しており、銀行、証券、保険、製薬、製造、電力、通信・インフラ、小売消費財、人材、物流、不動産など多様な業界において、190社を超える企業(2021年9月末時点)に対しサービスを提供してまいりました。それぞれの企業が抱える業界固有の課題や、人の手や従来のIT技術では解決し得なかった問題の解決に向けて、コンサルティングやAIアルゴリズム開発、サービス設計、顧客業務プロセスへの実装までの一連のソリューションを提供しております。年間250件以上実施しているプロジェクトを通じ、様々な業界における構造化及び非構造化データが蓄積され、またそれらに基づき発展させた機械学習、自然言語処理、深層学習技術を中心とした高機能なアルゴリズムを保有していることが、当社グループの強みとなります。

 

 当社グループでは、これらの実装経験から開発・改良されたAIアルゴリズム及びその導入にあたってのノウハウを「exaBase」としてデータベース化しており、この事業資産をコンサルタント・エンジニアが共有して利活用することで、顧客に対してスピーディに質の高いサービスを提供することが可能な体制を構築しております。「exaBase」の主な構成サービスは以下の通りです。

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 当社グループのAIプラットフォーム事業におけるサービス導入実績のうち、概要を開示可能な案件の一部を下記に記載します。当社グループのコンサルティング、AIエンジニアリング、デザイン、ドメイン知識を高度に組み合わせることで、多様な業種・業種、幅広い業務・サービスの課題解決に向けて、AIを用いたソリューションを実装しております。

 

企業名

取組内容

アフラック生命保険

予測分析によるマーケティングの最適化を提供、約1.4兆円ある保険料収入(注10)の更なる拡大に寄与

第一三共

創薬研究における一連のデータ解析時間を大幅に短縮し、分単位に

日立金属

対象物の自動認識システム、機器の動作設定時間50%短縮プロジェクトをサポート

ヤマトホールディングス

貨物の需要予測を提供、社員一人当たり営業収益を高める支援

 

(注)

10.アフラック統合報告書2021より、2020年度経常収益のうち保険料等収入の金額の概数

 

(2)AIプロダクト事業の概要

 当事業では、多くの企業に共通した業務課題に向けて、顧客の業務プロセスに簡易に導入・活用可能なAIソフトウエア群を提供しております。当社グループの顧客は自社で新規にAIアルゴリズムを設計・開発することなく、完成度の高いAIを業務において活用することが可能です。

 

 当社グループでは、AIプラットフォーム事業における顧客企業へのAI導入を通じて、多様なユースケースでのAI導入実績を有しております。これらを通じて、業務・業界ごとのAIの導入余地や導入による影響、開発したAIアルゴリズムの汎用化可能性などを判断する経験と知見を蓄積してきました。この中でより広範に多企業に対して共通して提供可能と判断したAIアルゴリズムについては、周辺機能を作り込むことでソフトウエア化し、AIプロダクトとして継続課金方式等により広範な顧客へ提供しております。当社グループのAIプロダクトのうち、「exaBase 予測・分析」、「exaBase 企業検索」は、このプロセスを通じて開発されたものであり、本書提出日現在それぞれ複数社で導入されております。

 

 このように、AIプラットフォーム事業における顧客企業の課題解決を通じ、汎用的な課題を抽出すると同時にプロダクトとしての成長可能性を探索する事業構造を備えることから、当社グループは限られた研究開発コストでありながら、企業のニーズに即した新たなAIプロダクトを継続的に創出することが可能な体制を構築しています。

 

 更にプロダクトを提供する過程で、当該プロダクトの周辺業務を含むより広範な事業単位へと価値提供を拡張することが可能と判断した場合には、自社のみならず他社との協業により子会社を設立し、新規事業として展開しております。

 

 本書の日付現在、当事業で提供する主なソフトウエアは以下のとおりです。

プロダクト群

サービス名

概要

exaBase

exaBase
DXアセスメント&ラーニング

企業のデジタル化・AI化に欠かせないデジタルスキルを持つ人材や、その素養を持ったイノベーターを社内で発掘するアセスメントと、その育成を行うeラーニングプログラム

exaBase 予測・分析

プログラミングなしで誰でも簡単にAIを用いたデータ分析・予測ができるツール

exaBase FAQ

自然言語処理技術により質問の文脈を理解して回答するFAQエンジン

exaBase 企業検索

企業検索に特化し、自由なキーワードで企業を探せるAI検索エンジン

CareWiz

CareWiz トルト

介護現場向けの、現場での申し送り等の動画共有、動画から転倒リスク等を予測する歩容解析機能を搭載したコミュニケーションアプリ

CareWiz ハナスト

介護施設向けに、介護記録を音声認識で登録することで業務効率化を図るソリューション

とりんく

保育園、習い事などの施設において、お子様の行動や表情を検知して自動で撮影。ブレている写真があれば補正して、おすすめ順に専用サイトに掲載するサービス

 

用語集

用語

用語の定義

アルゴリズム

コンピュータ上における問題を解くための手順・解き方

デジタル・トランスフォーメーション

企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること

AI

Artificial Intelligenceの略。学習・推論・認識・判断などの人間の知能的なふるまいを行うコンピュータシステム

AIソフトウエア

AIを用いて構築されたソフトウエア

MLOps

Machine Learning Operations(機械学習オペレーション)の略。顧客の動作環境下にある機械学習モデルの継続運用を標準化・効率化することを目的とした、モデルの開発・実装から運用までのサイクル

SMB

Small to Medium Businessの略。中堅、中小規模の企業

 

<当社グループの特徴と優位性>

① 在籍エンジニア・専門アドバイザーの高い技術力

 機械学習・深層学習領域のアルゴリズム構築技術を有するエンジニアや、顧客が真に使いやすいサービスを提供できるエンジニアは、国内では希少だと考えております。その中で当社グループでは、独自のネットワークから国内外の優秀なエンジニアへアクセスをすることで、過去に他企業でCTO(最高技術責任者)を務めていたような人材が複数在籍しております。また、Facebook AIのディレクターとしてAIの世界的権威であるアロン・ハレヴィ氏をはじめ、AIに関する各領域における国内外の第一線のアカデミアの方々をアドバイザーやサポーターに迎え、当社グループの技術力の基盤を強化しております。

 

② エンジニアの採用体制

 優秀な機械学習エンジニアが国内で希少である中、当社グループは過去2年間(2019年6月~2021年5月)において5,000人以上の応募者の中から、1,600人強の面接を行い、その中から特に優れた103名を採用するなど、幅広い採用者候補層を開拓しながら厳選した採用を行う体制が整っております。この結果、世界最大級のビジネス特化型SNSを提供するLinkedIn Corporationのデータ分析による、人材採用の勢いを測定したTOP Startupsランキングにおいて、当社は3年連続(2019、2020、2021年)ランクインしております。これまでも当社グループのミッションである「AIを用いた社会課題解決を通じて、幸せな社会を実現する」に共感してもらえるエンジニアを多数獲得してまいりましたが、引き続きエンジニアの働きやすい、また働きがいのある環境を整えることを通じて、優秀な人材の獲得を目指します。

 

③ ビジネス・ドメインの深い理解に基づいたソリューション設計

 顧客企業でのAI活用と事業成果の創出を支援するにあたっては、高度なアルゴリズムの技術力と同時に、広範かつ的確なビジネス理解と提案力が必要となります。当社グループでは、多くの大企業に対し経営コンサルティングを行ってきた人材や、特定の業界・業務に精通したエキスパートを採用し、これらの人材が企業の課題について事業構造を踏まえて的確に認識し、実際に業務にAIを導入し成果に結びつけるところまで顧客と並走することで、高いレベルでの顧客企業のデジタル化・AI化を促進しております。

 例えば介護分野においては、当社グループ内に、ユマニチュード®(注11)、自立支援介護といったケア技法及びリハビリに精通するユマニチュード®認定インストラクター、理学療法士などの専門家を有し、またそれぞれの領域で高い実績を有する外部の専門家と協力しサービス開発を行うことで、介護現場で使うことのできる実践的なサービスを提供することが可能となっております。

 

(注)

11.ユマニチュードとは「人間らしさを取り戻す」という意味をもつフランス語の造語であり、知覚・感情・言語による包括的コミュニケーションに基づいたケア技法であり、近年の日本の医療や介護の現場でも用いられております。

 

④ 多様な企業への豊富なAI実装経験

 当社グループでは、高度なビジネス理解及び提案力と、蓄積されたAIモデルに基づき、様々な業界内における主要企業とともに、当該産業における重要な課題に対峙するAIプラットフォームを実装しております。

 日本企業におけるAIの活用は概念実証の段階に留まる事例が多い中、当社グループは顧客の事業活動の現場業務への実装経験を豊富に有しており、これらのノウハウの蓄積から様々な派生的な事業展開が可能な体制を構築しております。

 

⑤ 顧客企業との実証を通じた継続的な新規プロダクト創出の仕組み

 当社グループでは、AIプラットフォーム事業において、多数の業界・分野でのAIアルゴリズムの開発・実装を行っております。顧客企業との協働による実装と運用の検証を通じて、業界・業務ごとのAI活用の方法や、それにより得られる効果、具体的なアルゴリズム等の数多くの知的財産を有しております。これらの知的財産や知見を活かすことで、AIプロダクト事業において、ゼロから新規にサービスを開発する場合と比較し、小さいコストで、十分な市場ニーズがありかつ付加価値の高いソフトウエアサービスを開発できる蓋然性を高めることができていると考えております。この仕組を活用することで、AIプロダクト事業においては今後も継続的に新規サービスを創出することができると考えております。

 

⑥ 戦略的な知財ライブラリーの拡張と活用

 当社グループでは、様々な事業領域において培ったノウハウを集積し、権利化すべきものについては戦略的に出願、登録しております。日本特許については、出願数124件、保有特許55件(2021年9月末時点)を様々な領域において有する一方、外国特許についても、国際特許を出願しポートフォリオを強化しつつ、年々保有件数を増加させています。2020年には、特許庁運営による知財コミュニティポータルサイト「IP BASE」が開催した、スタートアップ×知財のベストプレイヤーを表彰する「IP BASE AWARD」スタートアップ部門でグランプリを受賞しました。技術的卓越性の可視化と権利化を通じて競争優位性を高めるため、盤石な知財体制の構築を目指しております。

 

[事業系統図]

0201010_004.png

 

 

4【関係会社の状況】

名称

住所

資本金

(千人民元)

主要な事業の内容

議決権の所有割合又は被所有割合

(%)

関係内容

(連結子会社)

 

 

 

 

 

青島愛克薩老齢服務科技有限公司

中華人民共和国

山東省

13,800

AIプロダクト事業

100

開発業務の受託

(注)

1.「主要な事業の内容」欄には、セグメントの名称を記載しております。

2.特定子会社ではありません。

3.有価証券届出書又は有価証券報告書を提出している会社ではありません。

4.当社は2021年4月23日付でエクスウェア株式会社の全株式を取得し完全子会社化いたしました。

5.当社は2021年5月17日付で株式会社VisionWiz(100%出資)を設立いたしました。

6.当社は2021年5月31日付で株式会社エクサホームケア(51%出資)を設立いたしました。

7.当社は2021年9月20日付で青島愛克薩老齢服務科技有限公司の100%持分を譲渡いたしました。

 

5【従業員の状況】

(1)連結会社の状況

 

2021年9月30日現在

セグメントの名称

従業員数(人)

AIプラットフォーム事業

130

(9)

AIプロダクト事業

49

(5)

報告セグメント計

179

(14)

全社(共通)

131

(13)

合計

310

(27)

(注)

1.従業員数は就業人員であり、臨時雇用者数(アルバイト・パートタイム社員を含む、派遣社員は含まない。)は、最近1年間の平均人員を( )外数で記載しております。

2.全社(共通)として記載されている従業員数は、技術統括部、人事統括部及びコーポレート統括部等に所属しているものであります。

3.従業員数が最近1年間において、94名増加しましたのは、主としてエクスウェア株式会社の完全子会社化、及び業容拡大に伴う期中採用によるものであります。

 

(2)提出会社の状況

 

 

 

 

2021年9月30日現在

従業員数(人)

平均年齢(歳)

平均勤続年数(年)

平均年間給与(千円)

233

(27)

35.4

2.0

8,145

 

セグメントの名称

従業員数(人)

AIプラットフォーム事業

54

(9)

AIプロダクト事業

48

(5)

報告セグメント計

102

(14)

全社(共通)

131

(13)

合計

233

(27)

(注)

1.従業員数は就業人員(当社から社外への出向者を除き、社外から当社への出向者を含む。)であり、臨時雇用者数(アルバイト・パートタイム社員を含む、派遣社員は含まない。)は、最近1年間の平均人員を( )外数で記載しております。

2.平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

3.全社(共通)として記載されている従業員数は、技術統括部、人事統括部及びコーポレート統括部等に所属しているものであります。

4.従業員が最近1年間において、26名増加しましたのは、主として業容拡大に伴う期中採用によるものであります。

 

(3)労働組合の状況

 労働組合は結成されておりませんが、労使関係は円満に推移しております。