第二部【企業情報】

第1【企業の概況】

1【主要な経営指標等の推移】

(1)連結経営指標等

回次

第14期

第15期

決算年月

2019年3月

2020年3月

売上高

(千円)

12,961,420

15,196,337

経常利益

(千円)

115,903

215,265

親会社株主に帰属する当期純利益

(千円)

377,916

91,380

包括利益

(千円)

306,282

88,959

純資産額

(千円)

2,205,193

2,294,153

総資産額

(千円)

14,282,775

12,984,569

1株当たり純資産額

(円)

716.95

745.87

1株当たり当期純利益

(円)

130.56

29.71

潜在株式調整後1株当たり当期純利益

(円)

自己資本比率

(%)

14.8

16.9

自己資本利益率

(%)

29.1

4.2

株価収益率

(倍)

営業活動によるキャッシュ・フロー

(千円)

197,250

1,547,061

投資活動によるキャッシュ・フロー

(千円)

3,249,577

983,467

財務活動によるキャッシュ・フロー

(千円)

2,650,056

1,058,627

現金及び現金同等物の期末残高

(千円)

2,887,676

2,392,343

従業員数

(人)

424

447

(外、平均臨時雇用者数)

(33)

(33)

 (注)1.売上高には、消費税等は含まれておりません。

2.潜在株式調整後1株当たり当期純利益については、潜在株式は存在するものの、当社株式は非上場であるため、期中平均株価が把握できませんので記載しておりません。

3.株価収益率については、当社株式は非上場であるため、記載しておりません。

4.臨時雇用者数には、パートタイマー、契約社員及び嘱託契約の従業員を含み、派遣社員を除いております。

5.第14期及び第15期の連結財務諸表については、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」(昭和51年大蔵省令第28号)に基づき作成しており、金融商品取引法第193条の2第1項の規定に基づき、EY新日本有限責任監査法人の監査を受けております。

6.2021年2月12日開催の取締役会決議により、2021年3月10日付で普通株式1株につき10株の割合で株式分割を行っております。当該株式分割が第14期の期首に行われたと仮定して、1株当たり純資産額及び1株当たり当期純利益を算定しております。

 

(2)提出会社の経営指標等

回次

第10期

第11期

第12期

第13期

第14期

第15期

決算年月

2015年12月

2016年12月

2017年12月

2018年3月

2019年3月

2020年3月

営業収益

(千円)

159,544

202,203

185,740

48,375

232,700

333,321

経常利益又は経常損失(△)

(千円)

1,723

22,879

42,327

2,373

3,396

21,760

当期純利益又は当期純損失(△)

(千円)

895

23,392

55,153

1,110

6,715

9,204

資本金

(千円)

81,000

90,000

90,000

400,000

581,989

581,989

発行済株式総数

(株)

136,000

246,009

246,009

280,282

318,538

318,538

純資産額

(千円)

135,777

232,104

287,258

888,146

1,535,374

1,544,578

総資産額

(千円)

162,315

264,117

319,072

909,992

1,597,990

1,601,781

1株当たり純資産額

(円)

998.36

1,190.23

1,473.05

3,604.02

499.18

502.17

1株当たり配当額

(円)

(うち1株当たり中間配当額)

()

()

()

()

()

()

1株当たり当期純利益又は1株当たり当期純損失(△)

(円)

6.58

144.98

382.99

5.32

2.32

2.99

潜在株式調整後1株当たり当期純利益

(円)

自己資本比率

(%)

83.7

87.9

90.0

97.6

96.1

96.4

自己資本利益率

(%)

0.7

12.7

21.2

0.2

0.6

0.6

株価収益率

(倍)

配当性向

(%)

従業員数

(人)

6

4

6

6

14

18

 注)1.営業収益には、消費税等は含まれておりません。

2.第13期は、決算期変更により2018年1月1日から2018年3月31日までの3ヶ月間となっております。

3.第10期及び第14期の潜在株式調整後1株当たり当期純利益については、潜在株式は存在するものの、当社株式は非上場であり、期中平均株価が把握できないため、また、1株当たり当期純損失であるため記載しておりません。第11期から第13期及び第15期の潜在株式調整後1株当たり当期純利益については、潜在株式は存在するものの、当社株式は非上場であるため、期中平均株価が把握できませんので記載しておりません。

4.株価収益率については、当社株式は非上場であるため、記載しておりません。

5.1株当たり配当額及び配当性向については、当社は配当を実施していないため、記載しておりません。

6.第14期及び第15期の財務諸表については、「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」(昭和38年大蔵省令第59号)に基づき作成しており、金融商品取引法第193条の2第1項の規定に基づき、EY新日本有限責任監査法人の監査を受けております。

なお、第10期、第11期、第12期及び第13期については、「会社計算規則」(平成18年法務省令第13号)の規定に基づき算出した各数値を記載しております。また、当該各数値については、金融商品取引法第193条の2第1項の規定に基づくEY新日本有限責任監査法人の監査を受けておりません。

7.2021年2月12日開催の取締役会決議により、2021年3月10日付で普通株式1株につき10株の割合で株式分割を行っております。当該株式分割が第14期の期首に行われたと仮定して、1株当たり純資産額及び1株当たり当期純利益又は1株当たり当期純損失(△)を算定しております。

8.当社は、2021年3月10日付で普通株式1株につき10株の株式分割を行っております。

 そこで、東京証券取引所自主規制法人(現 日本取引所自主規制法人)の引受担当者宛通知「『新規上場申請のための有価証券報告書(Ⅰの部)』の作成上の留意点について」(2012年8月21日付東証上審第133号)に基づき、第10期の期首に当該株式分割が行われたと仮定して算出した場合の1株当たり指標の推移を参考までに掲げると、以下のとおりとなります。

 なお、第10期、第11期、第12期及び第13期の数値(1株当たり配当額についてはすべての数値)については、EY新日本有限責任監査法人の監査を受けておりません。

回次

第10期

第11期

第12期

第13期

第14期

第15期

決算年月

2015年12月

2016年12月

2017年12月

2018年3月

2019年3月

2020年3月

1株当たり純資産額

(円)

99.84

119.02

147.31

360.40

499.18

502.17

1株当たり当期純利益又は1株当たり当期純損失(△)

(円)

△0.66

14.50

38.30

0.53

△2.32

2.99

潜在株式調整後1株当たり当期純利益

(円)

1株当たり配当額

(うち1株当たり中間配当額)

(円)

(-)

(-)

(-)

 (-)

(-)

(-)

 

 

2【沿革】

当社は、創業者である現代表取締役会長の髙村徳康によって企業の成長に関わる経営支援を目的として2006年8月に設立されました。2006年10月には、子会社としてベンチャーキャピタルであるSync Partners株式会社を設立し、ベンチャー企業への投資及び経営支援を通じ、ベンチャー企業の育成に携わってまいりました。

 

当社設立以降は、ベンチャーキャピタルやIPO支援等のベンチャー支援事業のみではなく、経営コンサルティング、事業再生又はM&A(以下「経営コンサルティング事業」という。)のサービスニーズを有する中小企業へ、自社内の各業務分野のプロフェッショナルによる多様な専門的手段を駆使して、複雑化・高度化する中小企業の経営課題に総合的にソリューションを提供してまいりました。

 

その後も経営コンサルティング事業を継続する一方、2013年には自ら製造業の経営者となり経営を行うことを目的とし、パン製造販売会社を買収しました。当該案件では業務標準化・新商品開発等に取り組んだ結果、早期の黒字化を達成し新たなパートナーとのマッチングが成立したため、売却に至りました。

この経験を通じ、後継者不在等の課題を抱える企業の株式を譲り受け、最も適したプロ経営者陣をチームで派遣し経営執行を行い、経営コンサルティング事業で培った経営ノウハウを活かした円滑な事業承継の推進と長期的な企業価値の向上を目指すビジネスモデルを確立いたしました。

 

現在は、事業承継を目的としたM&Aによって製造業3社及びエンジニア派遣業1社、新たに当社より投資部門を移管して設立した投資・ファイナンシャルアドバイザリー事業会社1社の計5社を子会社としてグループ傘下に収めております。

 

 

2006年8月

名古屋市名東区に株式会社T3ネットワーク(資本金300万円)を設立

2006年10月

社名をセレンディップ・コンサルティング株式会社に変更

ベンチャー支援目的のファンドであるSync Partners株式会社(子会社)を設立

2007年5月

本社を名古屋市中区栄に移転

2008年10月

本社を名古屋市中区錦に移転

2013年3月

自ら経営執行を行うことを目的として、株式会社バンデロール(パン製造会社)へ当社及び当社役員で100%出資(その後、当社持分を当社役員に譲渡)

2014年9月

本社を名古屋市中区栄(現所在地)に移転

2014年10月

事業承継を目的として天竜精機株式会社(現・連結子会社)の株式取得

2015年10月

事業承継を目的として佐藤工業株式会社(現・連結子会社)の株式取得

2017年7月

Sync Partners株式会社(子会社)を解散

2018年8月

事業承継を目的として三井屋工業株式会社(現・連結子会社)の株式取得

2018年12月

事業承継を目的として株式会社サンテクトの株式取得

2019年2月

佐藤工業株式会社(現・連結子会社)が、当社からの出資により14,000万円の増資

2019年12月

天竜精機株式会社(現・連結子会社)が、海外でのコネクタ自動機の製品競争力の強化及び将来におけるASEANへの販路・事業拡大を目的として、ベトナムのOSCO社と業務提携契約を締結

2020年3月

事業承継問題の多様化に対応するため、当社より投資・ファイナンシャルアドバイザリー事業を移管し、セレンディップ・フィナンシャルサービス株式会社を(現・連結子会社)設立

2020年4月

三井屋工業株式会社(現・連結子会社)が、東北エリア及び関東エリアの自動車組立生産拠点向けの高付加価値内外装部品の競争力強化を目的として、山形県米沢市に工場用地を取得

2020年6月

株式会社サンテクトが、当社からの出資により5,500万円の増資

2020年7月

社名をセレンディップ・ホールディングス株式会社に変更

2020年7月

株式会社サンテクトが、IT分野の強化を目的として、ソフトウェア開発及びITエンジニア派遣事業を展開する株式会社エムジエクの株式取得

2020年9月

2021年4月

共同投資案件であった株式会社協立製作所株式を売却

株式会社エムジエクは株式会社サンテクトと合併(株式会社サンテクトが存続会社、同時にセレンディップ・テクノロジーズ株式会社(現・連結子会社)へ社名変更)

 

 

3【事業の内容】

 当社グループは、当社(セレンディップ・ホールディングス株式会社)及び連結子会社5社(天竜精機株式会社、佐藤工業株式会社、三井屋工業株式会社、セレンディップ・フィナンシャルサービス株式会社、セレンディップ・テクノロジーズ株式会社)で構成され、「プロフェッショナル・ソリューション事業」、「インベストメント事業」、「モノづくり事業」の3つの事業に区分されます。

 

 我が国のモノづくり産業においては、中小企業が多数を占め、サプライチェーンを支えるとともに多くの雇用を創出しております。しかしながら、これらの中小企業オーナー経営者の高齢化に伴い、高い技術力・製品力がありながらも後継者不在により事業の継続が困難となり、多くの中小企業が廃業に至るという社会問題が顕在化しております。

 また、後継者不在という理由に限らず、近代経営の複雑化・高度化に対応した経営管理体制が十分に構築されていない、少子高齢化に伴う労働力不足等によって経営資源を充分に確保できない、生産性が低く稼ぐ力が弱いといった課題を抱えた中小企業も数多く存在します。

 このような課題を抱えた中小企業に対し、当社は「すべてのステークホルダーに価値と成長をもたらす100年企業グループ」創出というグループビジョンを掲げ、M&Aによる事業承継、中小企業が直面する複雑で高度な経営課題に対応できるプロ経営者の派遣及び経営執行にコミットしたPMI(※1)の実行、顧客企業の企業価値の回復・向上を図る一連の経営コンサルティング等、「中小企業経営の近代化(※2)」に資する総合的なソリューションを提供しております。

(※1)PMI(Post Merger Integration:M&A成立後の統合プロセス)とは、当初計画したM&A後の統合効果を最大化するための統合プロセスを指します。統合の対象範囲は、経営、業務、意識など統合に関わる全てのプロセスに及びます。M&Aが企業活動にもたらす成果の度合いは、このPMIの巧拙によって決まると言われます。

(※2)企業が継続的な成長を図るためには、限られた経営資源を有効活用して、社会環境や産業構造の急激な変化に対応していくことが求められます。このような変化を敏感に察知して、時代にフィットした経営を行うことを、当社では「経営の近代化」と呼んでいます。

 

当社グループは「事業承継×モノづくり」を事業領域とし、事業承継を目的としたM&A(事業承継型M&A)によってモノづくり企業を中心とした中小・中堅企業を当社グループの傘下に収める「投資」と、近代経営の複雑化・高度化に対応した経営執行によって企業価値の回復・向上を図る「経営」を主軸とした事業を行っております。

例えば、M&A仲介会社であれば、基本的に譲渡を希望する企業と買収を希望する企業の引き合わせ、提携条件の調整、取引の実行までに係るM&Aプロセスでのサービス提供を主たる事業とし、また経営コンサルティング専業会社であれば、基本的に顧客企業の自主独立による成長に対するソリューション提供を主たる事業としております。

一方、当社グループは、経営権の譲渡を希望する中小企業の開拓、M&A戦略の立案、対象企業の選定・アプローチ、各種デューデリジェンス(調査・分析)、企業価値算定、ファイナンスアレンジ(資金調達等)、取引条件・契約交渉、クロージング(資金決済等)手続といったM&Aに関わる全般的な業務を当社グループ内で一気通貫して行なっております。

また、当社はプロ経営者のチームでの派遣及び経営執行にコミットしたPMIにより現場・財務・経営を徹底的に見える化し、ムダ・ムリ・ムラの排除によって生産性を高め、また数値を集約することによって意思決定のスピードと精度を高める経営管理体制の構築を行います。さらには、長期的な企業価値向上を図るため、グローバル化への対応、新技術・新製品への成長投資を実行し、「中小企業経営の近代化」を推進しております。

以上により、事業承継に課題を抱えたモノづくり中小企業に対し、事業承継型M&Aという「投資」による経営改革(ターンアラウンド)を実施し、その後の経営執行にコミットした「経営」による経営改革(ターンアラウンド)を実施するといった、シームレスな(途切れのない)経営改革を行う点が当社の特徴であります。

 

 当社グループの各事業の内容及び当社と関係会社の当該事業に係る位置づけは次のとおりであります。

 なお、次の3つのセグメントは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項」に掲げるセグメントの区分と同一であります。

セグメント名

事業内容

主な製品・サービス

グループ会社名

プロフェッショナル・ソリューション事業

プロ経営者派遣

プロ経営者派遣、経営コンサルティング(事業承継・事業再生等)

当社

エンジニア派遣

設計・開発・ITエンジニア派遣、ソフトウェア開発

セレンディップ・テクノロジーズ㈱

インベストメント事業

投資・M&A関連

ファンド・共同投資・
ファイナンシャルアドバイザリー

セレンディップ・フィナンシャルサービス㈱

モノづくり事業

オートモーティブ

サプライヤー

自動車内外装部品

(ラゲージルーム内装部品、フェンダーライナー・リアホイルハウスライナー等外装部品)

三井屋工業㈱

自動車精密部品

(オートマチック機能部品)

佐藤工業㈱

FA装置製造

コネクタ自動組立機、電池関連自動組立機、クリームはんだ印刷機

天竜精機㈱

 

(1)プロフェッショナル・ソリューション事業

 「プロフェッショナル・ソリューション事業」においては、事業承継等の経営課題を抱えた中小企業や技術力強化を推進するモノづくり企業へ、プロ経営者やエンジニアといった当社グループの各種プロフェッショナルを派遣し、経営課題や技術的課題に対するソリューションを提供しております。当該セグメントには、当社及びセレンディップ・テクノロジーズ株式会社が属しております。

 また当社グループにおいて、当社及びセレンディップ・テクノロジーズ株式会社はグループ各社の横断的機能を担っております。当社は、グループ各社の経営の近代化を推進する経営執行の役割を担い、プロ経営者派遣及びPMIを実行するとともに、バックオフィス業務強化のためのサポートやグループ各社の交流促進など、グループ全体の組織の活性化を図っております。セレンディップ・テクノロジーズ株式会社は、外部顧客のみならずグループ内へのエンジニア派遣を行い、技術交流及びR&D(新技術の研究開発活動)を促進する役割を担っております。

 

① プロ経営者派遣(当社)

当社は、中小企業が直面する複雑で高度な経営課題に対応できる「プロ経営者」を派遣しております。

我が国のモノづくり産業においては、中小企業が多数を占め、サプライチェーンを支えるとともに多くの雇用を創出しております。しかしながら、これらの中小企業オーナー経営者の高齢化に伴い、高い技術力・製品力がありながらも後継者不在により事業の継続が困難となり、多くの中小企業が廃業に至るという社会問題が顕在化しております。

また、後継者不在という理由に限らず、近代経営の複雑化・高度化に対応した経営管理体制が十分に構築されていない、少子高齢化に伴う労働力不足等によって経営資源を充分に確保できない、生産性が低く稼ぐ力が弱いといった課題を抱えた中小企業も数多く存在します。

このような課題を抱えた中堅・中小企業や、事業承継を目的としたM&Aによって傘下に収めた連結子会社へ、当社よりプロ経営者を派遣し、経営執行にコミットしたPMIの実行、顧客企業の企業価値の回復・向上を図る一連の経営コンサルティング等の「中小企業経営の近代化」に資する総合的なソリューションを提供しております。

 

② エンジニア派遣(セレンディップ・テクノロジーズ株式会社)

 セレンディップ・テクノロジーズ株式会社は、エンジニアを自社の正社員として雇用し、専門性の高いプロフェッショナルのエンジニアを必要とするメーカーに派遣しております。また、ソフトウェアの受託開発も行っております。

モノづくり産業においては技術力の高さが競争力となります。製品の設計や開発といった重要な業務を任せられる人材の不足を補い、自社の技術開発を推進するために、高い専門性を持った人材をエンジニア派遣という形で受け入れるメーカーが増加しております。近年の自動車業界では、自動運転や電動化に関連する激しい技術開発競争を背景に、既存の自動車開発・設計技術とは異なる分野の高度な技術を持ったエンジニアへのニーズが高まっております。

 

(2)インベストメント事業

 「インベストメント事業」においては、金融機関等と連携した共同投資やマイノリティ出資、ファイナンシャルアドバイザリーによって、多様化する事業承継問題に柔軟かつ機動的に対応しております。事業承継等に課題を抱えた企業へのファイナンシャルアドバイザリーの提供や、共同投資等により投資先企業への経営関与を高め、経営改革を促進し企業価値の向上をはかり売却を通じたキャピタルゲインによって収益を獲得しております。当該セグメントには、セレンディップ・フィナンシャルサービス株式会社が属しております。

「インベストメント事業」を取り巻く環境においては、オーナー経営者の高齢化・後継者問題に加え、最近では新型コロナウイルス感染症の拡大が多数の中小企業の業績に深刻な影響を及ぼしております。これによって事業承継へのニーズが高まり、事業承継問題の多様化・顕在化がますます加速していくと考えられます。

 また、セレンディップ・フィナンシャルサービス株式会社は、当社と連携し、当社グループ全体の企業価値を高めるための戦略的な投資先企業の発掘を担っております。

 

(3)モノづくり事業

 「モノづくり事業」においては、当社が事業承継を目的としたM&Aによって傘下に収めたモノづくり企業が自動車部品製造及びFA装置製造を行っております。

 日本のモノづくり産業においては、自動車産業が基幹産業のひとつとなっております。そのため、自動車産業に関わる中小企業の事業承継促進や収益力の強化が日本経済の発展にとって重要な課題であり、当社はこれらの自動車産業に関連する製造企業を連結子会社として傘下に収め、中小企業経営の近代化によって企業価値の向上を図っております。

また、少子高齢化による労働力不足や海外生産拠点の人件費上昇といった課題への解決策として、モノづくり産業における工場の省人化・FA化が進展しております。今後も省人化・FA化に関連する市場は拡大していくと考えられ、当社もFA装置製造企業を連結子会社とし、当社グループの成長において重要な位置づけとしております。

 

① 自動車内外装部品製造(三井屋工業株式会社)

三井屋工業株式会社は、1947年創業の自動車内外装部品メーカーです。主力製品は、自動車のラゲージルーム内装部品とフェンダーライナー・リアホイルハウスライナーといった外装部品であり、トヨタ自動車株式会社を長年主要顧客としております。

三井屋工業株式会社はトヨタ自動車株式会社と直接取引を行うサプライヤーであるため、新車種の企画段階から開発に参画し、顧客ニーズの早期把握に留まらず要求性能そのものを顧客とともに作り込むことが可能であります。自動車メーカーから発注された部品を単に納めるのではなく、自社の技術力を最大限に活かした機能性部品を顧客とともに考案することができ、高付加価値部品の製造・販売が可能という強みがあります。

また、三井屋工業株式会社では顧客の多様なニーズに応えるために競争力の高い材料を常に開発し続けており、主要素材は自社オリジナル品であります。特に、吸遮音性と軽量化を追求した材料は顧客より高い評価を得ております。近年では、自動車の車外騒音規制がより厳しくなるとともに、EV等のエコカーの生産・販売台数が増加しているなか、自動車部品にはこの吸遮音性と軽量化の両方が求められております。今後もその傾向は続くと考えられるため、このような付加価値の高い新材料を開発していくために、引き続き材料メーカーや化学メーカーと共同で材料開発に取り組んでまいります。

2002年には、三井屋工業株式会社が開発した軽さと剛性を兼ね備えた新素材である発泡PP材(※)が、トヨタ自動車株式会社の技術開発賞を受賞いたしました。

(※)発泡PP材とは、材料であるPP(ポリプロピレン)の内部に小さな気泡を入れることで剛性を備えたまま軽量化に成功した新素材です。

 

② 自動車精密部品製造(佐藤工業株式会社)

佐藤工業株式会社は、高度な精密プレス加工技術を持つ自動車精密部品メーカーです。主力製品は、自動車のオートマチックトランスミッション(AT)の機能部品であるプレート・バルブボデーであり、アイシン・エィ・ダブリュ株式会社(※)を主要顧客としております。

佐藤工業株式会社は、順送プレス量産加工において板厚の半分以下(最小0.68mm)の穴を抜くという高度な精密プレス加工技術を持っております。極小の穴や楕円形など特殊な形を開けるためのパンチを金型から自社で設計・製造することによって、順送プレスでは難しいといわれていたこの精密プレス加工を可能としました。

また佐藤工業株式会社では、不良品を出さない製造工程の設計と確認作業の徹底によって、2018年度には顧客目標0.51ppm(製品5,500万個中、不良品28個以内)を大幅に下回る不良率0.13ppm(製品約5,500万個中、不良品7個)を達成しました。2019年には、アイシン精機株式会社(※)のグループ原価賞及びアイシン・エィ・ダブリュ株式会社(※)の総合優秀賞を受賞しました。

高い安全性が求められる自動車製造業において、高い品質の部品を安定して供給し続けるサプライヤーであることは、顧客の信頼を得るための強みとなっております。

(※)アイシン精機株式会社とアイシン・エィ・ダブリュ株式会社は、2021年4月1日に経営統合し、株式会社アイシンとなりましたが、区分するため旧社名を使用しております。

 

③ FA装置製造(天竜精機株式会社)

天竜精機株式会社は、1959年の創業以来一貫して工場の製造工程を自動化・省力化するための装置を開発・製造するFA装置メーカーです。主力製品は、個別受注生産品であるコネクタ自動組立機・電池関連自動組立機等と、量産品であるクリームはんだ印刷機をはじめとした実装関連設備であります。

天竜精機株式会社は、製品の設計や技術開発を担う設計部に、全従業員(2021年4月現在115名)の約三分の一の人員(37名)が所属しております。この豊富な設計陣容によって、多様な製品・製造法に合わせた軽量化・微細化・高速化等の高度な顧客ニーズに柔軟・迅速に対応し、顧客毎に最適な機械装置を提供することが可能となっております。

2018年には、印刷条件フルデジタル設定のクリームはんだ印刷機を開発いたしました。時間の経過とともに状態が変化するクリームはんだの粘性特性(レオロジー)をレオロジーアナライザーという製品(2015年商品化)で解析し、その計測データをクリームはんだ印刷機に転送することにより、従来は熟練工の経験を基に手動で設定していた印刷条件が、高い印刷品質を維持したままフルデジタルで設定可能となりました。

 

[事業系統図]

 

0201010_001.png

 

 

 

 本書記載内容に対する理解を容易にするため、また、正しく理解していただくために、本書で記載する用語の解説は以下に記載しております。

分野

用語

解説

「投資・金融」関連

M&A

M&A(Merger&Acquisition):企業の合併・買収

ファイナンシャルアドバイザリー

M&Aや事業承継の他、資本業務提携や資金調達等のアドバイザー

デューデリジェンス

企業の財務情報の正確性や法的なリスクを確認することを目的とした調査

企業価値算定

M&A取引における企業の価値を客観的に算定すること

マイノリティ出資

株式の過半数を超えない投資のこと

「モノづくり」関連

R&D

R&D(Research&Development):研究開発活動のこと

FA装置

FA(Factory Automation):生産工程の自動化を図る装置のこと

クリームはんだ印刷機

プリント基板のパッド上にクリームはんだ(はんだの粉末にフラックスを加えて、適当な粘度にしたもの)を塗布するための装置

ラゲージルーム

自動車の荷室スペース

フェンダーライナー

自動車のフロントタイヤを覆っている防音対策の機能部品

リアホイルハウスライナー

自動車のリアタイヤを覆っている防音対策の機能部品

オートマチックトランスミッション(AT)

車速やエンジンの回転速度に応じて変速比を自動的に切り替える機能を備えた自動車の変速機

プレート・バルブボデー

ATを構成する油圧制御部品

順送プレス

内部に材料が送られると、複数の工程が順に進行し、1回のプレスで複雑な形状の部品を作ることができ、高い効率とスピーディーな加工が特徴

 

 

4【関係会社の状況】

名称

住所

資本金

(千円)

主要な事業の内容

議決権の所有割合又は被所有割合

(%)

関係内容

(連結子会社)

佐藤工業㈱

(注)2.3

愛知県あま市

98,800

自動車精密部品製造

(モノづくり事業)

100

経営指導・当社役職員派遣に対する経営指導料を受け取っております。

役員の兼任 3人

三井屋工業㈱

(注)2.4

 

 

愛知県豊田市

75,000

自動車内外装部品製造

(モノづくり事業)

100

経営指導・当社役職員派遣に対する経営指導料を受け取っております。

役員の兼任 3人

天竜精機㈱

(注)2.5

 

長野県駒ヶ根市

63,000

FA装置製造

(モノづくり事業)

100

経営指導・当社役職員派遣に対する経営指導料を受け取っております。

役員の兼任 2人

㈱サンテクト

(注)6.9

 

 

名古屋市中区

37,500

エンジニア派遣業

(プロフェッショナル・ソリューション事業)

100

経営指導・当社役職員派遣に対する経営指導料を受け取っております。

役員の兼任 3人

セレンディップ・フィナンシャルサービス㈱

 

 

名古屋市中区

5,500

投資・ファイナンシャルアドバイザリー(インベストメント事業)

100

経営指導・当社役職員派遣に対する経営指導料を受け取っております。

役員の兼任 3人

 (注)1.「主要な事業の内容」欄の( )内は、セグメント情報に記載された名称を記載しております。

2.特定子会社に該当しております。

3.佐藤工業㈱については、売上高(連結会社相互間の内部売上高を除く。)の連結売上高に占める割合が10%を超えております。

主要な損益情報等   (1)売上高  5,394,556千円

(2)経常利益   81,311千円

(3)当期純利益  57,734千円

(4)純資産額   70,197千円

(5)総資産額 2,604,650千円

4.三井屋工業㈱については、売上高(連結会社相互間の内部売上高を除く。)の連結売上高に占める割合が10%を超えております。

主要な損益情報等   (1)売上高  7,571,991千円

(2)経常利益   73,774千円

(3)当期純利益  8,969千円

(4)純資産額  778,156千円

(5)総資産額 6,572,189千円

5.天竜精機㈱については、売上高(連結会社相互間の内部売上高を除く。)の連結売上高に占める割合が10%を超えております。

主要な損益情報等   (1)売上高  1,745,119千円

(2)経常利益   14,767千円

(3)当期純利益  11,723千円

(4)純資産額  889,098千円

(5)総資産額 2,807,038千円

6.㈱サンテクトは、議決権のない優先株式を発行しております。議決権の所有割合については、議決権のない優先株式を除いて算出しております。

7.2020年7月1日付で株式会社エムジエクの株式を取得し連結子会社としております。

8.上記以外にも1社連結子会社及び2社関連会社がありますが、重要性が乏しいため、省略しております。

9.2021年4月1日付で株式会社サンテクトは株式会社エムジエクと合併(株式会社サンテクトが存続会社、同時にセレンディップ・テクノロジーズ株式会社(現・連結子会社)へ社名変更)いたしました。

 

5【従業員の状況】

(1)連結会社の状況

 

2021年4月30日現在

セグメントの名称

従業員数(人)

プロフェッショナル・ソリューション事業

115

1

インベストメント事業

-

-

モノづくり事業

387

28

報告セグメント計

502

29

全社(共通)

13

1

合計

515

30

 (注)1.従業員数は就業人員(当社グループからグループ外への出向者を除き、グループ外から当社グループへの出向者を含む。)であり、臨時雇用者数は( )内に最近1年間の平均人員を外数で記載しております。

2.臨時雇用者数には、パートタイマー、契約社員及び嘱託契約の従業員を含み、派遣社員を除いております。

3.従業員数が最近1年間において68人増加しました。主な理由として2020年7月1日付で株式会社エムジエクを連結子会社としたことによるものであります。

4.全社(共通)として記載されている従業員数は、当社管理部門に所属しているものであります。

 

 

(2)提出会社の状況

 

 

 

2021年4月30日現在

従業員数(人)

平均年齢(歳)

平均勤続年数(年)

平均年間給与(円)

25

39.4

1.8

7,265,147

 

セグメントの名称

従業員数(人)

プロフェッショナル・ソリューション事業

12

-

報告セグメント計

12

-

全社(共通)

13

1

合計

25

1

 (注)1.従業員数は就業人員(当社から社外への出向者を除き、社外から当社への出向者を含む。)であり、臨時雇用者数は( )内に最近1年間の平均人員を外数で記載しております。

2.臨時雇用者数には、嘱託契約の従業員であり、派遣社員を除いております。

3.平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

4.全社(共通)として記載されている従業員数は、当社管理部門に所属しているものであります。

 

 

(3)労働組合の状況

 当社及び当社連結子会社の佐藤工業㈱、三井屋工業㈱、セレンディップ・テクノロジーズ㈱、セレンディップ・フィナンシャルサービス㈱において労働組合は結成されておりませんが、労使関係は円満に推移しております。

 当社連結子会社の天竜精機㈱において、天竜精機労働組合が結成され労使関係は円満に推移しております。