第二部【企業情報】

第1【企業の概況】

1【主要な経営指標等の推移】

提出会社の状況

回次

第17期

第18期

第19期

第20期

第21期

決算年月

平成25年8月

平成26年8月

平成27年8月

平成28年8月

平成29年8月

売上高

(千円)

90,471

169,940

306,374

540,270

772,960

経常損失(△)

(千円)

90,382

113,925

119,320

138,535

96,667

当期純損失(△)

(千円)

90,688

115,269

120,060

138,930

97,368

持分法を適用した場合の

投資利益

(千円)

資本金

(千円)

125,550

125,550

328,050

328,050

463,050

発行済株式総数

(株)

 

 

 

 

 

普通株式

14,250

14,250

14,250

14,250

14,250

A種優先株式

6,400

6,400

6,400

6,400

6,400

B種優先株式

6,150

6,150

6,150

6,150

6,150

C種優先株式

4,500

4,500

4,500

D種優先株式

2,000

純資産額

(千円)

998

114,246

170,693

31,762

204,394

総資産額

(千円)

143,126

208,360

570,169

529,560

927,130

1株当たり純資産額

(円)

7,895.58

12,195.76

14,278.16

93.58

102.58

1株当たり配当額

(円)

(うち1株当たり中間配当額)

()

()

()

()

()

1株当たり当期純損失金額(△)

(円)

3,582.07

4,301.08

4,272.27

22.19

15.54

潜在株式調整後1株当たり

当期純利益金額

(円)

自己資本比率

(%)

0.7

54.8

29.9

6.0

22.0

自己資本利益率

(%)

株価収益率

(倍)

配当性向

(%)

営業活動による

キャッシュ・フロー

(千円)

42,601

75,094

投資活動による

キャッシュ・フロー

(千円)

2,142

16,123

財務活動による

キャッシュ・フロー

(千円)

24,440

301,056

現金及び現金同等物の期末

残高

(千円)

406,687

766,714

従業員数

(人)

12

14

24

36

50

(外、平均臨時雇用者数)

(2)

(2)

(2)

(5)

(5)

 (注)1.当社は連結財務諸表を作成しておりませんので、連結会計年度に係る主要な経営指標等の推移については記載しておりません。

2.消費税等の会計処理については、第17期までは税込方式、第18期からは税抜方式を採用しております。

3.当社は第17期から第21期において、事業拡大に向けた全社的な組織拡充のために積極採用を進めたことにより、営業部門、マーケティング部門、開発部門及びコーポレート部門それぞれの組織において、人件費を始めとして費用が増加したことに加えて、人員増加によるオフィス拡張等の費用が増加した結果、経常損失及び当期純損失を計上しております。

4.持分法を適用した場合の投資利益については、関連会社が存在しないため記載しておりません。

5.潜在株式調整後1株当たり当期純利益金額については、潜在株式は存在するものの、当社株式は非上場であり、期中平均株価が把握できず、また、1株当たり当期純損失金額であるため、記載しておりません。

6.第17期から第21期の自己資本利益率については、当期純損失が計上されているため記載しておりません。

7.株価収益率については、当社株式は非上場であるため、記載しておりません。

8.1株当たり配当額及び配当性向については、当社は配当を実施しておりませんので、記載しておりません。

9.当社は第20期よりキャッシュ・フロー計算書を作成しておりますので、第17期から第19期までのキャッシュ・フローに係る項目については記載しておりません。

10.従業員数は就業人員であり、平均臨時雇用者数(パートタイマー・アルバイト)は年間平均人員を()内にて外数で記載しております。

11.平成30年5月16日付で普通株式1株につき200株の割合で株式分割を行っております。当該株式分割が第20期の期首に行われたと仮定して、1株当たり純資産額及び1株当たり当期純損失金額(△)を算定しております。

12.第20期及び第21期の財務諸表については、「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」(昭和38年大蔵省令第59号)に基づき作成しており、金融商品取引法第193条の2第1項の規定に基づき、EY新日本有限責任監査法人の監査を受けております。なお、第17期、第18期及び第19期については、「会社計算規則」(平成18年法務省令第13号)の規定に基づき算出した各数値を記載しており、金融商品取引法第193条の2第1項の規定に基づく、EY新日本有限責任監査法人の監査を受けておりません。

13.平成30年5月15日付で、定款に基づきすべてのA種優先株式、B種優先株式、C種優先株式、D種優先株式を自己株式として取得し、対価として当該A種優先株式、B種優先株式、C種優先株式、D種優先株式1株につきそれぞれ普通株式1株を交付しております。また当社が取得したA種優先株式、B種優先株式、C種優先株式、D種優先株式について、平成30年5月14日開催の取締役会決議により、平成30年5月15日付で会社法第178条に基づきすべて消却しております。

14.当社は、平成30年5月14日開催の臨時株主総会において、種類株式を発行する旨の定款の定めを廃止しております。

15.当社は、平成30年5月16日付で普通株式1株につき200株の株式分割を行っております。

そこで、東京証券取引所自主規制法人(現 日本取引所自主規制法人)の引受担当者宛通知「『新規上場申請のための有価証券報告書(Ⅰの部)』の作成上の留意点について」(平成24年8月21日付東証上審第133号)に基づき、第17期の期首に当該株式分割が行われたと仮定して算定した場合の1株当たり指標の推移を参考までに掲げると、以下のとおりとなります。

なお、第17期、第18期及び第19期の数値(1株当たり配当額についてはすべての数値)については、EY新

日本有限責任監査法人の監査を受けておりません。

回次

第17期

第18期

第19期

第20期

第21期

決算年月

平成25年8月

平成26年8月

平成27年8月

平成28年8月

平成29年8月

1株当たり純資産額

(円)

△39.48

△60.98

△71.39

△93.58

△102.58

1株当たり当期純損失金額

(△)

(円)

△17.91

△21.51

△21.36

△22.19

△15.54

潜在株式調整後1株当たり当期純利益金額

(円)

1株当たり配当額

(円)

(うち1株当たり中間配当額)

(-)

(-)

(-)

(-)

(-)

 

2【沿革】

 

年  月

事   項

平成8年11月

埼玉県北本市に有限会社デジタルコースト(資本金3,000千円)を設立

平成20年4月

デジタルコースト株式会社へ組織変更

平成22年6月

株式会社セールスフォース・ドットコムとAppExchange(※1)パートナー契約を締結

平成22年11月

株式会社セールスフォース・ドットコムとOEMパートナー契約(※2)を締結

平成22年12月

本店所在地を東京都千代田区麹町二丁目4番地へ移転

平成23年10月

salesforce.com, inc.と資本提携

平成24年4月

働き方改革プラットフォーム「TeamSpirit」のサービス提供を開始

平成24年9月

商号を株式会社チームスピリットへ変更

平成25年12月

本店所在地を東京都中央区八重洲二丁目8番8号へ移転

平成25年12月

プロジェクト原価管理システム「TeamSpirit Leaders」のサービス提供を開始

平成26年10月

本店所在地を東京都中央区京橋二丁目5番18号へ移転

平成28年5月

salesforce.com, inc.より「Salesforce Gold ISV Partner」(3)に認定

平成29年11月

シンガポールに子会社であるTeamSpirit Singapore Pte. Ltd.を設立

平成30年3月

salesforce.com, inc.より「AppExchange Premier Partner」(3)に認定

※1.salesforce.com, inc.が提供するビジネス用アプリケーションのマーケットプレイスです。開発者は開発したアプリケーションを公開し、ユーザーはアプリケーションをインストールして利用出来ます。

※2.開発者はsalesforce.com, inc.から仕入れたクラウドプラットフォーム上にアプリケーションを構築して、ユーザーに対して再販することが出来ます。

※3.salesforce.com, inc.が重要な顧客の成功とパートナーシップの成功を実証したもののみ指定する招待制の特別なパートナーのことです。

 

3【事業の内容】

(1)事業の概要

 当社は「すべての人を、創造する人に。」というミッションのもと、SaaS (Software as a Service)(注1)と呼ばれるクラウド上のサービスを通して、働く人と企業の「働き方改革」を推進する顧客サービスを事業として展開しております。当社では、企業向けに勤怠管理、就業管理、工数管理、経費精算、電子稟議、カレンダー、SNS等の従業員が日々利用するアプリケーションをひとつにまとめた「TeamSpirit」やユーザー企業を有償で支援するプロフェッショナルサービスを提供しております。

 

 IoTや人工知能(AI)などを軸とする「第4次産業革命」が社会に大きな変化をもたらしつつあるなか、企業は最新技術を駆使して新たなビジネスモデルや付加価値を創出する「デジタルトランスフォーメーション」(注2)への取り組みに迫られています。ビジネス環境が刻一刻と変化し、かつ国内の生産年齢人口(15歳〜64歳)が今後確実に減り続ける社会で企業が成長し続けるためには、既存の組織及びビジネスモデルの根本的な構造改革に挑戦すること、またイノベーションを実現することが必要不可欠です。そのためにまず企業がなすべきことは、社内の間接業務を極力削減し、従業員一人ひとりの時間の使い方・働き方を可視化することで業務を改善することであり、働く人が創造的に時間を使うことでアウトプットの質・量を最大化することだと当社は考えております。その結果、働く人一人ひとりが専門能力を発揮し、かつ自律的に連携するプロフェッショナルなチームが作られ、組織として圧倒的な生産性を実現することができます。

 当社は「個を強く。チームを強く。」というビジョンのもと、主力サービスとして勤怠管理・工数管理・経費精算などのように従業員が日々利用するアプリケーションをひとつのシステムにまとめ、出社から退社までの活動を記録することで働き方を可視化し、創造的な時間を増やすことで生産性向上を実現するサービス「TeamSpirit」を提供しています。「TeamSpirit」は、従業員が日常的に使用する様々なアプリケーションを一体化した働く人視点の「フロントウェア」(注3)をコンセプトに設計されており、出社から退社まで働く人の活動に関する基礎情報(ビッグデータ)を収集することで間接業務を効率化するだけではなく、日々の成果を可視化し、チームのコミュニケーションやPDCAサイクルの仕組みに変えるという新しい価値を提供します。

 今、「働き方改革」の名の下、企業の生産性向上に大きな注目が集まっています。そのため、単なる労務管理だけではなく、今いる人やチームの活性化に関心を持つお客様からの受注が増加したことにより「TeamSpirit」は平成30年5月末時点で契約社数が932社、契約ライセンス数は129,944人となりました。

 なお、当社はSaaS事業の単一セグメントとなります。

 

(2)当社商品について

a.「TeamSpirit」

 当社の中核商品で、勤怠管理、就業管理、工数管理、経費精算、電子稟議、カレンダー、SNSなど従業員が日々利用するシステムをひとつにまとめたサービスです。インターネット経由で必要な期間利用できる SaaS という形態で提供され、テレワークや在宅勤務など多様で先進的なワークスタイルをサポートします。「勤怠管理、就業管理」の領域においては単なる出退社時刻の記録だけでなく、有給休暇の取得状況・残業時間の推移・36協定の抵触・インターバル時間・必要な休日確保の状況など、近年特にニーズの高い長時間労働の抑制や健康確保措置としての労働時間管理を実現します。また「工数管理・SNS」の領域では、リアルタイムに従業員の働き方を可視化し、トップパフォーマーの時間や経費の使い方などの行動を分析することで、従業員が生産性高く、生き生きと働くための質の高いコーチングを提供するなど、真の「働き方改革」の実現をサポートします。

 「TeamSpirit」のコンセプトは、勤怠管理、就業管理、工数管理、経費精算、電子稟議、カレンダー、SNSなど従来は単体で提供されていたシステムが一体化され、出社から退社まで働く人の活動に関する基礎情報(ビッグデータ)を収集することで実現する「働き方改革プラットフォーム」という新しい価値の提供にあります。従来それぞれのシステムは人事部が担当する給与計算や経理部の行う財務会計、部門毎に必要な原価管理や総務部が取りまとめる各種稟議のように、企業の経営管理を司るERP(注4)などの基幹系システムのオプションとして提供されていました。しかしその性質上、月次の決算に必要な情報しか登録することができないと認識しています。「TeamSpirit」は基幹系システムのオプションに当たる機能を従業員視点でひとつにまとめ、ERPから従業員が毎日使うワークフロー機能を分離独立させたフロントウェアとして提供しています。そのため従業員の日々の活動データを「リアルタイム」にかつ「体系的」に中間的なデータベースに格納します。そこから必要なタイミングで基幹系システムにデータを取り込み処理をする業務フローに見直しました。そのため「TeamSpirit」では既存の基幹系システムにアドオンするだけの手軽さで働く人の活動に関する基礎情報(ビッグデータ)を収集することができます。

 「TeamSpirit」は4つのステップで「働き方改革」に関する潜在的なニーズに対するソリューションを提供します。ステップ1は勤怠管理、就業管理、工数管理、経費精算、電子稟議、カレンダー、SNSなど従業員が日々行わなければいけない業務をひとつのシステムにまとめることで実現する「間接業務の効率化」です。ステップ2は「内部統制の高度化」です。例えば、原価管理の面では、プロジェクト別原価計算を行う際に登録したプロジェクト別の工数を「TeamSpirit」で自動集計できるため原価計算の精度が向上します。また、勤怠管理で集計した労働時間を上限とした工数登録のため作業工数の水増しを防止できます。さらに、工数の日次承認機能の利用により、事後的に他プロジェクトへ工数を付替えることが防止できるため、他プロジェクトへの工数付替え等の不正な調整への牽制が可能となり、統制がとれた原価管理が実現できます。労務管理の面では、「TeamSpirit」に入力された情報を活用して、36協定に基づいたレポートの生成が可能であるため、「全社」「部門」「個人」の単位で勤務状況をリアルタイムで可視化・分析できます。そこから得た情報をもとに、課題の抽出や対策の検討・実践・報告が可能であるため、労務管理の統制を実現できます。また交際費やタクシーなどの経費精算を勤務勤怠の勤務表とカレンダーの両方を確認することで業務利用として妥当であるかを判断することもできます。さらに各機能のワークフローが共通化されていることで電子稟議はもちろん残業の許可や経費精算の承認などの決裁権限をシステムに組み込むことができます。ステップ3は「従業員の活性化」です。働く人の活動に関する基礎情報(ビッグデータ)が体系的に格納されているため、レポーティング機能で手軽に働き方を可視化でき、この分析から得られた気付きをSNSを使ってコーチングすることで実現します。ステップ4は「生産性向上」です。カレンダーと工数管理の連携で重要なタスクに優先的に取り組むタイムマネジメントによりアウトプットの増大を実現します。このように「TeamSpirit」では「働き方改革」で求められている本質的な問題を解決することができますが、これらすべて各機能が連携しひとつのサービスとして提供されていることで実現されています。

 

「TeamSpirit」の契約ライセンス数の推移は以下の通りです。

 

契約ライセンス数(人)

契約社数(社)

平成24年8月

2,811

34

平成25年8月

11,736

116

平成26年8月

23,691

250

平成27年8月

46,335

423

平成28年8月

71,593

616

平成29年8月

98,900

795

平成30年5月

129,944

932

 

b.「TeamSpirit Leaders」

 「TeamSpirit」のファミリー製品のひとつで、「TeamSpirit」と組み合わせて使用するプロジェクト原価管理サービスです。主に人が原価となるプロジェクト型のビジネスにおいて、見積を作成するための工数計画を作成することができ、受注後には「TeamSpirit」で登録された工数実績との比較により原価の予実管理を行うことができます。

 

c. プレミアサポート

 当社のサービスは直感的な操作性により、原則としてユーザー企業自ら導入から運用までを実施いただけるようデザインされております。一方で、SaaSの普及に伴いITの基礎知識の少ないお客様による導入事例が増えてまいりました。導入目標日に確実な本稼働を迎えたい、導入に係わる担当者様の負荷を極力抑えたい、運用段階のシステム設定や新規帳票のレイアウト作成の人材が不足しているなどのお客様の課題に対して、高度なIT及び業務スキルをもった当社コンサルタントが、ユーザー企業を有償で支援するサービスを提供しております。

 

<主な当社商品>

サービス種別

サービス名称

サービス内容

ライセンス

TeamSpirit

勤怠管理、就業管理、工数管理、経費精算、電子稟議、カレンダー、SNS等を一体化したSaaS

TeamSpirit Leaders

「TeamSpirit」のファミリー製品のひとつで、「TeamSpirit」と組み合わせて使用する、プロジェクト原価管理サービス

プロフェッショナルサービス

プレミアサポート

顧客の本番稼働や着実な運用のために、担当コンサルタントが実施する有償支援業務

 

 なお、当社は上記商品を直販営業により顧客企業から受注する直販ビジネスを中心としておりますが、一部大企業のお客様向けの販売を目的として、当社からパートナーにサービスを卸し、ユーザー企業に再販でご利用いただく再販パートナーや既存で取引のある顧客を紹介いただく紹介パートナーとの協業がございます。

(3)当社のビジネスモデルについて

《サブスクリプション型 リカーリングレベニューモデル(注5)による安定性と成長性》

 当社の主要サービス「TeamSpirit」は顧客企業に対し、使用した期間に応じたサービス料をユーザー人数分のサブスクリプション(定期購読)として課金する、リカーリングレベニュー(継続収益)方式を採用しています。サブスクリプションが複数年にわたり継続して利用されることで、新規の契約数を解約数が上回らない限り、収益が前年度を上回るという安定性がありながら、高い成長も目指すことができるビジネスモデルです。第22期第3四半期累計期間で当社の売上におけるリカーリングレベニューであるライセンス売上の比率は76%となっています。

 収益の安定に重要な契約の継続のために、エンジニア・デザイナー・カスタマーサポートが一丸となって「働く人の創造的な時間を生み出し、チームの力を引き出す」機能を提供すべく定期的なバージョンアップを実施しております。切れ目のない顧客価値向上を実現することで高い継続率の維持の実現を目指しています。また当社では既存のお客様に対する活用促進を行う営業体制を構築しております。そのためファミリー製品を追加で導入いただくなど、今まで既存のお客様から年間の解約を上回るリカーリングレベニューの増加を実現しており、これからも引き続き年間の解約を上回るリカーリングレベニューを獲得出来るよう、努力してまいります。

 成長性の実現に重要な新規の受注に関しては、高価なソフトウェアを売り切り型で販売するのではなく月額料金ですぐに利用できることから、受注までの平均商談期間が短縮でき企業規模に関わらず契約数の拡大が可能になると認識しております。無償トライアル利用の機会を提供し導入前に効果を確認していただくことで、安心して導入の意思決定ができ、受注リードタイムの短縮も可能になります。そのため「デロイト トウシュ トーマツ リミテッド 2017年 日本テクノロジー Fast50」において、過去3決算期の収益(売上高)に基づく成長率ベースで50位中8位を受賞したことが示しているように、業界の中でも比較的高い成長性の維持の実現を目指すことができるビジネスモデルであると考えています。

 世界のSaaS企業の標準となりつつあるサブスクリプション型 リカーリングレベニューモデルの単一事業であることから経営の安定性と成長性が両立できることに加え、年間の契約金額を一括前払いで回収しているため、キャッシュ・フローの観点で有利なことも当社ビジネスモデルの特徴です。

 

《シングルソース・マルチテナント形式(注6)による顧客価値の最大化とコストダウン

 当社のサービスは、インターネット経由で必要な機能を必要な分だけ利用できるSaaSという形態で提供されています。当社の主要サービス「TeamSpirit」は平成30年5月末時点で932社の企業に導入されていますが、シングルソース・マルチテナント型を採用することにより、すべてのお客様が共通のソースコードで作られた1種類のアプリケーションを使用しています。日々増加するお客様からの要望にお応えして、年3回の定期メジャーバージョンアップ(4月、8月、12月)を提供するなど、常に機能を強化・拡大させることができるので、お客様にとっての価値を継続的に向上させることができます。さらに開発者はひとつのソースの開発に集中できるので比較的少ないリソース(コスト)で高機能なサービスを開発することが可能です。

 さらに当社のサービスは従業員数千名以上の大手企業にもご利用いただいておりますが、仕様が複雑な大規模なお客様であってもアプリケーション本体の改造をせずにシングルソース・マルチテナントで提供できることが技術上、ビジネス上の大きな優位点であると考えています。

 

エンタープライズ企業(注7)に選ばれるSaaS》

 当社のSaaSは、パブリッククラウド(注8)で利用できるPaaS (Platform as a Service)(注9)である、salesforce.com, inc.(注10)が運営しているLightning Platform上に構築されております。当社サービスの基盤となるサーバーなどシステム機器の提供・情報セキュリティ対策・バックアップなどの運用は、すべてsalesforce.com, inc.が実施します。そのため株式会社セールスフォース・ドットコムとのOEMパートナー契約(注11)を基に1ライセンスあたり月額課金の仕入が発生する以外、サービス提供に関わる設備投資や運用投資をほぼゼロに抑制することができます。その上、ワークフローやSNSおよびデータ連携機能、レポーティングやダッシュボードなど分析機能、さらにはAI(機械学習・ディープラーニング)機能やIoTとの接続機能など、システムが使う共通機能もPaaSに実装されています。そのため当社の開発リソースをすべて業務アプリケーションに投下できるメリットがあります。そのことによりサービス改善サイクルを高速化し、SaaSビジネスで最も重要な顧客価値の向上が可能であると考えています。

 また世界でユーザー企業15万社以上、1日あたりのトランザクション数40億以上、稼働アプリケーション数500万以上のシステム運用体制を持つsalesforce.com, inc.によるシステム運用実績により、金融機関から国際的に活動するエンタープライズ企業まで安心して当社サービスをご利用いただけるものと考えています。なお当社は本書提出日時点において、salesforce.com, inc. が認定した日本で唯一の AppExchange Premier Partner です。平成23年に当社との間で資本提携を行うなど salesforce.com, inc.との良好な関係を構築しております。

 

(注)1 SaaSとは、ソフトウェアをインターネット経由のサービスとして提供することです。

2 デジタルトランスフォーメーションとは、情報システムによる業務効率化の域を超え、人工知能(AI)やIoT(Internet of Things)などデジタル技術を活用して新たなビジネスを生み出し、人々の生活をあらゆる面でより良くするという概念のことです。

3 フロントウェアとは、企業のバックオフィス(経営管理部門)を中心に利用されているERPから、従来オプションとして提供されていた従業員が使うワークフロー(フロント機能)を分離独立したソフトウェアのことです。

4 ERPとは、企業内の経営資源を有効活用するために、生産、販売、物流、会計、人事などの情報を統合的に管理するための情報システムのことです。

5 サブスクリプション型 リカーリングレベニューモデルとは、使用した期間に応じたサービス料をユーザー人数分のサブスクリプション(定期購読)として課金するリカーリングレベニュー(継続収益)型ビジネスモデルのことです。

6 シングルソース・マルチテナント形式とは、ひとつのシステム環境を複数企業で共同利用することです。

7 エンタープライズ企業とは、IT業界における市場や製品カテゴリー区分の一種で、大企業、中堅企業、公的機関などの比較的規模の大きな法人のことを表します。

8 パブリッククラウドとは、クラウド上のサービスのうち不特定多数の利用者を対象に広く提供されている形態のことです。特定の利用者を対象として提供される「プライベートクラウド」との対比で用いられます。

9 PaaSとは、ソフトウェアを稼動させるための土台となるプラットフォームを、インターネット経由のサービスとして提供することです。

10 salesforce.com, inc. とは、米国カリフォルニア州に本社を置く、クラウドコンピューティング・サービスの提供企業です。株式会社セールスフォース・ドットコムは、salesforce.com, inc.の子会社です。

11 OEMパートナー契約とは、Lightning Platformを当社ブランド製品に結合して仕入れ販売することができる契約のことです。

 

[事業系統図]

0201010_001.png

 

 

4【関係会社の状況】

該当事項はありません。

 

(参考)

第22期の平成29年11月にTeamSpirit Singapore Pte.Ltd.を設立いたしましたが、現時点では当該企業集団の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に関する合理的な判断を妨げない程度に重要性が乏しいため、非連結子会社としております。

 

 

5【従業員の状況】

(1)提出会社の状況

平成30年6月30日現在

 

従業員数(人)

平均年齢(歳)

平均勤続年数(年)

平均年間給与(千円)

65(4)

36.2

2.3

7,159

 (注)1.従業員数は就業人員であり、臨時雇用者数(パートタイマー・アルバイト)は、最近1年間の平均人員を( )外数で記載しております。

2.平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

3.当社は、SaaS事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。

4.最近日までの1年間において、従業員が15名増加しております。主な理由は、事業拡大に向けた全社的な組織拡充のために積極採用を進めたことによるものであります。

 

(2)労働組合の状況

労働組合は結成されておりませんが、労使関係は安定しております。