第二部 【企業情報】

 

第1 【企業の概況】

 

1 【主要な経営指標等の推移】

 

 

回次

第8期

第9期

第10期

第11期

第12期

第13期

決算年月

2014年3月

2014年6月

2015年6月

2016年6月

2017年6月

2018年6月

売上高

(千円)

2,665,883

369,610

2,586,768

2,895,869

3,900,793

4,053,088

経常利益又は経常損失
(△)

(千円)

129,918

33,223

114,088

75,156

254,234

291,743

当期純利益又は当期純損失(△)

(千円)

68,116

30,140

42,405

38,994

162,961

189,852

持分法を適用した
場合の投資利益

(千円)

資本金

(千円)

153,000

153,000

153,000

153,000

153,000

153,000

発行済株式総数

(株)

8,080

8,080

8,080

8,080

8,080

8,080

純資産額

(千円)

426,152

396,011

439,579

479,822

642,784

832,636

総資産額

(千円)

1,400,861

1,183,170

1,273,576

1,184,537

1,737,114

2,022,035

1株当たり純資産額

(円)

52,741.64

49,011.36

54,403.35

59,383.97

159.11

206.10

1株当たり配当額

(1株当たり中間配当額)

(円)

(―)

(―)

(―)

(―)

(―)

(―)

1株当たり当期純利益又は
1株当たり当期純損失
(△)

(円)

8,430.26

3,730.28

5,248.23

4,826.11

40.34

46.99

潜在株式調整後
1株当たり当期純利益

(円)

自己資本比率

(%)

30.42

33.47

34.52

40.51

37.00

41.18

自己資本利益率

(%)

17.37

7.33

10.15

8.48

29.03

25.74

株価収益率

(倍)

配当性向

(%)

営業活動による
キャッシュ・フロー

(千円)

200,004

190,575

投資活動による
キャッシュ・フロー

(千円)

41,792

47,366

財務活動による
キャッシュ・フロー

(千円)

254,156

19,085

現金及び現金同等物
の期末残高

(千円)

794,397

575,674

従業員数
〔外、平均臨時雇用者数〕

(名)

55

59

62

63

74

81

10

11

11

12

11

12

 

(注) 1.当社は連結財務諸表を作成しておりませんので、連結会計年度に係る主要な経営指標等の推移については記載しておりません。

     2.売上高には、消費税等は含まれておりません。

3.持分法を適用した場合の投資利益については、関連会社が存在しないため、記載しておりません。

4.1株当たり配当額及び配当性向については、配当を実施していないため、記載しておりません。

5.潜在株式調整後1株当たり当期純利益金額については、第8期から第10期までは潜在株式が存在しないため記載しておりません。第11期から第13期については潜在株式は存在するものの、当社株式は非上場であるため期中平均株価を把握できないため記載しておりません。

 

6.株価収益率については、当社株式が非上場であるため記載しておりません。

7.第9期において経常損失及び当期純損失を計上している主な要因は、決算期変更により3ヵ月の変則決算となったことによるものであります。

8.当社は第12期より、キャッシュ・フロー計算書を作成しておりますので、第8期、第9期、第10期及び第11期のキャッシュ・フロー計算書に係る各項目については記載しておりません。

9.2014年6月26日開催の第8回定時株主総会において、定款一部変更を決議し、第9期より決算日を3月31日から6月30日に変更しております。

10.前事業年度(第12期)及び当事業年度(第13期)の財務諸表については、金融商品取引法第193条の2第1項の規定に基づき、太陽有限責任監査法人により監査を受けておりますが、第8期、第9期、第10期及び第11期の財務諸表については、「会社計算規則」(平成18年法務省令第13号)の規定に基づき算出した各数値を記載しております。また、当該各数値については、株式会社東京証券取引所の有価証券上場規程第211条第6項の規定に基づく太陽有限責任監査法人の監査を受けておりません。

11.当社は、2019年6月17日開催の取締役会決議により、2019年7月10日付で普通株式1株につき500株の株式分割を行っております。第12期の期首に当該株式分割が行われたと仮定し、1株当たり純資産額及び1株当たり当期純利益を算定しております。

12.2019年7月10日付で普通株式1株につき500株の分割を行っております。そこで、東京証券取引所自主規制法人の引受担当者宛通知「『新規上場申請のための有価証券報告書(Ⅰの部)』の作成上の留意点について」(平成24年8月21日付東証上審第133号)に基づき、第8期の期首に当該株式分割が行われたと仮定して算定した場合の1株当たり指標の推移を参考までに掲げると以下の通りとなります。なお、第8期、第9期、第10期及び第11期の数値については、太陽有限責任監査法人の監査を受けておりません。

 

回次

第8期

第9期

第10期

第11期

第12期

第13期

決算年月

2014年3月

2014年6月

2015年6月

2016年6月

2017年6月

2018年6月

1株当たり純資産額

(円)

105.48

98.02

108.81

118.77

159.11

206.10

1株当たり当期純利益又は
1株当たり当期純損失
(△) 

(円)

16.86

△7.46

10.50

9.65

40.34

46.99

潜在株式調整後

1株当たり当期純利益

(円)

1株当たり配当額

(円)

 

 

 

 

2 【沿革】

 当社は、2006年9月にHPC事業の源流となる株式会社エッチ・アイ・ティー及びCTO事業の源流となるプロサイド株式会社から分社型吸収分割を行い、実質的な事業を開始致しました。

年月

概要

2006年3月

有限会社ハンズオンを東京都板橋区に設立

2006年7月

有限会社ハンズオンを株式会社へ組織変更

商号をHPCシステムズ株式会社に変更し、東京都江東区に移転

2006年9月

株式会社エッチ・アイ・ティー及びプロサイド株式会社から、分社型吸収分割により組織再編を行いHPC事業及びCTO事業を開始

2009年11月

西日本営業所を京都市下京区七条通に開設

2011年7月

西日本営業所を京都市下京区烏丸通に移転

2011年10月

本社を東京都港区に移転

2016年7月

台湾支店を新北市に開設

2017年6月

ヤフー株式会社へ納品したディープラーニング活用に特化した省エネ性能の高いスーパーコンピュータ(以下、スパコン)「kukai(クウカイ)」が、スパコンの省エネ性能ランキング「GREEN500」において世界第2位を獲得

 

 

 

3 【事業の内容】

当社は「人とコンピューティングの力で世界平和に貢献する」の経営理念の下、「人の創造力とコンピューティングを融合させ未来をつくる企業になる」ことをビジョンに、「研究者には研究する力、開発者には製品を開発する力を提供すること」をミッションに掲げ、人類の難題に挑戦している研究者や開発者に寄り添い、知恵、努力、コミュニケーションとコンピューティングを通じてそれぞれが抱えている課題に共に取り組んでおります。
 当社の役割実現のため、専門的な知見を求められる科学技術計算用コンピュータ事業(HPC事業)と安定的で信頼性の高い製品供給を求められる産業用コンピュータ事業(CTO事業)の2つの事業を展開しております。

当社の事業における位置付け及びセグメントとの関連は、次のとおりであります。なお、事業の区分内容は、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表注記事項」に掲げるセグメントと同一の区分であります。

 

(1)HPC事業

 HPC事業は、科学技術計算用コンピュータに関連するソリューションの提供を行っております。科学技術計算用コンピュータは、高性能コンピュータを駆使して科学技術における問題を計算によって解決する計算科学という分野で使用されておりますが、計算科学は、理論や実験と並ぶ、第三の研究手段に数えられるまでに発展してきております。その中で当社は、計算科学の手法を用いて「理論化学」の問題を取り扱う「計算化学」という分野に強みを持っており、中でもライフサイエンス(生命科学)とマテリアルサイエンス(材料科学)分野を重点事業領域と位置づけ、コンピュータ上で高精度に計算した材料データベースやAIなどを活用して材料開発を行うマテリアルズ・インフォマティクスのアプリケーション開発に力を入れております。
 当社が提供するHPCシステムインテグレーションは、従来のシステム開発業者等が行っている業務系システムやERPシステム等の構築といったITサービスとは領域が異なっており、科学技術計算、モノ作りにおける流体構造シミュレーション、創薬や材料開発に必要な計算化学、ディープラーニング、AI解析、ビッグデータ解析等、顧客の使用目的に応じた知見を必要とする領域に対するシステムインテグレーションであります。こうしたHPCシステムインテグレーションの他にも、科学技術計算用高性能コンピュータの販売、ソフトウェアプログラムの開発・販売、受託計算・研究開発支援及び導入後のサポートまでをワンストップでトータルに行う体制を構築しております。
 具体的には、ユーザが保有、又は想定する様々なシステム構成(アーキテクチャ)に対して、ユーザの求める計算科学プログラムをコンピュータ上で実行可能の状態に変換するビルドや、同プログラム性能の最大化を図るための調整(チューニング)を行うことで、コンピュータにおける計算時間を大幅に短縮させる超高速計算や、大量のデータを正確に計算させる大規模・高精度計算を実現している他、HPCユーザである研究者や製品開発者のニーズに合わせて、科学技術計算用のオリジナルソフトウェアプログラムの開発・販売・サポート、計算科学をテーマとするセミナーの開催、科学技術計算の受託や技術支援、プログラム高速化サービスなどを提供しております。その過程で長年にわたって培ってきた全国に所在する大学の研究室や公的研究機関、企業のR&Dセンターや中央研究所などとの関係性を構築していることがHPC事業の強みであります。具体的には、基礎研究の有効活用を模索している大学の研究室等と、応用研究を行っている企業のR&Dセンター等との橋渡しや、基礎研究の成果を探している企業のR&Dセンター等に対して、大学の研究室等の基礎研究成果を紹介するといったように、官と民を結ぶハブの役割を担うことを可能としております。
 その他、多様化する顧客のHPCによる計算ニーズにあわせ、HPCの計算能力をクラウドにて提供するサービスにも取り組んでおります。HPCユーザの計算ニーズは極めて秘密性が高く、計算に長い時間を要することから、従来は各研究室又は各社でHPCを保有する(オンプレミス)ことが一般的でした。しかしながら近年ではHPCユーザの裾野が拡大しており、柔軟な利用環境を求めるユーザの要望が増加していること等から、当社では一時的に利用できる解析用HPCリモートサービスや、技術の進歩を捉えてHPCのクラウドサービスも開始しております。

 最近では、HPCとビッグデータやAIが融合し、理論計算からデータ分析、機械学習、そして理論計算といった機能を実現できるシステムの導入が進んでおり、さまざまな分野でAI技術の応用が進められております。当社も、重要な社会インフラへのHPCの適用事例となる5G技術、及び「コネクテッドカー」 に係る研究開発活動のニーズを支える技術者集団として参画しております。

 このように、当社はハードウェアからソフトウェアプログラム、システムインテグレーションサービス、各種研究サポートを一気通貫してワンストップで対応しております。

 

 

HPC事業ワンストップサービスの概念図


 

 (2)CTO事業

 CTO事業は、顧客企業の注文仕様に応じた産業用コンピュータの開発、製造及び販売を行っております。当社の産業用コンピュータは、組込コンピュータ(エンベデッド・コンピュータ)として、各種製造装置や工作機械、計測装置や検査装置の他、インフラシステムにおける監視制御、医療機器、デジタルサイネージなどに搭載され、さまざまな産業分野において活用されております。
 産業用コンピュータは、市販のパソコンが画一仕様の量販品であることと比較すると、要求される仕様も特徴もまたその使用される用途によって千差万別となっております。また、各種産業用装置に組み込まれた産業用コンピュータにおいてトラブルにより使用できない時間(ダウンタイム)が発生した場合、顧客企業にとっての操業ロスに直結することになるため、稼働の安定性等が求められます。当社で開発・製造・販売している産業用コンピュータは、高い処理性能を持ちつつも、顧客企業の製品システムや装置に必要なI/Oインターフェース、苛酷な温度、静電気、電波、振動、ノイズ、ほこりなど設置環境に係る耐環境性、連続稼動や長期使用に耐える頑健性・信頼性、異常動作からの早期復旧力やメンテナンス性、省スペース性など、さまざまに寄せられる顧客企業特有の多種多様な要件の実現に応えております。
 産業用コンピュータメーカーの中には、自社製品の大量生産、市場投入を軸として、定期的なモデルチェンジ(仕様の変更)等を実施しているメーカーもありますが、当社では顧客要望に応じて設計を行い、最適部品を選定・調達し、生産を行うだけでなく、同一システム(設備)を長期間使用する顧客に対しては、国内外のさまざまな電子部品メーカーとのサプライチェーンを築くことで、カスタム要素の強い同一仕様の産業用コンピュータの長期安定供給を実現し(製品構成部品のバージョンアップ対応を含む)保守サービスにもきめ細かく対応しております。このように、産業用コンピュータの仕様設計段階から試作機提案段階、量産前検証段階、量産製造段階、出荷後のサポート対応段階と各段階において一貫した体制を保持し、顧客企業の要望にきめ細かく対応できることが当社の強みとなっております。

 

 CTO事業の顧客は、自社製品、設備増強の部品としての組込みコンピュータの長期継続供給を前提として採用するため、顧客の製品が販売される期間においては継続的な受注が見込めます。当社は部品の供給パートナーとの関係強化により、産業用コンピュータに特有な部品の長期安定調達力と品揃えを充実させるとともに、販売パートナーとの関係強化を図り、取り扱い製品と取引先の拡充を図っております。

 産業用コンピュータの製造は国内工場(千葉県匝瑳市)で行っております。部品供給パートナーより仕入れた部品の入荷管理、在庫管理から産業用コンピュータの組立、検査、出荷及び品質管理、サポートまでを同工場にて実施しております。また、組立、検査、出荷等に関しては、作業手順書や指示、チェックシートをオンライン化し、作業のトレーサビリティ管理する為の独自開発の生産支援システム「ProMIS: Manufacturing Information System(プロミス)」を使用しており、当該システムの使用により、顧客メーカー毎の要望に沿った製造体制を構築するとともに、顧客メーカーの品質管理部門による工場監査への対応も実施しております。

 

CTO事業一貫体制図

 


 

 

用語解説

 本項「3 事業の内容」等において使用しております用語の定義について以下に記します。

用語

用語の定義

HPC

High Performance Computer 又は High Performance Computing の略で、一般にスーパーコンピュータ又はスパコンと呼ばれる超高速演算用コンピュータによる計算処理環境(計算処理技術)のこと。

CTO

Configure-to-order の略で、顧客の注文する仕様に合わせた特殊なコンピュータ製品を開発・製造する受注仕様生産方式のこと。

5G

第五世代移動通信システムのこと。

理論化学

理論的モデルや数式を元に、既知の実験事実を説明したり、未知の物質の性質などを予言したりする演繹的なアプローチを行う化学の方法論のこと。

コネクテッドカー

インターネットへの常時接続機能を具備した自動車のこと。

AI

Artificial Intelligence の略称。学習・推論・認識・判断などの人間の知能的な振る舞いを行うコンピュータシステムのこと。

ビルド

ソフトウェアプログラムの設計図(ソースコード)を、コンピュータが実行可能な形式に変換し、コンピュータ上で実行できるファイルを作成する作業のこと。

チューニング

コンピュータシステムやソフトウェアプログラムなどの設定や構成を調整し、性能を最大限引き出す調整作業のこと。

エッジコンピューティング

センサや測定器などのデータが生成される機器の内部又はその近くでデータを処理することで通信遅延を抑制しより迅速なデータ処理を行うこと。

エンベデッド・コンピュータ

組込みコンピュータのこと。

R&D

Research and developmentの略で、企業等で科学研究や技術開発を行う業務のこと。

システムインテグレーション

System Integration。SIと略されます。ユーザの利用目的に合わせて、多種多様のハードウェア・ソフトウェア・メディア・通信ネットワークなどのなかから最適のものを選択し、組み合わせて、コンピュータシステムを構築するITサービスのこと。

Society5.0

サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、新たな未来社会として我が国政府が、科学技術基本計画(2016年1月22日 閣議決定)にて提唱しているコンセプトのこと。

アーキテクチャ

コンピュータシステムの設計方法、設計思想、構築されたシステムの構造などのこと。

IoT

Internet of thingsの略で、モノのインターネットと訳されます。センサ類や各種電子機器、自動車などさまざまなモノがインターネットに接続され、連携すること。

I/Oインターフェース

Input-Output interfaceの略で、入出力インターフェースのこと。

デジタルサイネージ

ディスプレイやプロジェクタなどによって画像や文字を表示し情報を発信する情報媒体(メディア)のこと。

トレーサビリティ

Traceability。一般に工業製品や食品などの製品や部品、素材などを個体ないしはロットごとに識別して、調達・加工・生産・流通・販売・廃棄などにまたがって履歴情報を参照できるようにすること、又はそれを実現する制度やシステムのこと。

GPU

Graphics Processing Unit の略で、画像処理に特化した演算装置のこと。

 

 

 

(事業系統図)

以上述べた内容を事業系統図によって示すと次のとおりであります。

 


 

 

4 【関係会社の状況】

   該当事項はありません。

 

5 【従業員の状況】

(1) 提出会社の状況

 

 

 

2019年7月31日現在

従業員数(名)

平均年齢(歳)

平均勤続年数(年)

平均年間給与(千円)

86(14)

43.6

7.7

5,471

 

 

セグメントの名称

従業員数(名)

HPC事業

 42 (9)

CTO事業

 39 (5)

全社(共通)

 5 (0)

合計

86(14)

 

(注)  1.従業員数は就業人員であり、臨時雇用者数(パートタイマー、人材会社からの派遣社員を含む。)は、

最近1年間の平均人員を( )外数で記載しております。

      2.平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

   3.全社(共通)として記載されている従業員数は、管理部門等に所属している従業員であります。

 

(2) 労働組合の状況

 当社の労働組合は、結成されておりませんが、労使関係は円満に推移しております。