第二部【企業情報】

第1【企業の概況】

(はじめに)

 当社は、平成17年4月に株式会社ネットエイジグループ(現 ユナイテッド株式会社(東京都渋谷区渋谷1-2-5 MFPR渋谷ビル、代表取締役社長COO 金子陽三))の100%子会社として設立された株式会社RSS広告社を前身とし、その後、自社プロダクトの開発やデジタルマーケティング領域におけるコンサルティング、広告代理業務等、事業領域を広げながら業容を拡大させてまいりました。その過程において、設立当時の親会社である株式会社ネットエイジグループより独立した経緯があり、独立に用いたストラクチャーの影響で形式上の存続会社が実質的な存続会社を吸収合併しておりますので、以下でその内容を説明します。

 

当社による旧Fringe81株式会社の吸収合併について

 当社(形式上の存続会社)は、平成24年11月に、当社の実質的な存続会社であるFringe81株式会社(以下、「旧Fringe81株式会社」といいます)の経営陣によるマネジメント・バイ・アウト(MBO)の受け皿会社として、Fringe81ホールディングス株式会社の商号で設立されました。その後、平成25年3月29日に旧Fringe81株式会社の既存株主から発行済株式の72%を取得し子会社化した後、平成25年7月1日に旧Fringe81株式会社を吸収合併し、同日に商号をFringe81ホールディングス株式会社からFringe81株式会社に変更しております。

 この株式取得や合併は、当社の代表取締役田中弦がオーナーシップを持って経営をしていくことで経営判断のスピードを早め、さらなる事業拡大につながることを目的として行われたものであり、合併時において被合併会社である旧Fringe81株式会社(実質上の存続会社)の営業活動を全面的に継承いたしました。

 

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1【主要な経営指標等の推移】

回次

第1期

第2期

第3期

第4期

決算年月

平成25年3月

平成26年3月

平成27年3月

平成28年3月

売上高

(千円)

1,220,032

2,413,954

4,519,528

経常損失(△)

(千円)

530

20,913

69,731

54,188

当期純損失(△)

(千円)

627

47,216

100,181

55,219

持分法を適用した場合の投資利益

(千円)

資本金

(千円)

125,013

125,013

334,913

334,913

発行済株式総数

(株)

 

 

 

 

普通株式

12,400

12,400

12,400

12,400

A種優先株式

4,260

4,260

4,260

B種優先株式

4,211

4,211

4,211

4,211

C種優先株式

2,084

2,084

純資産額

(千円)

244,399

282,382

602,002

546,782

総資産額

(千円)

245,024

822,961

1,291,833

1,622,550

1株当たり純資産額

(円)

263.23

2,052.80

62.27

86.33

1株当たり配当額

(円)

(うち1株当たり中間配当額)

()

()

()

()

1株当たり当期純損失金額(△)

(円)

50.23

2,383.59

47.57

24.06

潜在株式調整後1株当たり当期純利益金額

(円)

自己資本比率

(%)

99.7

34.3

46.6

33.7

自己資本利益率

(%)

株価収益率

(倍)

配当性向

(%)

営業活動によるキャッシュ・フロー

(千円)

27,995

184,848

投資活動によるキャッシュ・フロー

(千円)

39,542

231,904

財務活動によるキャッシュ・フロー

(千円)

379,492

102,736

現金及び現金同等物の期末残高

(千円)

471,762

527,442

従業員数

(人)

29

47

70

(外、平均臨時雇用者数)

()

(17)

(27)

(36)

 (注)1.当社は連結財務諸表を作成しておりませんので、連結会計年度に係る主要な経営指標等の推移については記載しておりません。

2.売上高には消費税等は含まれておりません。

3.当社(Fringe81ホールディングス株式会社(現Fringe81株式会社))は平成24年11月15日付でMBOを目的として設立された会社であり、第1期は事業を行っていないため、売上高を計上しておりません。

4.第2期における当期純損失の計上は、主に事業規模拡大に伴う従業員数の増加、新規事業立ち上げに向けた研究開発投資の増加、及び本社移転に伴う費用によるものであります。

5.第3期における当期純損失の計上は、主に事業規模拡大に伴う従業員数の増加、新規事業立ち上げに向けた研究開発投資の増加、及び本社移転を決議したことに伴う本社設備の減損損失によるものであります。

6.第4期における当期純損失の計上は、主に事業規模拡大に伴う従業員数の増加、新規事業立ち上げに向けた研究開発投資の増加によるものであります。

7.持分法を適用した場合の投資利益については、関連会社が存在しないため記載しておりません。

8.1株当たり純資産額については、優先株式を発行していたため払込金額等を控除して算定しております。

9.1株当たり配当額及び配当性向については、配当を実施していないため記載しておりません。

10.第1期の潜在株式調整後1株当たり当期純利益金額については、潜在株式が存在しないため記載しておりません。また、第2期から第4期の潜在株式調整後1株当たり当期純利益金額については、潜在株式は存在するものの、当社株式は非上場であり、期中平均株価が把握できないため、また、1株当たり当期純損失金額であるため記載しておりません。

11.第1期から第4期の自己資本利益率については、当期純損失が計上されているため記載しておりません。

12.株価収益率については、当社株式は非上場であるため、記載しておりません。

13.第1期及び第2期については、キャッシュ・フロー計算書を作成していないため、キャッシュ・フローに係る各項目については記載しておりません。

14.従業員数は就業人員であり、臨時雇用者数(契約社員、インターン、人材会社からの派遣社員を含む。)は( )内に年間の平均雇用人員を外数で記載しております。

15.当社は平成25年7月1日付で、旧Fringe81株式会社を吸収合併しております。

16.当社は平成24年11月15日設立のため、第1期は平成24年11月15日から平成25年3月31日までの4ヶ月と16日間となっております。

17.平成25年3月18日付で普通株式1株につき1.24株の株式分割を行っております。当該株式分割が第1期の期首に行われたと仮定して、1株当たり純資産額及び1株当たり当期純損失金額を算定しております。

18.第3期及び第4期の財務諸表については、金融商品取引法第193条の2第1項の規定に基づき、新日本有限責任監査法人の監査を受けております。なお、第1期及び第2期については、「会社計算規則」(平成18年法務省令第13号)の規定に基づき算出した各数値を記載しております。また、第1期及び第2期については、当該監査を受けておりません。

19.当社は平成28年9月2日付で株式1株につき100株の株式分割を行っております。当該株式分割が第3期の期首に行われたと仮定して、1株当たり純資産額及び1株当たり当期純損失金額を算定しております。また平成29年3月14日付で、定款に基づきすべてのA種優先株式、B種優先株式及びC種優先株式を自己株式として取得し、対価として当該A種優先株式、B種優先株式及びC種優先株式1株につきそれぞれ普通株式1株を交付しております。また当社が取得したA種優先株式、B種優先株式及びC種優先株式について、平成29年2月15日開催の取締役会決議により、平成29年3月14日付で会社法第178条に基づきすべて消却しております。その結果、発行済株式総数は普通株式2,295,500株となっております。なお、当社は、平成29年3月15日開催の臨時株主総会において、種類株式を発行する旨の定款の定めを廃止しております。

20.当社は、平成25年3月18日付で普通株式1株につき1.24株の株式分割、平成28年9月2日付で株式1株につき100株の株式分割を行っております。そこで、東京証券取引所自主規制法人(現日本取引所自主規制法人)の引受担当者宛通知「『新規上場申請のための有価証券報告書(Ⅰの部)』の作成上の留意点について」(平成24年8月21日付東証上審第133号)に基づき、第1期の期首に当該株式分割が行われたと仮定して算出した場合の1株当たり指標の推移を参考までに掲げると、以下の通りとなります。なお、第1期及び第2期の数値(1株当たり配当額についてはすべての数値)については、新日本有限責任監査法人の監査を受けておりません。

回次

第1期

第2期

第3期

第4期

決算年月

平成25年3月

平成26年3月

平成27年3月

平成28年3月

1株当たり純資産額

(円)

2.63

△20.53

△62.27

△86.33

1株当たり当期純損失金額(△)

(円)

△0.50

△23.84

△47.57

△24.06

潜在株式調整後1株当たり当期純利益金額

(円)

1株当たり配当額

(円)

(うち1株当たり中間配当額)

(-)

(-)

(-)

(-)

 

(参考)旧Fringe81株式会社の主要な経営指標等の推移

 (はじめに)に記載した通り、当社(形式上の存続会社)は、平成25年7月に旧Fringe81株式会社を吸収合併しているため、実質的な存続会社である旧Fringe81株式会社の第7期及び第8期の主要な経営指標等を参考として記載いたします。

回次

第7期

第8期

決算年月

平成24年3月

平成25年3月

売上高

(千円)

613,837

1,036,436

経常利益

(千円)

19,188

29,030

当期純利益

(千円)

19,606

26,881

持分法を適用した場合の投資利益

(千円)

資本金

(千円)

194,465

194,465

発行済株式総数

(株)

15,210

15,210

純資産額

(千円)

235,801

262,682

総資産額

(千円)

407,802

511,153

1株当たり純資産額

(円)

15,503.05

17,270.40

1株当たり配当額

(円)

(うち1株当たり中間配当額)

(-)

(-)

1株当たり当期純利益金額

(円)

1,289.07

1,767.34

潜在株式調整後1株当たり当期純利益金額

(円)

自己資本比率

(%)

57.8

51.4

自己資本利益率

(%)

8.7

10.8

株価収益率

(倍)

配当性向

(%)

営業活動によるキャッシュ・フロー

(千円)

投資活動によるキャッシュ・フロー

(千円)

財務活動によるキャッシュ・フロー

(千円)

現金及び現金同等物の期末残高

(千円)

従業員数

(人)

22

30

(外、平均臨時雇用者数)

(5)

(10)

 (注)1.旧Fringe81株式会社は連結財務諸表を作成しておりませんので、連結会計年度に係る主要な経営指標等の推移については記載しておりません。

2.売上高には消費税等は含まれておりません。

3.持分法を適用した場合の投資利益については、関連会社が存在しないため記載しておりません。

4.株価収益率については、旧Fringe81株式会社株式は非上場であるため、記載しておりません。

5.潜在株式調整後1株当たり当期純利益金額については、潜在株式は存在するものの、旧Fringe81株式会社株式は非上場であり、期中平均株価が把握できませんので、記載しておりません。

6.キャッシュ・フロー計算書を作成していないため、キャッシュ・フローに係る各項目については記載しておりません。

7.1株当たり配当額及び配当性向については、配当を実施していないため記載しておりません。

8.従業員数は就業人員であり、臨時雇用者数(契約社員、インターン、人材会社からの派遣社員を含む。)は( )内に年間の平均雇用人員を外数で記載しております。

9.第7期及び第8期は、「会社計算規則」(平成18年法務省令第13号)の規定に基づき算出した各数値を記載しており、金融商品取引法第193条の2第1項の規定による監査証明を受けておりません。

 

2【沿革】

 (はじめに)に記載した通り、当社(形式上の存続会社)は、平成24年11月に、当社の実質的な存続会社であるFringe81株式会社(以下「旧Fringe81株式会社」といいます。)の経営陣によるMBOの受け皿会社として、Fringe81ホールディングス株式会社の商号で設立されました。その後、平成25年3月に旧Fringe81株式会社の既存株主から発行済株式の72%を取得し子会社化した後、平成25年7月に旧Fringe81株式会社を吸収合併し、同日に商号をFringe81ホールディングス株式会社からFringe81株式会社に変更いたしました。

 この株式取得や合併は、当社の代表取締役田中弦がオーナーシップを持って経営をしていくことで経営判断のスピードを早め、さらなる事業拡大につながることを目的として行われたものであり、合併時において被合併会社である旧Fringe81株式会社(実質上の存続会社)の営業活動を全面的に継承いたしました。

 実質上の存続会社である旧Fringe81株式会社(株式会社RSS広告社)は、RSS広告(注1)事業を行うことを目的に株式会社ネットエイジグループ(現 ユナイテッド株式会社)の100%子会社として平成17年4月に設立されました。その後、第三者配信(注2)アドサーバー(注3)である「digitalice」やタグ(注4)監視・Web高速化ツール「TagKnight」を自社開発するとともに、これらサービスを自社で活用し、広告展開のコンサルティング業務から広告代理店業務までも一貫して行うことで業容を拡大させてまいりました。

 このように、実質上の存続会社は、被合併会社である旧Fringe81株式会社であるため、当社の沿革に加えて、旧Fringe81株式会社の沿革についても記載をいたします。

 

(注1) RSS広告

Webサイトが更新情報などをRSS(RDF Site Summary/Rich Site Summary)形式のデータとして提供するRSSフィードの仕組みを利用して、ブログのエントリーやRSSリーダーごとに配信する広告。RSSリーダーとは、Webサイトを巡回してRSS/Atom形式といったWebサイトの内容を要約して配信するフォーマットで更新情報を受信し、リンク一覧の形で表示するソフトウエアのこと。

(注2) 第三者配信

ある広告主の広告を、代理店等のサーバーを通じて一括で広告配信を行うことで、正しい配信の効果の測定を可能とする仕組み。メディアや広告主ではなく、第三者のサーバーを活用することから、「第三者配信(3PAS/(3rd Party Ad Serving))」と呼ばれる。

(注3) アドサーバー

ネット広告の配信・管理を行うためのサーバー。

(注4) タグ

Webサイトに埋め込まれたプログラムで、広告配信サーバー等との通信を担う。

 

当社の沿革

年月

概要

平成24年11月

東京都渋谷区においてFringe81ホールディングス株式会社を資本金5,000千円で設立。

平成25年3月

旧Fringe81株式会社の株式の72%を取得し、子会社とする。

平成25年7月

子会社である旧Fringe81株式会社を吸収合併し、商号をFringe81株式会社へ変更。

平成25年10月

アドテク・ハッカソン「Facebook APAC Ads API Hackathon 2013」(注1)に日本から唯一参加。

平成26年5月

東京都港区に本社移転。

平成26年12月

スマートニュース株式会社が運営するニュースアプリ「SmartNews」にて提供される広告サービスの収益化支援を開始。

平成27年2月

スマートフォンアプリを中心としたアドネットワークの運営・構築のため株式会社D2Cと業務提携。

平成27年3月

米Aerospike社が開発したデータベース「Aerospikeバージョン3」で提供された最新機能を、当社が提供するシステムで検証・運用するための共同開発プロジェクトをスタート。

 

株式会社D2Cとスマートフォンアプリを中心としたアドネットワークの運営・構築における包括的業務提携を結び、共同運営に合意。

平成27年4月

スマートフォンアプリ「シンクル」の開発・運営のため株式会社ディヴィデュアルと業務提携。

平成27年7月

スマートフォンアプリ「シンクル」をリリース。

平成28年3月

東京都港区に本社移転。

 

旧Fringe81株式会社の沿革

年月

概要

平成17年4月

東京都目黒区において株式会社RSS広告社を資本金10,000千円で設立。

平成20年4月

株式会社サイバーエージェントの「アメーバブログ」にRSSフィードを導入。

平成21年6月

東京都渋谷区に本社移転。

平成22年4月

Fringe81株式会社に商号変更。

平成22年5月

バナー配信サービス「iogous」をリリース。

平成22年7月

東京都渋谷区に本社移転。

平成23年1月

第三者配信アドサーバー「iogous*mark(現在のdigitalice)」をリリース。

平成23年9月

第三者配信アドサーバー「iogous*mark」に関し、米Google社の第三者配信事業者向け認定資格を獲得。

平成24年1月

第三者配信アドサーバー「digitalice」をリリース。「iogous*mark」の機能を統合。

平成25年1月

タグ監視・Web高速化ツール「TagKnight」をリリース。

平成25年3月

Fringe81ホールディングス株式会社が旧Fringe81株式会社の株式を72%取得し、旧Fringe81株式会社はFringe81ホールディングス株式会社の子会社となる。

 

広告代理店WPPグループ傘下のデジタルエージェンシーである米VML社の日本法人であるヴィーエムエル株式会社(東京都渋谷区神宮前3-1-25 神宮前IKビル 4F、代表取締役CMO 荻野英希)の戦略パートナー企業として業務提携。

平成25年7月

Fringe81ホールディングス株式会社と合併。この合併により旧Fringe81株式会社は消滅。

 (注1) アドテク・ハッカソン「Facebook APAC Ads API Hackathon 2013」

ハッカソン(hackathon)とは、「ハック」と「マラソン」の造語。開発者向けイベントとして、通常特定の目的に沿って24時間でサービスを作り上げ、プレゼンテーションを行う。Facebookのいいね!(Like!)ボタンやタイムラインはハッカソンで開発されている。

 

3【事業の内容】

 当社は「新しい発見をもとに、地球の未来を創る集団」というビジョンを掲げ、市場的には黎明期であるが今後急成長が見込める先端的事業領域、換言すれば「際(キワ)」の事業を複数立ち上げるよう努めてまいりました。当社の社名にある「Fringe」は、「限界を超えた、前衛的な」などといった意味合いを持つ単語であり、我々は「現時点の最先端」「未来の当たり前」という意味合いで捉えております。日本の国番号「81」を背負った「最先端の集団」である、という社名の由来を常に意識し、最先端のデジタルテクノロジー・サービスを通じて社会課題を解決する集団であることが我々のミッションであると考えております。

 当社はインターネット関連事業の単一セグメントであるため、セグメントごとの記載はしておりません。セグメントを構成する主要サービスは、(1)広告代理サービス、(2)メディアグロースサービス、(3)ソリューションサービス、(4)ウェブサービスの4つに大別されます。

 当社は参入企業が少ないと考えられる「キワ」の市場を選び参入する方針を堅持し、また価格競争による規模の追求を行わず、高い収益性を求める方針にて事業運営をしております。また、当社はシステム開発や商品設計を自ら手がけユニークなサービスを創り出すとともに、販売に際しては当社販売人員の専門性を活かし迅速な事業育成を行うことに努めております。システム開発、商品設計、そして販売までの一気通貫体制を構築していることは当社の特徴の一つとなっております。その特徴によって、創業以来アドテクノロジー(注1)等をベースにした技術力をもとに「キワ」のサービスを創りだし、そのサービスを広告主や事業の収益化局面にあるメディア等の顧客に対し当社自ら販売し、顧客の課題解決につなげてまいりました。その販売活動を通じて得られた顧客の要望をもとに提供するサービスを改善(PDCAサイクル)し、これらの経験をもとにさらに新たなニーズや「キワ」事業を発掘する、といった好循環を生み出すよう努めてまいりました。これらのサイクルを通じ、当社は今後も継続的な成長を目指しております。

 

 

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(1)広告代理サービス

 広告代理サービスでは、主にインターネット広告の販売を行っています。インターネット広告とは、パソコンやスマートフォンを使って何かについて検索した時や、ニュースやゲーム等のアプリを使用した時などに表示される広告を指します。インターネット広告では、ユーザーの年齢、性別、趣味趣向、行動パターンや行動範囲等、非常に多くのデータを駆使して広告を表示する対象を詳細にターゲティングし、また、その広告効果を計測しながら広告配信戦略を柔軟に運用することができます。運用型広告と呼ばれるこの手法では、テレビCMや新聞広告とは異なり、広告効果を最適化することができる点が特徴です。

 当社では、Googleディスプレイネットワーク、Yahoo!ディスプレイアドネットワーク、Facebook広告といった広告媒体や、各種DSP(注2)サービス/アドネットワークの運営者から広告枠を買い付け、広告主及び広告代理店に一定のマージンを付加して販売するサービスであります。

 当社のサービスの特徴としては、自社開発のアドテクノロジーのソリューションを併せて提供できることと、アトリビューション分析(注3)等各種分析・コンサルティングに関する強みが挙げられ、広告主に対してデジタルマーケティングの戦略立案まで踏み込んだ提案を行っています。また、メディアグロースサービスにて当社が支援するインターネットメディアを販売することで、高い収益性を確保することが可能となっているとともに、当該メディアの広告媒体としての価値向上を支援する役割を果たしております。顧客基盤の観点からは、幅広い広告主と取引を行っており、顧客企業数の拡大と取引高の拡大に注力してまいりました。当社は新規取引先開拓の専門部署をおき、引き続き取引先の拡大に努めてまいります。

 

(2)メディアグロースサービス

 当社におけるメディアグロースサービスは、アドネットワークの運営、及びインターネットメディアの広告事業収益化にかかる業務支援からなります。主にアプリを含むスマートフォンメディアに対して広告商品企画・開発・オペレーションを提供する事業であり、市場拡大を続けることが見込まれるスマートフォン広告市場をターゲットとしております。「2016年 インターネット広告市場規模推計調査」(株式会社サイバー・コミュニケーションズ、株式会社D2Cが調査主体、平成29年4月17日発表)によると、下表の通り、スマートフォン広告費を含む市場規模は拡大しております。

 

スマートフォン広告費とPC広告費の市場規模推移                     (単位:億円)

 

平成24年

平成25年

平成26年

平成27年

平成28年

スマートフォン広告

800

2,073

3,450

4,979

6,476

PC広告

5,829

5,130

4,795

4,215

3,902

合計

6,629

7,203

8,245

9,194

10,378

 

 アドネットワークとは、広告配信可能なウェブサイトやアプリケーションを複数束ね、広告主からの発注を一元化して広告を配信するサービスです。当社は平成27年2月に株式会社D2C(東京都中央区銀座6-18-2 野村不動産銀座ビル、代表取締役社長 宝珠山卓志)と業務提携し、同社が提供する、携帯電話加入者情報を活用したターゲティングを強みとするアドネットワーク「docomo Ad Network」の開発及び運営に携わっております。当社はアドネットワークサービスに必要なシステム等の開発や広告配信に必要な業務を執行し、その対価として、アドネットワークにおける売上の一部をレベニューシェアとして受領しております。

 インターネットメディアの業務支援事業においては、事業の収益化局面にある事業者に対し、広告収入による収益化を、広告の企画、運用、販売等によるサポートをしております。メディアにとって広告出稿より得られる収入は事業の継続、発展にとって不可欠と考えられ、当社がメディアの営業活動及び運用の支援を行うことで、その売り上げの一部をレベニューシェアとして受領しております。最大の支援先はスマートニュース株式会社(東京都渋谷区神宮前6-25-16 いちご神宮前ビル 3F、代表取締役 鈴木健)が運営するニュースアプリSmartNews(以下「SmartNews」といいます。)です。当社は、平成26年12月より「SmartNews」にて提供される広告サービスの支援を行っており、同アプリにおける広告による収益化に貢献してまいりました。今後も取引先を増やしていく方針であります。

 このように、当社はアドネットワークの運営やインターネットメディアの業務支援においては、当社広告代理サービスにて販売支援まで行うことを特徴としております。広告商品を熟知した迅速かつ効果的な販売活動を行えるほか、広告代理マージンに加えレベニューシェアも受領する高収益の事業が実現しております。

 その他、当社のRSS広告サービス「Trend Match」は、ブログ配信に伴うRSSフィードを広告媒体とし広告を配信するサービスです。RSS広告「Trend Match」も複数の媒体を束ね、広告配信を行う点においてアドネットワークと同様の事業構造となりますが、広告主への営業活動は当社又は他の広告代理店が行う形となっております。

 

(3)ソリューションサービス

 ソリューションサービスでは、主にインターネット広告を配信される広告主向けに、広告戦略の意思決定のサポートとなる分析や、広告運用の工数を削減できるソリューションとなるプロダクトを提供しています。

 インターネット広告では運用による広告効果の最適化を図れる一方、運用できる“調整弁”が多岐に渡ることで、ひとつひとつの要素における本来の効果が見えにくくなったり、現場においては運用にかかる工数が膨大になっております。

 当社では第三者配信アドサーバー「digitalice」や、タグ監視・Web高速化ツール「TagKnight」など、自社企画・自社開発のソリューションを提供しております。

 「digitalice」は、インターネット広告の第三者配信機能と、広告主や広告代理店がワンストップで広告運用・配信ができるトレーディングデスク(注4)を兼ね備えた第三者配信アドサーバーです。「digitalice」では、より精密に広告効果を測定することができ、第三者として当社が提供する配信実績は、第三者の見解として顧客に貴重な情報となります。加えて、その広告配信のデータを元に、アトリビューション分析等のコンサルティングサービスや入稿設計等オペレーション面の支援等の周辺サービスを提供できることが当社の強みとなっています。日本製品の第三者配信アドサーバーとして初めてGoogleの認定ベンダーとなったほか、近時のトレンドである動画広告での計測実績を蓄積しております。また、「digitalice」の第三者配信機能を活用して、インターネット広告における運用者の人為的ミスや広告不正等を防ぐことで、広告本来の効果を正しく計測するといった、広告監査も行っております。

 「TagKnight」の提供するタグマネジメントとは、広告主サイトに導入される様々な外部接続タグを管理するものです。アドテクノロジーを活用する上でウェブサイトへのタグ設置は広く行われておりますが、広告を目的とした外部タグの増加に伴い管理の負荷が増す、外部タグ設置によりサイトが重くなる、といった問題が起こりえます。当社の「TagKnight」は外部タグを設置前・設置中にスキャンし監視を行うことでトラブルを防止するとともに、ウェブサイトに設置されている外部タグをわかりやすく図示し管理しやすくすることができます。また外部タグの監視を通じ外部タグの表示を高速化することで、ウェブサイトの高速化にもつなげております。

 

(4)ウェブサービス

 ウェブサービスにおいては、相互評価・賞賛のためのサービス「Unipos」及びスマートフォンアプリ「シンクル」を提供しております。

 「Unipos」は、顧客企業の従業員同士が、日常の感謝や賞賛をその言葉とともにポイント(ピア・ボーナス)を送り合うことができる、相互評価・賞賛のためのサービスです。IT技術を活用して人事領域業務の改善を行うサービス(HRテック)であり、旧来の人事評価における上司からの一方的な評価/処遇と異なり、周囲から気軽かつ日常的に賞賛/感謝を伝えることにより従業員の動機づけを行うことが可能です。部署や肩書を問わず即時的に同僚の評価をすることができ、半期や四半期ごとの業績評価では見落とされがちな小さな貢献も評価に加えることができます。また、従業員相互の評価内容が公開されることにより、評価の透明化・公正性の担保が可能となります。加えて、従業員同士で授受したピア・ボーナスを顧客企業内で給与/賞与に置き換え付与することで、経済的な報酬をもたらすことも可能となるサービスです。「Unipos」では、1アカウント当たりの月額単価×アカウント数にて算出される月額利用料を顧客企業より受領する事業モデルとなっております。

 「シンクル」は、各ユーザーが愛する様々なもの・ことを投稿し、それに共感した他のユーザーと交流して語り合うことでコミュニティを形成するスマートフォンアプリです。他のソーシャルネットワークと異なり匿名で投稿できるため、周囲に気兼ねすることなく安心してユーザー自身の興味関心を開示することができます。また、嗜好性が似たユーザー(シンクロ率の高いユーザー)の発見ができ、自分が認識していなかった新しい興味関心を発見することができます。こうしたやりとりを通じ、深く・強いユーザーの嗜好を表出させることにより、特定の広告に強く反応すると見込まれるユーザー層の特定が容易になり、今までにない高い広告効果が見込まれます。「シンクル」では、アプリ内における広告枠を広告主に販売すること等で収益を得ております。

 

(注1) アドテクノロジー

インターネット広告を、広告主の目的を実現するために効果的且つ効率的に流通させるための技術全般。

(注2) DSP

デマンドサイドプラットフォーム(Demand-Side Platform)の略であり、デマンドサイド(広告主や広告代理店)がRTB(注5)で広告を買う際に使うプラットフォーム。配信対象者や掲載面、配信時間等、広告を買う側の都合の良い条件もとに入札できる。

(注3) アトリビューション分析

ユーザーによって、購入・会員登録・資料請求等、サイト毎に目標とされる成果が達成されることをコンバージョンといい、メディア毎のコンバージョンの貢献度を調査・分析することをアトリビューション分析と呼ぶ。例えば、ある広告がクリックされて自社の商品が買われた場合、その顧客がそれまでに他のどんなメディアを見ていて、購入にどの程度影響を及ぼしたかを調べる。

(注4) トレーディングデスク

広告主の予算を預り、DSPや第三者配信等を用いて、最適な運用を行うサービス。システムのみならず広告枠の買付け、運用戦略の立案、配信結果のレポーティング等も含む。

(注5) RTB

メディアにおいて広告がユーザーに表示されることをインプレッションといい、インプレッションが発生したタイミングでオークションを開催し、一番高い値段でそのインプレッションを買う広告主の広告を配信する仕組みのことをRTB(Real-Time Bidding)と呼ぶ。広告配信データやサイト訪問者データ、POSデータ、顧客ID等様々なデータを管理するプラットフォーム。

 

 当社の事業系統図を図示すると以下の通りです。

 

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4【関係会社の状況】

 該当事項はありません。

 

5【従業員の状況】

(1)提出会社の状況

平成29年4月30日現在

 

従業員数(名)

平均年齢(歳)

平均勤続年数(年)

平均年間給与(千円)

88(46)

29.6

2.4

5,125

 (注)1.従業員数は就業人員であり、臨時雇用者数(契約社員、インターン、人材会社からの派遣社員を含む。)は、最近1年間の平均人員を( )外数で記載しております。

2.平均年間給与は、賞与及び基準外賃金、手当を含んでおります。

3.当社はインターネット関連事業の単一セグメントであるため、セグメントごとの記載はしておりません。

 

(2)労働組合の状況

 労働組合は結成されておりませんが、労使関係は円満に推移しております。