第二部 【企業情報】

 

第1 【企業の概況】

 

1 【主要な経営指標等の推移】

(1) 連結経営指標等

 

回次

第7期

決算年月

2019年6月

売上高

(千円)

4,516,950

経常損失(△)

(千円)

2,850,936

親会社株主に帰属する
当期純損失(△)

(千円)

2,778,440

包括利益

(千円)

2,778,440

純資産額

(千円)

4,510,056

総資産額

(千円)

7,380,958

1株当たり純資産額

(円)

287.97

1株当たり当期純損失(△)

(円)

68.27

潜在株式調整後
1株当たり当期純利益

(円)

自己資本比率

(%)

56.8

自己資本利益率

(%)

株価収益率

(倍)

営業活動による
キャッシュ・フロー

(千円)

1,726,271

投資活動による
キャッシュ・フロー

(千円)

539,000

財務活動による
キャッシュ・フロー

(千円)

6,484,028

現金及び現金同等物
の期末残高

(千円)

5,852,912

従業員数
〔外、平均臨時雇用者数〕

(名)

388

108

 

(注) 1.当社は第7期より連結財務諸表を作成しております。

2.売上高には、消費税等は含まれておりません。

3.1株当たり純資産額については、優先株主に対する残余財産の分配額を控除して算定しております。

4.潜在株式調整後1株当たり当期純利益については、潜在株式は存在するものの、当社株式は非上場であり、期中平均株価が把握できないため、また、1株当たり当期純損失であるため、記載しておりません。

5.自己資本利益率については、親会社株主に帰属する当期純損失が計上されているため、記載しておりません。

6.株価収益率は当社株式が非上場であるため記載しておりません。

7.従業員数は就業人員であり、臨時雇用者数は年間の平均人員を〔 〕内に外数で記載しております。

8.当連結会計年度(第7期)の連結財務諸表については、金融商品取引法第193条の2第1項の規定に基づき、有限責任 あずさ監査法人により監査を受けております。

9.2019年8月26日開催の取締役会決議により、2019年9月25日付で普通株式1株につき3株の割合で株式分割を行いましたが、第7期の期首に当該株式分割が行われたと仮定し、1株当たり純資産額及び1株当たり当期純損失を算定しております。

 

(2) 提出会社の経営指標等

 

回次

第3期

第4期

第5期

第6期

第7期

決算年月

2015年6月

2016年6月

2017年6月

2018年6月

2019年6月

売上高

(千円)

216,327

568,799

1,202,144

2,414,913

4,579,049

経常損失(△)

(千円)

983,273

2,129,905

2,205,591

3,399,297

2,764,820

当期純損失(△)

(千円)

985,563

2,138,516

2,257,697

3,405,845

2,692,189

資本金

(千円)

490,000

100,000

100,000

100,000

100,000

発行済株式総数

(株)

9,277,674

11,068,152

12,223,269

12,223,269

13,734,897

普通株式

(株)

6,000,000

6,000,000

6,000,000

6,000,000

6,000,000

A種優先株式

(株)

1,516,000

1,516,000

1,516,000

1,516,000

1,516,000

B1種優先株式

(株)

1,064,000

1,064,000

1,064,000

1,064,000

1,064,000

B2種優先株式

(株)

697,674

697,674

697,674

697,674

697,674

C1種優先株式

(株)

1,398,321

1,398,321

1,398,321

1,398,321

C2種優先株式

(株)

392,157

392,157

392,157

392,157

D種優先株式

(株)

1,155,117

1,155,117

1,155,117

E種優先株式

(株)

1,511,628

純資産額

(千円)

430,920

2,879,578

4,041,540

692,875

4,596,307

総資産額

(千円)

707,136

3,402,573

5,013,847

2,415,996

7,464,765

1株当たり純資産額

(円)

138.54

309.34

464.81

247.82

285.88

1株当たり配当額

(1株当たり中間配当額)

(円)

(―)

(―)

(―)

(―)

(―)

1株当たり当期純損失(△)

(円)

108.35

200.32

193.73

92.88

66.15

潜在株式調整後
1株当たり当期純利益

(円)

自己資本比率

(%)

59.5

81.8

77.3

19.4

57.3

自己資本利益率

(%)

株価収益率

(倍)

配当性向

(%)

営業活動による

キャッシュ・フロー

(千円)

2,942,970

投資活動による

キャッシュ・フロー

(千円)

223,438

財務活動による

キャッシュ・フロー

(千円)

現金及び現金同等物

の期末残高

(千円)

1,634,156

従業員数
〔外、平均臨時雇用者数〕

(名)

66

4

151

15

243

38

355

88

388

108

 

(注) 1.売上高には、消費税等は含まれておりません。

2.1株当たり純資産額については、優先株主に対する残余財産の分配額を控除して算定しております。

3.潜在株式調整後1株当たり当期純利益については、潜在株式は存在するものの、当社株式は非上場であり、期中平均株価が把握できないため、また、1株当たり当期純損失であるため、記載しておりません。

4.自己資本利益率については、当期純損失を計上しているため記載しておりません。

5.株価収益率は当社株式が非上場であるため記載しておりません。

6.1株当たり配当額及び配当性向については、配当を実施していないため記載しておりません。

7.前事業年度(第6期)及び当事業年度(第7期)の財務諸表については、金融商品取引法第193条の2第1項の規定に基づき、有限責任 あずさ監査法人により監査を受けておりますが、第3期、第4期及び第5期の財務諸表については、会社計算規則(平成18年法務省令第13号)の規定に基づき算出した各数値を記載しており、金融商品取引法第193条の2第1項の規定による監査証明を受けておりません。

8.従業員数は就業人員であり、臨時雇用者数は年間の平均人員を〔〕内に外数で記載しております。

9.当社は、2019年8月26日開催の取締役会において、A種優先株式、B1種優先株式、B2種優先株式、C1種優先株式、C2種優先株式、D種優先株式及びE種優先株式のすべてにつき、定款に定める取得条項に基づき取得することを決議し、2019年9月23日付で自己株式として取得し、対価として普通株式を交付しております。また、当社が取得したA種優先株式、B1種優先株式、B2種優先株式、C1種優先株式、C2種優先株式、D種優先株式及びE種優先株式は、2019年9月23日付で会社法第178条に基づきすべて消却しております。

10.2019年8月26日開催の取締役会決議により、2019年9月25日付で普通株式1株につき3株の割合で株式分割を行いましたが、第6期の期首に当該株式分割が行われたと仮定し、1株当たり純資産額及び1株当たり当期純損失を算定しております。

11.第7期より連結財務諸表を作成しているため第7期の営業活動によるキャッシュ・フロー、投資活動によるキャッシュ・フロー、財務活動によるキャッシュ・フロー並びに現金及び現金同等物の期末残高は記載しておりません。

12. 当社は、2019年8月26日開催の取締役会決議により、2019年9月25日付で普通株式1株につき3株の割合で株式分割を行っております。そこで、東京証券取引所自主規制法人(現 日本取引所自主規制法人)の引受担当者宛通知「『新規上場申請のための有価証券報告書(Ⅰの部)』の作成上の留意点について」(2012年8月21日付東証上審第133号)に基づき、第3期の期首に当該株式分割が行われたと仮定して算定した場合の1株当たり指標の推移を参考までに掲げると、以下のとおりとなります。なお、第3期から第5期の数値(1株当たり配当額についてはすべての数値)については、株式会社東京証券取引所の有価証券上場規程第211条第6項の規定に基づく有限責任 あずさ監査法人の監査を受けておりません。

回次

第3期

第4期

第5期

第6期

第7期

決算年月

2015年6月

2016年6月

2017年6月

2018年6月

2019年6月

1株当たり純資産額

(円)

△46.18

△103.11

△154.94

△247.82

△285.88

1株当たり当期純損失(△)

(円)

△36.12

△66.77

△64.58

△92.88

△66.15

潜在株式調整後
1株当たり当期純利益

(円)

1株当たり配当額

(円)

 

 

 

2 【沿革】

 

年月

概要

2012年7月

東京都港区にCFO株式会社(現フリー株式会社)を資本金100万円で設立

2013年3月

「クラウド会計ソフトfreee」をリリース

2013年7月

商号をCFO株式会社からフリー株式会社に変更

2014年2月

「クラウド会計ソフトfreee iOS版」をリリース

2014年4月

「クラウド会計ソフトfreee Android版」をリリース

2014年8月

東京都港区から東京都品川区に本店移転

2014年10月

「クラウド給与計算ソフトfreee」をリリース

2015年5月

e-gov API(注)を利用した日本初の労働保険申告機能をリリース

2015年6月

「会社設立freee」をリリース

2015年9月

「マイナンバー管理freee」をリリース

2015年12月

金融機関向けプロダクトをリリースし、11行との連携を開始

(本書提出日現在33行と連携。なお、口座同期可能な金融機関数は3,600以上)

2016年4月

大阪府大阪市北区に関西支社を開設

2016年6月

AI研究に特化したスモールビジネスAIラボを創設

2016年9月

福岡県福岡市中央区に九州支社を開設

2016年10月

「開業freee」をリリース

2016年10月

株式会社みずほ銀行とAPI連携(メガバンクとのAPI連携は国内初)

2016年10月

「申告freee」をリリース

2017年3月

「クラウド会計ソフトfreee」において、上場会社(金融商品取引法監査)にも対応したエンタープライズプランをリリース

2017年5月

愛知県名古屋市中村区に中部支社を開設

2017年7月

事業用クレジットカード「freeeカード」を開発

2017年8月

「クラウド給与計算ソフトfreee」をリブランドし、「人事労務freee」をリリース

2018年10月

子会社フリーファイナンスラボ株式会社(現、連結子会社)を設立

2019年1月

アプリケーションプラットフォーム「freeeアプリストア」をリリース

2019年6月

フリーファイナンスラボ株式会社が「資金繰り改善ナビ」をリリース

 

(注)API: Application Programming Interfaceの略称。ソフトウェアの一部を公開することで、他のソフトウェアと機能の共有を可能にするインターフェースを指す

 

 

3 【事業の内容】

(1) ミッション

当社グループは「スモールビジネスを、世界の主役に。」(注1)をミッションに掲げ、「アイデアやパッションやスキルがあればだれでも、ビジネスを強くスマートに育てられるプラットフォーム」の実現を目指してサービスの開発及び提供をしております。

 大胆に、スピード感をもってアイデアを具現化することができるスモールビジネスは、様々なイノベーションを生むと同時に、大企業を刺激して世の中全体に新たなムーブメントを起こすことができる存在だと考えております。

一方、日本全体の労働生産性は先進国7ヶ国中最下位(注2)であり、なかでも中小企業の従業員一人当たり付加価値額は大企業の半分未満(注3)と、スモールビジネスの生産性は低い状況にあります。

当社グループは、AIを始めとする先進的なテクノロジーを用いてスモールビジネスにクラウドERPサービス(注4、5)を提供し、スモールビジネスの生産性向上と経営改善を支援してまいりました。

当社グループは、データとテクノロジーの活用が、スモールビジネスが大企業に対する弱みを克服する鍵であると捉え、スモールビジネスこそがデータとテクノロジーの最先端を活用できる世界を追求することで、より良い社会を実現してまいります。

(注) 1.本書における「スモールビジネス」とは、個人事業主と従業員が1,000名以下の法人を指す

2.公益財団法人日本生産性本部「労働生産性の国際比較 2018」

3.中小企業庁「中小企業白書(2019年版)」

4.クラウドサービス:ソフトウェアやハードウェアを所有することなく、ユーザーがインターネットを経由してITシステムにアクセスを行えるサービス

5.ERP:Enterprise Resources Planningの略称。日本語では、企業経営において点在するあらゆる情報を一箇所に集め、一元管理を行うシステムを指して一般的に「ERP」「ERPパッケージ」と呼ばれる

 

(2) サービス概要

当社グループでは、スモールビジネスのバックオフィスの生産性向上に寄与するSaaS(注)サービスを開発・提供してまいりました。具体的には、2013年3月に「クラウド会計ソフトfreee」を、2014年10月に「クラウド給与計算ソフトfreee」をリリースしました。その後も、2015年6月に「会社設立freee」を、2016年10月に「開業freee」及び「申告freee」をリリースし、サービスの拡充に努めてまいりました。なお、「クラウド給与計算ソフトfreee」は2017年8月に「人事労務freee」にリブランドしております。

また、当社は、金融サービスの展開に向けて、2018年10月にフリーファイナンスラボ株式会社(以下、「フリーファイナンスラボ」という。)を設立し、2019年6月には「資金繰り改善ナビ」をリリースしております。

なお、当社グループは当社と連結子会社であるフリーファイナンスラボの合計2社で構成されており、プラットフォーム事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。

(注)SaaS: Software as a Serviceの略称。ユーザー側のコンピューターにソフトウェアをインストールするのではなく、ネットワーク経由でソフトウェアを利用する形態のサービス

 

(3) 統合型クラウド会計ソフト・人事労務ソフトを提供する「freee」が選ばれる理由

当社グループが提供するサービスは、資本、人材に限りのあるスモールビジネスにおける利用を前提に設計・提供しており、独自性の高い統合型クラウド会計ソフト・人事労務ソフトとして、下記の特長がユーザー企業(注)に支持されています。

(注)当社グループのサービスを利用する個人事業主と法人の双方を指す

 

① カンタン、自動化

一般的な会計ソフトは、すべての取引を複式簿記形式の仕訳として手動で入力する必要があり、多くの手間を要するという課題があります。「クラウド会計ソフトfreee」においては、例えばクレジットカードや銀行の口座との同期(データ連携を指し、以下、「同期」という。)を行うことで、金融機関のトランザクションデータを自動的にサービス上に取り込み、AIにより自動で仕訳を行うことができます。これにより、ユーザー企業は手作業や手入力にかけてきた時間と工数を削減し、生産性を向上させることが可能です。

 

また、「クラウド会計ソフトfreee」は、簿記の知識がない人でも直感的に使用可能なユーザー・インターフェイスを提供しており、専門人材の確保が容易でないスモールビジネスが自社で財務会計(会計帳簿の作成)や管理会計までを実施することも可能にしております。

さらに当社グループでは、会計ソフト業界において早期よりモバイル対応の開発を行ってまいりました。「クラウド会計ソフトfreee」のモバイルアプリは、直感的に操作しやすいユーザー・インターフェイスを有し、簡単かつ効率的に業務を行うことができます。その結果、このモバイルアプリは、2万件以上のユーザー評価をいただき、5段階評価で平均4.4の高評価(注)を獲得するなど、多くのユーザーから支持を集めております。

また、スモールビジネスにおいて、会計業務に次ぐ大きな負担となっていると当社グループが考えているのが、給与計算及び給与計算に関連する人事労務業務です。例えば、社会保険や源泉所得税などの専門的知識が要求される上に、勤怠情報や従業員の扶養状況などの詳細な把握が求められ、さらに、申告や様々な届け出が必要となります。

「人事労務freee」では、従業員が必要な情報を登録し、勤怠をつけるだけで、会社の給与計算やそれに付随する申告書類の作成などを自動化することができるため、専門的知識がなくても利用可能です。

(注)Apple社が運営するApp Storeにて「クラウド会計ソフトfreee」のiPhoneアプリが5段階評価で平均4.4のスコアを獲得。ユーザー評価数は2.04万件(いずれも2019年10月時点)

 

② バックオフィスオートメーション

一般的な単機能型会計ソフトが担う領域は経理業務全体の一部である記帳処理に留まり、上流工程である業務は別のソフトウェアやソリューションを使用する必要があります。例えば、販売業務に関連する請求書発行や入金消込、仕入業務に関連する購買申請や支払業務は、それぞれ会計ソフトとは異なるソフトウェアや、紙と印鑑などを使用したオペレーションが用いられていたため、各業務が分断され、非効率な業務構造となっています。加えて、同一の取引に係る情報について、会計ソフトへの転記作業を要し、さらに手入力ミスを防止するための確認作業を要するという課題があります。

「クラウド会計ソフトfreee」は、スモールビジネス向け統合型会計ソフトであり、請求書機能やワークフロー機能(注)を同一のソフトウェア上で提供しているユニークな設計を特長としており、経理業務の枠を超えたバックオフィス全体の効率化にも寄与します。例えば、「クラウド会計ソフトfreee」上にて作成した請求書の情報は、売掛金として自動で帳簿に登録され、かつ債権管理台帳にも登録されます。その債権情報と、銀行のオンライン口座の入金情報との連携により、自動的に債権の消込が行われます。一方、仕入取引又は経費支払の場合も、受領した請求書をスキャンして取り込むと、買掛金や未払金として自動で会計帳簿及び債務管理台帳に登録されます。加えて、登録された債務は「クラウド会計ソフトfreee」の中から一括で振込指示を行うことができ、債務の消込も自動的に行われます。

このように、統合型会計ソフトである「クラウド会計ソフトfreee」のソフトウェア上で上流工程にあたる業務を行うことで自動的に会計帳簿が作成されるため、経理業務自体も大幅に効率化されます。

同様に、人事労務の領域においても、従来は、従業員基礎情報、勤怠管理、給与計算、保険・行政手続、マイナンバー等の人事関連の定型業務に係る情報のマスタ(データベース)が別個のソフトウェアに散逸し、マスタ間の転記及び整合性担保に手間とコストが生じているケースが見られました。

「人事労務freee」も統合型人事労務ソフトとしての性質を持ち、従業員基礎情報の構築から給与計算及び行政手続等に至るまでのデータを一元管理することで、人事労務に係る定型業務を単一のソフトウェア上で完結し、人事労務担当者の負荷を軽減するとともに、従来の転記に伴うミスを避けることが可能となります。これにより、人事労務に係る定型業務の大幅な効率化につながります。

(注)経費精算、支払依頼、各種稟議など、各種業務フローに係る申請・承認を行う機能

 

③ 経営者の意思決定をナビゲート

一般的な会計ソフトは、税務を中心とした制度会計のための財務諸表作成とそのための記帳を主な目的として利用されています。経理業務は、会計ソフトだけでなく、様々なソフトウェアや紙と印鑑によるオペレーションの組み合わせにより行われていることが多く、販売や仕入れなどの取引発生から会計処理の完了までのリードタイムは長期化しています。また、様々なソフトウェアやアナログ手法の組み合わせによって経理業務が行われていることで、取引の発生から財務諸表までのデータは断絶されています。

 

そのため、会計ソフトを、経営指標のモニタリングや、元取引及び証憑に遡って深掘りする目的に利用することは難しいのが現実です。

当社グループの「クラウド会計ソフトfreee」は統合型会計ソフトであるため、上流工程と会計帳簿を一体で扱うユニークな設計を有しており、リアルタイムに経営状況が記録され可視化されます。また、財務情報のみならず、財務諸表や各種レポートから、上流工程業務の証憑、取引先、部門等の情報を一元化して可視化し分析することができます。

例えば「予算・実績管理」機能を用いることで、予算と実績の差異について、財務諸表から個々の取引情報まで遡って分析することができます。さらに、蓄積された財務データを基に将来の資金繰りを示し、今後の経営の意思決定をサポートします。

人事労務ソフトの領域においても、従来は、従業員情報及び勤怠情報等のデータが別個のソフトウェアに散逸し、意思決定に有用なデータをリアルタイムで把握することが困難な状況が珍しくありませんでした。

当社グループの「人事労務freee」は、統合型人事労務ソフトであり、人事労務に係る情報を単一のソフトウェアに集約することで、適時に情報を把握することが可能となり、さらに「クラウド会計ソフトfreee」の各種機能と連携することでより経営の意思決定への活用が可能となります。

 

④ 組織全体での利用による効率化と内部統制整備

一般的な会計ソフトは、経理業務に携わる従業員のみがライセンスを有して使うことが想定されています。

「クラウド会計ソフトfreee」は、上述のワークフロー機能の提供を通じて、経理業務の枠組みを超えた企業のあらゆる事業活動において全従業員が活用することが可能な設計となっております。特に中堅規模以上の企業において、全従業員が利用することで「カンタン、自動化」「オペレーション効率化」の更なる追求につながる他、ワークフロー機能が有する承認プロセスの証跡を活用することで内部統制の整備にも貢献します。

また、「人事労務freee」と併せて利用することで、人事データ及び組織構造をリアルタイムにワークフローや経営分析に反映し、一層の業務効率化と高度な経営の可視化の両立を図ることが可能となります。

 

⑤ パブリックAPI(注1)による拡張性

従来のスモールビジネスでは、その企業特有の業務プロセスを自動化するために、独自のシステムを開発するしかありませんでした。しかし、独自のシステム開発は多額な開発コストとメンテナンスコストがかかり、IT投資の体力が限られるスモールビジネスにとって、大きな負担になっていました。また、そもそも独自のシステム開発自体が難しい規模の企業においては、市販のソフトウェアにアナログのプロセスを加えて補う運用がなされてきました。

このように自社開発された独自システムや、市販のソフトウェアと別のソフトウェア間でのデータ連携も容易ではなく、システム間のデータ連携はファイルの取り込み等の手作業によってなされ、工数が増大する上、転記ミス等の原因にもなっていました。

当社グループは、2013年に日本国内の会計ソフト業界では初めてパブリックAPIを公開して以来、クラウドとAPIを活用したオープン・エコシステム(注2)の構築を進めております。パブリックAPIの公開により、「誰でも、自由に」当社グループのサービスとデータ連携を行うためのアプリケーション開発を行うことができます。

そのため、スモールビジネス向けの業務ソフトウェアを提供する企業が、当社グループのサービスとの連携機能を自発的に開発することが容易になります。このような他社製品との連携機能が多く提供されることにより、スモールビジネスが社内業務のための独自のシステムやソフトウェアを開発する負担を大幅に削減することができます。

また、もし独自要件を追加したい場合でも、パブリックAPIを活用すれば、ユーザー企業が自社の業務プロセスに合わせて、カスタマイズ開発を従来より簡単に行うことができます。

2019年1月には「freeeアプリストア」をリリースしました。freeeのユーザー企業は、必要な業務カテゴリーごとにfreeeと連携可能なソフトウェアを検索することができ、数回のクリックで簡単にfreeeと連携させることができます。業務ソフトウェアを提供する企業にとっては、当社グループの顧客基盤にアクセスできる「freeeアプリストア」への掲載は、魅力的な販促手段となりえます。

(注) 1.組織内部のみでの利用を想定したAPIをプライベートAPIと呼び、他方で、組織外の主体にも利用を認めるものをオープンAPIと呼ぶ。オープンAPIの中でも、特定の提携企業のみでなく、幅広い外部企業が利用可能なものをパブリックAPIと呼ぶ

 

2.複数の企業同士が非排他的に提携することで、複数の企業が提供するサービスが共存共栄できる生態系のような環境を指す

 

以上の「選ばれる理由」を背景に、ユーザー数及びARPU(注1)の双方が伸長した結果、当社のARR(注2)は2015年6月期から2019年6月期にかけて、年平均約2倍の成長を実現し、2020年6月期第1四半期末には5,774百万円に到達するなど、事業は順調に拡大しております。

 


 

(注) 1.ARPU: Average Revenue Per Userの略称。1有料課金ユーザー企業当たりの平均単価

2.ARR:Annual Recurring Revenueの略称。各期末月のMRR(Monthly Recurring Revenue)を12倍して算出。MRR:Monthly Recurring Revenueの略称。対象月の月末時点における継続課金ユーザー企業に係る月額料金の合計額(一時収益は含まない)

 

(4) サービスラインナップ

①「クラウド会計ソフトfreee」

個人事業主及び法人向けに提供している統合型クラウド会計ソフトです。

銀行口座やクレジットカード等との連携、請求書発行から入金管理、各種稟議や支払依頼など日々行われる経理の上流工程業務との統合により、手入力によるミスを防ぎ、経理作業にかかる時間を大幅に削減することが可能となります。同時に、上流工程業務まで含めた日々のデータを活かして、リアルタイムでの経営指標のモニタリングや詳細かつ打ち手に繋がる経営分析を可能としております。

さらに、従業員に個別アカウントを付与し、ワークフロー機能を利用することで、更なる業務の効率化と内部統制の整備にも寄与します。なお、ワークフロー機能は、承認プロセスの証跡を有していることから、上場企業に求められる内部統制報告制度に対応しており、上場準備企業及び上場企業における利用も非常に効果的です。

また、個人事業主向けプランにおいては、所得税の確定申告までを完結することが可能です。

 

②「人事労務freee」

法人向けの統合型クラウド人事労務ソフトです。

人事労務業務は、給与計算、勤怠管理、保険・行政手続、マイナンバー管理等と多岐にわたり、かつ従来は業務毎で使用するツールが異なるなど、複雑に分断されているという課題がありました。

 

従業員一人一人が、「人事労務freee」の従業員用アカウントを用いて、個人情報や勤怠情報を入力することにより、給与計算や年末調整の自動化に加えて、労務の諸手続の自動化や従業員マスタとなるデータベースの構築を可能とします。

また「クラウド会計ソフトfreee」と「人事労務freee」を連携することで、給与情報を「クラウド会計ソフトfreee」に自動で転記できるほか、「クラウド会計ソフトfreee」にて申請した経費精算について「人事労務freee」にて計算した給与と一緒に支払うことが可能です。さらに、従業員マスタにおける役職や組織構造を反映したワークフローを、「クラウド会計ソフトfreee」において自動で運用することが可能です。

 

③「会社設立freee」「開業freee」

「会社設立freee」は会社設立時に、「開業freee」は個人事業主としての開業時に提出を求められる書類の作成を効率化できる無料のサービスです。

会社を設立したり、個人事業主として開業したりするには、各種書類の作成から、関係者の捺印、役所への提出手続など、手続が多岐にわたる上、同じ情報を複数の書類に記載する必要があるなど、多くの課題がありました。

「会社設立freee」及び「開業freee」は、会社設立や開業に係る知識がない場合でも、Q&A形式で必要な情報を入力していくことで、必要な情報を各種書類に転記し、必要なすべての書類を自動で作成することが可能です。

 

④「申告freee」

「申告freee」は、主に会計事務所向けに提供している、「クラウド会計ソフトfreee」とシームレスに連携したクラウド型税務申告ソフトです。従来の税務申告ソフトは、会計ソフトとは分断されていたことから、会計ソフトから出力したデータを税務申告ソフトに入力する必要があるなど、多大な労力や時間がかかるという課題がありました。

「申告freee」の利用により、これまでプロセスごとに分断されていた会計と申告の業務がシームレスに連携し、「クラウド会計ソフトfreee」に入力された財務情報をもとに税務申告書を自動的に作成することができ、更に、作成した申告書を電子申告することができます。

また、会計事務所は、顧問先とともに「クラウド会計ソフトfreee」を利用し、更に「申告freee」を利用することで、会計事務所における記帳業務、顧問先の決算、申告書類作成等の多岐にわたる業務について、ワンストップでクラウド上で効率的に管理することが可能となります。

 

⑤金融サービス

創業期の中小企業のうち60%が資金繰りに課題を感じており(注1)、倒産企業の約半数を黒字倒産が占めるなど(注2)、スモールビジネスにとって、資金繰りは大きな課題です。

当社グループは、スモールビジネスの資金繰り改善を企図した金融サービスとして、当社が「freeeカード」、フリーファイナンスラボが「オファー型融資」、「請求書ファイナンス」等を提供しております。

「freeeカード」は、従来クレジットカードを作成することが容易でなかった個人事業主や中小企業に特化した事業用クレジットカードです。経費精算や仕入れなどの現金取引のキャッシュレス化によりバックオフィス業務の効率化を、またクレジットカード明細を自動で「クラウド会計ソフトfreee」と同期することにより経営状況の可視化を実現します。なお、「freeeカード」は、当社との提携に基づきクレジットカード会社が発行しております。

「オファー型融資」は、フリーファイナンスラボと金融機関が連携して提供する融資サービスであり、融資を受けられる可能性の高い「クラウド会計ソフトfreee」のユーザー企業に対して、借入可能額や金利などの借入条件をフリーファイナンスラボが試算し、提示します。従来の金融サービスは、申込み後に審査に落ちてしまうリスクがあり、ユーザー企業にとって、金融機関に融資を申込むことへの精神的なハードルが存在していました。「オファー型融資」は、各金融機関と提携し、フリーファイナンスラボが事前に借入可否と条件を試算して提示することにより、ユーザー企業の融資申し込みへの精神的なハードルの解消を実現しております。

「請求書ファイナンス」は、クラウドファクタリング企業と連携して提供する請求書買い取りサービスであり、「クラウド会計ソフトfreee」に登録されている売掛債権を、オンラインで現金化することができるサービスです。

 

これらの金融サービスは、資金繰りの実態を把握できる場所である会計ソフト上で、資金繰り改善のアクションまでを可能にするものであり、従来の会計ソフトからは一線を画した価値を提供するものです。

(注) 1.中小企業庁「中小企業白書(2017年版)」

2.株式会社東京商工リサーチ「全国新設法人動向」(2017年)

 

以上に述べた事項を事業系統図によって示すと、次のとおりであります。

 


 

(注) 1.会計事務所を通じて導入されるサービスの利用者は矢印の先の「法人・個人事業主」です。「会計事務所」は単純な再販売ではなく、顧問先に対して当社サービスの導入支援サービスを提供します。

2.「申告freee」の主な利用者は「会計事務所」です。

3.「開業freee」及び「会社設立freee」の利用者は「法人・個人事業主」であり、当サービス自体の利用料は無料です。

4.フリーファイナンスラボについては、連結業績に与える影響は僅少であるため、事業系統図への記載は省略しております。

 

 

4 【関係会社の状況】

 

名称

住所

資本金
(千円)

主要な事業
の内容

議決権の所有
(又は被所有)
割合(%)

関係内容

(連結子会社)

 

 

 

 

 

フリーファイナンスラボ株式会社(注2)

東京都品川区

100,000

金融サービス

100.0

役員の兼任2名

開発業務の受託

 

(注)1.有価証券届出書又は有価証券報告書を提出している会社はありません。

2.特定子会社に該当しております。

 

5 【従業員の状況】

 (1) 連結会社の状況

2019年9月30日現在

従業員数(人)

409

110

 

(注) 1.従業員数は就業人員数であり、臨時雇用者数は年間の平均人員を( )内に外数で記載しております。

2.当社グループは「プラットフォーム」事業の単一セグメントであるため、セグメント情報との関連については、記載しておりません。

 

 (2) 提出会社の状況

 

 

 

2019年9月30日現在

従業員数(名)

平均年齢(歳)

平均勤続年数(年)

平均年間給与(千円)

409

110

32.0

2.3

6,530

 

(注) 1.従業員数は就業人員数であり、臨時雇用者数は年間の平均人員を( )内に外数で記載しております。

2.平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

3.当社は「プラットフォーム」事業の単一セグメントであるため、セグメント情報との関連については、記載しておりません。

 

(3) 労働組合の状況

労働組合は結成されておりませんが、労使関係は円満に推移しております。