第二部 【企業情報】

 

第1 【企業の概況】

 

1 【主要な経営指標等の推移】

 

回次

第1期

第2期

決算年月

2018年12月

2019年12月

売上高

(千円)

60,208

311,491

経常損失(△)

(千円)

182,355

139,103

当期純損失(△)

(千円)

182,620

139,393

持分法を適用した場合の投資利益

(千円)

資本金

(千円)

100,000

100,000

発行済株式総数

(株)

 

 

 普通株式

12,157

10,114

 A1種優先株式

1,376

 A2種優先株式

667

 B種優先株式

1,212

純資産額

(千円)

158,342

625,860

総資産額

(千円)

318,759

1,056,928

1株当たり純資産額

(円)

13.02

30.85

1株当たり配当額

(円)

(1株当たり中間配当額)

(-)

(-)

1株当たり当期純損失(△)

(円)

15.76

10.59

潜在株式調整後
1株当たり当期純利益

(円)

自己資本比率

(%)

49.67

59.22

自己資本利益率

(%)

株価収益率

(倍)

配当性向

(%)

営業活動による
 キャッシュ・フロー

(千円)

158,546

198,747

投資活動による
 キャッシュ・フロー

(千円)

91,966

46,493

財務活動による
 キャッシュ・フロー

(千円)

455,963

860,568

現金及び現金同等物の期末残高

(千円)

210,451

825,778

従業員数

(名)

7

25

 〔外、平均臨時雇用者数〕

0

1

 

(注) 1.当社は連結財務諸表を作成しておりませんので、連結会計年度に係る主要な経営指標等の推移は記載しておりません。

2.売上高には、消費税等は含まれておりません。

3.持分法を適用した場合の投資利益については、関連会社が存在しないため記載しておりません。

4.1株当たり配当額及び配当性向については、配当を実施していないため、記載しておりません。

5.1株当たり純資産額については、優先株主に対する残余財産の分配額を控除して算定しております。

 

6.潜在株式調整後1株当たり当期純利益については、潜在株式は存在するものの、当社株式は非上場であり、期中平均株価が把握できないため、また、1株当たり当期純損失であるため、記載しておりません。

7.自己資本利益率については、当期純損失が計上されているため、記載しておりません。

8.株価収益率は当社株式が非上場であるため記載しておりません。

9.前事業年度(第1期)及び当事業年度(第2期)の財務諸表については、「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」(昭和38年大蔵省令第59号)に基づき作成しており、金融商品取引法第193条の2第1項の規定に基づき、有限責任監査法人トーマツの監査を受けております。

10.当社は2018年1月22日設立のため、第1期は2018年1月22日から2018年12月31日までの11ヶ月と10日間となります。

11.従業員数は就業人員数であり、従業員数の〔 〕外書きは、臨時従業員(アルバイト・パートタイム社員を含む。)の年間の平均雇用人数(1日8時間換算)であります。

12.当社は、2020年3月27日開催の取締役会決議により、2020年4月15日付で株式1株につき1,000株の割合で株式分割を行っております。第1期の期首に当該株式分割が行われたものと仮定し、1株当たり純資産額及び1株当たり当期純損失を算定しております。

132020年4月24日付ですべてのA1種優先株主、A2種優先株主及びB種優先株主から取得請求権の行使を受けたことにより、すべてのA1種優先株式、A2種優先株式及びB種優先株式を自己株式として取得し、対価として当該A1種優先株式、A2種優先株式及びB種優先株式1株につき、それぞれ普通株式1株を交付しております。また、当社が取得したA1種優先株式、A2種優先株式及びB種優先株式のすべてについて、2020年4月27日開催の取締役会決議により同日付で消却しております。これにより、発行済株式数は普通株式13,369,000株となっております。

 

 

2 【沿革】

 当社は、代表取締役である重松路威が「AIエンジニアリングで未来の社会を形にする」をミッションとして掲げ、2018年1月に設立致しました。

 設立以降の当社に係る経緯は、次のとおりであります。

年月

概要

2018年1月

 

東京都千代田区麹町においてファッションポケット株式会社(現:ニューラルポケット株式会社)を資本金5,000千円で設立

2018年3月

東京都千代田区霞が関に本社移転

2018年6月

一般社団法人日本ディープラーニング協会 正会員 入会

2018年8月

 

アパレル企業向けファッショントレンド解析関連サービス/AI MD®(エーアイ エムディー)の  サービスリリース

2018年11月

東京都千代田区有楽町に本社移転

2019年3月

ニューラルポケット株式会社に社名変更

2019年5月

一般社団法人 日本経済団体連合会(経団連)入会

2019年11月

物流施設内での業務効率・動線可視化ソリューションの提供を開始

2019年12月

 

AI搭載スマートフォン・ドライブレコーダー「スマートくん」リリース、          MONETコンソーシアム加盟

2020年4月

シンガポール支店を登記

2020年6月

北海道室蘭市に対し、観光施設の利用可視化ソリューションの提供を開始

 

(注)MONETコンソーシアムは、ソフトバンク株式会社とトヨタ自動車株式会社が共同出資して設立したMONET Technologies株式会社を中心とした企業の集まりで、次世代モビリティサービスの推進と課題解決に向けて、350を超える自治体と活動・協議を推進しております。

 

3 【事業の内容】

(1) 事業の概況

当社は、「AIエンジニアリングで未来の社会を形にする」をミッションに掲げ、独自開発のAIアルゴリズムによる画像・動画解析と端末処理(エッジコンピューティング)技術を活用することで社会に貢献し、ビジネスにインパクトを与える「AIサービス」を創出しております。顧客の成長に資するAI技術の開発を進め、AIエンジニアリング事業を展開しております。

なお、当社は、AIエンジニアリング事業の単一事業でありますが、現在、主にスマートシティ関連サービス、サイネージ広告関連サービス、ファッショントレンド解析関連サービスの3つのサービスを展開しております。

 

(2) 当社技術の特徴と優位性

① 独自の深層学習技術のライブラリの開発

当社は、技術分野として、独自の深層学習技術のライブラリを開発し、当社AIエンジニアリング事業に活用しております。深層学習の開発にあたっては、汎用のオープンアルゴリズムを転用せず、独自の学習データを収集して構築した高い検出精度の学習モデルを使用しております。また、当社は、光学分野の専門家等を有しており、画像の認識・解析の際に、カメラ特性等を踏まえた独自の前処理、後処理による精度の向上、新しい学習データによるAI技術の使用目的に合わせたカスタマイズをおこなうことができます。当社では、深層学習における学習データ準備に深い知見をもつアノテータチームがサービス開始後もAIの精度の持続的な向上を進めております。

例えば、ファッショントレンド解析関連サービスでは、ファッションコーディネート画像を学習データとして独自に収集・分類し、98%を超えるファッションアイテムの検知を実現しております。

学習データの仕分けに用いる独自のソフトウエアを開発・保有しており、数百万枚規模の学習データ分類を用いた学習モデルを数ヶ月という短期間にて実装する能力を保有しております。こうして開発した学習モデルは、様々なサービスとして活用・転用することが可能であり、当社AIエンジニアリング事業において、スケーラビリティをもった事業開発に直結しております。

(注)人物の全身が映った100枚の写真を対象に行ったファッションアイテム検知の精度評価において、写真に写っていた424のファッションアイテムうち416アイテムを正しく検知し、正解率は98.1%となりました。

 

② 端末処理(エッジコンピューティング)による深層学習モデルの低コスト活用

当社は、端末処理(エッジコンピューティング)による深層学習モデルの低コスト活用を進めております。これまでのAI解析では、動画や写真、音声やデータといった容量の大きな情報を、通信網を用いてサーバールームにアップロードし、サーバーで大規模処理を行う必要がありました。こうしたサーバールームの活用は、通信網やサーバールームなどへの負担に加え、通信料やサーバールームの運用コスト、電気代などが大きく膨らむことから、AI活用の大きな障壁となってきました。エッジコンピューティングを使うと動画などの情報を収集する端末内でAI解析を行い、解析した後のメタデータ(解析結果を記した文字データ)のみが必要に応じてサーバーに送信され、サーバー上でリアルタイムでマーケティングやセキュリティーデータとして活用されるため、大規模なサーバールームを設置する必要がなくなります。

当社のエッジコンピューティングによる深層学習モデル(エッジ技術)では、これまでAI実装には不可欠とされていた大容量サーバーが不要となるため、低コスト、省電力なだけでなく、柔軟にプラットフォーム化が可能な拡張性の高いサービスを提供できます。携帯電話が使える程度のインターネット環境と電源さえあれば、当社のAIを搭載した機器の設置ができるため地方の道の駅などの観光施設でも当社サービスの活用が始まっております。また、当社技術はデバイスとプロセッサ種別に横断的に搭載することが可能です。国内、海外メーカーが製造する5種類のエッジ機器のすべてに搭載でき、NVIDIA製のJETSON TXシリーズや、スマートフォンといった汎用エッジデバイス上で当社の深層学習モデルを稼働させることができます。特にJETSONでは、商用基準を満たすパッケージへのAI実装は非常に高い技術力が必要となりますが、当社は、商用基準を満たすパッケージを用いた開発の経験を有しており、社会インフラとして設置できる信頼性を担保した製品を開発することができます。また、内蔵のメモリに負荷をかけない最適化されたアルゴリズムを実装する開発に深い知見を有しており、スマートフォンにもこれまでになかった高度なAIを組み込むことが可能です。

当社はエッジコンピューティングを積極的に用いることにより、保有する深層学習モデルのコスト効率の高い産業応用を加速すると同時に、省電力化といった環境負荷低減やSDGs(持続可能な開発目標)に配慮した産業発展を支援しております。

 


 クラウドAIとは、取得した静止画・動画などの情報をクラウドへ送信し、クラウド内でAI解析を行う技術。

 エッジAIとは、取得した静止画・動画などをクラウドへ送信せず、エッジ機器内にてAI解析を行う技術。

 

③ 独自に開発する軽量・高精度な深層学習モデルと、エッジコンピューティングの親和性の活用

AIとエッジコンピューティングの親和性は、従来から求められておりましたが、エッジコンピューティングに深層学習モデルを搭載するには、モデルの軽量化が必須要件であり、オープンな汎用ライブラリを組み合わせて活用するだけでは、深層学習モデルの大きさ(メモリサイズ)が障壁となっていました。当社は、独自に開発する軽量・高精度な深層学習モデルと、エッジコンピューティングの親和性を最大限に活用し、サイネージ広告やスマートフォン・ドライブレコーダーアプリなど拡張可能性を担保した深層学習の開発と事業化に成功しております。当社は、エッジAI技術によるビジネス創出基盤を持つAIエッジプラットフォーマーとして事業を推進しております。

 

 

(3) 独自に開発・保有する深層学習モデル及び開発・運用支援ツール

当社が現在保有している深層学習の学習モデル及び開発・運用支援ツールは、以下の通りとなっております。

深層学習モデル又は開発・運用支援ツール名

機能

物体検知・分類ライブラリ

通行する車両や人物、動物の検知と種別解析。インフラ破損、災害発生の有無の検知。

単眼カメラ・360度カメラ・暗視カメラによる
奥行き推定ライブラリ

多様な単眼カメラで、空間の奥行、距離、位置座標を把握。人間が空間認識をする過程と全く同様な奥行推定を実現。

視線検知ライブラリ

人物の姿勢などの情報から視線方向を読み取ることで、興味の有無を推定。大人数の中や歩行中などでも適用が可能。

グループ解析ライブラリ

歩行者が一人で歩いているか、それとも複数人のグループで歩いているかを推定。

歩行モード解析ライブラリ

歩行速度や経路などのモードを分析することで、通行者の消費意欲 (ショッピングに足をとめそうか等)を推定。

通行者属性推定ライブラリ

カメラを用い、通行者の年齢・性別を、歩行中かつ距離が離れている状態から推定する。

ファッション属性解析ライブラリ

着衣のアイテム・色・模様などを認識。その情報を組み合わせることで、人物の属性(ビジネス、カジュアル、等)を推定。

顔画像からの人物検知・認証ライブラリ

(同一人物特定)

人物の顔から、同一人物を特定。複数のカメラにまたがった情報も連携可能。

全身画像からの人物検知・認証ライブラリ
(同一人物推定)

人物の体格・ファッション・所有物などから、同一人物を推定。顔が見えない遠距離や、後ろ姿からでも推定が可能。

車両ナンバープレート認識ライブラリ

ナンバープレートの文字認識を行う。OCRを用いた既存技術とは異なり、動きブレや汚れなどに頑健な認識を実現。

車両ナンバープレート学習用画像生成ツール

アクティブラーニングを用い、車両ナンバープレート認識ライブラリ向けの学習データを迅速かつ大量に生成。

スマートフォンでも動作可能な軽量化済み
物体検出・分類ライブラリ

軽量化された物体認識モデルにより、スマートフォンなどの限られた計算リソースの中でもリアルタイムで物体認識を実現。

動体検知・分類・追跡ライブラリ

動体を対象とし、非常に少ない計算資源においても、高速な物体認識と分類・追跡を行う。

3次元箱形状測定ライブラリ

スマートフォンのカメラにより撮影された画像から、箱の縦・横・高さを非接触で一度に測定。

作業工程認識ライブラリ

工場などにおける作業員の作業工程をカメラ動画から自動で読み取る。少量のサンプル画像により工程の登録が可能。

作業動線解析ライブラリ

工場・倉庫などにおける作業員や車両などを、360度カメラなどから認識・追跡することで、動線を解析。

異常検知・予知保全ライブラリ

構造化データと非構造化データを活用し、機器の故障やパフォーマンス低下を予知。

CTスキャン異常検出ライブラリ

CTスキャン画像から、不良個所を検知。人が目視確認するよりも高い精度で、不良を判定。

満空認識ライブラリ

カメラで撮影された画像から、駐車場や店舗内の席などの満空状況を認識する。

広告配信最適化ライブラリ

デジタルサイネージ前の通行者属性や過去の視聴率などを元に、広告の配信を自動最適化する。

予測・レコメンドエンジンライブラリ

時系列情報を用い、将来予測とそれに伴うレコメンドを実現。行動履歴から消費行動や危険行動を予知する。

流行自動検出ライブラリ

ファッショントレンドなどの時系列情報から、突発的に発生した流行を自動検出する。

単眼カメラによる3次元モーション解析・
3Dモデリングライブラリ

単眼カメラで、人体の形状や服装のしわなどを正確に3Dモデルで再現。人間の行動解析や、スポーツ選手のパフォーマンス管理を実現。

アクティブラーニングを用いた
アノテーションツール

アクティブラーニングを用いることで、迅速なアノテーションを実現。使えば使うほど効率化が進む仕組みを実現する。

エッジデバイスライブラリ管理システム

エッジデバイスに搭載される深層学習モデルを管理する各種ソフトウェア。低コストでスケーラビリティのあるAI活用を実現。

エッジデバイス死活監視システム

エッジデバイスにおける各種ライブラリ・ハードウエアの稼働状態を監視し、動作ログを一括で管理。

エッジデバイス自動インストーラー

携帯通信を用いることで、多数のエッジデバイスの、遠隔地からの自動インストール・アップデート・メンテナンスを実現。

エッジデバイスセキュリティシステム

エッジデバイスの盗難や改ざんなどに対するセキュリティを担保するシステム。

 

 

 

(4) 展開するAIサービスと販売形態

当社は、独自に開発した多数の深層学習モデルを用いて事業を創出し、AIサービスを提供しております。現在、当社で展開するAIサービスは、以下の通りであります。

① スマートシティ関連サービス

人口の都市集中や高齢化が進む中で、AI活用による小売業の効率化、物流や工場の効率化(スマートファクトリー)、AIを利用したモビリティ(乗物・移動手段)を用いた地方都市再生、犯罪や危険が起こりやすかった工事・作業現場空間の空間認識・デジタル化を通じた作業改善といった、多岐に渡るテーマについて、AIの活用が期待されております。

スマートシティ関連サービスでは、サイネージ広告関連サービスなどで蓄積されたAIライブラリを組み合わせて、それぞれの街、地域が抱える課題にソリューションを提供しております。これらに関連して、端末処理(エッジコンピューティング)を実装する多種のエッジ機器に当社の深層学習モデルを搭載するための基盤整備や、深層学習を用いたアノテーションツール(物体検知に使う学習データ収集ツール)の提供等、スマートシティプロジェクトにおける当社技術の横断的な活用を視野に入れたソリューションを提供しております。具体的には、官公庁や自治体、MONET Technologiesと連携して国内8拠点の街づくりプロジェクトの実証実験等に携わり、海外大手デベロッパーと当社顧客企業が共同で進めるASEAN/OCEANIAの3ヶ国でスマートシティ案件に関与しております。

スマートシティ関連サービスにおいて、当社が特に注力しているサービスは以下のとおりです。

(i) スマート物流/スマートファクトリー

当社は工場のスマート化も推進いたします。これまで暗黙知とされてきた熟練工の経験・ノウハウに基づく動きについて、AIカメラを用いて可視化し、新人工員の稼働管理に役立てます。また、工場内にAIカメラを設置することによって、機械などの非デジタル設備の稼働状況を常時監視したり、工場の導線解析を実施したり、異常が発生した際に迅速な対応ができる工場運営体制の整備に役立てます。2019年度において、物流施設内の作業効率・動線可視化ソリューションを提供し、売上を計上しております。

(ⅱ) AI搭載スマートフォン・ドライブレコーダー

当社は、AI画像解析技術及びエッジ処理技術を応用することで、スマートフォンで運用可能なAI搭載のドライブレコーダー「スマートくん」を提供しています。当該アプリケーションをダウンロードすることで、ユーザーのスマートフォンがドライブレコーダーとして使えるようになります。本サービスでは、録画機能を搭載するだけでなく、急発進・急ブレーキ検知や前方車両発信アラートなどの機能を搭載しております。当社は、これを無償で提供し、ユーザーの同意のもと当該ドライブレコーダーが取得した運転データや道路情報のAI解析の基となるビックデータを取得します。当該情報は、自動車会社、タクシー会社や保険会社といった事業者へ有償で提供され、様々な事業に役立てられると想定しております。本サービスについて現時点では、売上実績はございません。

(ⅲ) パーキング

当社は、AI画像解析技術及びエッジ処理技術を応用した駐車場サービスの本格展開に向けた取り組みを進めております。当社のAIカメラを活用することで、駐車場全体の満空状態だけでなく、どのスペースが空いているかといった詳細な満空情報を把握することができます。また、事前登録などにより、車両番号撮影によるパーキングチケットのチケットレス化を推進し、精算時の混雑を緩和し、より快適なパーキング運営になることを想定しております。本サービスについて現時点では、売上実績はございません。

 

上記のいずれのサービスにおいても、ライセンス供与に対する対価を受領するとともに、当社AIを搭載した機器の広がりに応じて顧客企業の利益の一定割合をサービス対価として受領する予定です。独自開発のライブラリを掛け合わせてサービス開発を行うため、新たに多額の研究開発費を投入することなく新規サービスの開発が可能となります。

 

② サイネージ広告関連サービス

従来のデジタルサイネージは、広告を掲示するだけで、視聴者の属性や視聴率、視聴後の動向などを解析できませんでした。また、ネットワークに接続されておらず、設置するデバイス毎に個別でシステムを設定する必要がありました。そのため、設置の際の初期投資が大きく、作業にも時間がかかり、また、設置後も定期的なメンテナンスや緊急の不具合対応が必要な場合には、エンジニアが設置場所作業しなければならず、人的にも負担がありました。そうした課題に応えるべく、広告主や不動産企業、商業施設等の施設運営者に向けたAIデジタルサイネージ広告サービスの本格提供に向け、当社、大手通信事業者及び大手広告代理店が連携して取り組みを進めてまいります。

当社が提供するAIを搭載したカメラとエッジデバイスを使ったデジタルサイネージでは、オンラインで一斉に端末の設定を行うことができます。また、広告コンテンツを放映しながら、通行人の動きを感知し、視聴情報や施設内の人の流れなどの空間情報を各端末がその場で取得します。服装や人数によってビジネス利用か、家族連れかなどをAIが判定します。そうした属性情報は、その人が端末を見ていた時間などの視聴情報と一緒に解析され、施設運営者と広告主にそれぞれ報告されます。施設運営者においては、施設の来館者数や人の流れ、属性情報を取得でき、それに合わせてクーポンなどを活用したテナントマーケティング支援などによって来訪者行動の流動化を促すことができます。広告主は、サイネージ広告の視聴に係る詳細情報を把握することで、効果を測定し、広告内容を改良することができます。また、来館者等の属性を把握できることで、時間帯ごとの視聴者属性に合わせて放映する広告を変更するターゲティング広告も可能になります。

(i) 本サービスにおける当社の位置づけ

大手通信事業者は、本事業の旗振り役として各関係者との調整のハブを担います。主な役割としては、サイネージ機器の発注・調達・設置前の保管、設置作業・保守メンテナンス、顧客窓口対応、設置先(商業施設、オフィスビル等)への営業活動、サイネージ機器への通信機能提供を担います。

大手広告代理店は、サイネージで放映する広告コンテンツの広告主集め、及び広告コンテンツの制作・集約を担当します。また営業で獲得した設置先ごとの広告枠の管理や配信準備、AI機能で検知した数値の広告主向けのレポーティング準備など、サイネージ展開を実際の広告メディアとして構築する一連の活動を担います。

当社は、AIアルゴリズムの提供・機能更新、AIで検知した数字(広告視聴率、属性解析等)のデータレポーティングを行います。

本サービスの収益については、契約に基づき大手通信事業者から固定報酬を受領しております。今後、本格運用が進んだ段階においては、現行の固定報酬に加え、大手通信事業会社が大手広告代理店から受け取る広告収益のうち一定の割合を受領する報酬形態とするべく、協議が進んでおります。

(ⅱ) 本サービスの特徴
・サイネージ機器で取得できる数値・指標の多さ

本サービスで使用するサイネージ機器では、従来品では取得できなかったものを含め、年齢・性別の推定、視線の検知、ペルソナ判定、歩行速度解析、ビジネスパーソンのグループか家族連れかなど多くの数値・指標をリアルタイムで取得できるという特徴を有しております。

・設置の容易さ

本サービスで使用するサイネージ機器は、多くの数値・指標をリアルタイムで取得するという非常に高度な機器ではあるものの、設置においては、設置作業者に特別な技術を要求することはなく、設置する機器の画面に表示される指示に従って数分程度の簡単な作業を行うだけで設置を完了できるようにしております。通常、高機能機器は、その管理運営面においても相応の技術を要求するケースがあり、事業展開の大きな課題となりますが、本サービスで使用するサイネージ機器は、オペレーションの簡易さとして設置作業の難易度が低いという特徴を有しております。

・エッジ処理技術の活用

取得する数値・指標の判定等の全てをサイネージ機器の端末内で完結させるエッジ処理技術も大きな特徴となっております。例えば、膨大な数値・指標を、通信網を用いてサーバールームにアップロードし、サーバーにて大規模処理を行う場合、通信環境・容量の影響を受け、リアルタイム解析が困難でしたが、エッジ処理技術の活用でその課題を克服しております。また、取得する数値・指標の判定等の処理が端末内で完結化しており、データ送信などに有線回線が不要なないため、サイネージ機器から外部に出る配線は電源コードのみで、機器の出荷・納入、設置の手軽さにつながっています。

 

上記のとおり、本サービスで使用するサイネージ機器は、従来の機器では対応できなかった付加価値を提供可能であるため、施設運営者側及び広告主側の本サービスを利用することの動機付けになっていると考えております。

 

2018年のデジタルサイネージの市場規模は1,659億円であり、2025年までに3,186億円まで成長すると推測されております(出典:富士キメラ総研「デジタルサイネージ市場総調査2019」)。当社は、デジタルサイネージの機能充実によるサイネージ単価の上昇、また、新設によるデジタルサイネージ台数の増加により、高い成長性の実現を目指しております。

 

(注)上述の市場規模は、過去のデータおよび一時点における予測値であり、将来の結果を示唆または保証するものではありません。市場規模に関する予測は、高い不確実性を伴うものであり、大きく変動する可能性があります。予測機関は、予測値の達成を保証するものではありません。

 


 

 

③ ファッショントレンド解析関連サービス

日本国内のアパレル市場規模は、1991年には12.6兆円、2017年には9.2兆円となり過去25年間で27.0%減少しております(出典:矢野経済研究所「繊維白書1995」「繊維白書2018」)。一方で当社は、拡大する余剰在庫や商品値引、並びに焼却廃棄等の社会問題に課題認識を持ち、AIを通じた業界再生やSDGs(持続可能な開発目標)の観点での持続可能性の向上、人の感性に頼った手作業からの進化を目指しています。

(i) 本サービスにおける当社の位置づけ

当社は、本サービスにおいて独自の画像解析エンジン(特許 第6511204号)を用いて、SNSなどにおける2500万枚以上のファッションコーディネート画像をAIが解析し、ファッションのアイテム(シャツ、ポロシャツなど)、色彩(ホワイト、グレーなど)、シルエット(半袖、長そでなど)、素材感(ナイロン、レザーなど)などをビッグデータ化します。

本サービスのユーザーとなるアパレル企業は、そのデータ解析結果により、それまで属人的な勘と経験によって断定されていたファッション特性を定量化し、MD(商品企画)業務をデジタル化・強化しております。

(ⅱ) 本サービスの特徴

AIによるファッション解析を行うことで、トレンドに合わせた投入計画を策定できるようになり、プロパー消化率(定価で販売した割合)を向上させることができると考えております。また、直近のトレンドデータに基づき、値引き判断を最適化することができると考えております。結果として、投入商品が最適化され、在庫水準も最適化され、営業利益率の改善につながると考えております。当社サービスを活用して企画された商品は大手アパレルブランドをはじめ、全国の店舗で販売されております。当社サービスを導入している顧客企業の一部ではプロパー消化率を改善する成果があがるなど、粗利改善に貢献しております。

収益構造については、顧客から月次で継続フィーを受領する収益構造を基本とするストック型ビジネスとなります。また、AIの性質上、継続するほどその精度が向上することから、顧客は当社AI MDを継続利用するインセンティブが働き、当社は安定した収益基盤を確保することが可能となっております。

 


 

 

 

<事業系統図>                   <サイネージ広告関連サービスの詳細>


 

 

用語集

 用語

用語の定義

アクティブラーニング

学習データ作成の労力を低減することを目的として、AIに初期的な推論をおこなわせ、それを人間が評価をおこなう学習データ作成手法

後処理

検出精度の向上を目的として、出力データに対して行う処理

アノテーション

人工知能の学習に用いられる学習データ作成作業のこと。物体検出であれば、画像内の当該箇所を指定し物体種別を設定する作業を、多数の画像データに対して行うこと

アノテータ

学習データを作成する者

アルゴリズム

コンピュータ上における問題を解くための手順・解き方

AI

Artificial Intelligenceの略称。学習・推論・認識・判断などの人間の知能的な振る舞いを行うコンピュータシステム

MD

Merchandising:目標を達成するために行う商品構成、仕入れ、販売方法、価格設定、陳列、販売促進等を計画・実行・管理すること

学習データ

学習モデルのアルゴリズムで使用される内部変数を最適化するのにつかわれるデータであり、特に画像と正解ラベルを組みにしたもの

学習モデル

画像等を入力とし、推論をおこなわせるための機械学習アルゴリズム

機械学習技術

人工知能技術の主要な研究分野。データを反復的に学習させ、そこに潜むパターンを見つけ出すことで、コンピュータ自身が予測・判断を行うための技術・手法

強化学習

行動が環境の状態変化を引き起こし、目的にかなうと報酬を受け取れるモデルにおいて、試行錯誤による学習を繰り返し、状態に応じて報酬を最大化する行動を学習する

計算資源

計算機が計算量のために費やす、具体的あるいは抽象的な資源のこと

検出精度

正解ラベルと学習モデルによる推論結果の一致度

構造化データ

コンピュータが処理できるようにルールに従ってつくられたデータ、行と列を持つ表形式のデータのこと

サイネージ

表示と通信にデジタル技術を活用して平面ディスプレイやプロジェクタなどによって映像や文字を表示する情報・広告媒体

深層学習技術

ディープラーニング(Deep Learning、深層学習)。ニューラルネットワークにより機械学習技術を実装するための手法の一種。従来の機械学習技術では人間が特徴量を定義する必要があった(複雑な特徴を表現できない)が、ディープラーニングではアルゴリズムが学習データから特徴量を抽出できる技術・手法

スケーラビリティ

機器やソフトウエア、システムなどの拡張性、拡張可能性

スマートシティ

先進的技術の活用により、街の機能やサービスを効率化・高度化し、各種の課題の解決を図るとともに、快適性や利便性を含めた新たな価値を創出する街づくりのこと

3Dモデリング

2次元の画像データを3次元で表現すること

端末処理(エッジコンピューティング)

データをデータセンターに送信せず、端末自体によって処理すること

ニューラルネットワーク

人間の脳神経系のニューロンを数理モデル化したものの組み合せのこと

非構造化データ

例えば文書テキストや画像など、テーブル形式で整理されていない生データのこと

プロパー消化率

建値消化率のこと。すなわち投入商品が値引き・廃棄等されずに売れた割合のこと

前処理

検出精度の向上を目的として、入力データ(画像等)に対して行う処理(白黒化、明度調整等)

 

 

 

 

4 【関係会社の状況】

該当事項はありません。

 

5 【従業員の状況】

(1) 提出会社の状況

 

 

 

2020年5月31日現在

従業員数(名)

平均年齢(歳)

平均勤続年数(年)

平均年間給与(千円)

32

33.7

0.9

6,273

1

 

(注) 1.従業員数は就業人員数であり、従業員数の〔 〕外書きは、臨時従業員(アルバイト・パートタイム社員を含む。)の年間の平均雇用人数(1日8時間換算)であります。

2.平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

3.当社は単一セグメントであるため、セグメント別の記載は省略しております。

4.最近日までの1年間において従業員数が15名増加しております。主な理由は、業容の拡大に伴い期中採用が増加したことによるものであります。

 

(2) 労働組合の状況

労働組合は結成されておりませんが、労使関係は円満であり、特記すべき事項はありません。