第二部【企業情報】

第1【企業の概況】

 (はじめに)

 当社グループの基幹サービスである顧客満足度覆面調査「ミステリーショッピングリサーチ」(以下「MSR」という。)は、2000年5月に株式会社日本エル・シー・エー(現 株式会社エル・シー・エーホールディングス)の外食産業向けコンサルティングにおける調査ツールとして誕生しました。次第にMSRが拡大したことから、2008年5月に株式会社日本エル・シー・エー(現 株式会社エル・シー・エーホールディングス)の子会社としてミステリーショッピングリサーチ事業(注)を営むことを目的に会社分割により設立された株式会社MS&Consulting(以下「旧MS&Consulting(1)」という。)が当社の前身となります。旧MS&Consulting(1)は、設立後、順調に業容を拡大していく中で、以下のとおり3回の組織再編を行い、現在に至っております。

 (注)ミステリーショッピングリサーチ事業には、MSRをはじめとして、主にその活用を総合的にサポートするためのコンサルティング・研修などが含まれます。

 

 (1) 旧MS&Consulting(1)設立後の主要株主の異動

 当時、ミステリーショッピングリサーチ事業を展開していた株式会社日本エル・シー・エー(現 株式会社エル・シー・エーホールディングス)及びグループ会社は、業績が著しく悪化し、資金調達が必要となったため、順調に業容を拡大しているミステリーショッピングリサーチ事業の売却を検討した結果、同事業を行うための子会社旧MS&Consulting(1)を会社分割により設立して2008年5月27日に同社の株式を売却し、旧MS&Consulting(1)は外食事業を営む株式会社ホッコクの完全子会社となりました。

 

 (2) 北の丸パートナーズ株式会社による旧MS&Consulting(1)の吸収合併

 外食業界のみならず、多種多様な業界へのサービス提供を拡大し、さらなる成長の可能性を捉えるため、2009年3月30日に大和SMBCキャピタル株式会社(現 大和企業投資株式会社ならびにSMBCベンチャーキャピタル株式会社)が組成したファンドであるNIFSMBC-B2007投資事業有限責任組合が保有する北の丸パートナーズ株式会社の完全子会社となりました。

 その後、北の丸パートナーズ株式会社は、2009年9月1日に旧MS&Consulting(1)を吸収合併し、同日に株式会社MS&Consulting(以下「旧MS&Consulting(2)」という。)に商号変更いたしました。

 

 (3) TMC BUYOUT3株式会社による旧MS&Consulting(2)の吸収合併

 また、経営の自由度を維持しつつも、安定した株主の下で、より一層の成長を図ることを目的として、2013年5月15日に東京海上キャピタル株式会社が組成したファンドであるTMCAP2011投資事業有限責任組合が保有するTMC BUYOUT3株式会社の完全子会社となりました。

 その後、TMC BUYOUT3株式会社は、2013年10月1日に旧MS&Consulting(2)を吸収合併し、同日に株式会社MS&Consultingに商号変更いたしました。

 

 当社は、NIFSMBC-B2007投資事業有限責任組合からTMC BUYOUT3株式会社へ当社株式が譲渡される際に、「企業体質の強化」「社会的な信用度の向上」「資金調達の多様化」を進め、「精神的に豊かな社会の創造」といった当社グループが掲げる経営理念の実現に近づくためにも、将来的な当社株式の金融商品取引所への上場を最優先とする方針を現実質株主である東京海上キャピタル株式会社と共有し、同社とともに目的の達成に取り組んでまいりました。

 

 なお、当社の事業運営主体の変遷を図示いたしますと、以下のとおりとなります。

 

  [事業運営主体の変遷図]

 

0201010_001.png

1【主要な経営指標等の推移】

(1)連結経営指標等

回次

国際会計基準

第4期

第5期

決算年月

2016年3月

2017年3月

売上収益

(千円)

2,444,722

2,641,168

税引前利益

(千円)

494,860

506,065

親会社の所有者に帰属する当期利益

(千円)

315,791

339,511

親会社の所有者に帰属する当期包括利益

(千円)

312,988

327,962

親会社の所有者に帰属する持分

(千円)

2,633,782

3,023,526

総資産額

(千円)

3,652,174

3,917,289

1株当たり親会社所有者帰属持分

(円)

591.86

670.40

基本的1株当たり当期利益

(円)

70.96

75.98

希薄化後1株当たり当期利益

(円)

69.35

73.80

親会社所有者帰属持分比率

(%)

72.1

77.2

親会社所有者帰属持分当期利益率

(%)

12.8

12.0

株価収益率

(倍)

営業活動によるキャッシュ・フロー

(千円)

179,320

254,428

投資活動によるキャッシュ・フロー

(千円)

62,199

16,556

財務活動によるキャッシュ・フロー

(千円)

550,155

123,228

現金及び現金同等物の期末残高

(千円)

904,453

1,019,112

従業員数

(人)

106

124

(外、平均臨時雇用者数)

(35)

(18)

(注)1.第5期より国際会計基準(以下「IFRS」という。)に基づいて連結財務諸表を作成しております。

    また、2015年4月1日をIFRS移行日とした第4期のIFRSに基づいた提出会社の経営指標等を連結経営指標等として記載しております。

  2.第4期及び第5期のIFRSに基づく連結財務諸表については、金融商品取引法第193条の2第1項の規定に基づき、太陽有限責任監査法人の監査を受けております。

  3.売上収益には消費税等は含まれておりません。

  4.千円未満を四捨五入して記載しております。

  5.株価収益率については、当社株式は非上場であるため、記載しておりません。

  6.従業員数は就業人員であり、臨時雇用者数(パートタイマー・アルバイト等)は、年間の平均人員(1日8時間換算)を( )外数で記載しております。

  7.当社は、2017年5月25日開催の取締役会決議により、2017年6月21日付で普通株式1株につき100株の割合で株式分割を実施しております。1株当たり親会社所有者帰属持分、基本的1株当たり当期利益及び希薄化後1株当たり当期利益につきましては、第4期の期首に当該株式分割が行われたと仮定して、当該株式分割後の発行済株式数により算出しております。

 

(2)提出会社の経営指標等

回次

日本基準

第1期

第2期

第3期

第4期

第5期

決算年月

2013年3月

2014年3月

2015年3月

2016年3月

2017年3月

売上高

(千円)

1,120,984

2,250,536

2,444,381

2,636,427

経常利益又は経常損失(△)

(千円)

245

84,588

338,574

398,093

426,866

当期純利益又は当期純損失(△)

(千円)

251

107,942

170,506

209,605

237,078

資本金

(千円)

50

509,040

509,040

509,041

524,041

発行済株式総数

(株)

1

44,500

44,500

44,500

45,100

純資産額

(千円)

201

2,116,806

2,287,313

2,496,918

2,763,997

総資産額

(千円)

50

3,904,096

3,895,519

3,492,567

3,643,534

1株当たり純資産額

(円)

201,228.00

47,568.69

51,400.30

561.11

612.86

1株当たり配当額

(円)

11,087

(うち1株当たり中間配当額)

()

()

()

()

()

1株当たり当期純利益金額又は

1株当たり当期純損失金額(△)

(円)

251,228.00

2,808.50

3,831.61

47.10

53.05

潜在株式調整後

1株当たり当期純利益金額

(円)

自己資本比率

(%)

54.2

58.7

71.5

75.9

自己資本利益率

(%)

7.7

8.8

9.0

株価収益率

(倍)

配当性向

(%)

209.0

従業員数

(人)

1

94

101

102

120

(外、平均臨時雇用者数)

()

(15)

(30)

(35)

(18)

(注)1.当社は2013年3月4日設立のため、第1期は2013年3月4日から2013年3月31日となっております。

  2.売上高には、消費税等は含まれておりません。

  3.当社は従来、千円未満を切捨てて端数処理をしておりましたが、IFRSに基づいた連結財務諸表の端数処理に合わせ、第4期より千円未満を四捨五入して記載しております。

  4.潜在株式調整後1株当たり当期純利益金額については、第1期については、潜在株式が存在しないため記載しておりません。第2期から第5期の潜在株式調整後1株当たり当期純利益金額については、潜在株式は存在するものの、当社株式は非上場であり、期中平均株価が把握できないため記載しておりません。

  5.株価収益率については、当社株式は非上場であるため、記載しておりません。

  6.第1期の自己資本比率においては、純資産額がマイナスのため記載しておりません。

  7.第1期及び第2期の自己資本利益率については、当期純損失のため記載しておりません。

  8.第1期から第4期の1株当たり配当額及び配当性向については、配当を実施していないため記載しておりません。

  9.従業員数は就業人員であり、臨時雇用者数(パートタイマー・アルバイト等)は、年間の平均人員(1日8時間換算)を( )外数で記載しております。

  10.第4期及び第5期の財務諸表については、金融商品取引法第193条の2第1項の規定に基づき、太陽有限責任監査法人の監査を受けておりますが、第1期、第2期及び第3期の財務諸表については、当該監査は受けておりません。

  11.当社は、2017年6月21日付で普通株式1株につき100株の株式分割を行っておりますが、第4期の期首に当該分割が行われたと仮定し、1株当たり純資産額及び1株当たり当期純利益金額又は1株当たり当期純損失金額を算定しております

    また、東京証券取引所自主規制法人(現 日本取引所自主規制法人)の引受担当者宛通知「『新規上場申請のための有価証券報告書(Ⅰの部)』の作成上の留意点について」(平成24年8月21日付東証上審第133号)に基づき、第1期の期首に当該株式分割が行われたと仮定して算出した場合の1株当たり指標の推移を参考までに掲げると、

以下のとおりとなります。

回 次

第1期

第2期

第3期

第4期

第5期

決算年月

2013年3月

2014年3月

2015年3月

2016年3月

2017年3月

1株当たり純資産額

(円)

△2,012.28

475.69

514.00

561.11

612.86

1株当たり当期純利益金額又は

1株当たり当期純損失金額(△)

(円)

△2,512.28

△28.09

38.32

47.10

53.05

潜在株式調整後1株当たり当期純利益金額

(円)

1株当たり配当額

(円)

110.87

(うち1株当たり中間配当額)

(-)

(-)

(-)

(-)

(-)

 

2【沿革】

年月

概 要

2000年5月

株式会社日本エル・シー・エー(現 株式会社エル・シー・エーホールディングス(注))において、外食産業向けコンサルティングにおける調査ツールとして、顧客満足度覆面調査「ミステリーショッピングリサーチ(MSR)」の提供を開始

2002年5月

コンサルティングを受託した顧客企業のみへの付加的サービスだったミステリーショッピングリサーチ(MSR)の事業化に着手

2004年4月

顧客満足の先にある「顧客ロイヤルティ」とそれを生み出す組織の関連性を分析し、ボトムアップ型でサービス改善を進めるコンサルティング・研修ノウハウ「HERBプログラム」をリリース

2006年10月

 

2008年5月

 

 

2008年7月

2009年3月

 

2009年9月

 

 

2011年9月

 

2012年9月

2013年3月

2013年5月

2013年9月

2013年10月

 

2015年8月

 

2016年1月

2016年3月

2017年5月

2017年8月

外食産業において高い顧客満足度を実現する企業を表彰するイベント「外食クオリティサービス大賞」を開始

東京都台東区に株式会社MS&Consulting(旧MS&Consulting(1))を会社分割により設立

株式会社ホッコクの子会社となる

本社を東京都中央区に移転

東京都千代田区に北の丸パートナーズ株式会社を設立

北の丸パートナーズ株式会社の子会社となる

北の丸パートナーズ株式会社を存続会社として、旧MS&Consulting(1)を吸収合併、同日、商号を株式会社MS&Consulting(旧MS&Consulting(2))に変更し、本社を東京都中央区に移転

従業員満足度を、リーダーシップ、チーム環境、業務モチベーション、組織ロイヤルティの4つの観点から明らかにする従業員満足度調査「サービスチーム力診断」をリリース

経済産業省主催「平成24年度 おもてなし経営企業選」事務局を受託

東京都千代田区にTMC BUYOUT3株式会社を設立

TMC BUYOUT3株式会社の子会社となる

経済産業省主催「平成25年度 おもてなし経営企業選」事務局を受託

TMC BUYOUT3株式会社を存続会社として、旧MS&Consulting(2)を吸収合併、同日、商号を株式会社MS&Consultingに変更し、本社を東京都中央区に移転

国立研究開発法人産業技術総合研究所(産総研)と「サービス・ベンチマーキングによるサービスプロフィットチェーンの高度化」に向けた共同研究を開始

タイに子会社MS&Consulting(Thailand)Co.,Ltd.を設立

台湾に子会社台灣密思服務顧問有限公司を設立

経済産業省創設「おもてなし規格認証制度」認証支援事業者として認定される

一般財団法人日本情報経済社会推進協会よりプライバシーマークを取得

(注)株式会社日本エル・シー・エー(現 株式会社エル・シー・エーホールディングス)は、2008年5月16日付で会社分割にて旧MS&Consulting(1)を設立し、その保有株式の全てを2008年5月27日付で株式会社ホッコクへ譲渡し、当社との資本関係を解消いたしました。また、常務取締役渋谷行秀及び取締役日野輝久は、2008年5月16日付で旧MS&Consulting(1)に出向し、2008年5月31日付の転籍によって株式会社日本エル・シー・エーを退職、代表取締役社長並木昭憲及び専務取締役辻秀敏は、2008年6月20日付で株式会社日本エル・シー・エーの取締役を辞任し、当社の経営に専念しております。

  なお、株式会社エル・シー・エーホールディングスは、2009年5月18日に行った第三者割当増資に関して、関東財務局長より「平成21年5月期に、土地及び建物等を現物出資財産とする第三者割当増資を行うに当たり、当該現物出資財産を構成する土地及び建物の一部につき評価額を過大にし、投資不動産及び純資産額を過大に計上するなどしていた」として、2013年12月19日付で有価証券報告書、四半期報告書等に係る訂正報告書を提出するよう命令が出され、2014年2月6日に訂正報告書を提出し、2015年12月1日に株式会社エル・シー・エーホールディングスの株式は上場廃止(東京証券取引所市場第二部)に至っております。

 

3【事業の内容】

 当社グループは、顧客企業のサービスプロフィットチェーン(以下「SPC」という。(注))経営の実現に向け、顧客満足度(CS)・従業員満足度(ES)の向上によるサービスの高品質化・高付加価値化を目的とした経営コンサルティングを行っており、顧客満足度覆面調査「ミステリーショッピングリサーチ」(以下「MSR」という。)を基幹サービスとして、従業員満足度調査「サービスチーム力診断」及びコンサルティング・研修などの各種サービスを提供しております。

 MSRとは、マーケティングリサーチの一種で、当社グループのミステリーショッパー(以下「モニター」という。)が一般利用者として顧客企業の運営する店舗等を訪れ、実際の購買活動を通じて商品やサービスの評価を行う顧客満足度調査のことであります。当社グループの覆面調査レポート(以下「レポート」という。)は、規定どおりのサービスが行われているかどうかのチェックを目的とした同業他社のものとは異なり、顧客店舗スタッフの働きがいを高め、サービス品質の向上を実現することを目的としており、レポートの活用促進に向けたコンサルティング・研修へと繋がっている点に特徴があります。具体的には、コンサルティング・研修をとおして、レポートを活用しながら、店舗運営に関する現場オペレーションにまで踏み込んだアクションレベルの改善活動を支援しております。また、従業員満足度調査としてサービスチーム力診断を提供しておりますが、こちらも調査による現状把握に止まらず、その後のコンサルティング・研修によって調査結果を従業員満足度の向上に繋げていく活動を支援しております。

 当社グループでは、更なる収益拡大のため、顧客基盤の拡大を目的としたサービスのラインナップ拡大と付加価値向上を進めております。一方、継続性があるMSRで着実に収益が計上されるストック型のビジネスモデルを導入しており、安定した収益基盤の構築も図っております。

 なお、当社グループはミステリーショッピングリサーチ事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。

 (注)SPCとは、経営における売上や利益と、従業員満足度、顧客満足度の因果関係を示したフレームワークのことであり、従業員満足度向上→顧客満足度向上→業績向上→従業員満足度向上→・・・・の好循環サイクルを指します。

 

(1) サービスの特徴

 当社グループは経営コンサルティング会社から分社・独立する形で創業しており、経営コンサルティング会社で培ったノウハウを生かした各種サービスを提供しております。

 MSRでは、顧客店舗スタッフの働きがいやモチベーションを高め、自発的な改善活動に繋がるレポートを提供することを重視しております。そのため、規定どおりのサービスが行われているかどうかを選択肢により評価するチェック主体の調査票ではなく、自由記入のコメントを多用した調査票を導入しており、外食業界では料理(味・温度・盛り付け)、小売業界では商品説明力や品揃え、自動車業界では自動車関連小売等におけるセールススキル、美容業界ではカウンセリング力など、業界ごとに顧客満足度との相関性の高いものを評価項目に加えております。さらに、その有効性を高めるために、調査の準備段階では担当コンサルタントが顧客企業とコミュニケーションを図り、顧客ニーズに合わせた調査企画・設計を行うほか、要望に応じて調査実施前・後のコンサルティング・研修を実施いたします。また、質の高いレポートを提供するため、専門の教育を受けたレポートチェッカーが、モニターの作成した全レポートに目を通しコメント内容や評価との整合性などを確認、必要に応じてレポートを作成したモニターへのヒアリング等を行うことで、コメントをより具体的かつ効果的なものにメンテナンスするなど、コメントの質・量ともにこだわった消費者目線のレポートを顧客企業へ提供しております。2017年3月期には、国内において、MSRの顧客企業1,004社に対し年間21万回の調査を実施しておりますが、これまで蓄積した当該データを活用し、上述のような評価項目の設計や業界平均値等の比較対象データの提供を行っております。

 サービスチーム力診断は、リーダーシップ、チーム環境、業務モチベーション、組織ロイヤルティの4つの観点で従業員満足度を調査するサービスであります。2011年9月のサービス開始から累計で36万件の調査実績があり、当該蓄積データより算出された業界平均値や調査結果の高い企業・店舗等の平均値と比較することによって、顧客企業・店舗等の強み・弱みを知ることができます。

 コンサルティング・研修では、MSRやサービスチーム力診断の調査結果をもとにボトムアップ型でサービス改善を進めるノウハウ「HERBプログラム」を提供しております。同プログラムを通じてMSRを用いた改善活動を顧客店舗に定着させ、店舗スタッフのモチベーション向上、働きがいのある職場作りを促進することで、店舗スタッフの定着率向上、店舗スタッフが自発的にサービス品質の向上に取り組む環境構築に繋げております。B2Cビジネスを営むサービス業をはじめ、多岐にわたる業界が当社グループのサービス提供対象となりますが、当社グループでは、各種調査やコンサルティング・研修の質を向上させるため、業界特化チームを組み、それぞれに精通することで、各業界特有の課題認識を捉え、解決に向けたノウハウの充実等を図っております。

 現在、顧客基盤の拡大ならびに提供する一連のサービスが顧客企業の経営システムのインフラとして継続的に利用されることを目指し、サービスのラインナップ拡大と付加価値向上に努めております。

 サービスのラインナップ拡大においては、訪日外国人客の満足度向上を志向される顧客企業も増加していることから、在日及び訪日外国人による覆面調査「インバウンドMS」のほか、2016年4月の障害者差別解消法の施行を受け、障害者による覆面調査「ユニバーサルMS」のサービス展開を図っております。加えて、2017年3月期にリリースした「カスタマーリサーチ」は、来店客からWEB上でタイムリーにアンケートを取得し、全営業時間帯の店舗状況ならびに顧客満足度をリアルタイムに把握できるため、MSRとの併用により顧客満足度向上施策の実行度やその有効性を高めることに役立つものと考えております。

 サービスの付加価値向上においては、2015年8月より国立研究開発法人産業技術総合研究所と共同研究契約を締結し、「サービス・ベンチマーキングによるサービスプロフィットチェーンの高度化」に向けた共同研究を実施しております。本研究では、当社グループが保有する顧客満足度・従業員満足度データを分析することで、各種調査手法を高度化するとともに、業種別のSPCの傾向や特色を明確化することができ、研究成果として得られた各種データを当社グループが提供するコンサルティング・研修に役立てております。その他、顧客企業の店舗スタッフ個々の私有デバイスからレポートを閲覧し、そこから得た気付きを瞬時に発信・共有できるスマートフォンアプリ及びWEBサイト「MSナビ」を開発、2017年3月期よりサービス提供を開始いたしましたこれにより、顧客店舗におけるレポートの活用状況を詳細に把握することができるようになったほか、サービスチーム力診断やeラーニング等とも機能連携を図っており、従来はコンサルティング・研修で提供していたMSR活用のための標準的なコンテンツを動画で提供することも可能となりました。

 このような取り組みが功を奏し、多くの既存顧客より継続受注を獲得しており、毎期売上収益に占めるその割合は約9割にも及びます。当社グループが国内でミステリーショッピングリサーチ事業を提供している業界別の状況は下記の通りです。

 

業界

2017年3月期

主な業種・業態等

売上収益

(百万円)

売上収益に占める

既存顧客の割合

外食業界

1,080

93.8%

居酒屋、ファストフード

小売業界

518

75.0%

ショッピングセンター

自動車業界

344

99.3%

カーディーラー、サービスステーション

美容業界

247

93.8%

美容院、エステ

レジャー業界

165

95.7%

カラオケ、ホテル

その他

186

金融、宿泊、行政(公共機関)等

 

(2) ミステリーショッピングリサーチ事業における「MSR」、「サービスチーム力診断」及び「コンサルティング・研修」の具体的詳細

① MSR

 他のマーケティングリサーチ手法と比較した際、MSRの最大の特徴は、モニターが依頼を受けた後に実際にサービスを体験するという点にあります。MSRで提供するレポートには、一消費者であるモニターがサービスの利用前に抱いていた事前期待と実際のサービスを受けて感じた印象との差異を時系列で明らかにすることによって、購買意欲、再来店意思、紹介意思といった結果から、それに至った経緯までを、心理状況の変化も交え詳細に記述しております。

 これによって規定どおりのサービスが行われているかはもちろん、その時々の状況によって異なるサービスの実態、その時に行われたやり取りなどの具体的内容、サービスを受けた消費者の心象までを詳細に知ることができます。このためMSRは、主にサービス業の現場における課題把握調査、または顧客満足度調査の手法として用いられます。

 また、調査によって得られる「お客様の生の声」は、サービス業の現場で働く顧客店舗スタッフの働きがいを高める重要な要素となり、顧客満足を大切にする組織風土を生み出し、サービス品質向上の土台を築くことに繋がります。この土台があるとオペレーション改善が自然に進み、顧客満足度や生産性向上のために必要な改善を続ける企業文化の醸成を促進させることができます。

 MSRに取り組む顧客企業の多くは全店舗での調査実施を要望します。そのため、全国に店舗を有するナショナルチェーン等のニーズに対応するには、離島を含む調査対象店舗のある地域に数多くの登録モニターを確保しておくことが重要となります。また、年齢や性別、これまでのサービス利用の有無等、限られたモニター属性での調査を求められる場合があります。こうした様々な調査ニーズに対応するため、当社グループは、30歳・40歳代の女性を中心として、日本全国に44万人のモニターを確保しております。モニター登録は、当社モニター専用サイトの新規会員登録ページにて、利用規約や個人情報保護方針に同意の上、メールアドレスとパスワードを入力することで登録完了となります。その後、氏名・住所等の詳細な会員情報登録、なりすまし防止のための携帯番号認証、調査モラル教育を目的としたWEBテスト受講などの手続きを行うことで、調査に応募することが可能となります。

 さらに、調査時にモニターが遵守しなければならない指定行動の多い調査などでは、モニターの質が強く求められる場合もあります。そのため、選定されたモニターに対して調査上の留意事項等をまとめた調査マニュアルなどを作成・配布する、レポート作成ノウハウをまとめた「レポートの書き方」やMVR(注1)として表彰した優秀なレポートをモニター専用サイト上に掲載するほか、提出されたレポートを当社グループの定めるチェック基準で評価し、その結果をモニターにフィードバックする等、モニター教育にも力を入れております。このレポート評価の結果は、モニターランクの付与基準となっております。モニターランク制度はモニターをダイヤモンド、ゴールド、シルバー、ブロンズ、レギュラーの5階層に区分するものであります。上位階層に位置する程、応募した調査へ優先的に当選するチケットがもらえる等、各種特典が設けられており、質の高いモニターの囲い込みに役立たせております。加えて、少額謝礼の柔軟な支払対応を可能とするポイント制度(MSポイント)(注2)を運用しており、調査への応募等に少額のインセンティブを付けるなどの施策により、稼働率の低いモニターのアクティブ化を図っております。

(注1)MVRとは“Most Valuable Report”の略称で、質の高いレポートを提出したモニターを表彰する賞であります。

(注2)MSポイントとは当社が運営する独自のポイント制度であります。当社は、覆面調査を行った日本国内のモニターへの謝礼支払方法として、謝礼相当額をMSポイントとして発行しております。このMSポイントは、商品交換、ANAマイルや他ポイント(PeXポイント等)への移行、銀行振込による現金化が可能であります。

 

 当社グループにおける国内の最近5年間のモニター数、モニターが年間で調査した店舗数及び総調査数は以下のとおりとなります。

 このような各種指標の堅調な推移に伴い、国内の売上収益に占めるミステリーショッピングリサーチ事業の割合も年々上昇しており、2017年3月期では96.5%にまで及んでおります。

 

 

2013年3月期

2014年3月期

2015年3月期

2016年3月期

2017年3月期

モニター数(人)

379,906

389,746

396,507

417,519

439,194

年間調査店舗数(店)

54,867

57,046

61,150

63,807

63,297

年間総調査数(回)

160,737

166,427

175,916

189,051

209,663

ミステリーショッピングリサーチ事業の売上構成比

94.0%

94.0

94.8

95.7

96.5

 

 MSRの概要は以下のとおりとなります。

 

<MSR概要図>

0201010_002.png

(ⅰ)

調査設計、システム登録

顧客企業の依頼内容に基づいて、調査フローや調査票などを設計し、調査企画としてシステム登録する

 

(ⅱ)(ⅱ)'

モニター募集、応募、選定

モニター専用サイトにて調査企画を告知し、モニターを募集、応募者の中から適切なモニターを選定する

 

(ⅲ)

モニター教育・サポート

調査前に、調査趣旨・間違い易いポイント・行動の注意点やレポートの書き方等についてメールや電話を用いて教育・サポートする

 

(ⅳ)

覆面調査

モニターは一般利用客として調査対象店舗を訪れ、指定の調査条件に従い、実際の購買活動をとおしてサービスを体験(調査)する

 

(ⅴ)(ⅴ)'

レポート作成、提出

モニターは、モニター専用サイト上にて、実際に体験(調査)したサービスやその結果として感じた再来店意思や紹介意思について評価し、その理由や感想等のコメントを交えてレポートを作成、当社グループに提出する

 

(ⅵ)(ⅵ)'

レポートチェック、追記・

修正依頼、ヒアリング、メンテナンス

・一次チェックとして、モニターから提出されたレポートと証票(来店証明となるレシート等)をチェックする

・二次チェックとして、評価の整合性やコメントの質・量が定められた基準を満たしていることをチェックする

・基準を満たしていない場合には、メールでの追加記載・修正依頼、電話でのヒアリング等を実施しながら、充足されるまでレポートのメンテナンスを行う

 

(ⅶ)

レポート納品

顧客企業と合意した納期までに、顧客企業専用サイトにてレポートを納品する。同サイトでは、レポートの閲覧のみならず、簡易な集計・分析も可能となっている

 

② サービスチーム力診断

 サービスチーム力診断は、従業員の働きがいやモチベーションに焦点を当て、リーダーシップ、チーム環境、業務モチベーション、組織ロイヤルティの4つの観点から組織が抱える問題点を明らかにする調査です。サービスチーム力診断の設問は、各種理論や当社グループのコンサルティング・研修をとおして成果が創出された組織・チームの特徴をもとに設計されております。顧客店舗スタッフが負担なく回答できるよう設問数も必要最低限に留めており、年に複数回実施し、短いスパンでタイムリーに自店舗の従業員満足度を確認できる仕様となっております。

 過去累計36万件の調査実績があり、蓄積データより算出されたサービス業全体やその顧客企業が属する業界、調査結果の高い企業・店舗等の平均値と比較することによって、顧客企業・店舗等の強み・弱みを知ることができます。当社グループでは、このような調査結果を活用し、組織改善のための支援設計からそれに準じたコンサルティング・研修の提供までをサポートしております。従来は、コンサルティング・研修の付加サービスとして提供しておりましたが、従業員の働きがい向上に関連する分野は今後に大きな成長余地があると考え、独立したサービスとして提供するに至っております。

 

③ コンサルティング・研修

 当社グループでは、MSRやサービスチーム力診断を活用した改善サイクルが顧客店舗においてスムーズに定着するよう、調査とその結果に基づくコンサルティング・研修をワンストップで提供できるノウハウを有しており、調査実施前・後で、顧客店舗のスタッフがポジティブに各種調査結果を捉えられるフィードバックのあり方、顧客店舗のスタッフに自発的な改善活動を促す方法、多くの店舗に共通して見られる課題の解決策、顧客企業内における優秀店舗の取り組み事例などを主なテーマとしたコンサルティング・研修を実施しております。

 顧客店舗における、MSR及びサービスチーム力診断を活用しての改善サイクル例は以下のとおりとなります。

 

<MSR及びサービスチーム力診断を活用しての改善サイクル例>

 

0201010_003.png

[事業系統図]

 事業の系統図は次のとおりであります。

0201010_004.png

 注1 当社は登録モニターにより覆面調査を国内顧客企業の店舗に対して実施し、レポートを納品、要望に応じてコンサルティング・研修までを行い、国内顧客企業より調査費用等を受け取る。

 注2 子会社も当社同様の業務を海外顧客企業に対して行う。

 注3 登録モニターは、当社の依頼により国内顧客企業が経営する店舗に対して覆面調査を実施する。

 注4 当社は覆面調査を行った登録モニターに対して、MSポイントにて謝礼を支払う。

 注5 登録モニターは、子会社の依頼により海外顧客企業が経営する店舗に対して覆面調査を実施する。

 注6 子会社は覆面調査を実施した登録モニターに対して、現金にて謝礼を支払う。

 注7 当社は、提携先企業より新規顧客の紹介を受け、それに対して紹介料を支払う。

 注8 当社は、顧客企業に対して納品するレポートのチェック等の一部を外部の会社に依頼し、その費用を支払う。

 

4【関係会社の状況】

名称

住所

資本金

主要な事業の内容(注)1

議決権の所有割合又は被所有割合

関係内容

 (連結子会社)

 

 

 

 

 

MS&Consulting(Thailand)Co.,Ltd. (注)2

タイ

バンコク市

200万バーツ

ミステリーショッピングリサーチ事業

 (所有)

49%

当社からの経営指導

資金の貸付

役員の兼任 2名

 

 

 

 

 

 

台灣密思服務顧問有限公司

台湾

台北市

50万台湾ドル

ミステリーショッピングリサーチ事業

 (所有)

100%

当社からの経営指導

資金の貸付

 (注)1.セグメント情報の名称を記載しております。

   2.持分比率は100分の50以下でありますが、人的及び資本的に支配しているため、子会社としたものでありま

     す。

   3.当社の過半数の株式を所有するTMCAP2011投資事業有限責任組合(東京海上キャピタル株式会社が間接的に出資を行っている法人)は企業会計基準適用指針第22号「連結財務諸表における子会社及び関連会社の範囲の決定に関する適用指針」第16項(4)の規定により、連結財務諸表規則に基づく親会社には該当しません。なお、当社が採用するIFRSにおいては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表注記 31. 関連当事者」に記載のとおり、当該組合が直近上位の親会社であり、最終的な支配当事者は東京海上キャピタル株式会社であります。

   4.当社は、最近日現在において特定子会社は有しておりません。

 

5【従業員の状況】

(1) 連結会社の状況

               2017年7月31日現在

 

従業員数(人)

131

(15)

 

 (注)1.従業員数は就業人員(当社グループからグループ外への出向者を除き、グループ外から当社グループへの出向者を含む。)であり、臨時雇用者数(パートタイマー・アルバイト等)は、年間の平均人員(1日8時間換算)を( )外数で記載しております。

   2.当社グループは、ミステリーショッピングリサーチ事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。

 

(2) 提出会社の状況

2017年7月31日現在

 

従業員数(人)

平均年齢(歳)

平均勤続年数(年)

平均年間給与(千円)

127 (15)

33.4

4.6

5,411

 (注)1.従業員数は就業人員(当社から社外への出向者を除き、社外から当社への出向者を含む。)であり、臨時雇用者数(パートタイマー・アルバイト等)は、年間の平均人員(1日8時間換算)を( )外数で記載しております。

   2.平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

   3.当社は、ミステリーショッピングリサーチ事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。

 

(3) 労働組合の状況

 当社グループの労働組合は結成されておりませんが、労使関係は円満に推移しております。